芭屋框組(はなや かまちぐみ)

残しておきたい情報や、知っておきたい事

台打ち治具

2011-08-16 21:30:05 | 道具、砥ぎの話
台打ち角度治具づくりについて:8寸勾配用





鏡及び2枚仕込みの刃口角度=70度



押し切り機だと45度までしか切れないので90度-8寸勾配の角度で
定規を作成。(刃は寝かせずにテーブルを回して切る)



それを定規に8寸勾配カット(刃、テーブル共90度で切れる)



あるいは材料に直接墨付けをして、その墨を狙ってカット。



テーブルと同じ高さの馬を使い、先端が左側にずれない程度の
ストッパーがあれば、殆ど目見当でも安定して切れる。



この要領でカットして出来上がった角度定規(8寸勾配)
墨付け定規と必ず同じセッティングでカットすれば厳密に8寸勾配
になっていなくてよいと思う。



刃厚のテーパー分8寸勾配より寝た角度 



並べるとこのくらい違う



裏側に滑りとめのペーパーを貼る





8寸勾配1枚刃だとこれだけの角度定規使用



逆勾配(80度)の台直し鉋の場合




2011松本研修会 その2

2011-08-14 15:47:05 | 道具、砥ぎの話
渡辺氏製作の組子見本:見付は0.8ミリ。この薄さになると超仕上げもかからない、

全て手鉋仕上げ。卍型に折れ曲がった部分は、元々一本の組子を折れ曲がる部分で

皮一枚残して、切り込みを入れ折れ曲げて作成されている。



材種の違いによってはもちろん同じ樹種でも違う板からの物を混ぜると

皮一枚の残し具合が変わってしまい、バランスが崩れてうまく組めなくなるそうだ。



メチ払いの様子:何処からかけても横ずりになるので、斜めに少しずつかける感じ

鉋の下端は刃口部分だけ当たる仕込み。



小川三夫さんも遠方から見に来られていた。



一定の深さに切り込みができる定規付鋸:定規をはさんでいる旗金も作る職人が

いなくなり今後困るそうだ。



ダイアン建築さんが特大突きのみの研ぎ器を持って来られた。

基本的には武藤さんの考案された研ぎ治具を発展させたような形



同じくダイアンさんの鉋研ぎ器





つんぼの手斧:矢羽根模様が美しい。







水野さんのおためし用鉋



水品さん所有、梨屋台小鉋:欅のもろ板目。狂わないか聞いてみたら

やはりめちゃめちゃ狂うそうである。それにしてもきれいに仕込んである。












脇際取り鉋

2011-04-19 17:20:35 | 道具、砥ぎの話
脇際取り鉋あるいは二徳鉋と呼ばれる鉋を以前作ってもらった。

使い方とすれば、鴨居の溝が膨らんでいたり、一本引きの引き込み戸の

戸袋の入口が狭くて建具に干渉するなど、建具が削れない時に

必要となってくる。





滅多に使わなかったので、気付かなかったがこのままのサイズでは

刃を自分の方に向かせた時に頭が壁につかえて使えない事がわかった。

鉋を注文した時にも色々と説明をして既に一度頭を大分短く切り直して

もらっていたので、また改めて直してもらうのは気が引けたので、

自分で切ってみた。













作った鍛冶屋さんには申し訳ないが、道具として使えなければ

仕様が無いので、勘弁して欲しい。

頭が短くなった分台頭も薄くして何とか使いやすい状態にした。

まだまだ改良の余地は有りそうだ。




刃角直し続き

2011-04-03 15:04:09 | 道具、砥ぎの話
前回の続き

カツラも緩んでいたので叩き込み直した。

芽吹き時のこの季節、思ったより空気が乾燥している

このタイミングで玄翁の柄や鑿のカツラをしめなおしておくと

抜けにくい柄が出来上がる。

出すぎた木部はベニヤ等で治具を作り、丁度の長さに切り揃えてから

丸める。






















刃角直し

2011-04-03 14:44:05 | 道具、砥ぎの話




鑿の刃の角度が大分寝てきたので、直してみた。(30度へ)

途中裏も切れてしまったので、押しなおした様子を順を追って

見て欲しい。

荒研ぎ作業は全てアイウッドのダイヤモンド砥石300番

夕食後に毎晩2時間程テレビを見ながらこつこつ作業して

5~6日程の作業。
























角度決めのガイドに30度に切った木っ端を横に並べて刃裏の面と木っ端の面が

揃うように手首を固定して縦研ぎ。

研ぎ方が未熟な為、縦研ぎだとどうしても丸刃になるので、あらかた接地面が

出来てきたら、斜め研ぎして縦研ぎで丸まった刃を平らに修正して、再び縦研ぎ。

これをひたすら繰り返す。




工藤氏再び その2

2010-11-07 17:44:05 | 道具、砥ぎの話


鉋で仕上げるということは砥ぎだけではなく、削る材料、砥石、引き方等
様々な要素が満たされて初めて結果に結びつくという話。

ギャラリーに試し削りをさせている最中、一人一人に
「もう少し押さえ方を弱く」とか「もう少し早く引いてみて」等と
一寸したアドバイスをされていた。

工藤氏曰く、ゆっくり引くのはあまり良くなく、一定のスピードと上から押す力で
「ス~ッ」と引いたほうがきれいに仕上がるとの事。
確かに上手く引けると音も違ってくる

又、ある方が送り鉋をする際に、右端-左端-真ん中の順で引かれたのだが
すかさず工藤氏が「送り鉋はやっぱり端から順番に送らなあかんな」と
すぐさま実演された。



右端から始めて合計3回の削り。
最後の1回は3~5分の細い鉋屑を出されて、「最後に3分残ったら、きっちり
3分拾って削らなあかん。最後が巾狭で削りにくかったら、最初の1回目を
刃巾一杯の削りにせずにわざと狭い目にして最後の1回が安定した巾で削れる
ようにしてもええな」と言われていた。



けちりんは削った面にひけが出るので、取らないとの事。
刃口に対して真っ直ぐ刃が出ていれば、送り鉋をしても刃枕は出ない
ということで、実際目の前でやって見せてくれて削った材も触らせて
くれたが、確かにちゃんと仕上がっていた。

因みに最後の巾狭の削りは、刃の端で削っているのではなく、
真ん中で削られている事に注目して欲しい。
つまり、その巾分だけ高くなっていて、そこをきっちり狙って
削れているという事。




湿度計で会場の温度と湿度のチェックもされていた:午前中に比べ、
温度が5度程上がり逆に湿度は下がったとの事で
「削り材に影響が出るのですか?」との問いに
「ここにある材料はちゃんとしたやつやから、言うことを聞いてくれて大丈夫」
との返事



今回使用された鉋は、新潟の関川林吉(=先代 関の孫六)作と゛和゛銘の圭三郎鉋
(=佐藤金物仕様)いずれも白紙2号。本人曰く「昔で言う安物鉋です」



一月の初削りの際には、宮本さんの鉋を2枚程確認できた。

見ている時に、高田鑿の高田良作さんが隣に来て「これは青紙やな」と言われていたが
真意の程は不明。仮に青紙だとすると、節削りに備えて前回は青紙、
今回は杉の仕上げだったので、白紙を持って来られたのかもしれない。




講義が終了してから、お弟子さん達と講義の内容についての裏話的
なことを話されていた。
「最後に仕掛けがあって、杉が仕上がる刃にしたら、薄削りも出来る事を
言いたかったんや」
ふ~んそういう事だったのか!

最後に1000番からいきなり10000番に番手を飛ばす理由を尋ねてみた。
「刃をケイセイしてんねん」

「ケイセイ?」

「字に書いてみたらわかるな。形を整えるや!」

「???」

「まあとにかくやってみたら」

こんな感じに会話は終わってしまった。

受け取り側の感度をもっとレベルアップしないと折角の情報も
生かしきれないので、まだまだ精進しないとならないようだ。


砥石の日 工藤氏再び

2010-10-24 18:28:02 | 道具、砥ぎの話
先週の日曜日、里帰りも兼ねて京都へ砥石の日の見学に行って来た。




一月の町屋発ほんまもんの初削り会に続き今年の砥石の日は大阪の工藤氏を
講師に招き、「仕事の用途に合わせる砥石の選び方-天然砥石の力を見せる-」
と銘打った講習会が開かれた。

今回も前回同様研いで来た刃で削って見せるのではなく、その場で研いで
切れなくなれば又研ぐという進め方

使う砥石も前回同様、キングハイパー1000番、エビの10000番。
中砥の砥面直し用に金剛砥石仕上げ砥の砥面直し用にキング800番使用。

砥石の当て方ストローク回数も前回と同じでおさらいになるが、

1.まずハイパー1000番に軽く刃を当ててみて刃巾一杯に砥汁が出るように、
砥面の方を直す。(金剛砥石使用)

2.砥面が刃に合えば10~20往復うっすら刃返りが出ればOK

3.エビの10000番で刃の当たり具合チェックし、合っていなければ砥面修正
(キング800番使用)



4.砥面が刃に合えば、10~20往復。刃先裏に砥汁が上がってきたらOK

5.天然仕上げ砥でやはり刃の当たり具合チェックし、合っていなければ
砥面修正(キング800番使用)

6.修正の際に出た、中砥の砥汁をきれいに洗い落とし、天井名倉で砥汁を
たっぷり立てる。

7.刃先に力を入れて10往復程。刃先裏に砥汁が上がってくれば、ここで
初めて刃裏砥ぎ5往復程。






8.刃裏砥ぎで表に回した刃返りを利用して再び表砥ぎ10~20往復

9.最後に刃裏砥ぎ5往復程で砥ぎ上がり。




この後、仕上げの砥石を変える度に中砥から研ぎ直し工程を繰り返していた。
但し、砥面直しは最初に行った一回きり。

現状でどの程度仕上がるか杉の白太を削ってみて仕上がり具合を
チェックしてもらう為に削った材をギャラリーに回し見してもらう。

共栄砥石工業さん提供の特大砥石4丁ほどの内、まずはカラスで研いでみる。











その後試し削り。希望者にも順番で試し削りを体験させる。一人削り終わる度に
工藤氏が場均しを行う。




何人か削り終わった時点で、鉋くずが割れ始め刃が切れやんできたのだが、
ここでさすがの出来事が起こる。

次に工藤氏が全く調整し直す事無く一削りすると、再びきれいに
鉋くずが上がってきた。砥ぎも大事だが、引き方一つでも結果が違う事を
目の当たりにして、改めて腕の差が浮き彫りになる。






その後も砥石を変えては仕上がり具合を回し見してもらい、同じ刃で同じ
研ぎ方でも仕上がりが違う事をギャラリーに確認してもらう。




あまり仕上がりが思わしくない砥石で研いだ刃でわざと逆目を起こして
最後にとっておきの砥石で研ぎ上げる。




裏刃も先程より広めにつめて(0.5mm)より逆目が起こりやすい状況にしたのにも
かかわらず、見事に逆目も抑えて仕上て見せてくれた。



引き続き刃を引っ込めて、薄削りを披露してくれた。刃の出具合は殆ど確認
せずに台頭を玄翁で叩いただけで見事に薄い屑をひいて見せた。

つまり、真っ直ぐ刃が戻る完璧な仕込みの台という事なのだが、ああも
簡単にやってのけられると削ろう会で時間をかけてやっているのは
何なのかと思わされる。                    つづく









松本研修会 その2

2010-07-25 18:43:20 | 道具、砥ぎの話
鑿に関して:研修会当日は固くて外れない口金や桂のはずし方に始まり、
余談のように、鑿柄の木取りについての話が取り上げられたが
よく分からなかったので、後日改めて佐藤金物店へ伺って話を聞いてきた。


研修会当日持って来られた市弘鑿(角打ち):江戸鑿らしく細めの柄
スッキリした形



佐藤金物店仕様の追入れ10本組:市弘鑿と同様に鑿の基本ポイントが
守られている。見た目の大きな違いとしては刃の表側がすかれていない事




柄の木取り方向の違い:掘り鑿(一分~一寸)は放射状組織が柾目方向
さらい鑿(一寸二分~)は放射状組織が板目方向



図を見てもらえば分かる通り掘り鑿は木目の繊維に対して直角方向に
鑿を叩くので、打撃ポイントとして矢印方向が最もよく叩かれるので
その方向に一番固い木裏を持ってくるのが有効。

さらい鑿は木目の繊維方向と平行に叩かれるので打撃ポイントは矢印の方向
放射状組織は組織の向きに欠け易いので、打撃方向の向きに通っていると
鑿柄として機能しない最もダメな木取り。(斜めの木取りも同様に適さない)



その外、鑿の全長が追い入れで7寸5分~8寸。柄部分で4寸~4寸5分
刃が砥ぎ減って調子が変わってきたらその都度長い柄にすげかえて
全長の寸法をキープする。

刃丈が始めの寸法の3分の1の長さに短くなったら定規面が機能しないので
刃が切れたとしても使い終わりの時期。






松本研修会 その1

2010-07-19 17:32:48 | 道具、砥ぎの話
年に一度のお楽しみ会:地元長野松本で毎年恒例の研修会が行われた。
今年の講師は甲府の佐藤金物店主、佐藤和彦氏による「今更聞けない重箱の隅」





佐藤さんを御存知の方は承知していると思うが、なにせ几帳面こだわりの性格なので、
私のチンタラブログでは全部紹介するのに何年かかるかわからないような
内容の濃い講義であった。




とりあえず手始めに両口玄翁の九種の基本形プラス4種の叩き玄翁の紹介:
詳しくは下の資料の通り




佐藤さんお手製の資料。参加者には何故か甲丸ヤスリ1本のお土産が頂けた。
この他にも写真や土田刃物執筆のウォーニング、日本建築学院生の卒業論文
等々初めて見る貴重な資料が公開された。




一番上の一本が火造りっ放し、下の7本が基本形9種の内7種




それぞれの木口面






基本形残りの2種:八角と互平の八角(上からと木口から)






右側4本が叩き玄翁4種




写真中央下が叩き玄翁2種と柄入れした70~80匁




柄入れ:土田一郎氏 上の写真のグミ柄は佐藤氏の柄入れ 曲がり柄は別の方




毎年正月の初仕事として、基本形9種の体配造り込みの確認も兼ねて毎年
土田刃物さんが幸三郎氏に注文していたそうである。

この他にダルマ玄翁(原則木口は丸形)の説明や、叩き玄翁の寸法の違い
普通形が3寸8分丈、穴屋形が4寸3分丈の話等どれもこれも今迄聞いた
事の無い話ばかりで、佐藤さん及び、佐藤さんの師匠である、土田刃物さんの
膨大な知識に驚かされる。



台直し鉋の調整

2010-07-04 08:34:49 | 道具、砥ぎの話
台直し鉋の刃と押さえ溝の巾が合っておらず、
側面も曲がって彫られているので、少し彫りなおしてみた。







溝の側面、彫り上がった様子






刃と溝の様子




刃の位置に合わせて、下端の面を取る。このことによって
刃が何処を削っているか見当がつく。






下端面取り出来上がった様子




ついでなので、以前頂いた資料に基づいて屑抜けの良いように
屑たまり部を加工する








ボール盤で荒取り




鑿で仕上げる:底面は口包みをさらえる様な鑿が無いので、
このままになってしまった。いずれ仕上げる予定、
とりあえずこのまま使用