芭屋框組(はなや かまちぐみ)

残しておきたい情報や、知っておきたい事

鑿の柄 その2

2009-11-15 18:02:49 | 柄の話
鑿柄の仕込


1)口金と木部の境目を木槌で叩き、穂を抜く。この際、後で穂先を戻すときの向きがわかるように目印をつけておく。



このままだと口金が木部にめり込み、後々割れの原因になる



2)口金の導突きが木部にめり込まないよう、面を取る。



3)口金側もヤスリで面を取っておく。



面が取り終わった口金



木部、口金、面取り完了



口金内部がさびついていて、木部からはずれない場合はガスコンロ等で口金をあぶってやる。熱が完全にさめると金属が膨張して、簡単外れる。濡れた新聞やキッチンペーパー等でこがさないように、養生してもよい。さびはカッターナイフをスクレーパー代わりにして、取り除いておく。



4)穂先がないので、下の様な治具を使うと簡単にカツラがはずれる。



5)当木をして、カツラを下げてやる2~3mm木部がカツラより出れば、よいだろう。玄翁で、出た木部を丸めてやって完成。塗装がしてある場合カツラを仕込む前に、剥がしておく。




穂先がないので、刃をいためる心配が無くどんどん叩ける。刃のほうも柄が無いほうがずっと研ぎやすいので、別々に完成させて最後に合体させる。最初につけた目印の向きに穂をあらかた差し、柄の尻を叩いてやると、反作用できっちりささる。



鑿の柄 その1

2009-11-15 16:33:58 | 柄の話
鑿柄の口金部分の仕込みがどうなっていくか


通常の口金導突部分(木部に直接当たる形)


上の状態で使い続けるとこうなる



口金が木部に食い込んで割れた状態。※犬の糞ではない



別の鑿柄。上と同様に口金が木部にかなり食い込んだ跡



以前に口金部分の仕込み法を紹介した物を読んだ事があり、なんとなく気にはなっていたが、具体的にどんな事をするかが、あまり詳しく書かれていなかったので、自分流に木部に面を取るぐらいしかしてこなかった。

最近、鑿柄のはずし方を教わった際に資料を分けていただいたので、紹介したい十数年前の勉強会の資料らしいが、今迄知らなかった事が色々書かれている。手書きなのも今の時代かえって新鮮だ。


木の基本性質 つづき

2009-11-08 14:46:50 | 建具について
木の反りを正しい向きで使う実例


画面左側は戸の反りが壁と当たる向きで悪い例
画面右側は戸の反りが壁と反対側に逃げるので、戸がすらない





左の様な戸の向きになっている設計は以外と多い。メンテナンスで、

頻繁に呼ばれたり、戸を作り直した事もある。

簡単な理屈なので設計時に是非気をつけて欲しい。


又、別の事例として、無垢のテーブルの天板に汚れ止めの

ビニールシートがかけられたため、天板の裏側ばかり乾燥して、

板が反り上がっていたが、ビニールシートをやめ、通気性のある

テーブルクロスに交換してもらったら、反りが戻った。

この事例も木の基本性質にそった事をしなかったために起こった事。

皆さんも家の中をもう一度チェックしてみよう。



木の基本性質

2009-11-08 11:50:50 | 建具について
木の基本性質を簡単に言えば、乾燥すれば縮み、吸湿すれば膨らむ。
この2つを覚えておけば建具や家具が狂う原因や対処法に役立つ。

下の写真は、薪ストーブの前に段ボールを置き、ストーブの熱で乾燥
していくと、どのように段ボールが変形していくかを捉えた物。

ストーブ側に膨らんでいる。つまり反対面より水分が多い状態


数分後、ストーブ面にほぼ平行。(段ボールの表裏の水分量がほぼ同じ)


さらに数分後、ストーブの熱で乾燥して、縮んだ状態。

家の中でもこれと同じ原理が働くと木が極端に反る。

例えば、直射日光が当たる箇所やファンヒーター等の温風が
直接吹き付けられると、その面が乾燥して縮む。

逆に脱衣場や台所等の湿気の多く発生する場所は、
吸湿して膨らみ、乾燥した時と逆側に反る。

この理屈にのっとり、実際の設計現場での注意点を
見ていきたいと思う。            つづく






千賀氏の研ぎ

2009-11-03 17:09:26 | 道具、砥ぎの話
毎年7月に行われている、信州鉋楽会のミニ削ろう会に今年は名古屋の千賀さんに来てもらい、天然砥石の解説や研ぎの実演を見ることができた。
以下千賀さんが、使用して切れやんだ鉋刃を順を追って研ぎなおす工程

1.ダイヤ砥石6000♯で刃裏研ぎなおし(レジンボンドタイプ)

2.巣板での研ぎ(刃裏)

3.合わせ砥での研ぎ(刃裏)

4.表刃の研ぎ 1と同じ粒度のダイヤ砥石6000♯で中研ぎ(※1と同じ砥石をもう一つ別に用意してある)粒度は6000♯だが、千賀さんはあくまでも1000♯程度の中砥石と同等に扱われている。

5.刃返りが出たら、2で使った巣板で返りを取り、表刃を砥ぐ

6.3で使ったあわせ砥で、最終仕上げ(※5で終わってもよい)

各工程のストロークの回数は、2~30往復くらい。所要時間はせいぜい30秒~1分程(とにかく早い)

砥面の修正はアトマの800♯と言われていたが、中目の400♯だと思う。中砥までは平らに直し、仕上げ砥は少し真ん中が低い状態にし、耳が立たないようにするとのこと。
どの程度中低にするかの加減はアトマでこすり過ぎて平らにならない内にやめる。あくまでも手加減「使っていればわかる」らしい。

ダイヤ砥石の修正はグリーンカーボンで部分的にこすって直す。


実演をする千賀さん。たくさん砥石があるが、実際使うのは2丁と、ダイヤ砥石のみ



食入るように砥石のチェックをしている梨屋さん



来場者に試し研ぎをさせてくれた。一体何丁持ってきたのだろうか。どの砥石もきちんと手入れがなされている。
一番手前の厚い砥石が、「米山砥」砥石屋が売れ残りなので格安で譲ってくれた物らしいが、目もきれいで、中砥だが、十分仕上げで使える細かさがある。


好きな砥石の層は?の質問に「巣板かなー、昔は硬いのがいいと思ってカチカチのを集めていたが、今は少し柔らか目がいい。大工の場合は鑿をしょっ中砥ぐから早く研ぎあがらないと、いつまで研いでいるのかと笑われてまうわ」と、笑っていられたのが印象的だった。

後で試し研ぎをさせてもらったが、本人が言っているほど柔らかめの砥石は無く、どちらかというと、しまり気味の物が多かったように感じた。




三木への旅(その3)

2009-11-03 14:57:46 | 道具、砥ぎの話
三木山鉋塾、ミニ削ろう会のつづき

鉋削りの他に目立ての実演も行われた。講師の池田さんが考えられた、「池田目」
の説明や、実際の来場者の持ち込み鋸の目立て、試し切りがバナナの叩き売りのようにテンポ良く進められる。


さわやか鋸 池田さんの目立て風景


横挽き刃の中に1寸間隔くらいに一つ底さらい用の目立てを施してやると、刃が切り進んで行っても底がつかえずにさくさく切り進み、
さわやかな切れ味の鋸ということで、「さわやか鋸」と命名されたらしい。

目立て終わったさわやか鋸


上の写真では小さすぎて見づらいので、参考に木挽き用の窓枠鋸の刃先をアップした。刃の形状の違いや順番がよくわかると思う。
余談だか、この刃は本職の木挽きさんに目立てしてもらった物、底さらいに当たる刃は普通の目立て方向と逆からすりこむらしい。
「みんな間違っちゃって、逆からすっちゃうんだよねー」と話されていたのを思い出す。

刃先状態の参考として窓枠鋸の詳細 ※窓枠鋸もさわやか鋸も横挽き用



池田さん持込の鋸はさみ(貸し出し用)


三木山鉋塾ミニ削ろう会の様子は削ろう会会報50号でも取り上げられているので興味のある方は見直して欲しい。