内橋圭介氏の鉋の裏出し
ようやく本題の三木山鉋塾/ミニ削ろう会の会場に到着し、いろいろな実演を見ることとなる。余計な話は抜きにして、今回はその実演内容のポイントをお伝えしたい。
1)黒刃の鉋刃をとりあえず金盤に当ててみて裏の出具合をチェックする。
2)裏が出ていない部分に鉛筆で直接印を付けてそれをそのまま表側に墨をまわす
3)裏の出ていない範囲が5mm以上の広い範囲だと鋼と地金の境界線よりも頭側(奥側)を叩く。叩く強さは一般に言われている程度の力具合
裏の出ていない範囲が狭い場合は叩く位置を先ほどよりずっと刃先に近いほうにして力加減はかなり弱く
1)に戻り裏の出具合をチェックして均一に裏が出るまで繰り返す。
言い忘れていたが鉋刃はねじれがないことが条件。ねじれのチェックは平らが出ている物の上に鉋刃の裏側を置いてみてがたつきがなければOK。
(※実際に鉋台の押さえ溝に刺さる部分だけを置く。)
4)裏出しの注意点は叩き過ぎたり、間違った場所を叩いて裏を出しすぎないこと。出すぎた裏は元に戻らないらしい。
5)叩く時に下に敷く物は、あまり硬くない物、狙った箇所だけ裏を出したいので、狭い範囲だけ当たるようにすること。
内橋氏の場合は市販のレールを焼き戻しして硬度を下げてさらに狭い範囲で当たるように必要な部分は削り落としていた。
6)黒刃で購入しない限り、奥の方はあまり叩かないほうが良いと言われていた。
7)裏出し用の槌の先は尖らせないこと。エッジで叩くと一見効いているように思えるが実は最初の一、二発しか効かない。それ以上叩いても上の方の柔らかい土を耕しているようなもので、裏までは効いてこない。
8)槌を振り下ろすときは肘は脇や足など体の一部に付けて安定したフォームでふらつかないようにする。
以上なにげない様なことばかりだが、初めて聞く事も多く、大変勉強になった。
余談だが、鉋刃のひずみ直しのコツを聞こうと思い、ひずんだ刃を一つ持っていったが、話を聞いている内に、自分でへたにいじらない方がいいと思い、預けてきた。
叩く際に刃がついていると割れてしまうので、何ミリか刃先をつぶさないといけないとのことで、ついでに研ぎなおしもやってもらうこととなった。
一週間後に達筆な手紙と一緒に出来上がった刃が届いた。きちっと研ぎ上げられていて申し分ない状態。
この刃は実は全く違う鍛冶屋さんの作。普通ならば手間のわりには儲からない、嫌な仕事だが、短期間で、見事な出来栄えにしてしまう腕前や姿勢は人気が出て当然に思えた。 つづく