水品さん講義つづき 田中昭吾さんの鉋について;
とある大工さんに誘われて杉の柱を削った際、仕上げる事が出来なかったのがきっかけで、田中さんに相談し始めたそうである。
そうして出来たのが「韋駄天(=白紙ハイカーボン)」炭素量を焼き入れ可能な1・42%にギリギリ近づけた1・4%に。
さらに刃物に害を及ぼす、リンや硫黄を日立金属が白紙に定めている0・02%を大きく下回る0・008%へ。
研ぎやすさ、切れ味、仕上がりの木肌艶どれも申し分ない物だったそうである。
●その他スウエーデン アッサブ鋼の「梁山泊」
●青紙スーパーの「梅鶯(ばいおう)」これは硬くて研ぎにくいと返品が多かったそうだが、焼き戻しを工夫して研ぎ易くしたら、人気商品に生まれ変わったとの事だ。
●「穴明き鉋」仕事場へ行った際に見かけた物をイベントの展示品で出品した所、思いのほか評判になり定番商品へ。
田中さん自身について:昭和5年生まれで「昭吾」 父五郎次の後を継いで昭和35年より独立、金属顕微鏡を取り入れた熱心な研究姿勢と大工手間2~3人工の手頃な価格で良く切れると、亡くなった現在も根強いファンがいる事は周知の事実。
今回初めて聞いた事として、金属組織セメンタイトについて一般的には、より細かくそして真球状が良いとされているが、田中さんの場合セメンタイトを大きく(1個10μ)さらには形もジャガイモの如くごつごつさせていたと言う事。
水品さんいわく、刃先からは5μ飛び出ている状態で仕込み勾配でさらに小さくなっているのではないかと。
図に書いてみたが、理屈がよくわかりまへん!こんな時は昔テレビでやっていたアレ。「なる物は成る!」切れれば良いんです。
講義後、実際に田中さんの鉋を体験させて貰えるコーナーが設けられた。
削り易い木では、面白くないので杉の白太しかも板目材が用意され、何人かの方が実物を体験された。
残念ながら私は削る事ができなかったが、仕上がった材を目の当たりにした。その他10枚ほど色々な銘の鉋を手に取って見せて頂いて、作りの違いを比べたり貴重な経験をさせて貰う。
三ツ星千代鶴とその頭の仕上げ
玉菊
五郎次
別の五郎次
当たり前だが、仕上げ方が違っても同じ人が作っているので全体の厚みとか、テーパーの付き方どれも似ているのが印象的だった。
さて、午後からの削り会で改めて思ったのだが、私の様に残念な削りをされている人は誰も居らず、周りのレベルが上がっているのを思い知らされる。
上手い人程、自分のテーブルを離れずにひたすら削っている「攻め」の姿勢を崩されない。私自身最近なにかと「守り」の姿勢が多いので気を引き締めさせられる。
自戒の念をこめて、充分な時間があっても良い物が出来る訳では無い。面倒を避けていては、「攻め」の姿勢はとれない。