芭屋框組(はなや かまちぐみ)

残しておきたい情報や、知っておきたい事

工藤氏の砥ぎ

2010-01-24 17:13:26 | 道具、砥ぎの話
先週の日曜日京都で町屋発ほんまもん初削り会が行われた。
大阪の工藤さんが、現場での実践砥ぎを披露されたので、紹介したい。

1)先ず、作業場周辺の入念な掃除。削り材はもちろん、
作業台も濡れタオルできちんと拭きあげる。



手入れの行き届いた道具類。ホコリと人だかりができるのを嫌って材料共々
すぐに布でおおい隠される。

2)電気鉋を使っての下削り。刃はかなり薄くしか出ていない


3)台直し鉋の刃砥ぎ:キングハイパー♯1000に軽く刃を当ててみて、
砥石の当たり具合をチェックする。刃巾一杯に砥石が当たるように
砥面を修正。




中砥の修正:金剛砥石で全体的に平らに修正しているところ。


金剛砥石の先を使い、部分修正。この場合砥面の真ん中が高く、刃の両端が砥石に
当たっていなかったので、真ん中を低く修正している。


4)刃に砥面が合えば、10~20往復ほどで、刃返りがうっすらと出るので、
次ぎにエビの♯10000に当てる。♯1000の時と同様に、刃巾全体に砥石が当たるように
砥面を修正する。

5)刃と砥面が合えば、やはり同様に10往復程で砥ぎ終わらす。

他の工程でも言えることだが、必ず刃先に力を入れて研ぐことが
重要なポイントであることを、強調されていた。

どんな砥石でも力を抜いて研ぐことはしないそうだ。

6)天然仕上げ砥での砥ぎ:やはり砥面の修正から始める。砥面直しは
キングの♯800使用。

砥汁は一度水で洗い流し、天井名倉砥で面直しする。
刃の表側から研ぎ始める。20~30往復させて
次ぎにここで初めて刃裏の砥ぎ5~10往復程。

7)そうすると、刃の表側に刃返りが出る。刃表の砥ぎを
もう一度行うと、表側にある刃返りがいい感じに砥面を荒らしてくれて
最初に研いだ時の2,3倍の砥汁が出る。この砥汁を出す為に、
ここまで裏は一切触らない。

8)最後に裏を5.6回こすって研ぎあがり。



仕上げ砥で研ぎあがった直後の砥汁の様子。下半分を表砥ぎに使い、
上半分を裏砥ぎに使う。





9)下端の台直し:台直し鉋の片側の下端に5厘ほどのしゃくりが入れてあり、
刃がどの位置を削っているか見やすいようにしてある。

10)耳の調整:刃を出した時に押さえ溝部分に切刃が乗らない様、
印を付けて、耳をすりおろす。
ダイヤモンド砥石では上滑りして安定しないので、金剛砥石を使用。


11)耳部の面取り:耳をすりおろしただけでは、押さえ溝を削っていってしまうので
キングの♯800で裏側に軽く面を取ってやる。



12)台直しの刃砥ぎと同様に中砥から仕上げ砥まで砥石を当て、
最後はやはり裏で研ぎ終わり。



エビ♯10000での研ぎ終わり状態。


13)いよいよ材の削り。「この節だらけの5寸角が仕上げられてはじめて道具の
砥ぎ、調整が出来る。」と言われるだけあって、大工仕事の基本の全てが凝縮
されている。

電気鉋をかけてから数時間が経過していたので、節の部分が少し盛り上がって
いるので先ずその部分だけを重点的に下慣らしする。

次ぎに上のほうから様子を見ながら、2尺長ずつくらい送り鉋で下仕上げし、
その後、端から端まで通して削る送り鉋で出来上がり。



玄翁の柄入れ その2

2010-01-03 17:04:23 | 柄の話
大玄の柄は、普段もっと太く短くすげるが、土田さんが、実際にすげた柄を振らせてもらって、いい感じだったので、今回は穴屋大工が使っていたと言われる形に挑戦してみた。


普段は木取りから始めるが、道具屋の御主人が是非これを使って仕上げてみなさいということで、市販品の赤樫を使用した。

1)まず、全体の長さを1尺にカット。

2)ひつ穴部分の加工:上側の基準面を鉋で平らに削り、高さ方向を昇降盤で決定する。



3)穴に対してのきつさは、3分入る程度。巾方向も同じ、マッチ箱のように真四角に削る。



4)グリップエンドの寸法:教わったのは、高さ8分5厘×巾8分(内側の墨)。それではあまりにも華奢になりすぎる感じがしたので、9分5厘×9分にした。(外側の墨)木目の向きは本当は木表が下。今回は市販品の為、逆の木使いになっている。



5)ひつ穴側の寸法とグリップエンドの寸法が決定されているのでその2点をゆるやかなアールでつなげる。上端側は直線にする。上端にアールを付けたい場合は、ひつ穴に入る部分をくの字に下げる

※ひつ穴に入る部分は、あくまでも四角。実際挿さり終わった地点からグリップエンドをアールでつなげる。




6)柄を削りこむ前に下端のアールを仕上げてしまう。



7)上から見た形状:ひつ穴側から柄全体の半分の距離までは、穴の巾とほぼ平行。残りの半分の距離をグリップエンドにかけてラッパ型にアールをつける。このことによって、すっぽ抜けが防止できる。




8)あとはひたすら削り込み作業。ひつ穴部分は削りすぎると台無しなので最後の微調整は、カッターナイフをスクレーパー代わりに削り進む。

9)アール部分の削りは豆平鉋や南京鉋を駆使する。あまりつるつるに仕上げず、滑り止めに一分巾の削り跡が残る様に仕上げる。




10)削り作業終了後、いよいよ柄入れ。頭の向きは銘が切ってある方が柄側、握った時に下側になる方向が正式な向きだが、この点については、別に木殺し面が下側に来ても良いと思う。

11)柄の先端を軽く面取りした後、ひつ穴に挿し込み、グリップエンドを別の玄翁で叩いてやると、反作用で柄が入っていく。
途中止まってしまうようならば、スクレーパーで、厚い部分を慎重に削り、入れ進む。




12)驚異的な精度のひつ穴だったので、セオリー通りにやれば、一発できれいな柄すげができた。




13)グリップエンドの仕上げ:柄すげ後切り出しペーパー等を使い、グリップエンドを少し丸く仕上げてやる。

刃物だけでは仕上がりきらないので、♯120から始めて、最終的に♯800~♯1000のペーパーで磨いてやるとかなりきれいに仕上がる。




普段愛用している中玄とのグリップエンドの形状の比較。右端は、赤樫で胡桃油仕上げ。今回柄すげした物も胡桃油を塗ってやれば同様の仕上がりが予想される。



今迄使っていた、大玄との比較。左3つが180匁。一番右は120匁。



普段愛用の100匁中玄との比較。