芭屋框組(はなや かまちぐみ)

残しておきたい情報や、知っておきたい事

刃の裏出し

2013-01-01 20:20:55 | ねじれ直し
裏出しの前に、前回のひずみ直しの補足:

ひずみ少なく、刃の厚みかなり厚い刃だけ叩く前に御覧のように

コンロで数秒間温めてから叩き作業行われていた。



触った感じは、ちょっと熱い目の人肌くらいか。

温めた理由は、割れ止め。刃先を少ししか止めなかった事も理由のひとつ

こんな事はめったにやらないそうだ。基本的には刃先がしっかり止まっている状態で

作業した方が良いとの事。


さて、裏出しの話:

1)歪みが無い状態までもってきたら、初めて刃の角度をおおよその所まで成形する。



この時はグラインダーで成形。1往復半を1セットとして、2~3セットごとに

水を張った洗面器につけて冷却。その間にドレッサーでグラインダーの面直し

この一連の作業に全く無駄が無い。



2)刃先が、1ミリくらいだけ止まっているまでになったら、1度金盤に当ててみて

様子を確認する。



3)以前にも紹介した様に、叩く場所によって裏の出し方を使い分ける。







奥側(=あたま側)は広範囲で出したい時。主に黒刃で全く裏が出ていない時に

叩く。(使う槌:少し重め、先丸いめ、叩く力強め)



先側は、もっと狭い範囲で部分的に出したい時。普通に裏切れした時などは、殆ど

こちらで事足りるとの事。(使う槌:軽め、先細め、叩く力は上より弱め)



裏すきの深さでも叩く力変える。(深い程、強く叩く必要あり)

その他、既に裏が出ている箇所は触らない。

軽めに叩いた例1:

その裏:右側の白い部分はだれていて、当たっていない

例2:色んな槌跡が見てとれる

その裏


例3:裏すきが深い為、結構強く叩いた跡が見てとれる






この位大量に叩く場合、途中で鎬面を研ぎなおしてリセットしないと、狙った箇所が

叩けないし槌の効きも悪くなる。

4)裏が出おわったら、回転砥石(100番)で刃砥ぎ。その後普通の中砥ぎへ続く。



別の刃で刃を止めた様子:こうして見ると、2分程刃が短くなっているのが判る






やはりこういう工程は、もっと初期段階にやっておくべきに思われる。

黒刃で刃を仕込む人は、こういう事を気にされていたのかと改めて気付かされる。


刃の歪み直し

2013-01-01 14:42:53 | ねじれ直し
新年おめでとうございます。

自分が見聞きしてきた事を、メモがわりにまとめるつもりだったこのブログも

いつの間にか大勢の方が見て下さる様になり、声をかけて頂ける事もちょくちょく

ある様になって来ました。

文字入力も出来んおっさんが、嫁はんの機嫌の良い時にだけ入力してもらって

はじめて成立しているので、気長にお付き合い下さい。

さて今回は、積層台に入れるべく鉋身もこの際、きちんとしておきたくなり

裏出しも兼ねて相談しに鍛冶屋さんを訪ねて来た。

先ず各部の呼び方:今まで表と思っていたのが「甲(こう)」裏すきの上が表。




1)ねじれのチェック:平らな盤の上で、裏側を下にしてかたつかないか?



上盤に浅く掛けたり、深く掛けたりして全体的にかたつきが無いかチェックする。




2)裏側に定規を縦横にあてて、裏すきの深さやこごみ具合を細かくチェック







かたつきのある刃は、まず両脇の縦裏=はかま部分のこごみ具合が左右で違っていないか

こごみ過ぎていないか?







中古の刃で刃の横から叩いた所が、まくれ上がってそこが段差になっていないか?

等々、刃の現状把握とこれからどこを直して行くかの作戦をたてる。

3)ねじれが有る場合、ねじれ直す前に両脇の縦裏のこごみ方をまず揃える。

かつ、なるべく真っ直ぐになる様に直す。

4)刃が付いている状態で叩くと割ってしまう危険が非常に高いので、刃先を止める。

(=すり下ろす)


 

5)安全に叩く為には、画像のように刃の厚みの半分以上は止めておいた方が良いとの事

叩く量がわずかの場合も、1分位は刃先を止めていた。






刃先を止めるもう1つの意味合いとして、叩いた時に厚みの薄い方へより力が加わって

しまい、薄い部分がより多く曲がってしまう事を挙げられていた。

刃先を少ししか止めない場合は、先を台から外して尚且つ、思った所より頭側の

厚い箇所を叩くなど別の配慮が必要になって来る。

6)グラインダーで刃先を止めた後、ひずみ直し専用の台で刃を叩いて行く。



1番左がひずみ直し用槌 右の2本は裏出し用 頭の長さ3寸8分程で重さ不明、
おそらく200匁近辺



因みにこの直し台は、樫の丸太を地面に打ったコンクリートに羽子板ボルトで固定

されていた。



7)頭の下側にアルミの薄板を敷き、甲側は傷防止の為に銅の薄板

結構な力で(3寸釘打ち込む位)叩く。近くに小さな差し金があって、叩く度に

状態を確認する。縦裏をそろえるだけで、ねじれも直ってしまう場合も多いらしい。

8)上盤でのかたつき具合プラス定規でのチェックで、どこを叩くか見極める。





仮に1が浮いていると4の方も浮いているので、2-3の対角線を軸に1-4を

下に下げてやるイメージ。

見せてもらった時は、頭側の角の下にかいものをして、大体甲側から叩いて

たまに叩き過ぎたのか、裏側から叩かれていた。

目の前で何度も実演して頂いたのだが、早すぎて正直ついていけなかった。

これはもう自分で練習を積み重ねるしかない。

9)ひずみが直り、かたつかなくなって初めて刃角をグラインダーで成型していく。

この後裏出し作業につづく・・・