芭屋框組(はなや かまちぐみ)

残しておきたい情報や、知っておきたい事

2016松本研修会

2016-07-17 14:27:12 | 道具、砥ぎの話





今年も例年通り松本にて研修会が実施された、講師は愛媛の山本文義さんで「研ぎの話」

基本的な内容は以前紹介した事と同じだったが、一応おさらいしておくと・・

1)研太郎ダイヤ1000番で本刃、裏刃の裏研ぎ

2)エビ印ダイヤモンド角砥石6000番で本刃、裏刃の裏研ぎ

3)エビ印ダイヤモンド角砥石10000番の上に20000番の白パウダーで本刃、裏刃の裏研ぎ

4)京セラ特製セラミック砥石(番手不明)で同じく裏研ぎ ※やらなくてもよい

5)裏刃の刃先を本刃より0・2~0・8ミリ出した状態で専用クランプにセット。 この際のクランプの位置、締め方が重要なポイントで上手くセットしないと全てが台無しになってしまう。

先ず刃のカタつき無い様、裏刃の耳叩いたりヤスリで擦り下ろしたりする。自分で試された方の中には裏刃の両端にタップを切ってネジ式にしたと言う人もおられた。

さて、クランプの位置はなるべく刃先側。締め付け加減はずれないギリギリの強さ。(強すぎると刃が変形してダメ)クランプの板の厚みも人によって様々、山本さんは薄目でしならせたいそうである。薄いゴムを挟めば使い易くなるのではないかとの意見も有り、各自工夫のし所。



6)キングハイパー1000番 前後と中で2ミリの落差を付けた物で本刃縦研ぎ(出来れば押す方向のみ)

7)研太郎1000番で横研ぎして砥石当たっているかの確認。

8)エビ6000番に10000番の白パウダーで斜め研ぎ

9)エビ10000番に20000番の白パウダーで斜め研ぎ、横研ぎ

10)京セラでの研ぎ ※やらなくてもよい

11)天然砥に20000番白パウダーで横研ぎ (=人造砥でビンビンになり過ぎた刃先をにぶくする効果)





12)刃を上に向けて裏刃を下方向にそっとはずす。これも注意しないとせっかく研いだ刃先を痛めてしまう。

100倍のスコープで見てみると、通常どうしても残ってしまう刃先の白いチリチリがほぼ無い状態



ところで、今回陣取った位置悪く手元が殆ど見れなかった。動画撮影されていた方もおられたのでどこかでアップされる事期待したい。







今迄良いと思っていたけれど・・・

2016-07-10 14:16:54 | 道具、砥ぎの話




先日道具仕立ての名手Sさんが遊びに来られ、御持参の素晴らしい道具を前に色々教えて頂いた。

そんな中で今迄良いと思っていたのに「そうだったんだ~」の事を紹介したい。

その1 台直し:



今迄は刃がビレ無い様に刃=厚め、短い目 刃角40度~35度 台も厚め 仕込み勾配=逆勾配が良いと思ってたのに



それでは高い所を削って平らにならず、曲がったなりに滑らかに削っているだけになりがちだそうだ。刃も薄い目で刃角22~24度と鋭角の上硬めが良いとの事。刃の硬さは、硬い砥石に刃を立てて引いてみて、「キーッ」と高い音がする物との事。

はっきり言って真逆の発想です! 常識から言って硬い刃を鋭角の時点ですぐボロボロに刃こぼれする気がするが、阿保さんから直々に教わって実際使われているのだから、試して見る価値は充分あると思う。

その2 南京鉋

従来品:


きついアール削れるように下端をきつく丸めていた。このタイプ下端の接地面が小さく、ばたついて上手く削れない。



実際使いやすい物は、下端のアール緩い目。その代わりに刃厚薄く、丈も短い。要するに奥行きをなるべく狭くして、きついアールも安定して削れる。





その他こんな物も





普通に持って使うよりずっと使い易いそうだ。

それにしても、こんな基本的な事をまともに紹介しているのを見た事が無いとはどういうこと?とつくづく思う。


目次さん講習会2

2016-07-10 08:58:20 | 道具、砥ぎの話


研ぎ終わった刃をご覧の様なテスト用台(国本氏製作)にセットして試し削り。ここでも木槌の仕立てや鉋頭の形状の意味や使い方のコツが説明された。



台を叩く面は、平らでなく緩やかなカーブ=茶筒の蓋型



鉋頭の断面:刃の傾き直す際は、木槌がその目に引っ掛かる様にやすり目を刃と垂直方向にしてある。刃を出したい方へ払う様に叩く、側面を叩くと刃が変形して、仕込みに影響するのでダメ。



ここでようやく削り:6尺材を2回削って、一旦顕微鏡で刃先チェック。1ミクロン以下の欠けならばOK、それ以降は削っている木によって研磨されより安定して削れる刃先が形成される(=いわゆる「ミクロのあご」が作られる)





この辺の詳しい内容は、削ろう会々報77号に目次さんご本人が説明されているのでご覧頂きたい。私自身そのレベルに全く達していないので上手くお伝え出来ない。

後日お伝えする予定でいるが、砥石の3枚擦り合わせ一つ取っても中々思う様にならない。ましてや1ミクロン以下の欠けとか、まだまだ先の長い話である。

さておき肝心の目次さんの削りはと言うと、見事に杉の白太仕上げられていた。



余談として:









杉の木目は20ミクロン巾の中に繊維がうねりまくっている状態だそうで、ピンピンに尖った刃先だと力が一点に集中してしまい欠けやすい。上から見てトタン状というか山の稜線みたいな方が、色んな角度からパイプを切っている感じで良く切れるのではないかとの事。

砥石粒子の直径で言うと、柔らかい天然砥=8ミクロン、硬い天然砥=4ミクロン 人造8000番=1・84ミクロンと天然砥の何倍も細かい。しかしながら天然砥の粒子形状は、丸では無くポテトチップスの様なフレーク状な為、研ぎ傷の溝の形が人造と違う。





その他研ぎ筋が切り取り線になって刃が欠ける事。なので本当は表は縦研ぎが良いなど盛り沢山の内容であっという間に時間が過ぎる。

午後からは、ミニ削ろう会と参加者が持参した刃を電子顕微鏡で見てもらうコーナーが開かれた。

私もその場で杉の白太を削ってみて、自分なりに仕上がったと思った材と刃の両方を目次さんに見て頂いた。結果、研ぎ傷が深い事を先ず指摘され、顕微鏡の様子では10ミクロン程の欠けがあった。

欠けの深さの3倍が削る薄さの限界であると言われる通り、確かに30ミクロン位の厚みで削っていた。今まで勘でやっていた事が数値化され大変参考になった。