芭屋框組(はなや かまちぐみ)

残しておきたい情報や、知っておきたい事

丸太の製材

2011-02-13 14:55:56 | 基本用語、基礎知識



材木市で仕入れた桧の皮むきに行った際、製材に立ち会うことができた。

自分で仕入れた材の製材に立ち会うのは、ほぼ初めてで今回は丸太が13本

あったので製材オペレーターの方に色々相談しながら製材することが出来た。

土場にあるときは真っ直ぐに見えた丸太も台車の上に乗せると、結構湾曲

している。







ふくらんでいる方が「背」、へこんでいる方が「腹」斜面に生えている木を

想像してもらえればわかるが、背側が斜面の谷側(下側)に面しているので

そちら側に枝が多く生えている。即ち節が腹側より多く出る。




現在市場に出回っている桧材は太くても末口40cm程の細い木なので

板物をとる場合、ダラ挽きと言われる板目方向の製材しか出来ない。

今迄数多くの丸太を挽いてもらったが、厚みの指定と板目挽き柾目挽きの

指定ぐらいしかしたことがなく、丸太を目の前にしてどう向きに製材していくか

等はあまり考えたことが無かった。

こういう曲がった木の場合、図の上の様にスライスしていけば例え節が

出てきても使える部分が多く残る。




図の下の方向にスライスすると、木目自体も楕円形の妙な形になり

挽き始めから最後まで節が出っぱなしの板しか取れない。

実はオペレーターとの意志疎通がうまくいかず、始めの一本は

こういう挽き方になってしまった。

2本目からは上の図の様な挽き方で厚みだけを何種類か変えてもらって

何とか製材し終えられた。








皮むき作業もかあちゃんと二人で平行してやっていたが

かなりハイペースの重労働をしたので、次の日はさすがに

二人とも筋肉痛になった。


松本研修会 その3

2010-08-01 20:54:39 | 基本用語、基礎知識
研修会報告続き:佐藤さんの講義で初耳の話を2つ3つ

1)刃物に磁石を付けると、たった一回付けただけで刃が磁石化してしまい
刃先に鉄粉と埃がつくようになる。

埃の中の大部分の成分SiO2が硬度6~7と鋼よりも固い粒子なので
刃先に常時研磨剤が付いている状態になる。

電着式のダイヤモンド砥石で刃表を荒砥ぎしても磁石化するので
これからは気を付けたい。

鑿刺しに落下防止の為、磁石が仕込まれた物も要注意
又、刃先の砥ぎ確認にマグネットシートに置いて、拡大鏡を使用するのも同様

2)砥ぎ水に浄水器に通した水を使うと効果絶大だそうだ。(塩素、ゴミ除去)

3)玄翁の柄がゆるんできたら、無理に叩き込まず抜けるまで使用し、
シリコン系の接着剤(コニシのスーパーX等)を少量塗り、仕込み直すと効果絶大。

その外色々知らない情報があったが、又日を改めて徐々に紹介していきたい。



上條氏持参の五厘鑿:治具無しで研がれたのですか?の質問に
「まさか」と笑っておられたので、少し安心した。





武藤さんの変わり鉋





上條氏持参 萬寿翁

同上刃口




上條氏持参 華甲鉋


同上刃口


午後からはミニ削ろう会が催された。ミニといっても全国大会でお馴染みの
豪華メンバーである。


武藤氏の五寸鑿鉋


大御所3人


そのどさくさに紛れて久々に上條氏の鉋を引かせて頂いた。(削っている材は「鉋大全」に載っている、木曽檜)
緊張していたので気付かなかったが、はな取りをやっているのは小吉屋さんじゃありませんか!その隣には梨屋さんの姿も


誰が引いても薄く削れる状態とはいえ、引き方が未熟なのでなかなか均一に屑が上がってこない



自分の鉋での前日の試し削りではこれくらいの屑が出ていたが、
当日はやはりここまでは出なかった。

その外珍しく佐藤さんが鉋を引いている姿を初めて目にすることが出来た
本人は謙遜されていたが、普通に上手に引かれていた。

木と対話する その2

2010-05-16 09:10:33 | 基本用語、基礎知識
皮から虫が入らないように市で仕入れた丸太の皮をむく。



末口径が40cm代の小中径木だと一番外側の目のつんだ所しか
建具には使えない。そこに虫穴があいていると一番よい部分が
台無しになるのでこうした手間をかける。

製材した後でむいた事もあったが、一旦桟積みした山を何度も
積み返すことになり、大変な労力となる。

そこで製材所さんの御好意で土場の一角を借りて、丸太の状態で
皮むきをさせてもらっている。

何日かぶりに落札した材を改めてまじまじと見ると、思っていたより
良い木だったり、その逆だったり。


裏返すと節がびっしり残念ながら2番玉だった。



まず見えている面の皮をむく。むき終わると、木まわしを使い、丸太を
裏返して見ると入札時には気付かなかった節や傷が出てきてがっかり
する事もしばしば。




今更どうする事も出来ず、作業を進める。

2人がかりで、1本むくのに大体4、50分。この時は7本の丸太
だったので時間にして5時間程。結構な重労働である。

畑の真ん中、青空の下で黙々と仕事をしていると無駄な情報が入ってこない分、
目の前の事に集中できる。

傷や節を包んでしまう自然の力、皮の付き方、固さ、匂い、重さ。
その木が育ってきた歴史等々を感じとる。



こうした一見大した価値の無い作業、面倒な事をすることによって、
多くの物が得られ、木への理解が深まる。



また、ここの製材所の息子さんが「木」大好き人間で、お茶の時間や一寸した
会話の端々に丸太の見方を教えてくれる事も大きな財産となる。


木と対話する その1

2010-04-25 15:50:49 | 基本用語、基礎知識
ご存知のように、切った木が素材として使用できるようになるには、
21世紀のこの世の中でも、最低でも数ヶ月かかる。
なので、仕事の依頼をうけてから、材料を用意したのでは、
間に合わない。

木取り材というものも、確かに流通しているが、2つの理由から
よほどでないと使わないようにしている。

1つは、価格が高い事。もう1つは確かに木取りをしなくてよいので、
大幅に手間が省けるが、その反面、材料がどんな木だったのか、
乾燥具合は?などの管理や責任が薄くなり、結果的に仕事をこなしている感が強くなる。
使わない筋力が衰えるように、感覚が鈍ってしまう気がしてならない。

使用法の選択肢が狭い製品材に対し、耳つき材では、己の判断で木取りの可能性
がずっと広がるので、色々と思い悩む時間も増える。

この様にして、製品材の倍以上の時間をかけて木取りをした材料を加工して製品に
完成させていくので、見た目はもちろん、硬さや匂い、重さ、狂い方など五感を
通して様々なメッセージが身体に記憶させられる。

「感覚は何度も繰り返し感じる事で鋭敏になる」と、よい文章の書き方として
谷崎潤一郎が言っていたそうだが、刃物砥ぎを含め、自分のやってきた事がまさに
こういう事だったのかと思い日々の生活の励みにする。

木曽檜と、きそひのき

2010-03-28 14:32:11 | 基本用語、基礎知識
少し時間ができたので見学の為、木曽の官材市売(=原木の競市)に出かける。



同じ長野県下に、大きく分けて3つの組合がある。その中で支部が2~3つあり
各支部が、年間20回程の競市を行う。

木曽の市に来たのは、この日が初めてで、言わずと知れた木曽檜が一体どんな物で
また、どういった値段で取引されているのか興味深々であった。

まず土場の雰囲気は心なしか整然としており、山ごとの本数も少なめで、きれいに
丁寧に置かれているという、印象をもった。

手前の方から見ていくと、いきなり天然林の木曽檜が登場する。
目のつまり具合が、緻密で普段見ている檜とは全く別物である。




節だらけの丸太の節の切り口ですら、非常に年輪が細かく、赤身がきれいで、
模様としても成立している。

関心しながら足を進めると、ひらがなで「きそひのき」の表示があった。
檜は檜だが、先ほどの天然木曽檜とは明らかに年輪の詰み具合が違う。



後で分かったことだが、同じ径で天然木曽檜が200~250年生
きそひのきが約80年生、おおよそ3倍の年輪の差がある。
天然林と人工林との差だそうだ。値段も1桁違う。

同じ産地でもこの様な差が生まれる。もっと言えば同じ県内でも北信と南信では
それぞれに違いがある。杉に関しては北の方が良いという訳ではなく、
南信の飯田の方が良質のものが多い。
因みに地元の伊那で建具材で使える杉は中々出てこない。




ところで、これだけ地元で原木が流通していても、地元の職人は殆どこの様な所に
足を運ばない。生産性を考えればロスが多く当然の事かもしれないが、残念に思う。

かく言う私も原木から仕入れたのはここ数年の話。中には使えない物を仕入れた事も
あるが、そうやって授業料を払って得た経験は大きな財産となっている(と、思いたい)。




耳(=辺材)を落とされた、四角い製品材や木取り材ばかりを扱っていると、仕事は楽かも
しれないが、得る物が少なく、進歩が無かった様に思う。

さて話は戻るが、「木曽檜」と「きそひのき」おそらく木曽というブランドがついていた
方が、通りが良く売りやすい理由からだろうが、そんな物に惑わされず、物を見究める
目を養っていきたい。