芭屋框組(はなや かまちぐみ)

残しておきたい情報や、知っておきたい事

刃角の直し

2010-05-30 16:15:04 | 道具、砥ぎの話
刃角が鈍角だと刃は切れていても、叩いたときに材料がつぶれてしまう感じがして
刃の角度を研ぎ直してみた。



グラインダーや回転砥石で治具を使った砥ぎ方もあるが、その為だけに道具を揃える
のも面倒なので、30度に切った木端を用意し、横に並べて角度が揃うように
研ぎ直していく。




始めは横砥ぎで、おおよそ角度が決まってきたら、斜め砥ぎ(※横砥ぎで真っ直ぐ研げる
人はそのまま横砥ぎでも良い)

荒砥で刃返りを出すと、刃返りを取ったときに刃先がボロボロになる。
角度直し始めの初期段階ではあまり気にしなくてよいが、中砥に移る直前の
最終段階では、刃返りを出さないように頻繁に裏砥ぎが必要。



アイウッドの♯300で砥ぎ終わったら、シャプトン鎌砥石♯1000(刃の黒幕と同質)
で左右均等にうっすら刃返りが出るまで砥ぎ、次ぎに刃の黒幕の♯2000で10往復程。

片刃砥ぎ等で左右均等に刃返りが出ない場合は、裏砥ぎを何度もして、
片方にばかり大きな刃返りが出ない様にする。



奥殿の巣板で仕上砥ぎ:工藤式に習い、表を当ててから裏を当て、刃返りを表側
にまわして、再び表砥ぎ、研ぎ終わったら更にもう一度裏砥ぎ。
工藤式ではここで終わるが、どうも切れる刃がつかないので、もう一度表砥ぎで
研ぎ終わり。







上條氏の教え

2010-05-23 08:47:34 | 心に残った話、出来事
先日、上條氏に師事された御夫婦が、仕事場に見学に来られた。
別の用事で来られたのだが、折角なので技専校ではどんなことを
教わるのかを聞いてみる事にした。

・鵤工舎に負けない様な職人を育てたいので、質問しても答えないのが
 俺の考え方だ

・鉋の仕込みや砥ぎについては「鉋大全」に書いてある事が基本で
 それ以上の事をやってみたい者は自分で研究する事

・削ろう会には、生徒の分際では参加するな等々

その他、砥面の直し方については、キングの♯1000を3丁使い、
6面それぞれを摺り合わせて平面を保つ事、金盤の平面も
キングの摺り合わせで行う。

平面の確認には定規を使ったりするのかの質問には、
定規を使わないと分からない人は、そのレベルの返答をする。

とにかくその人のレベルに応じて、見えていない人、感じられていない人には
能力以上の事は言ってもらえないらしい。

当たり前と言ったら、当たり前だが、言われる方とすれば戸惑ってしまう。
確かに「鉋大全」に書いてある事は、普段上條氏がやられている
方法や道具を紹介していない事に少し疑問を抱いていた。

その代わり各々が努力訓練をして、実力が付いてきたら、
「お前大分出来てきたな、もう少しこうすればよくなるぞ」
等の声を掛けてくれ、自分が気付いてきた事を気付いてもらえて
うれしいと言われていた。

ここしばらく毎年地元長野で研修会があり、私自身上條氏に何度か
質問をした事があったが、その度につれない返答しかなく、
不満を感じていた。つまりは私自身のレベルが低く、
それなりに応対されていたという事。




「何くそ!」と思い、以前より遥かに道具を触るようになったのだが
この事は、上條氏から直接的な事は教わらないが、知らず知らずの内に
思惑にはまっているように最近感じる。


木と対話する その2

2010-05-16 09:10:33 | 基本用語、基礎知識
皮から虫が入らないように市で仕入れた丸太の皮をむく。



末口径が40cm代の小中径木だと一番外側の目のつんだ所しか
建具には使えない。そこに虫穴があいていると一番よい部分が
台無しになるのでこうした手間をかける。

製材した後でむいた事もあったが、一旦桟積みした山を何度も
積み返すことになり、大変な労力となる。

そこで製材所さんの御好意で土場の一角を借りて、丸太の状態で
皮むきをさせてもらっている。

何日かぶりに落札した材を改めてまじまじと見ると、思っていたより
良い木だったり、その逆だったり。


裏返すと節がびっしり残念ながら2番玉だった。



まず見えている面の皮をむく。むき終わると、木まわしを使い、丸太を
裏返して見ると入札時には気付かなかった節や傷が出てきてがっかり
する事もしばしば。




今更どうする事も出来ず、作業を進める。

2人がかりで、1本むくのに大体4、50分。この時は7本の丸太
だったので時間にして5時間程。結構な重労働である。

畑の真ん中、青空の下で黙々と仕事をしていると無駄な情報が入ってこない分、
目の前の事に集中できる。

傷や節を包んでしまう自然の力、皮の付き方、固さ、匂い、重さ。
その木が育ってきた歴史等々を感じとる。



こうした一見大した価値の無い作業、面倒な事をすることによって、
多くの物が得られ、木への理解が深まる。



また、ここの製材所の息子さんが「木」大好き人間で、お茶の時間や一寸した
会話の端々に丸太の見方を教えてくれる事も大きな財産となる。


再現、坂本龍馬暗殺シーンを見て

2010-05-09 16:58:27 | 心に残った話、出来事
昨夜放送の土曜プレミアム 「知られざる 龍馬伝」で近江屋での
龍馬暗殺シーンを徹底検証していた。

掛軸に飛んだ血しぶきの付き方から、刃道や龍馬の刀の鞘に残った
刃のえぐれなどから実際の殺陣を使い、リアルに暗殺シーンを再現していた。

時間にして4秒程、刺客が繰り出した手数はわずか
3太刀、まさに「1.2.3」のリズムで鈍い音が響く

散々もったいぶった前フリに対し、このショッキングなシーンは、
あっという間に終わってしまった。

興奮さめやらぬ内につい自分でもその太刀筋を再現してみた。
そこで奇妙なことに気付く。
一刀目で左から右に水平に額を切り、2刀目で斜めに背中
(これは右上がり下がりどちらか忘れた)そして3刀目右上
から左下に斜めに額を切る(これがおそらく一番致命傷)

実際やってもらうとわかるが、3刀目以外手首のフォームが
不自然でとてもやりずらい。特に2刀目を左上から右下へ
ぬかないとうまくつながらない。

又、1刀目は丁度バットの左打ちのフォームになるので
普通の剣道の持ち方(左手が下、右手が上)だとだめで、
右手一本で居合い抜きのフォームでないとうまく振りぬけない

刺客は一階ですでに抜刀していて、家人を斬っているとの事
だったのに、また刀を鞘に収めて改めて居合い斬りをしたのか?
どうして的の小さい額を2度も狙ったのか?

暗殺の成功性を高めるならば、的の大きい胴体を狙ったり、
別の箇所を傷つけ反撃力を弱めてからとどめを刺した方が
よいのではないか等々。

とにかく刺客が流れるようなリズムで振りにくい3太刀を
放ったことは事実であるようだ。
チャンバラとは違う、本物の空気に圧倒され、色々と思いを
巡らせる。

映像、画像がないのでイメージかつきにくいかもしれないが
ユーチューブで甲野善紀氏の映像がいくつかあるので
体捌きや刀の抜き方を見ていただくとかなり近い世界を
感じる事が出来る。