角岸's blog (Kadogishi s' blog)

酒、酒&映画・・時事問題?

映画館で久々の涙、「黄金のアデーレ 名画の帰還」 圧巻のヘレン・ミレンの演技!!

2015-11-30 15:00:17 | 映画

 11月26日(土)、高校生の息子を半日の土曜講習のため尻内へ送り、午前中どうしようかなぁ・・・と思ってネットで調べたら、ちょうどいい映画があるじゃありませんか。

TOHOおいらせ
「黄金のアデーレ 名画の帰還」 朝、9時10分から。

ぶっちゃけ小生どうしても、映画はフォーラム八戸で見る機会が多く、なかなかここに行かないのにはわけがあります。なぜか!!

一言で言えば、映画の質。

 フォーラムは独立配給のヨーロッパ系を中心とした、渋いラインナップなのに対して、TOHOはどうしても全国ロードショー系の大作&SFXヒット作中心主義。

 小生とてできれば、どでかいスクリーン&迫力音響で鑑賞したいわけ。しかし、しかし肝心の映画が「プリ〇ュア」とか「アベ〇ジャーズ」みたいなのばっかだと、観るの少なくなるでしょ。

 しかし、しかし今回はTOHOおいらせさんいい仕事しました。この映画館でGAGA配給の映画を観られるなんて、なんて幸せ。特に前回の映画が映画だっただけに・・・

 さて、前置き長くなりましたが、本作はこの冬最も見逃してはいけない一本といえる、かなり完成度の高い作品です。また、ハンカチもっていかないと小生みたいにだらしなく手で涙をふくみっともないことになると、ご忠告します。

「黄金のアデーレ 名画の帰還」
公式HP↓↓↓
http://golden.gaga.ne.jp/


ストーリー
 アメリカ在住の82歳のマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)は、グスタフ・クリムトが描いた伯母の肖像画で第2次世界大戦中ナチスに奪われた名画が、オーストリアにあることを知る。彼女は新米弁護士ランディ(ライアン・レイノルズ)の助けを借り、オーストリア政府に絵画の返還を求めて訴訟を起こす。法廷闘争の一方、マリアは自身の半生を振り返り……。
(シネマトゥデイより)

--------------------------------------------------------------------

 小生特に強調したいのは、ヘレン・ミレンの圧巻の演技力とその魅力でしょう。
劇中、ひよっこ弁護士演ずるライアン・レイノルズが、あまり気乗りしなかったこのクリムトの名画の返還について、なぜ引き受けるのかヘレン・ミレンに問われて、

「I like you , I thnk......」

と、答えるシーンがあります。そうなんす。若い彼をして「好き」と言わしめる御年70才のヘレン・ミレンの魅力といったら爆弾級です。
 「お前はおばはん趣味だろう」との疑いをかけられるかもしれませんが、いやその女性としてというよりは、ナチスの迫害を逃れ異国でユーモアを忘れずたくましく生きる一人の人間を圧巻の演技力と存在感で魅力的に演じ、恐らく鑑賞した人すべてのお客さんが、彼女に魅せられることでしょう。驚くべき説得力です。



 さて、物語はこのユダヤのおばはんとひよっこ弁護士の凸凹コンビがダメ元でオーストリアに乗り込み、名画奪還を試みるも見事に失敗。その後、法廷闘争へと発展していくのですが、その間70年前のオーストリアがヒトラーにより併合され、ユダヤ人たちの暗黒時代の様子がドラマに挟まれ(彼女の回想の形で)、スリリングに展開していきます。

 さて、最初のオーストリア訪問失敗の帰国前、二人はウィーンのホロコースト記念館を見学します。

マリア「もうそろそ、帰りのフライトの時間よ」
ランディ「その前に、トイレによらせてください」

 若いランディは、一人でトイレの個室に入り、声を出さないように号泣します。

 そう実は彼も、ウィーンにルーツを持つ、オーストリア系ユダヤ人なんですねぇ。
 ここで、彼のアイデンティティーが目覚め、以後カリフォルニアで気ままに暮らしていた若者を変貌させます。

 最初は、この名画の金銭的な価値を知り、莫大な成功報酬などのよこしまな野心を持っていたこの若い弁護士は、ナチスドイツにより歪められた同胞たるユダヤ人の歴史の是正を求め、まさに「正義」のために戦うことを決意します。

 この物語は、二人のサスペンスフルな「法廷劇」でありマリアの目を通した切ない「歴史物語」であり、若者のたくましい「成長劇」でもあるわけです。実話を映画化したとは言え、実に巧みな脚本で、その緻密な構成には舌を巻きます。



 また、からりとしたカリフォルニアとしっとりとしたウィーンの対比など、息をのむ映像美で、サイモン・カーティス監督の演出もきわだっっています。特にナチスドイツの恐怖が忍び寄る大戦前夜のウィーンのセピア調がかった映像は素晴らしく、当時の裕福なユダヤ人世界の暮らしぶりなど、家具・美術品に至るまで一分の隙もありません。

 特に絵画好きなファンの皆さんは、この映画の題名になっている名画の制作の過程まで描かれていて狂喜するに違いありません(グスタフ・クリムトが金箔はるシーンとかね)。しかし、このアデーレのそっくりさん、どこから見つけてきたのかビックリっすね。



 ただ、小生としては今回の映画の題名は原題の「WOMAN IN GOLD」のままのほうが良かったと思うんですよねぇ。だって「黄金の女性」はもちろんアデーレのことなんだけど、ヘレン・ミレン演ずるマリアのことでもあるんですから。ましてやネタバレそのもの「名画の帰還」なんて副題はもっと余計だと思うんですがねGAGAさん。

 とにもかくにも、久々に良いもの見せていただきました。小生の後ろに座っていた、中年のご婦人方も「久しぶりにいい映画見たわねぇ」と言い合っていましたし、隣の老紳士もひそかに涙を拭いていました。

 TOHOおいらせさんにおかれましては、特殊撮影大作映画やアニメ大作もいいですが、たまには、いや頻繁にこういう、重厚な人間ドラマ映画を上映していただきたいものです。「ギャラクシー街道」なんて未だ上映してるんですから、少しくらい割り込ますことって可能でしょ。

-------------------------------------------------------------------------------------------
 ちなみのちなみにYahoo映画のみんなのレビューでは、本作は5点満点中4.2点とかなりの高評価。一方の下ネタ映画「ギャラクシー街道」は1.8点。「史上最低の邦画」とか「ギャラクシー街道被害者の会」が結成されたとかの噂もありますが、小生は最低度はなお「デビルマン」のほうが上回っていると思います。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿