角岸's blog (Kadogishi s' blog)

酒、酒&映画・・時事問題?

泣ける男たちの物語 「鷲は舞い降りた 完全版」

2011-10-22 09:00:00 | 自分的名著
今日は洋物。作者はイギリス人作家、ジャック・ヒギンズ(この人別名、いっぱいあります)。

ジャンル別にいってこの小説はミステリーではなく「冒険小説」というジャンルに入るでしょう。もっと厳密に言えば「イギリス冒険小説」というヤツです。



20年位前ですが、今でもこの小説を初めて読んだときの興奮を憶えています。

第2時大戦末期ののドイツ。ドイツ降下猟兵(空挺部隊ですな)がムッソリーニをイタリアから奪還する史実をもとに、クルト・シュタイナー中佐率いるプロフェッショナルドイツ兵部隊が英首相チャーチル誘拐を試みるという荒唐無稽な冒険小説なんですが・・・。

もう導入部から巧みです。あたかも、作者の取材のドキュメントの如く物語は始まり、そして、これまで、英米小説ではただただ、無能でやられ役一方の脇役にすぎなかったナチスドイツ兵を主役に充て、礼儀を重んじ命を捨てて任務を遂行する(まるで日本のサムライ)、ストイックな悲劇の男たちに涙する物語です。
ドイツの猛烈なロンドン爆撃を経験した、イギリス人のJ・ヒギンズが旧敵国のドイツ人を主役(しかも、完璧なヒロイスティックに描かれる)にして、見事な人間賛歌のドラマを構築するのですが、よく考えればこれはスゴイことです。

なぜなら、我々日本人は同じ敗戦国のドイツ人が主役だからといって、特に違和感はありませんが、敵国である英米においてこの小説が大ヒットを記録したということは、つまりはこういうことです。

「米国人作家が日本の帝国軍人とその部隊の活躍(例えばルーズベルト誘拐)を小説で描いて、アメリカで、大ロングセラー!」
こんなこと考えられますか!

現に、最近公開公開されたアメリカ映画「シャンハイ」では、いまだに我がご先祖たる旧帝国軍人はもう、全く持って見事な悪役ぶりです。時代考証がめちゃくちゃななフィクションなので目くじら立てることも無いのですが、明らかに事実とは異なる日本軍の野蛮な描かれかたは、ちょっと目に余るものがありますし、手放しで米国人と中国人が善人に描かれていたのには、むしろ失笑してしまったほどです。彼らの間抜けぶりとは対象的に悪役をやった渡辺謙のラストあたりのリアルな演技が際立ち、返って、米中の主役より栄えて見えてのは私だけでしょうか。

もともと、J・ヒギンズの小説には大英帝国の敵たるIRAが主役になっているのも、多数あります。「鷲は~」の名わき役、リーアム・デブリンもIRAで、後のヒギンズ小説にたびたび登場します。

そのほか、ヒギンズのドイツものは、SS少将ワルター・シュレンベルがやたらカッコイイ「ウィンザー公強奪」、また、ドイツ海軍軍人Uボート艦長を主役とした海洋小説の金字塔「脱出航路」。これは、小生、「鷲は~」にも匹敵する傑作だと思います。



まぁ、イギリスにはドイツ兵がカッコエエ小説まだまだありますからね。
例えば、ボブ・ラングレーの「北壁の死闘」
これはまた最高ですね。

そうそう、「鷲は舞い降りた」の続編「鷲は飛び立った」もあります。


ま、これは前作が見事だっただけに、評価の分かれるところです。
自分としては、J・ヒギンズの数々の小説で活躍する主役級の登場人物が、オールスター出演で、割と好きですね。
続けて読めばまた格別です。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿