小生くらいの年代以降の人なら、タミヤ模型の「タイガー戦車」を作った人はかなり多いのではないでしょうか?
特に、ロシア戦車の影響を受けていない4号戦車の流れをくむ、あの「ティーガー1型」などは、洗練されていながら無骨なドイツの古武士を思わせ、小生も下手くそながら楽しく作った思い出があります。
それがコレ。 当時は上手く出来たと思ったけど、今見ると下手くそだなぁ。
たしか某プラモデル雑誌の編集長は息子に「虎一」と命名したと言うほどの思い入れよう。けど、ミリタリーファンならこの気持解るんですなぁ。
さて、戦車での戦闘映画は数多あれど、この「ティーガー1型」がまともに出てきた映画って無いんですよね。あのリアルな戦闘描写で称賛を集めた「プライベート・ライアン('98)」ですら、「ティーガー1型」登場場面でははっきりニセモノと解っちゃうちゃっちい作り。当時「スピルバーグをしてこの程度か」とファンをがっかりさせたんですね。
さて、前置きがかなり長くなっちゃったんですが、この本物の・・・本物の「ティーガー1型」がホントに自走して登場するのが本映画「フューリー」。もう薄靄の中からの登場画面では、小生神々しい神か何かを観る思いでしたよ。
断っておきますが、この映画本物の「ティーガー」は登場しますが、それ自体主役と言うわけではありません。むしろ主人公たちを苦しめる敵役で登場するワケ(当たり前か)。
公式HP↓↓↓
http://fury-movie.jp/
【ストーリー】
1945年4月、第二次世界大戦下。ナチス占領下のドイツに侵攻を進める連合軍の中にウォーダディー(ブラッド・ピット)と呼ばれる米兵がいた。長年の戦場での経験を持ち、戦車部隊のリーダー格存在である彼は、自身が“フューリー”と名付けたシャーマンM4中戦車に3人の兵士と共に乗っていた。ある日、ウォーダディーの部隊に新兵のノーマン(ローガン・ラーマン)が副操縦手として配属される。だが彼はこれまで戦場を経験したことがなく、銃を撃つこともできない兵士であった。繰り返される戦闘の中、想像をはるかに超えた戦場の凄惨な現実を目の当たりにするノーマン。5人の兵士たちがぶつかりあいながらも絆を深めていく中、ドイツ軍の攻撃を受け、他部隊はほぼ全滅となる。なんとかウォーダディーの部隊は生き残るが、300人ものドイツ軍部隊が彼らを包囲していた。そんな状況下、ウォーダディーは無謀にも“フューリー”で敵を迎え撃つというミッションを下す……。
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さて、ストーリー自体はなんの変哲の無い、「少年が真の兵士へ成長していく」という、ありふれたお話し。
「フューリー」と名付けられたM4シャーマン戦車を住処にし、ブラピ(兄というか親父のよう)率いる5人の戦車乗り達の戦いが、この新米青年の目を通して描かれていくわけですなぁ。
従って、この映画にかぎり脚本がとびぬけてどうこうという特色はありません。
ただ小生、いたく感激したのは、本物の戦場において英雄などと言うものは存在せず、米国の正義などもここでは完全無視。ともすれば無能な悪役にしか描かれないナチスドイツ兵も、意識的に非道性は描かれません。むしろラストシーン近くの終盤のくだりの、あるドイツ兵が・・・・おうっとネタバレになっちゃうので、是非劇場で。
さてこの映画 最大の〝肝〟は、リアルな戦場描写そのものと言えるでしょう。多少リアル過ぎて、ご婦人にはキツイ残酷描写もありますが、しかし演出はそれを強調し過ぎず、かつかなりクールに描かれていると思います。
さすがは、米軍の出身者で本物の戦場経験のあるデヴィッド・エアー監督です。
冒頭の野戦、ヨーロッパ小都市での市街戦、そしてティーガー戦車との死闘、クライマックスのSS大隊との神風戦闘など、その銃弾の飛び交う、音響を含めて見事な演出には、ホントに度肝を抜かれます。
そして、我々はその硬質な〝戦闘描写〟において、どちらが善だの悪だのは戦場には存在せず、「米国の正義」など安っぽいイデオロギーであることを思い知らされるわけです。
米国においては、ベトナム戦争は bad war(悪い戦争)だったけど、日独と戦った第二次大戦は good warだという認識が国民の中ではコンセンシャスがとれているんだけど、この映画はそんなもの幻想であることを白日のもとにさらします。
兵たちは、自分たちが生き残るため、たとえ相手が子供であろうが、動くものは全て機銃掃射しなければならない極限の中にいるわけ。 事実、映画では人間がまるで蠅たたきで叩かれる、蠅のように、ゴミのように、いとも簡単に死をむかえます。
なので、小生配給会社の宣伝方法はちょっと?なんです。
映画ポスターでは「300人の敵兵にたった5人で戦った」感動の英雄壇のごとき印象を与えていますが、そんなのを期待して観にいけば、肩すかしを喰わされます。
実はもっと、もっと深ーい、戦争映画と言えましょう。
一方において、田宮模型のオタク映画と思われる方も多いでしょうが、それも誤解と言うものです。
こういう映画こそ、カップルで、夫婦で、ご家族で観るべき映画として、冬休み強くお勧めする一本です。