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角岸's blog (Kadogishi s' blog)

酒、酒&映画・・時事問題?

亡き父の面影を追う、泣かせるハードボイルド小説「炎の影」

2012-08-23 15:48:42 | ミステリー
「ヒューゴの不思議な冒険」といい「アメイジングスパイダーマン」など、最近の映画のトレンドは亡き父の面影を追ういわゆる「父親探し」のテーマ。

さて、今日紹介するのはそんな「父親探し」の決定版ミステリー「炎の影」。

小生が敬愛する香納諒一先生の泣かせるハードボイルドです。



主人公「公平」は体がデカクて一見こわもてのヤクザ(賭博場のボディガード)なんだけど、本当は根の良い優しいヤツって設定がまずポイント。

(本文より)
 一九〇センチ近い大男。二の腕は女の太股くらいはあり、腹筋は鋼のように硬い。短く刈りあげた髪、ジョギングで陽に焼けた顔。太い眉。厚い唇。だが、目つきにはどことなく人のいい感じが隠しきれない。それがいやで、たいがいはサングラスをかけてすごしていた。(中略)
 気は優しくって力持ち。いつでも仲間内ではそういわれてしまう。怒るわけにもしかないし、相手は親しみをこめていっているので笑って済ませているが、本当はもっと強面にふるまいたいのだ。


高校時代、人助けのためチンピラグループをやっつけたんですが、その中に金持ちの有力者がいたため、少年院行き。刑事だった父は警察官を辞職。公平も裏社会へと身をおとしていったというわけ。当然父とは断絶状態に。

物語は父の突然の死の知らせをうけ故郷(群馬県高崎)へ帰るところから始まります。死因は酔って電車にひかれたとのことなんですが、公平は疑問を抱くんですよね。さらに父は生前孤児院のこととかいろいろ調べていたらしい、ということで調査をしていく過程で、地元暴力団がらみの事件に巻き込まれていくんですね。

んで、物語はリゾート開発がらみの企業の疑惑、そして、ついには日航機墜落事故にまで話が発展していきます。

このね、二転三転するストーリーも見事なんですが、登場する人物がこれがまたいい。

公平の兄貴分「景浦」、そして舎弟の「アキラ」。特にアキラとの別れの場面ではちょっとウルッときますよ。

本物語のヒロイン、「大石恵子」とその兄、「靖夫」。

そして、死んだ父の「菅井良平」。いずれも泣かせるシーンあり。

ラストシーンのなんともしれない余韻がたまらないです。

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家に帰ったら、注文していた、香納センセの新作「心に雹の降りしきる」が宅配されているではありませんか!!

楽しみー!!





東西冷戦時代の冒険小説の傑作 「ファイアフォックス」

2012-07-20 16:19:42 | ミステリー
今年、6月に中国外交官が日本でスパイ活動をしていたことが判明し、大騒ぎになった事件がありましたが、当の本人はさっさと中国に帰国し、中国政府も否定していますよね。
まぁ日本政府もことを荒立てたくないみたいで(毎度のこと)、うやむやになりそう。

というわけで、「スパイ」と言えば、「東西冷戦時代」が諜報戦において、もっととも激しく両陣営ともしのぎを削り、またそれを題材とした傑作小説があまたあります。

この間紹介した、公開中の「裏切りのサーカス」の原作ジョン・ル・カレ「ティカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」もその傑作群の一つ。

で、今日紹介するのは、その最高傑作のひとつグレイグ・トーマス「ファイアフォックス」


時代背景は1980年ごろ。「ファイアフォックス」は今の人たちなら、ブラウザ名だと思うでしょうが、この原作ではソビエト連邦の最新鋭機ミグ31。最高速度マッハ5以上、レーザーを無力化し、ミサイルを脳波で操る驚異の戦闘機という設定なんですな。
で、航空機開発において、それと同等の技術力を持たない西側は当然慌てるんですが、米国CIAと英国SIS両諜報機関がたてた作戦とは・・・

ミグ31ファイアフォックスをかっぱらう!!

という無茶なもの。

で、こっからが、面白いんです。もうノンストップ活劇です。夜に読んだら寝られなくなります。
ミグ31イメージ

この小説は大きく分けて2部構成になっています。

密命を受けた米空軍ミッチェル・ガント少佐(主人公)が単身モスクワに潜入し、ミグ31がある空軍基地から飛び立つまでが前半。

で、奪ったミグ31をソビエト空軍の追跡をかわす、ドックファイトと頭脳戦を駆使する脱出劇は、もう手に汗握る冒険小説の王道というものです。

前半のKGBの追跡をかわしながら空軍基地へ潜入するあたりも、ひやひやモノなんですが、特に面白いのが後半部分。
ブレジネフ書記長、アンドロポフKGB議長などの実在の人物も登場し、この戦闘機の争奪戦をめぐり、ソ連中央政府の権力闘争も描かれていて実に重厚なドラマとなっています。

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さて、この小説クリント・イーストウッド主演、監督で映画化され大ヒットしました。


かなり、原作に忠実に映像化されてはいるものの、やっぱり原作の重厚さにはかないません。

何よりも、後半のドックファイトシーンがなんか「スターウォーズ」っぽくてリアリティが今一つ。
(実際、このドックファイトシーンは「スターウォーズ」のスタッフらが制作した。)

当時、この映画のファイアフォックスの機体デザインがあまりにも未来的でおもちゃっぽいなぁと思ったものですが、今だとスティルス機に似ているせいもあって、違和感なくなりました。
映画ミグ31

ちなみにこの映画、今GYAOで無料で観られますのでチェックしてみてください。
↓↓↓
http://gyao.yahoo.co.jp/player/00597/v07537/v0753700000000524589/?list_id=68308&sc_i=gym003

さて、この小説には続編「ファイアフォックス・ダウン」があってこれがまた、1作目に勝るとも劣らない面白さなんです。

後で、紹介したいと思います。


全国のシャーロキアン諸君! ついに始まる現代版ホームズ「SHERLOCK」シーズン2

2012-07-09 08:06:32 | ミステリー
21世紀の現代でシャーロック・ホームズが大活躍し大評判の、イギリスBBC制作のドラマ「シャーロック」

ついに今月からNHKBSプレミアム(BSの3チャンネル)でシーズン2が始まることに。

いや~、今からワクワクです。

↓↓↓公式ホームページ
http://www9.nhk.or.jp/kaigai/sherlock2/index.html



さて、このビクトリア朝ロンドンから現代へ舞台を移したホームズ物語は原作をもとに当たり前だけど、かなり現代風にアレンジされています。

パイプの代わりにニコチンパットを貼り、スマートフォンとGPS、もちろんPCを駆使して犯人を追いかけるという、まさに「ハイテク・ホームズ」
演じるのは、端正なマスクにエキセントリックなホームズ像を形作る、「ベネディクト・カンバーバッチ
B・カンバーバッチ

そして、相棒のワトソンは原作と同じ、退役軍人で、ホームズの活躍をブログで発表する、人気ブロガー・ワトソンの「マーティン・フリーマン
M・フリーマン

なんかね、ガチガチのシャーロキアンの小生も、この異色ホームズにかなりハマっちゃいました。シーズン1見て。

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これまでも、ホームズ物語は数多くの俳優たちが演じてきました。

そして、今までの映像化に際しては、イギリスグラナダTVが制作した「シャーローック・ホームズ」が決定版といわれてきました。
英グラナダTV版

かなりの正統なビクトリア朝ロンドンの世界を表現しており、特に主役を演じたジェレミー・ブレットは、原作(聖典)のシドニー・パジェットが描いた挿絵のホームズに瓜二つと大絶賛を受けたほど。

ジェレミー・ブレット

彼が形造る、ホームズは古き良きジェントルマンの見本のようなもので、会話、服装、雰囲気ともにビクトリア朝英国紳士そのものでした。

で一方、世界のシャーロキアンをアッと言わせたのが、ロバート・ダウニーjrの「ホームズ('09)」。
相棒のワトソンは、ジュード・ロウ
映画版('09)

ロバート・ダウニーjrのホームズは、天才的な推理力だけでなく、ブルース・リーも真っ青なマーシャルアーツの達人の肉体派ホームズ。英国紳士とは程遠い、ちょっとダラシナイところも特徴。
ロバート・ダウニーjr

↓↓↓前に書いた「シャーロック・ホームズ/シャドウゲーム」ネタ
http://pub.ne.jp/gwnhy613/?monthly_id=201203

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さてさて、現代版ホームズ「シャーロック」ですが、シーズン2の放送に先駆けて、シーズン1の再放送もやるそうです。

↓↓↓ シーズン1再放送予定。NHKBSプレミアム

7月16日(月)午後9時00分~10時30分
第1回 「ピンク色の研究」 A Study in Pink

7月17日(火)午後9時00分~10時30分
第2回 「死を呼ぶ暗号」 The Blind Banker

7月18日(水)午後9時00分~10時30分
第3回 「大いなるゲーム」 The Great Game



そして、シーズン2の放送予定↓↓↓。同じくNHKBSプレミアム

7月22日(日)午後10時00分~11時30分
第1回「ベルグレービアの醜聞」 A Scandal in Belgravia

7月29日(日)午後10時00分~11時30分
第2回「バスカヴィルの犬(ハウンド)」 The Hounds of Baskerville

8月5日(日)午後10時00分~11時30分
第3回「ライヘンバッハ・ヒーロー」 The Reichenbach Fall



題名からして、ワクワクするでしょう。
いや~楽しみです。今からブルーレイレコーダーに予約しておこうっと。

加賀恭一郎・・・全てはこの一冊から始まった。東野圭吾「卒業-雪月花殺人ゲーム-」

2012-06-19 23:30:03 | ミステリー
東野圭吾先生といえば、有名な「ガリレオ」シリーズと小生が好きな「加賀恭一郎」シリーズとかあります。
んでも、小生のイメージだと、この先生はシリーズものじゃないほうが多い上に、どれも面白いんですからたいしたものです。

とはいうものの、シリーズものの魅力というものがあって、その主人公が歳を経て、彼の経歴の謎が後になって「そうだったのか」ってわかる点において「加賀恭一郎」シリーズはその典型じゃないかと・・・・

自分なんかガリレオシリーズ「容疑者Xの献身」よりも、加賀恭一郎シリーズ「新参者」の方がはるかに完成度が高く、むしろこっちのほうが直木賞をとるにふさわしかったし、先生の最高傑だと思うんです。

で、このシリーズは、どれもつぶぞろいの面白い作品群なんですが、今回はその一番最初の作品「卒業-雪月花殺人ゲーム-」です。



「卒業」といえば、あのダスティン・ホフマンの同名のほろ苦い映画を思い浮かべる人も多いでしょうが、小生は、加賀恭一郎がデビューしたこの一冊がまず頭に浮かびます。

まだ、刑事どころか、社会人にもなっていません。加賀は後に教師を2年勤めた後、警察官になるのですが、デビュー作ではまだ大学生なんですね。

(ストーリー)
国立T大学に通う女子大生牧村祥子が、入居している女性専用アパートの自室で、死体となって発見された。現場の状況は自殺を窺わせるが、幾つかの矛盾した供述が出て来た事から、警察は、自殺・他殺の両面を視野に入れた捜査を開始する。高校以来の仲間である加賀恭一郎ら6人も、様々な思いを錯綜させながら、祥子の死の真相を探ろうとしていた。
そんな中、今度は彼らの恩師が主催する茶会の最中に新たな死者が出た。
茶道の作法に秘められた謎に、後の敏腕刑事、現役大学生の加賀が挑む。


でね、この「茶道トリック」が複雑を極め↓↓↓のように図解入りページが数ページ続くわけ。


しかしっ!さっぱり意味わがらねぇ!

正直、おら、頭悪いスケ何回読んでも意味分かりません。
んでも、、その後のストーリー読み続けていけば、このトリックがさほど重要な意味を持っているとは思えないのですが・・・

ま、このトリックはともかく、後に、泣かせる加賀恭一郎シリーズの原点がここにあることは間違いありません。

加賀が好意をよせる沙都子(思いっきりふられる)や、複雑な父(警察官)への思い・・・・・・・等々。

この続編「眠りの森」へと続くわけですが、加賀シリーズのファンの小生としては、これを読んどいたほうが後々の加賀ものが圧倒的に面白く感じることは断言できます。

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ところで、数年前、東京駅で東野圭吾先生の同名の小説見つけたんだけど「雪月花殺人ゲーム」って副題ついていなかったから別な小説と思って買ったわけ。
↓↓↓


新幹線の中で読んだら・・・・
くーっ! 中身が全く、おんなじ!!






手に汗握る、ポリティカルサスペンス麻生幾「戦線布告」

2012-06-13 08:24:06 | ミステリー
NHKドラマでヒットし、映画化されただ今公開中の「外事警察」。
テレビは見ないと言いながら、ちゃっかり「NHKオンデマンド」でドラマ版観ました。
機会があったら劇場で映画版観たいですね。

で、このリアルな国内スパイものの原作者は麻生幾先生。

出世作は「戦線布告」
文庫本でも分厚い2冊でかなり長いんですが、面白すぎてバンバン読めます。
今から15年くらい前の小説なんですが、初めて読んだ時の衝撃は今でも忘れません。


時代はちょうど、小泉内閣誕生前夜の日本。原子力発電所が並ぶ敦賀半島沖に北朝鮮の潜水艦が漂着(座礁だったけかな?)。対戦車ロケット砲で武装した特殊部隊十一名が密かに上陸、逃走して、警察官2名、地元住民1名のが殺害されるんだけど、とても福井県警の手に負えないわけ。
そこで、警視庁のSATが出撃。しかし、全く歯が立たず。
ついに、首相は自衛隊の出動を命令。
けど、官僚やら周りの取り巻きたちが「法整備が出来てない」とかなんとか理屈をこねまわして、自衛隊は武力行動に出れないだけでなく、犠牲者が次々と出ていくことに・・・・・
これと並行して、外事警察たちが、日本で暗躍する北朝鮮の工作員たちを追うストーリーが同時進行するんだけど、この手に汗握るサスペンスと、全くダメな日本の「危機管理能力」にハラハラしっぱなし。

しかし、この、麻生幾先生、どこでこんなにリアルな資料手に入れたのか、もう緻密な描写で説得力が違います。
文章もさることながら、図解入りで更にわかりやすい。



これ読むとね、日本の危機管理ってこんなにダメだったのかって痛感できます。
まぁ15年たった今では「有事法制」等幾分かは整備されマシなったとはいえ、それでも自衛隊の運用はまだまだらしいです。

それをハッキリと証言しているのが、あの「田母神俊雄」元航空幕僚長。


田母神閣下は最近公開されたハリウッド映画「バトルシップ」を例にとり、祖国だけでなく地球そのものが危機になっても自衛隊は米軍と一緒に戦えない(集団的自衛権の行使の禁止)というわけ。

皆さん、「バトルシップ」はごらんになりましたか?

リムパック演習(映画から)

ハワイ沖でリムパック演習(西側同盟国軍の環太平洋合同演習)中、エイリアンに攻め込まれ、次々と艦船が攻撃を受け沈められていきます。で米駆逐艦を助けようとする、自衛隊のイージス護衛艦「みょうこう」。
結局、「みょうこう」も沈められるのですが、ナガタ艦長は米駆逐艦の指揮を取り大活躍。
日米の協力で見事エイリアンを撃退というまさに荒唐無稽なお話。

閣下によれば日本は国際法上の集団的自衛権を保有しているが、行使することは憲法上許されない-というまことに奇妙な政府解釈が閣議決定された(昭和56年)」とのこと。

自衛官ナガタ艦長(浅野忠信)

従って、「バトルシップ」のような事態になっても「米海軍の艦船が攻撃されても我が自衛隊は傍観しているだけなのである。」だそうだ。

で、最後にこう結ぶ。
「(映画を)実は私はまだ観ていない。この映画の荒唐無稽さが怖いのである。(略)エイリアンが攻めてくるのが荒唐無稽なのではない。ハワイ沖で自衛官が活躍することが荒唐無稽なのである。」

(大活躍する自衛官)

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話が小説「戦線布告」から大きくそれちゃいましたが、この「日米集団的的自衛権」等の問題といい、ありとあらゆる有事に備えておかなければ、そう、遠くない将来日本は相当ピンチに陥るような気がします。

最近も「福島第一原原発」では全くダメダメな「危機管理」を露呈しちゃいましたが、この小説のような事態が無いとも限りません。

だって若い将軍様が行き詰まった国政の不満を外部に向けるため、ヤケクソになって、福井の原発銀座を占拠することって、本当にあるかもしれません。