まなびの途中

色々な仕事をしてまいりました。
色々な出会いがありました。
勘違いもありますが、
学んだことを書いてまいります。

線路内に人が立ち入ったという遅れに関して。

2007年01月22日 | 社会的全般
朝、東急線のホームにて、電車を待っていた。
JRとは違って、2駅の間隔が非常に近く、眺めれば手前の駅が見える。
住宅地の中を通り過ぎることもあって、踏み切りも、道々に数が多い。
ただ、3両編成。
踏み切りで、痺れを切らすことも無い。

朝のラッシュを少し過ぎたホーム。
それでも電車を待つ客でにぎわう。
思い思いのあり方で、多分、間もなく来るであろう電車を待っている。
そんないつもの刹那な時間が流れている。

定刻が近づき、すぐ近くの踏切が警報を鳴らし始める。
自分たちが待つ電車の侵入を、見る間でもなく、その音で、確認する。
ホームで待つ乗客も、やおら、白線の位置を確認して、少し移動が始まる。

まさにそんな時。
思いがけない「瞬間」に、電車の警報が轟きわたる。
続いて、金属的なブレーキ音が、短く、鳴る。

何が起こったか、
ホームにいる乗客は、誰彼と無く、音の出るほうを見やる。
本来であれば、空気の塊を、投げるように入ってくる電車が
そこにあるはずなのに。

身を乗り出すように、音の出る方向を、それぞれが見始める。
小走りで、ホームの先に集まる乗客。
そして、慌てて駆けつける車掌の姿。
さらに、2人の、駆けつける駅員の姿。

電車が、踏み切りに、差し掛かった状態で、停車している。
駆け出せば、数十歩で、到達できるその間近な距離である。

警報の音が、間段なく止まぬ踏切の中で、
そう、老人が、手押し車に体を預ける格好で、踏み切りの中に、立ち往生?
生きている?
立っている?

えっつ?

閉じた踏切のバー。
本来なら、「外側」で、電車の通過を待つ。
が、その老人は、踏み切りの「中」で、線路を背にして、
きちんと、バーの手前で、「待っていた」。
まさに、電車が、バーと、わずかな空間を作り出している、その隙間に。

駆けつけた駅員。車掌。
身振り手振りで、何かを説明しているかのよう。
老人は、ただ淡々と、うなずいているかのようだ。

「渡り切れなかったの?」
「いや、いたみたい」
「なんでなんで」
「踏み切り、上がるの、中で待ってたみたい」
「嘘!」

切れ切れに、ホームの客が、説明をし始める。
さらに、我々の後方を、2人の駅員が走って、現場に向かおうとする。
多分、社内連絡で、相当な「案件」のように一報が入ったのかもしれない。

そうこうしている内に、駅員に促されるように、
老人は、踏み切りのバーをくぐる様に、外に、出される。
「外」まで体を支えるように、2人の駅員がついていく。

間もなく、電車は、ゆるやかに動き始め、ホームに入ってくる。
一瞬のざわめきも、何事も無かったように、
一部始終を見納めた乗客は、また、いつものように無口に乗り込む。

その電車に乗っていた乗客も、変わらずに、変わらない雰囲気で、
いつものように、後からの客の為に、位置を変える。
そして、車内放送も、何も無く、いつものように、扉が閉まり、
そして、そんな我々を乗せたまま、走り出していく。


たまに、JRで、「線路内に人が入り込んだという情報がありましたため、
現在、安全確認作業をしております。御急ぎのところ、大変ご迷惑様ですが、
いましばらく、お待ち下さい」という放送がある。
人身事故が、実は、どこかしこで、毎日、起きているかのような日々が続く。

我々は、すでに、列車の遅れに対して、いくつもの覚悟と処方を覚え始めている。
ただ、線路内に立ち入った、という放送には、まだ、我慢が効かない。
行き場の無いストレスやら、文句を言う客も、これには、まだいる。
が、自分は、これを見てしまった。

悪意がある、ない、に関わらず、こういうことが「現実」に起きていることを
知ってしまった。
人身事故に対する覚悟と処方とともに、
線路内立ち入りに関しても、自分は、相応の覚悟と処方を、持ったことになる。

そういう時代になったんだなぁ、という感慨と共に....。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
うまいなぁ (のんち)
2007-01-24 16:10:19
空気の塊を、投げるように入ってくる電車

うまいなぁ
天才的です
歌詞に使いたいですね
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Unknown (のんちさんへ)
2007-01-25 10:47:21
恥ずかしくなるようなお褒めの言葉いただきまして、ありがとうございます。
昨日は、昨日は、昨日は.....。

久しぶりの二日酔いということもあって、頭が、重いし、打ち合わせが連続で、コーヒー、何杯飲んだ?という、まことに、でたらめな日でした。
ご返信遅れましたが、大変、勇気付けられます。
ありがたや。

これからも、一層、木に登っては、得意になってまいりたいと、考えている次第です。
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