「らんまん」は植物学者・牧野富太郎先生の伝記をもとにした物語である。私は毎朝NHKでこのドラマを見ている。 が、少し気になるのはその主題歌のことである。やたら「愛を愛を・・愛して・・」と「愛」が多過ぎるのだ。楽曲そのものは悪くない。才能のある人が作っているのだろう。だから私がつけるケチに対して反発を感じる人も多いかも知れない。しかし、実際にその歌を傾聴すればするほど「いったい何を歌っているのだ?」と言いたくなるほど意味が分からなくなり、連発される「愛」に対して反発したくなる。
「愛」というのは本来の日本語つまり大和言葉ではない。もともとは仏教用語として伝来したものに対して、明治時代に "love" の翻訳語として転用されるようになったのである。仏教用語としての「愛」は愛欲すなわち煩悩の一種であり、歌に歌われるようなポジティブなニュアンスではない。一般に外来語は大和言葉のように実感の伴う言葉ではないので、それを使うとどうしても抽象的な話になってしまいがちなのである。難しい漢語やカタカナ言葉を多用した文章は、それなりになにか語っているように見えても実質的な意味に乏しい場合が多いのである。「あなたを愛しています」と手紙には書けても、直接面と向かって声に出して言うことは(普通は)できない。抽象的な外来語は手紙という実感から少し突き放した文語文には適用できても、直接相手に実感を伝える口語文には適用しづらいのである。
件の主題歌では「愛を愛を」とまるでそれが掌にある具体物であるかのように謳っているが、もともと抽象概念をそのように扱うことに無理があるような気がする。ある意味、それはそれで何かを伝えようとして格闘しているともとれるが‥‥。まあ、所詮歌は歌である。なにもそんなしゃちこばった理屈で文句をつけんでもええやないか、と言われればその通りである。
スターバックス1号店前で(記事本文とは関係ありません)