禅的哲学

禅的哲学は哲学であって禅ではない。禅的視座から哲学をしてみようという試みである。禅を真剣に極めんとする人には無用である。

実力も運のうち

2024-01-28 14:34:02 | 哲学
 普通「運も実力のうち」という言葉はよく聞くが、「実力も運のうち」はあまり聞きなれない言葉である。実はこれはNHKの白熱教室で知られるハーバード大学のマイケル・サンデル教授の新しい著書のタイトルである。私はまだその本を読んでいないので、サンデル先生がどのような意図で「実力も運のうち」と仰っているのかはよく分からないが、よくよく考えてみればなかなか意義深い言葉であるように思えてきた。
 
 大谷翔平選手の選手としての報酬は10年間で7億ドルだという。年俸100億円である。それ以外にスポンサー企業からの副収入が70億円もあるらしい。私のような貧乏人には見当もつかない金額だが、金を出す側としては大谷選手にはそれだけの市場価値があると踏んでいるわけである。その市場価値の源泉は、野球選手としての力量、魅力的なパーソナリティやルックスから来るものであり、それらはみな大谷選手の属性つまり彼の実力と言ってもよいと思う。年俸100億円は彼の価値に対して支払われるのであり、それは親の七光りでもなければ宝くじに当たったわけでもなく、もちろん他人から掠め取った物でもない。文字通り彼の実力に対する対価として支払われるのである。

 だから誰も文句を言ったりしない、多分‥‥‥。
しかし、誰もが納得したとしても、あえて文句つけたくなるのがへそ曲がりの私の性分である。大谷選手と同世代の若者でコンビニや飲食店で働いている人々は少なくないだろう。彼らの多くは時給千何百円ほどで働いているはずだ。仮に時給1500円で月200時か寸働くと仮定すれば、月収は30万円で年収は360万円になる。大谷さんの年俸100億円とはえらい差がある。金額が実力の反映であるとするならば、彼はコンビニ店員の3000人分の働きを一人でこなすことになる。私の常識が「そんな法外なことがあり得て良いのか?」とわめいている。

 しかし少し考えてみれば、その法外な事態に正当性を与えているのは現代社会の資本主義メカニズムであることはすぐ分かる。仮に大谷さんが江戸時代に生まれていたら、これほどの社会的成功を収めることは難しかっただろうし、もし野球ではなくバドミントンの選手への道を選んだりしたら、たとえ超一流選手になれたとしても現在のような収入はとても望めなかっただろう。そのように考えてみると、「3000人分に相当する実力」というような実体は実はどこにも存在しないということがよく分かるのである。すべてのことはいろんなことがらの関係性つまり因縁によって決定するのであって、言ってみればすべてが運であると言っても差し支えないのである。

 また、大谷選手は生まれる前に「こういう家庭に生まれ、こういう人間に育ちたい。」と意志したわけでもない。たまたま奥州市の円満な家庭に生まれすくすく育って、立派な野球選手として育っただけのことである。すべては因縁であり、実体としての実力やそれを志向する主体自体も存在しない。一切皆空である。

1月26日の夜明け時、満月が茜色に染まる西の空にまだ残っていた。
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寛解しました

2024-01-20 15:24:52 | 闘病日記
 昨年の9月28日の記事(==>「難病に罹ってしまいました」)で、腎臓病に罹ってしまったことをご報告しましたが、1月18日の受診で主治医の先生から「蛋白/クレアチニン比が 0.3 を下回りました。寛解です。」と告げられました。あっさり「寛解」と言われたので拍子抜けしてしまいました。

  検査日         9/18        10/19   11/16   12/14     1/18
蛋白/クレアチニン比     3.09     1.30            0.74           0.67          0.26
  アルブミン                   2.3              2.9              3.5             3.6           3.7
 
 蛋白/クレアチニン比の正常値は 0.15 以下だが、0.3 を下回れば一応ネフローゼ症状を脱したと見做すらしい。ただ、血中アルブミン濃度(正常値は4.1以上)がまだ低いままなので、寛解と言うほどに回復したという実感は持てないでいる。主治医の先生によれば、この症例にしてはほぼ理想的な回復ぶりらしい。とは言ってもまだまだ先は長い。今後は2か月ごとに、ぶり返しがないことを確認しながらステロイドの摂取量を減らしていくことになるのだが、ステロイドの減量幅はより緩やかにしなければならないので、順調にいってもあと1年以上は見込んでおかなければならないということらしい。

 なにはともあれ、ネフローゼ症状の寛解は私個人にとっては今年最初の吉兆である。できうることなら、パレスチナやウクライナそれから能登の方々にも同様の幸運がおとずれるようなよき一年であってほしい。

お年玉付き年賀はがきで2等が当たった。しかも実はこれが2回目で、私は年賀はがきのくじ運がかなり強いらしい。
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