【ワシントン=黒瀬悦成】バイデン米大統領は28日、2022会計年度(21年10月〜22年9月)の国防総省予算として7150億ドル(約78兆5千億円)を議会に要求した。エネルギー省の核兵器の維持管理費なども含む国防関連予算全体は、21会計年度比で1・7%増の7530億ドル(約82兆6千億円)。国防総省が「最大の戦略地政学的な挑戦」(ミリー統合参謀本部議長)と位置付ける中国の脅威をにらみ、先端軍事技術分野などに優先的に予算を投入した。
ただ、共和党陣営などからは、インフレ調整後の予算規模は実質縮小で、「中国に対抗するには不十分」(カルバート下院議員)との批判も出ている。
オースティン国防長官は27日、下院歳出委員会のオンライン公聴会で証言し、22会計年度の予算は中国の台頭などをにらみ「将来にわたる米国の防衛と敵対勢力の抑止に最も重要な分野に複合的かつ適切に予算を配分した」と強調した。
具体的な分野では極超音速兵器や人工知能(AI)、微細電子工学、第5世代(5G)移動通信、核戦力近代化などを挙げた。
中国の脅威に対抗するため、インド太平洋地域に地上配備型の精密照準攻撃ミサイルや宇宙配備型レーダー網を配備する「太平洋抑止構想」向けの予算として50億ドルも盛り込まれた。
個別の兵器では、最新鋭ステルス戦闘機F35について85機を要求した。一方、海軍の艦船については水上戦闘艦8隻を要求した。トランプ政権末期に発表された建艦計画では、水上戦闘艦12隻を22会計年度に要求するとしていた。
核戦力に関しては、大陸間弾道ミサイル(ICBM)と、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)搭載の戦略原子力潜水艦、戦略爆撃機の「核の3本柱」は「米国の戦略的抑止の根幹」(オースティン氏)であるとして堅持する方針を打ち出した。核戦力近代化の一環で指揮管制システムの改良に29億ドル、新型のコロンビア級原潜の建造計画に50億ドルの予算措置をとるよう求めた。