日本語文章は、文学の分類をもってすれば、散文と韻文とに分けられる。散文は韻文に対する規定として説明がある。すなわち、韻文における、>その言語に特有の韻律の規則に従い,詩の行を形づくるように配慮して書かれた文章。この配慮のない文章を〈散文prose〉と呼ぶ 世界大百科事典内の散文の言及 というふうに、また、>修辞よりも意味が重視され,文法的な正確さが要求される。したがって通常の会話は散文とはいえない。ギリシアでもローマでも,散文は歴史,地誌,哲学など主として非純文学的な内容をもつものに用いられた ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説 文章の形式に規則があるなら、その形式にとらわれない、しかし文法的に規則をもって表されるものとなる。
世界大百科事典 第2版の解説
さんぶん【散文】
定型や韻律をもった文章,すなわち韻文に対して,定型や韻律にとらわれず,屈折自在で端的に事実を記述する文章をいう。英語のプローズproseにあたるが,その語源はラテン語プロルススprorsusで,〈まっすぐ〉〈平明〉の意である。したがって〈散文的〉といえば,語感や抑揚に富み,感情や心象の躍動に満ちた詩に対して,しばしば無味乾燥で陳腐な事物の形容に用いられる。ヘーゲルはこの意味の散文的現実の出現に,近代社会の一特徴をみており,ルカーチもその思想を受け継いで,資本主義社会における散文的現実と詩的理想の分裂に,近代芸術の困難な運命と課題をみている。
世界大百科事典 第2版の解説
さんぶん【散文】
定型や韻律をもった文章,すなわち韻文に対して,定型や韻律にとらわれず,屈折自在で端的に事実を記述する文章をいう。英語のプローズproseにあたるが,その語源はラテン語プロルススprorsusで,〈まっすぐ〉〈平明〉の意である。したがって〈散文的〉といえば,語感や抑揚に富み,感情や心象の躍動に満ちた詩に対して,しばしば無味乾燥で陳腐な事物の形容に用いられる。ヘーゲルはこの意味の散文的現実の出現に,近代社会の一特徴をみており,ルカーチもその思想を受け継いで,資本主義社会における散文的現実と詩的理想の分裂に,近代芸術の困難な運命と課題をみている。
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説
散文
さんぶん
prose 英語 フランス語
Prosaドイツ語
普通の文章の意。散文の「散」というのは、この場合、制限がない、という意味で、詩歌のように字数や韻律やによって規制されることのない文のことである。日用の記述・説明の文をはじめとして、公用・私用のあらゆる文章から文学的な文章に至るまでが、ここに含まれる。なおproseには、平凡なこと、常套(じょうとう)事、または平凡な文章や議論、などの意味もあり、Prosaにも無趣味・殺風景の意味がある。さらに形容詞として「散文的」prosaic, prosaque, prosaischという場合には、単に「散文の」というだけの意味で使われる場合もあるが、普通には、詩趣のない、趣味のない、とか、退屈な、平凡な、俗悪な、無味乾燥な、とかという意味で使われる。つまり、散文的ということばは、詩的な美しさや人間的な感情の高揚や奔放なイマジネーションなどとは、まったく対立的なものということになっている。「散文的な生活」という場合には、生活が前記のような意味で散文的だということである。(下略)[小田切秀雄]