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読書録「琉日戦争一六〇九」

2009年12月16日 | Weblog
今年が薩摩島津氏の琉球侵略400周年なので沖縄・鹿児島の地をメインにそれに関するイベントやシンポジウムが数多く開催されている。書籍も何冊か発刊されているが、つい最近読了した「琉日戦争一六〇九 島津氏の琉球侵攻」(上里隆史、ボーダーインク社、2009年12月)は内容もすばらしく読みやすかったのでとても楽しめ、充実感すらあった。時間をかけてじっくり読んだ。
章立ては次のようになっている。
第一章 独立国家、琉球王国 ~プロローグ・琉球の章~ 
第二章 九州の覇者・島津氏と琉球 ~プロローグ・島津の章~ 
第三章 豊臣秀吉のアジア征服戦争 
第四章 徳川政権の成立と対明交渉    
第五章 島津軍、琉球へ侵攻 
第六章 国敗れて
第七章 「黄金の箍(たが)」を次代へ ~エピローグ~ 
第一章で琉球王国を海域アジアの視点でとらえているのは興味深かった。琉球王国は明との朝貢貿易のおかげで大交易時代を迎えるが、王国を取り巻く環境や内部の環境の変化により、その大交易時代も16世紀になると衰退していく。現代の日本の経済に似ているともいえるが。倭寇についても分かりやすく解説してくれている。
第二章では島津氏の出自から勢力を拡げていく過程も詳しく述べられている。一時は九州を制覇し、中央へ出て行かんばかりの勢いになったが、豊臣秀吉によって挫折させられ、元の領地に押し込められてしまうのだ。でも、琉球にいちばん近かった地理的メリットにより琉球王国を侵略するチャンスを得て、従属させることができたのであろう。
秀吉も家康も琉球王国の仲介で日明貿易をやりたかったのだが、結局は失敗してしまう。薩摩島津氏の琉球侵略の経緯については詳しく述べられており、そこには様々な出来事があり、いろんな要因が重なっていたんだな。琉球王国の航海技術の衰えさえ、その要因のひとつだなんて目からウロコもんである。秀吉の朝鮮侵略戦争についても詳述されており、わかりやすかった。秀吉の死によって戦争は終結したんだな。
海商・禅僧・華人についてのネットワークの考えも興味深い。あの当時は、その活用によって情報の収集やコミュニケーションを図っていたんだ。
琉球は幕藩体制に取り込まれ、古琉球から新琉球になり、一時的な衰退もあったが、改革者が出現して新たな伝統文化が築かれていった。琉球王国にはそういうシタタカさがあったんだ。それに比べて、薩摩に直接支配された奄美諸島は暗黒時代となった。サトウキビの単一栽培を強制され、債務奴隷のヤンチュを数多く輩出した。
今後、薩摩島津氏の琉球侵略について確かめたいときは、この著作を読み返すことになるだろう。

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