ある旅人の〇〇な日々

折々関心のあることや読書備忘を記録する

松坂大輔とボストン

2006年12月18日 | Weblog
先日の松坂のボストン・レッドソックス入団記者会見は早朝だったが、ほとんどの民放テレビ局が生放送していた。マスコミの騒ぎすぎだ。ポスティングの60億円という大きな額が影響したのだろうか。
代理人のボロス氏が球団の年俸提示額の倍近く吹っかけていたのでどうなるかと思ったが、6年間61億円に決まった。オプション付きなので成績が良ければ72億円までになるようだ。それにしても年間10億円は大きな額だ。今年の松坂は西武で年俸3.3憶円だったのだ。松井秀喜がヤンキースに入団したときは年俸8億円(巨人では6・1億円)、イチローはマリナーズで6億円(オリックスでは5億円)だった。野茂はドジャースとのマイナー契約で1千万円程度だった。レッドソックスの球団オーナーは松坂が日本の国宝だと持ち上げていたが、妥当な額に収まった感じだ。今までの日本からメジャーリーグに移籍した選手たちの実績の積み重ねがあったお陰だろう。それに今年の世界野球クラシックで日本が優勝して松坂がMVPに選ばれたことも大きかったかもしれない。
レッドソックスのオーナーが投資家なので、きっと中期的に見て採算がとれると判断したのだろう。試合のテレビ放映権、観客増加、その他諸々の経済効果は計算済みだろう。

松坂は横浜高校時代から怪物といわれていた。平成10年の夏の甲子園優勝投手であり、京都成章との決勝戦はノーヒット・ノーランを達成している。怪物といわれたのは江川卓以来だろう。松坂はルーキー1年目で16勝5敗(防御率2.60)をあげ新人王になっている。高卒ルーキーで彼ほど活躍したのは、昔の池永と堀内ぐらいではなかろうか。今年は17勝5敗(防御率2.13)だったが、西武在籍8年間では108勝60敗だった。年間平均14勝8敗程度だから、勝ち星数は少し物足りないが、最近では、他の投手に比べれば優秀な成績かな。故障さえなければ来年は15勝以上できるだろう。

ボストンというところ、あまり知識がなかったが、調べてみればかなりレベルの高い文化都市である。学術都市ともいわれるが、マサチューセッツ州の州都で人口58万人、そのうち学生が24万人もいるそうだ。有名なハーバード大学とマサチューセッツ工科大学が近郊にある。ボストン美術館もある。資産家も多いという。松阪ひとりでさらに活性化した都市になるというわけではないが、日本から注目され、観光客も激増することなきにしもあらず。

来年の松坂の活躍が楽しみである。松井やイチローよりも注目される選手となること間違いない。

読書録「沖縄はゴジラか」

2006年12月12日 | Weblog
花田俊典著の「沖縄はゴジラかー<反>・オリエンタリズム/南島/ヤポネシアー」(06.5 花書院)を読む。
先週の日曜日、県立図書館の新着本コーナーで偶然目に入った本であった。書名もカバーの写真も変だったので、あまり期待せずページを繰ってみたが興味をそそられて借りた。

本土の沖縄文化に関心をもった人たちのオリエンタリズム批判、沖縄方言論争、沖縄文学評論など書かれている。読んでいる途中にネットで知ったのだが今年の沖縄タイムス出版文化賞に選ばれた本らしい。
書名の意味は長くなるが次のようになる。「映画別冊宝島2 怪獣学・入門」に長山靖生氏の「なぜゴジラは南から来るのか」という評論が載っている。そこには近代日本の南洋志向について書かれ、もともと南国に理想郷を夢見る文化的伝統があって、我々が忘れてしまった素朴な人間本来の自然な生活があるにちがいないという幻想が深まってしまったというのだ。ゴジラは近代人が喪失した原初的人間の姿のメタファなのだ。ゴジラは近代文明の歪を指弾するためにやってきたのである。いわばゴジラは近代文化の補完的な存在である。
沖縄=前近代=温かい社会というように本土が沖縄に補完装置として要請していることがそっくりだというのである。

まずオリエンタリズムの持ち主として池澤夏樹が槍玉に上げられる。池澤夏樹は自らオリエンタリズムを「自分たちにないものを他の土地に仮にあるように幻想して、それに憧れる勝手なエキゾシズム」と解説している。著者は、古くは柳宗悦、谷川健一、池澤夏樹をオリエンタリストと見なしているが、はっきり言ってないが柳田國男と島尾敏雄にも言及している。島尾敏雄は昭和36年に初めてヤポネシアという概念を使い始める。日本という国は画一的でいやだったが、よくみると東北と沖縄に多様性があるので、日本をヤポネシアと呼んではどうだろうかというものだ。
本来のオリエンタリズムの意味は上のようなものではない。
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(ウイキペディア抜粋)
パレスチナ出身のアメリカの批評家、エドワード・サイードが著書『オリエンタリズム』Orientalism(1978年)において今日的な意味を確立した概念。
東洋を不気味なもの、異質なものとして規定する西洋の姿勢をオリエンタリズムと呼び、批判した。
オリエンタル(東洋、東洋的、東洋性)は、西洋によって作られたイメージであり、文学、歴史学、人類学等、広範な文化活動の中に見られる。それはしばしば優越感や傲慢さ、偏見とも結びついているばかりではなく、サイードによれば西洋の帝国主義の基盤ともなったとされる。
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とするならば、幻想してから憧れるというのではない。
沖縄が方言や伝統祭祀や心の温かさを失っているのにそういったものに憧れるとするなら、それは幻想だ。柳宗悦、谷川健一、池澤夏樹、柳田國男、島尾敏雄が見た沖縄には、実際に憧れるべき実体があったのではないか。
小生、沖縄のサンゴ礁の海には憧れる。しかし、サンゴが死滅して幻想になってしまっているのかな。

昭和15年に始まった沖縄方言論争についても多面的な分析がされている。沖縄固有の文化の保存を主張する柳らの日本民芸協会と、皇民化政策と軍国主義下の国家精神総動員運動の一翼として、標準語励行運動を推進する沖縄県当局の主張との対立のほかにもうひとつ。差別から脱却するために性急に近代化を急ぐ沖縄自身の主体性もあった。おそらく、この主体性は、本土復帰前の標準語励行運動として亡霊のように再現したのだろうか。
島尾敏雄が沖縄方言論争について「ある日、民芸品をあつかう目付きで沖縄が見直された。大和の人は物ほしそうに沖縄を見物に出かけて行った。そしてそこで、野放しにされている、感情の豊かな藝術品と、島の人々がおしげもなく使う典雅な古脈を伝えたとおぼしい言葉を見出した。旅行者は、それらが保護されずに滅び行くにまかせられていることをなげいた・・・」と言及している。

この著作、読み応えがあり、沖縄文学評論もじっくり読んでみたいので手元に置いておきたい。沖縄タイムス出版文化賞に選ばれたんだ。タイムスの講評を読んでみたい。授賞式は今月20日か。著者は2年前に若くして亡くなられている。家族の方が出席されるのだろうか。

出版社の賞ビジネス

2006年12月08日 | Weblog
ずっと出版業界は不景気といわれながら、積極的な企画・営業で業績を上げている出版社がある。それは東京に本社がある新風舎である。そのことは作家の藤原新也氏のブログで詳しく知ることができた。

新風舎のサイトにアクセスしてみたら
「新風舎では、出版したい人のためのコンテストを各種開催しています。
あなたの原稿をお待ちしておりますので、ぜひご応募ください。
出版された本は書店やネットで販売され、絶版しないで永く売り続けられます」
というキャッチコピーが目をひく。
各種コンテストの数が下記のように20以上もあるではないか。かなりの実績を持ち、回数を重ねている賞がある。大賞には賞金100万円と作品の出版化というものもある。
出版社が主催する有名な賞としては、芥川賞、直木賞、江戸川乱歩賞などあるが新風舎1社の賞としては多すぎる。これが生き残っていくための「賞ビジネス」である。
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新風舎出版賞 28回
新風舎えほん大賞 14回
関西弁あじわい大賞
私の“夢”サクセスストーリーコンテスト
旅と自然のフォトコンテスト
新風舎・平間至写真賞 11回
新風舎文庫大賞
ポストカードブック大賞
福永冷三児童文学賞
フーコー短編小説コンテスト 22回
ギフトブック・詩のコレクションコンテスト 20回
マウンテンルート「ポエムの森コンテスト」
恋のエンボエ「短いコトバで綴るLOVEメッセージ」
祭り街道文学大賞
フーコー短歌賞
フーコー21世紀エッセイストコンテスト
フーコーエッセイストコンテスト
旅と自然のフォトコンテスト
三都物語短編小説文学大賞
新聞に載らない小さな事件コンテスト
恋のショートフレーズコンテスト
恋愛文学コンテスト
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各賞への作品応募者には、第一次審査、第二次審査をパスして最終審査で惜しくも選に漏れたという通知が新風舎から来る。そこから営業が始まる。応募者の作品は優秀なのでこのまま埋もれてしまうのは勿体無いからといって共同出版を持ちかける。見積書を提示されるが、かなり高く通常の倍くらいのようだ。出版費用を新風舎は一切負担しない。宣伝や保管などほとんど経費のかからないところを協力するというのだ。書店に置いてもらうために歩くこともしない。いわば高くかかる自費出版だ。藤原新也氏のブログに寄せられた体験談がまとめられている。
新風舎にはリスクがまったくなく、儲かるのだ。だから「賞ビジネス」は効率が良い。営業ターゲットは応募者であり、プロフィールも分かっているから頭脳的な営業ができる。
無料の「出版相談会&セミナー」も各地で催しており、まさに「自費出版が進化した新風舎」である。
賞ビジネスは違法ではないが、批判されるだろうな。狡猾といおうか。
小生は20年前に旅行記を500部自費出版したことがある。210ページのハードカバーで100万円かけたな。

流行語大賞

2006年12月05日 | Weblog
今年の流行語大賞が先週に決まった。「イナバウアー」と「品格」だった。前者が形なら、後者は概念のようなものか。流行語大賞は、毎年、惰性のように続いていてなくなってもよいものだが、後世の人にとって世相の歴史を研究する際に面白いかもしれない。そういったものであろう。去年は何が選ばれたのか記憶にもない。

(荒川静香嬢の「イナバウアー」と藤原正彦氏の「品格」)
イナバウアーは今年の冬季トリノ・オリンピックの女子フィギュアで優勝した荒川静香嬢が演じた技の名称である。昔、ヨーロッパのイナバウアーという選手が始めたものだが、本来は足を180度の角度に開いて横に滑って行く技である。荒川選手の技は体を反らすのが注目されて、それがイナバウアーだと勘違いした人が多かった。他にあのように体を反らす選手がいなかったので目をひいた。優勝したから話題になり、流行語大賞にまつり上げられたと言ってよい。そういえば、亀やアザラシのイナバウアーも見せられた。

品格は、数学者でエッセイストの藤原正彦氏が書いた「国家の品格」(新潮新書)が200万部以上も売れ、テレビ番組でも「品格」がテーマになったりして、もうひとつの流行語大賞として選ばれた。この本、著者の今までの持論をわかりやすくまとめたもので、新しい視点だったのでベストセラーになったのだろう。養老氏の「バカの壁」よりも発行部数は多かったのだろうか。
品格ある国家の指標として4点があげられている。①独立不羈、②高い道徳、③美しい田園、④天才の輩出 である。自分の意志に従って行動できる独立国になれ、武士道に学べ、美しい情緒があれ、市場原理主義を捨てろ である。

さて、来年はどんな流行語が話題になるだろうか。