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目取真俊の短編集「水滴」に収められている「風音」。その短編を映画化のために目取真俊が長編に書き直し、脚本まで書いた。
主なキャストは、オーディションで素人を採用している。主人公の清吉もそうである。ロケは沖縄北部の今帰仁村と本部町で2003年の8月から9月にかけて行われた。
短編は、記憶に残るほどいい作品だと思う。長編はエンタメになるよう尾鰭をつけてストーリーもかなり変えている。夫のDVから逃げ出し帰郷した子連れの女性、その女性への浜辺でのレイプ、夫の殺害は余計である。冒頭のバス内でのアゲハ蝶で何かを暗示しようとしてるのだろうが下手な技巧である。沖縄の風景の中で撮影したということで注目できる作品になっている。
短編「風音」について以前、読書録として次のように残していた。
「風音」:
泣き御頭(うんかみ)と呼ばれる頭蓋骨の話。
崖の上の壕の風葬場に頭蓋骨があった。その二つの眼窩に風が吹き込み、こめかみの穴から漏れる時に音がした。
戦争中に主人公清吉の父が運んだ特攻隊員の死体の頭蓋骨だった。その時、清吉は見ており、特攻隊員の万年筆を自分のものにして隠していた。それ以来ずっと罪悪感をもっていたのだ。
ある日、その泣き御頭の取材にテレビ局の担当者が村にやってきた。清吉は非協力的であった。複雑な気持ちがあったのだ。テレビ局の藤井という男は、戦争の終わる頃、その特攻隊員と同時に出撃することになっていたのだった。彼も戦争を引きずって生きてきたのだ。
しかし、撮影されないまま、御頭は崖から落ちて粉々になってしまう。
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2004年6月10日の長編「風音」の読書録より:
1997年に発行された単行本「水滴」に載せられた短編を長編化して今月発行されたばかりである。その短編は、1985年から翌年にかけて沖縄タイムスに連載され、大幅に加筆修正された作品である。
どうしても、短編と比較してしまう。映画化を契機に書き直されたので、ストーリーも登場人物も映画用に変化している。
泣き御頭が中心となる。泣き御頭とは頭蓋骨である。海辺にある崖の壁の風葬場に置かれ、海から風が吹くと、頭蓋骨の中に風が流れ込み、あたかも泣くように鳴るのである。村にとっては、なくてはならないものになっている。それは、戦中にマングローブの林に流れ着いた特攻隊員の死骸の頭蓋骨であった。
本土から家庭内暴力の男から逃れてきた母子と特攻隊員に恋心を抱いていた従妹の登場は、なんとなくかったるさを感じる。
泣き御頭が置かれている場所の位置や状況が、文章だけでは今一つはっきりイメージできなくて不満が残る。
主人公のひとりである清吉が、特攻隊員の持ち物であった万年筆から名前まで知っているのに、なぜ、その従妹に彼であることを言えないのか、もどかしさを感じる。
場所は、彼の育った今帰仁村の大井川の河口付近であろう。彼の作品にはよく使われるところである。
短編のほうが、歯切れがよくて印象に残るように思う。目取真俊の初めての長編小説としていい経験になったと思うが、彼の限界も感じさせる。芥川龍之介のように短編小説に特化するのもいいかもしれない。
次回作に期待したい。
映画をぜひみたい。
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私のブログ日記に掲載する「風音」の画像を探していて、この記事を見つけました。
引用元リンク掲載の上、画像をお借りしております。
事後承諾で申し訳ありません、許可いただけない場合は画像とリンクを削除いたします。
ご面倒ですがご連絡いただければ幸いです。
映画としての完成度はあまり評価なさっていないのですね。
私はまだ原作を読んでいないのですが、映画「風音」の魅力はたくさんあると感じています。
子供たちの活き活きした姿、自然、清吉オジイを演じた素人さんの魅力など…
あまり知られていないと思われる映画なので、多くの人に観てほしいなと思います。
清吉さんがはっきり言わない、そこも沖縄っぽさかなと思いました。
でも「また来てください」この一言が重要なのかなと。
いつか万年筆を渡してあげるときもくるかもしれません…
初めてお邪魔したのに長文でたいへん失礼いたしました。
ご連絡いただく場合は私のブログの「管理者にメール」からできます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
http://ontheway.ti-da.net/e8659858.html
連続コメント、失礼いたしました。
上記とは別に映画レビューのブログをしておりまして、
そちらに、この記事へのリンクを貼らせていただいております。
よろしければご訪問くださいませ。
http://onthewayto9.blog.fc2.com/blog-entry-27.html
そちらには画像はお借りしておりません。