今日、沖縄の出版社ボーダーインクからDMが届いていた。そのなかに新しい出版目録が入っていた。
ボーダーインク社は新刊をコンスタントに発刊していて沖縄では優良な出版社である。挨拶文のなかに、去年は新刊が17タイトル、増刷が12タイトルだったと書かれていた。これは例年並だそうだが、売上は前年比マイナスだったという。赤字ではないそうだから悪くはない。那覇国際通りの書店が1店だけになったという。5年前は4店あったはずだが、リウボウのリブロだけになったのだろうか。同業出版社も消えたり、開店休業状態になっているようだ。「こうした光景を現出させているのは、たんなる出版不況というのではなく、活字文化の存立そのものが問われている」と危機感を述べられている。
ボーダーインクの出版目録のなかには佳い本が多い。それを挙げてみよう。「沖縄の方言札」、「沖縄うたの旅」、「泡盛の文化史」、「シマの見る夢」、「沖縄人物シネマ」、「琉球列島ものがたり」、「図説沖縄の鉄道」、「松山御殿物語」、「黒砂糖の歴史」など。
沖縄県産本の新刊情報は下記ブログで発信されている。
沖縄県産本ネットワーク
今年は薩摩の琉球入り(1609年)から400年目。何か新しい企画物があることを期待したい。
下記は、小生が7年前にホームページに「沖縄県産本」と題してアップしていた記事である。
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沖縄には地方出版社が50以上もあり、いわゆる「沖縄県産本」が年間300点以上発行されている。これほど出版社が多いのは、沖縄が独自の歴史や文化や自然をもっているからだといわれる。全国的に出版業界は年々業績が悪化しているのだが、沖縄出版業界はボーダーインク社を中心として元気である。
代表的出版社は沖縄タイムスと琉球新報の二大新聞であるが、沖縄出版、ボーダーインク、那覇出版社、沖縄文化社、ひるぎ社、ニライ社、ゆい出版などもユニークな本を送り出している。本土では、東京の取次ぎ会社「地方・小出版流通センター」を通して書店でこれらを購入できる。
1970年代後半、県産本の販売方法はセット販売による職域、家庭販売など出版業者の外販がメインだった。まだ書店が少なくて、店舗販売だけでは経済的に成り立たなかったのだ。
変わってきたのは沖縄タイムス社の「沖縄大百科事典」刊行のころだといわれる。沖縄のあらゆる事象をまとめる作業に、多くの人々が関与し、出版に必要な編集者やライターや技術者が育った。また、戦後生まれの世代が増え、ヤング層に向けた出版物が求められるようになっていた。
1980年代後半からは書店も増え、外販に頼らない販売も可能になった。しだいに従来の自然関係の図鑑や沖縄戦ものから、地元の若い世代や本土からの観光客向けの多様なジャンルの本の発刊へと変わった。県内の各書店で「おきなわキーワードコラムブック」(沖縄出版・1989年刊)がベストセラーにもなった。
先にあげた「おきなわキーワードコラム」は10万部近いベストセラーだ。これは執筆者が約70人もいて、ウチナンチュが普段しゃべっている言葉を集め、面白おかしく書かれたものだ。
今までで最高のベストセラーは大田昌秀氏の「これが沖縄戦だ」(那覇出版社 初版昭和52年)である。23刷発行され20万部以上というロングセラーだ。米国国防総省から借りた写真をたくさん使っており、迫力と具体性のあるドキュメンタリー本だ。琉球新報に連載していたので発行は琉球新報社であるが、出版は那覇出版社である。この本の出版化の際、本土の出版社からの引き合いが殺到したというからスゴイ。しかし、大田氏は沖縄の出版社から出した。本土の出版社が発行すればもっと売れていたであろう。
独断であるが面白くて為になる沖縄県産本をあげてみる。
「沖縄・国際通り物語」:大濱聡、ゆい出版
「首里城を救った男」:野々村孝男、ニライ社
「アコークロー」:宮里千里、ボーダーインク
「新南嶋探験~笹森儀助と沖縄百年~」:琉球新報社
「筑紫哲也の世・世・世」:筑紫哲也、沖縄タイムス
沖縄関連本は本土の出版社も発行しており、かなり好評である。沖縄出版業界は地団駄ふんでるかもしれないが、刺激をうけていい面もあるだろう。
沖縄の出版社の編集者などで「沖縄県産本ネットワーク」という親睦団体をつくっている。それが1999年から毎年、「沖縄県産本フェア」というイベントを二週間ほど開催し、沖縄出版業界の発展に努めている。30社近くが1200点以上を展示販売し、好評のようだ。
最近はネット通販にも力を入れている出版社も増えており、本土からでも早く手に入れやすくなっている。沖縄県産本は2千部売れれば良しとするそうだが、息の長いロングセラー本を多数出して欲しい。
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