ある旅人の〇〇な日々

折々関心のあることや読書備忘を記録する

ソニーの不振

2005年09月27日 | Weblog
ソニーの業績が悪いと聞いていたが、今期損益は100億円の赤字になるという。中期経営計画を策定してリストラにも取り組む。従業員15万人のうち1万人も削減。
ソニー不振の原因は、いろいろ考えられる。企業ドメインを拡げすぎたことでの経営資源の分散。世界の優良企業を自負した慢心。創業者はカリスマ的な井深・盛田氏、その後が大賀・出井氏。出井氏は容貌とファッション性の良さを注目されていたが、大企業の経営者としての能力はどうだったのだろうか。

ソニーはアメリカへトランジスターラジオの売り込みに成功したことが発展の大きな契機になったと聞いている。携帯音楽プレイヤーのウオークマンやブラウン管テレビのトリニトロンは大ヒット商品になった。音楽・映画・インターネット事業への進出の失敗。テレビは薄型の液晶やプラズマが主流となってしまったのに乗り遅れた。携帯音楽プレイヤーではアップルのアイポッドが一人勝ち。
今回の経営計画では、エレクトロニクス事業に経営資源を集中させ、組織はカンパニー制をやめて部門の壁をなくすという。
小生が今使っているソニー製品はない。数年前に使っていたインターネットのモデムがソニーであった。

そういえば大躍進してきたダイエーが没落して再生企業になってしまった。つい先日、創業者の中内功氏も亡くなってしまった。ダイエーは日本の流通業界に多大な影響を与えてきた。スーパーの「価格破壊」というのはすごかった。ダイエーが不振になってから中内功氏がテレビで話していたことが印象的であった。「ワインブームだからと思って、グラスなど品揃えをよくしたが売れない。何が売れるか分からなくなった」と嘆いていた。安ければ何でも売れるという時代は去っていた。

企業寿命30年説というのがあったが、当てはまるのだろうか。30年というと人間の1世代に相当する。老化だろうな。

「ナマケモノの不思議な生きる術」

2005年09月16日 | Weblog
読書して時が過ぎれば内容は徐々に忘れていき、最後にはきれいさっぱり何も残っていない。だから、読書録は必要であろう。
現在、読んでいる本でも、ゆっくり時間をかけて読むと最初のほうは記憶が定かではない。これは加齢によるものであろう。40歳代後半になると記憶力は弱るようだ。記憶の容量が少なくなり、忘却スピードが速まる。

生物学者の本川達雄氏の「ナマケモノの不思議な生きる術」(講談社プラスα文庫)は読んで楽しい本だ。自然科学の本では珍しいほどだ。最初のページから順番に読むのではなく、面白い章から読み、結局は全部を読んでしまった。著者には「ゾウの時間 ネズミの時間」(中公新書)という著書もあり、ロングセラーであり版を重ねている。
「ナマケモノの不思議な生きる術」を読んでふたつのことが印象的であった。ひとつは、日本の科学と米国の科学は別のものであるということだ。米国の科学は大胆な仮説、すなわちアイデアのようなものが重視されることだ。実験データの積み重ねが重視される日本の科学とは異なっているというのだ。分かるような気がする。映画を比べれば一目瞭然だ。米国の映画はアイデアが勝負なのだ。
もうひとつは、著者が沖縄の琉球大学に長期赴任したことで、沖縄の社会には本土と違うルールがあるということに気付き、それを尊重したことだ。それによって後の研究を方向付けられたのだ。「ゾウにはゾウの時間、ネズミにはネズミの時間があり、おのおのの動物に、おのおののルールや世界観がある」という概念を持つようになったという。

この本の旧題は「歌う生物学」であって、生物に関する面白い詞と曲がいっぱい載せられている。CDアルバムになっているかもしれないので、探してみようと思っている。

このふたつのことで充分なのだが、他にも面白いことが多く書かれている。動物よりも植物のほうが高等であるなんて。なぜなら、植物は動き回らず、殺生もせず、日向ぼっこだけで食物を手に入れているから。植物の構造はレンガ積み建築、動物は骨組み建築。こんな調子である。
サンゴ礁の楽園とそこに棲むナマコが教える逆転の発想など面白い。

追加:
「歌う生物学」CDアルバムは、調べてみれば、「歌う生物学 必修編」に付録として3枚付いていることがわかった。70曲も収められているそうだ。買えば4千円もする。買うまでもないので図書館で借りて聴くことにした。すでに図書館に予約した。


詐欺商法か

2005年09月07日 | Weblog
先週、水道水のアンケートと称して若そうな女性から電話があった。面倒だったが、つい最後まで答えてしまった。確か、水道水に不満があるか、浄水器を使っているか、家族人数、年齢程度の簡単な質問。最初から、怪しいと思っていたが、若そうな女性だったので一応答えたのだが、それが彼らの手だったのだろう。小生は水道水については不満はないと言ったので売り込みまでは行けなかったのであろうと思った。

ところが、今日、男性からこの前のアンケートに丁寧に答えてくれたお礼だと言って電話があった。お礼に浄水器を無料で配りたいというのだ。タダほど怖いものはないと直観した。もちろん、要らないと断った。おそらく、最初、タダで配って、メンテですごい額をボるのであろう。
電話でカモとなりそうな見込み客をさがして、次に無料の商品だと言って訪問し、それからメンテで儲け、さらに他の商品を売りつける流れが読める。
くわばら、桑原。

夜、マンションのドアを順番に叩いて廻る輩がいるが、最近は少なくなった。けっしてドアを開けることはないが。少なくなったのは、ネット詐欺に移行したことも影響しているのかもしれない。毎日、うんざりするほど怪しげなスパムメールが来ているのだ。

訪問販売は利用してはいけない。欲しいときは自分で店に出向いて買うべきである。

「笛師」

2005年09月05日 | Weblog
久しぶりに引き込まれた小説であった。新田次郎の「笛師」(講談社文庫)。
新田次郎はベストセラー作家で作品も多く、どの古書店の棚にもある程度並んでいる。この「笛師」は手に入りにくい文庫本である。笛師というと笛の奏者のことと思っていたが、笛の作り手のことだった。日本の伝統的な雅楽の横笛の作り手。材質は竹である。縦笛である尺八の音はよく聴いたことがあるが、横笛はあまり聴いた記憶がない。高音で遠方まで聞こえるそうである。

(『笛師』の笛:材料は150年経た篠竹、内面には朱漆、紐の桜樺巻き)

この著作、どこがいいかといえば、伝統をテーマにして歴史の深みを感じさせてくれるところだろうか。岡本太郎はどういうかな?「伝統とは創造である」といって一蹴するかもしれない。小説の中で、「かたちができている」というフレーズが何度も出てくる。「かたち」とは、伝統を守っていることである。「かたちができていないと本物ではない」というのだ。

この作品、伝統を背負っていくことの重さ、苦しさを感じさせる悲痛なストーリーである。笛師は長男が継ぎ、次男以下は笛師の下職にしかなれないのだ。時代と場所が急に変化する章立てになっているので少し違和感があったが、解説の所をみると、三つの作品を組み合わせたものであることがわかった。第二章は幕末の頃の尾張藩御土居下同心の市之助のことが興味深く描かれている。藩主の秘密の逃げ道のこと、遠入りの隠密のこと。第四章がヨーロッパアルプスという場所が設定され、絵画の中の横笛のことや笛のおかげで命拾いした笛師の末裔のことが描かれ面白い。いろいろ紆余曲折がありながら伝統が引き継がれていくのである。

久しぶりに一気に読んでしまいたくなる小説であった。新田次郎作品は初めてだった。映画化された「八甲田山死の彷徨」も新田次郎の原作だった。
新田次郎は夫人の藤原ていに触発されて小説を書き始めたという。作家としては藤原ていが先輩だった。息子の藤原正彦氏は数学者だが、本もかなり書いている。

追加;
天候の記述がとても詳しい。新田次郎は、気象庁測候所に勤務していたからであろう。

総選挙9.11

2005年09月02日 | Weblog
9.11は米国同時テロの記念日である。この日を総選挙に選んだのは自民党政府の国際意識の欠如というよりも選挙に勝ちたいという事情が優先したのであろうか。

小生が選挙権を得て初めての選挙は参院選だと記憶している。全国区は田英夫に投票した。当時、テレビキャスターをやっていて目立っていた。ベトナム戦争を取材をしたり、報道の自由を主張したりで反政府的なカッコ良さがあった。知名度、イメージ度抜群でトップ当選したと思う。地方区は共産党候補者に入れた。あのころのヤング層は、左翼に少し同調していることは普通だった。しかし、その後、社会主義国家の失敗や実態が暴露されるにつれて左翼から離れた。現在は、無党派層のひとりである。

今回の総選挙、小泉自民党が圧勝するかもしれない。メディア戦略において多党を寄せ付けない。
古い話だが、米国の大統領選のケネディ対ニクソンで、ラジオの討論ではニクソンが有利だったが、テレビではケネディが圧倒的に有利になり当選したといわれる。テレビでは、討論内容よりも、若さ、表情、容貌を視聴者が評価する度合いが高いのだ。
小泉氏は、郵政法案反対の自民議員に対して、刺客とかパラシュート部隊員とかいわれる候補者を選んで送り込んだ。その候補者は政治にあまり縁のない証券エコノミスト、カリスマ主婦、学者など女性が目立つ。投票に行ったことがないというホリエモンや優秀そうな医師や古志村元村長さんもいる。岐阜の野田聖子氏への刺客佐藤ゆりこ氏はWEB世界では性的関心をもたれる状況である。
これらによって話題をつくり、メディアに取り上げさせ「郵政改革」総選挙にしてしまった。ほかの争点はないようにされてしまった。
テレビ各局で党首に討論させているが、小泉氏が服装でも声の大きさでも元気さでも目立っている。まるで小泉劇場化している。他党首の存在感が薄いのだ。選挙参謀は武部幹事長であろうが、小泉氏の秘書の鮫島氏あたりが実の参謀であろう。
新党日本、国民新党、新党大地はインパクトにも欠けており泡沫政党になるだろう。
おそらく、この総選挙、自民党の圧勝であろう。