ある旅人の〇〇な日々

折々関心のあることや読書備忘を記録する

「千の風になって」

2007年02月27日 | Weblog
テノール歌手の秋川雅史が唄う美しい歌。この歌を聴いたのは今年になってからであるが、すでにシングル盤が50万枚以上も売れ、あの「もののけ姫」を超えたという。昨日の国谷さんのNHK番組「クローズアップ現代」で特集していた。途中からみたのであるが、作家の新井満が出演していた。彼の訳詞・作曲の歌であることがわかった。この原詩、マリリン・モンローや9.11などの追悼で朗読されてきたという。

新井満の訳詞は次のようになっている。
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 私のお墓の前で 泣かないでください

 そこに私はいません 眠ってなんかいません
 千の風に
 千の風になって
 あの大きな空を
 吹きわたっています

 秋には光になって 畑にふりそそぐ
 冬はダイヤのように きらめく雪になる
 朝は鳥になって あなたを目覚めさせる
 夜は星になって あなたを見守る

 私のお墓の前で 泣かないでください
 そこに私はいません 死んでなんかいません
 千の風に
 千の風になって
 あの大きな空を
 吹きわたっています

 千の風に
 千の風になって
 あの大きな空を
 吹きわたっています
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秋川雅史の声は美しいが、詩も美しい。遺族を慰め、癒してくれる歌だ。
死者は千の風になって吹き渡り、光になって降り注ぎ、雪にもなり、鳥にもなり、遺族を見守ってくれているのだという。
テレビでは、父親を亡くした母子(子は3人の女児)がこの歌を唄って癒されているシーンを流していた。それをみて新井満は涙を流して泣いていた。新井満は若い頃はシンガーソングライターだった。ワイングラスの歌を歌っていた記憶がある。

この原詩、ネット検索してみると、アメリカのメアリー・フライという女性が1932年に作ったものだという。ドイツのナチスから逃れてアメリカにやってきていたユダヤ人マーガレットを慰めるためにつくった詩である。ドイツで亡くなった母の墓に参ることができないと嘆いていたマーガレットのために。原題は「Do not stand at my grave and weep」である。訳詞は原詩とは少し異なっているが、意味はほぼ同じである。直訳ではなくて美しい日本語になっている。 
「千の風になって」はずっと日本でも歌い続けられる名曲になると思う。新井満はすばらしい詩と曲をつくった。

志布志事件

2007年02月26日 | Weblog
志布志事件とは、2003年4月の鹿児島県議選で、志布志町(現志布志市)で起きたとされる選挙違反事件である。当選した中山信一元県議が志布志町の懐(ふところ)集落の有権者に200万円ほど配ったとしてあわせて13人が公職選挙法違反で逮捕・起訴された。懐集落は7世帯、人口20人であり、すべての世帯の人が逮捕・起訴されたのである。
2007年2月23日、鹿児島地方裁判所は自白した6人の供述に信用性がなく、現金を配ったとされる元県議にも、アリバイがあるとして、被告全員に無罪判決を下した。

テレビ報道によると、志布志警察署の署長を出世争いで優位に立たせるため、選挙違反をでっち上げて検挙を計画した模様である。その署長の警視と県警の警部が中心になったことがわかっている。まるで江戸時代か小説の世界の事件のようで呆れてしまう。
捜査官が筋書きを書いて、それに基づいて自白させるというのは、鹿児島県警では「たたき割り」と呼ばれ、独特の手法だといわれる。薩摩藩のじげん流からきているのかな。冤罪だが、なかった事件をあったかのように装い、13人も容疑者を仕立てたなんて、起こり得ないことが起きたまるでマジック・リアリズムの世界だ。今まで何人が「たたき割り」の犠牲になったのだろうか。

取調べでは、親族の名前などが書かれた紙を踏まされる「踏み字」行為がなされ、テレビでは実演までしていた。まさかキリシタンの「踏み絵」じゃあるまいし。そういう風習が鹿児島では続いていたのだろうか。自白しないと死刑にすると脅迫された容疑者もいたというではないか。集落近くを流れる福島川の滝つぼに身を投げ、自殺を図った容疑者もいた。
現金を配った会合は4回あったことになっており、そのうち初回と4回目の日時が特定されている。それも自白した6人のアリバイがない日時を見つけて特定したというから呆れてしまう。「志布志事件」は記憶に残る事件として言い伝えられるだろう。鹿児島県警、どうする。

鳥飼否宇のミステリー小説「中空」というのを思い出した。事件の舞台が鹿児島の竹林のある山村だった。懐集落のような小さく静かな村。

追記
昨日もテレビでこの事件の関連報道がされていた。鹿児島県警では「がい殺し」という自白手法の用語があるそうだ。「自白しないと殺すぞ」と脅すそうだ。死刑にするぞというのもそうだ。「踏み字」が「たたき割り」に相当するようだ。
検察側の控訴はあるのかな。ないだろうな。(2月27日)

同和書籍購入の強要

2007年02月18日 | Weblog
先日、広島と岡山の出版業者が企業を脅して関連書籍を購入させた恐喝容疑で役員等が逮捕された。関わった社員も逮捕されるようだ。テレビのニュースでは被害者が法律事務所からも出ているのを聴いて驚いた。弁護士もびびって買っていたなんて情けない。

広島の業者は、3年間で18億円も売り上げているという。1冊5万円程度だから単純に計算すれば3万6千もの企業や団体が被害者だ。関連書籍といっても他の書籍から寄せ集めてまとめただけのもので2000円程度の価値のものらしい。加えて、北方領土問題の書籍も強要していた。「買わないと街宣車を回す」と脅していたので明かに恐喝だ。と右翼の団体を騙っていたのだ。この業者、平成10年の設立で、電話のマニュアルまでつくっていたというから、ビジネスとして定着させていたともいえる。社長は名前からして在日韓国人か朝鮮人のようで、2億5千万円の脱税の容疑もあるという。

このニュースを聴いて記憶がよみがえった。小生、9年前に岡山のある病院で事務長代理をしていて、その書籍を買ってくれという電話を受けたことがあるのだ。団体を名乗り、淡々と話す女性から数回かかってきたが、そんな高額の書籍を買う余裕がないといって断っていた。小生を諦めたらしく、次ぎは院長に電話を繋げてもらったようで、院長が感情的な対応をしていた。小生は事情があって退職したので、どういう結末になったか知らない。

「書籍」で検索したら1998年に総務省が書籍の購入強要について業者を指導したという答弁の記録があるではないか。どういう指導をさせたのだろうか。行政側も団体に対しては弱いから、おざなりな指導しかしなかったのではないか。文書でも送りつけて注意しただけだろう。もっと徹底的にやっておれば、こういう輩を殲滅して被害者も出なかったであろう。

ドラマ「華麗なる一族」

2007年02月16日 | Weblog
先月からTBS日曜劇場の番組で放映されている山崎豊子原作の連続ドラマである。すでに半分の第5話まで終わった。キムタク主演なので毎回の視聴率が20%を超えている。
TBS日曜劇場「華麗なる一族」
1960年代の神戸を舞台に万俵財閥の一族の葛藤や愛憎を描いて面白い。時代背景は大蔵省主導で金融再編が行われ、銀行の吸収合併が画策されようとしているころ。万俵財閥の中心である阪神銀行は、全国の都市銀行のなかで第10位にあり、政府への積極的な働きがなければ飲みこまれる運命にある。そこで閨閥など利用し、手段を選ばず、「小が大を飲みこむ」戦略に出るのだ。万俵財閥のもうひとつの主要企業はキムタクが専務である阪神特殊製鋼である。高炉建設で銑鉄を自社で供給しようと計画し、銀行融資を受けるために必死である。阪神銀行のモデルは神戸銀行、阪神特殊製鋼のそれは山陽特殊製鋼である。神戸銀行は太陽銀行と合併し、太陽神戸銀行になったが、山陽特殊製鋼は過大設備投資で倒産している。これからのドラマの後半は、阪神特殊製鋼の倒産とキムタクの破滅に向かって行く。

小生、昔、「華麗なる一族」の映画を観たことがある。万俵大介を佐分利信が演じていた。万俵鉄平は仲代達矢、妾の高須相子は肉感的な京マチ子だった。他は覚えていない。
万俵大介と万俵鉄平の葛藤はどこから来ているかというと、鉄平が大介の反対を押し切って、経済学部ではなく工学部へ行ったことである。もうひとつは、鉄平が祖父の子ではないかと疑っていることだ。鉄平が祖父に似ているのだ。キムタクに似せて描いた祖父の可笑しな肖像画、そして似た仕草も。邸宅の池に棲息する将軍と呼ばれる大きな錦鯉はキムタクが手を叩くと水面に現れる。祖父が手を叩いたときしか現れなかった将軍が。
財閥の一家は確かに外見は華麗であるが、妻妾同衾(3P)や閨閥づくりや裏切りなどで中身は腐っている。
柳葉頭取とキムタクが山で猟をしているとき、イノシシが襲ってくるシーンがあったが、あのイノシシの動きは変だった。肖像画、将軍、イノシシは話題になるほど三大可笑しいもの。

万俵一族の主な俳優
・木村拓哉(阪神特殊製鋼の専務・万俵鉄平)
・鈴木京香(万俵家を取り仕切る女執事・高須相子)
・長谷川京子(閨閥結婚ながら、鉄平と真実の愛を貫く妻・万俵早苗)
・山本耕史(クールな次男・万俵銀平)
・山田優(銀平の妻・安田万樹子)
・相武紗季(恋愛結婚を貫こうとする次女・万俵二子)
・仲村トオル(大蔵省のエリートにして、切れ者の男・美馬中)
・吹石一恵(閨閥結婚で愛の無い生活を送る、万俵家長女・美馬一子)
・原田美枝子(万俵家の子供を育て上げて来た母・万俵寧子)
・北大路欣也(万俵一族の家長であり阪神銀行のオーナー頭取・万俵大介)

キムタクのギャラは6千万円といわれるが、その他の俳優も主役級なので全体のギャラは相当なものだ。スポンサーはどこなのだろうか。山崎製パンが便乗して「華麗パン」なるものを販売してよく売れているそうだ。これはスポンサーではないだろう。TBSは採算が取れるのだろうか。DVDボックスはどの程度売れるだろうか。
頭髪一九分けで「だいたいやね」という評論家の竹村健一は山陽特殊製鋼の調査担当の管理職をやっていたそうだ。辛口評論家の佐高信によると倒産前に逃げ出したらしい。
ちなみに太陽神戸銀行は太陽神戸三井銀行になり、現在は三井住友銀行である。神戸はすっかり飲みこまれてしまった。