ある旅人の〇〇な日々

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「ちんだら節」と「星の砂」

2006年08月18日 | Weblog
「ちんだら節」は、八重山諸島の黒島に古くから伝わる民謡である。琉球王府から新村開拓のため石垣島へ強制移住させられた黒島の人々の受難を伝える歌謡である。そこには若い男女の別離を謡うことで悲しさをいっそう深いものにしている。歌詞の意味は次のようなものである。

 あなたと私とは子どもの時から遊び友達だった
 島のある限り、村のある限り、友達だと思っていた
 夜業や共同作業も二人だった
 山や海へ行くのも二人だった
 別れたくないのに首里王府から移住せよと命令された
 男は黒島に残された
 女は島に置いてくれと願ったが石垣の野底へ強制移住させられた
 いやいやながら引き裂かれてしまった

王府の偉大な政治家である蔡温は、王府の財政を豊かにするため八重山の新村開拓の施策を行った。蔡温はシナに留学して土木学や風水学の知識を身につけていたのだ。黒島でも1732年にの道を境界線にして機械的に一方を強制的に移住させた。これは「道切り寄人法」と呼ばれた。それによって歌に謡われている女性は石垣島の野底へ行かされたのである。

昨日、黒島出身の人から、小柳ルミ子が唄った「星の砂」(関口宏作詞、出門英作曲)と「ちんだら節」は内容が同じだと教えていただいた。「星の砂」は1977年にパイオニアからシングルレコードとして出されている。アイドル歌手だった若き小柳ルミ子が絶唱することでこの曲は随分流行ったと記憶している。曲はずっと覚えていたが、歌詞はあまり記憶になかった。
歌詞は「♪二度と出来ない恋を捨てあなた遠く」で始まる。島の女性がずっと愛を育んできた男性と定めにより別れて、石垣に嫁がなければならない辛さ、悲しさを歌っている。親の意向で裂かれたのかもしれない。女性は岬にひとりたたずみ、美しいサンゴ礁の海を見ながら過去を思い出し、男性の住む島に別れを告げる。星の砂を散りばめることでロマンチックさをかき立てる。

作詞の関口宏は、おそらく「ちんだら節」に触発されてこの歌詞を書いたのだろう。パクリだともいえるが著作権など関係ないので特に問題はない。この歌が流行った当時、内容が「ちんだら節」であるという噂は聞いたこともなかった。小生、「星の砂」がリリースされてから約30年経って初めて、この事実を知ってしまった。