西村京太郎の十津川警部シリーズものである。十津川警部「オキナワ」(2004年、光文社カッパ・ノベルス)。
この本、帯が立派である。その帯に「第8回日本ミステリー文学大賞!」と書いてある。このミステリー小説がその受賞作ではない。日本のミステリー文学に貢献した作家が毎年表彰されているようである。著者がそれを受賞した年に発行されたから、そのようなキャッチを使ったのだ。第8回ということは、ミステリー小説の大御所のなかで8番目の作家ということであろうか。
さらに、帯に「著者のことば」として、沖縄の取材が5度目であり、二つの沖縄を感じると書いている。すなわち、美しい海と大らかな人情がいつもと変わらない沖縄、そして米軍基地のある沖縄。この小説では、後者の沖縄を浮き彫りにするため、タイトルに「オキナワ」が使われているのである。
ストーリーは、取材した割にはお粗末である。東京巣鴨駅前の安ビジネスホテルの部屋で中年男の他殺体が見つかった。血文字のダイイングメッセージが部屋の床に書かれていた。シャーロックホームズの古典的なミステリーみたいで、かえって新鮮に感じてしまうが。その文字は片仮名で「ヒガサ・」というもの。
ここで十津川警部が登場し、その文字から「比嘉」という沖縄の名字を推理する。死体に盲腸の手術痕があったので、沖縄県警に照会したら、その男の身元が分かってしまう。トントン拍子である。十津川は沖縄に飛ぶのだ。「ヒガサ・」が「比嘉さきこ」であることもわかる。比嘉さきこの妹が比嘉みどりで、彼女と協力して事件を解決してしまう。彼女は旅行代理店のガイドをやっているので沖縄の名所のあちこちを読者に案内までしてくれる。十津川シリーズではブルートレインなど列車が舞台によく使われるが、沖縄のモノレール「ゆいレール」がしっかり使われている。犯人が車両の窓からバッグを投げるシーンが出てくるのだが、あの車両の窓は開けられただろうか?
沖縄の伝統的家屋の屋根が赤煉瓦であると書いているのだが、あれは赤瓦なんだよ、京太郎先生。それにソーキそばの説明で文字数を稼がないでくれ。
行方不明の比嘉さきこは、生きていた。米軍基地からまだ使える廃棄銃器の横流しに関わっていたのだ。その組織から抜けたがっていたので仲間の戸田と米軍人に殺されてしまう。戸田も基地内に逃げ込む。地位協定で基地内には手が出せない。運良く、基地内で食中毒がおこり、戸田も発病し、基地から連れ出すことに成功して目出度し目出度し。
暇な時間をつぶすのにもってこいの作品である。
京太郎先生、本当に取材やったのだろうか。沖縄までモノレールに乗りに行っただけだろう。
京太郎先生の沖縄を舞台とした作品では、「幻奇島」と「海の挽歌」がある。前者は、離島舞台の民俗的ホラー推理小説で、取材・文献調査にも時間も金もかけているようで結構楽しませてくれた。後者は、地位協定で罪を免れた米軍人に復讐するというもので、これも楽しめた。だが、今回の作品は、手抜きが感じられる。もう、京太郎さんの時代は終わった。
追記:
ゆいレールの客室窓について沖縄都市モノレール株式会社に問い合わせたら下記のような返事をいただいた。
京太郎先生、バッグを窓から投げ落とすのは難しいようだよ。いい加減なこと、書かないようにして欲しい。
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いつも、ゆいレールをご利用頂いてありがとうございます。
問い合わせについてお答えします。客室窓の上部の部分が内側に開きますが、わず
かな隙間しか開きません。モノレールが高所を走行しているため、窓から物が落ちる
のを防ぐためです。
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3月31日
この本、帯が立派である。その帯に「第8回日本ミステリー文学大賞!」と書いてある。このミステリー小説がその受賞作ではない。日本のミステリー文学に貢献した作家が毎年表彰されているようである。著者がそれを受賞した年に発行されたから、そのようなキャッチを使ったのだ。第8回ということは、ミステリー小説の大御所のなかで8番目の作家ということであろうか。
さらに、帯に「著者のことば」として、沖縄の取材が5度目であり、二つの沖縄を感じると書いている。すなわち、美しい海と大らかな人情がいつもと変わらない沖縄、そして米軍基地のある沖縄。この小説では、後者の沖縄を浮き彫りにするため、タイトルに「オキナワ」が使われているのである。
ストーリーは、取材した割にはお粗末である。東京巣鴨駅前の安ビジネスホテルの部屋で中年男の他殺体が見つかった。血文字のダイイングメッセージが部屋の床に書かれていた。シャーロックホームズの古典的なミステリーみたいで、かえって新鮮に感じてしまうが。その文字は片仮名で「ヒガサ・」というもの。
ここで十津川警部が登場し、その文字から「比嘉」という沖縄の名字を推理する。死体に盲腸の手術痕があったので、沖縄県警に照会したら、その男の身元が分かってしまう。トントン拍子である。十津川は沖縄に飛ぶのだ。「ヒガサ・」が「比嘉さきこ」であることもわかる。比嘉さきこの妹が比嘉みどりで、彼女と協力して事件を解決してしまう。彼女は旅行代理店のガイドをやっているので沖縄の名所のあちこちを読者に案内までしてくれる。十津川シリーズではブルートレインなど列車が舞台によく使われるが、沖縄のモノレール「ゆいレール」がしっかり使われている。犯人が車両の窓からバッグを投げるシーンが出てくるのだが、あの車両の窓は開けられただろうか?
沖縄の伝統的家屋の屋根が赤煉瓦であると書いているのだが、あれは赤瓦なんだよ、京太郎先生。それにソーキそばの説明で文字数を稼がないでくれ。
行方不明の比嘉さきこは、生きていた。米軍基地からまだ使える廃棄銃器の横流しに関わっていたのだ。その組織から抜けたがっていたので仲間の戸田と米軍人に殺されてしまう。戸田も基地内に逃げ込む。地位協定で基地内には手が出せない。運良く、基地内で食中毒がおこり、戸田も発病し、基地から連れ出すことに成功して目出度し目出度し。
暇な時間をつぶすのにもってこいの作品である。
京太郎先生、本当に取材やったのだろうか。沖縄までモノレールに乗りに行っただけだろう。
京太郎先生の沖縄を舞台とした作品では、「幻奇島」と「海の挽歌」がある。前者は、離島舞台の民俗的ホラー推理小説で、取材・文献調査にも時間も金もかけているようで結構楽しませてくれた。後者は、地位協定で罪を免れた米軍人に復讐するというもので、これも楽しめた。だが、今回の作品は、手抜きが感じられる。もう、京太郎さんの時代は終わった。
追記:
ゆいレールの客室窓について沖縄都市モノレール株式会社に問い合わせたら下記のような返事をいただいた。
京太郎先生、バッグを窓から投げ落とすのは難しいようだよ。いい加減なこと、書かないようにして欲しい。
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いつも、ゆいレールをご利用頂いてありがとうございます。
問い合わせについてお答えします。客室窓の上部の部分が内側に開きますが、わず
かな隙間しか開きません。モノレールが高所を走行しているため、窓から物が落ちる
のを防ぐためです。
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3月31日