GOODLUCK'S WORLD

<共感>を大切に、一人の男のスタンスをニュース・映画・本・音楽を通して綴っていきたい

「麒麟の翼」伝えにくい想い

2012年12月03日 | Weblog

 晩秋に観た5本のロードショー映画、「アルゴ」「のぼうの城」「黄金を抱いて翔べ」「人生の特等席」「007 スカイフォール」、どの作品も合格点です。そして、先日wowowで放映された「麒麟の翼 ~劇場版・新参者~ 」の録画を観て、この5作品よりも大きな感動を得られました。素敵なセリフにも出会えとても満足しています。

    

 映画の出来不出来は、脚本にあります。そこに深い愛と温かいメッセージが込められているかどうかです。受け止める側の私たちの心理的状況や放映される時期も影響しますが、何十億かけた大作もヒットした作品も、脚本家の意図が時代に関係なく心に響かなければ、いつか色褪せてしまうものです。「風と共に去りぬ」の映画や原作が全世界でヒットしたのは、あの時代と関係がないわけではありませんが、故郷や土地への強い想いや肉親への深い愛情、生きていく力強さが溢れているからでしょう。

 『白夜行』『幻夜』や直木賞を受賞したガリレオシリーズの『容疑者Xの献身』に代表される東野圭吾氏の作品は、常に孤独感がつきまとい、善意と悪意が複雑に絡まっているので、どうしても好きになれない作品でした。しかし、それらの作品とは一線を画して作られた新参者シリーズは、届けにくい人の善意と希望がテーマになっており、どの作品にも心が揺さぶられました。
 今回、「麒麟の翼」を観て、気持ちをうまく伝えられないもどかしさを、60年近い年月の間、常々感じていた私自身の想いと共鳴したことが新参者シリーズが好きになった理由だと初めて知りました。この作品は、互いに届きにくい父と子の想いがテーマです。今年の初めに観たトム・ハンクス主演の映画「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」、先日観たクリント・イーストウッド主演の「人生の特等席」も同じテーマでした。だからこそ心が揺さぶられたのでしょう。

         

 自営業を営んでいた関係で、父や母は<ものすごくうるさくて、ありえないほど近い>存在でしたが、母とは、彼女が逝く前に十分な時間を作って、お互いの気持ちを伝え合えたと思っています。しかし、同性であるがゆえに、そして、私のコミュニケーション能力不足のために、父とはまだそんな関係になり得ていません。東京に出た頃からそんな想いが心の片隅から消え去ることはありませんでした。父を誘って映画や花見に何度か一緒に行ったものの、こんなに近くにいるのにまだまだ遠い存在です。
 ですから一人息子とはそうならないように、ゴルフを通してだけでなく、一緒になって楽しく過ごす時間を十分持ってきたつもりです。そして、私の人生に対する想いやスタンスを伝え続けてきたのです。しかし、この数年、そんな想いとは反比例するように就職難という外部環境も重なって、私たちの溝は次第に大きくなるばかりでした。ところが、いくつかの契約社員経験を経て、この春ようやく彼が本心からやりたい仕事を見つけ、望む会社に就職できたことをきっかけにして、その溝が埋められるつつあると感じられるようになりました。
 彼が家を出るまでの半年の間は、ゴルフに行ったり打ちっぱなしの練習に行ったり、映画に行ったり、特に家族3人で初めて造幣局の通り抜けに行けたことは、父としてとてもうれしい時間でした。

 『麒麟の翼』を見終わって書斎に閉じこもり、あるものをネットで購入してしまいました。まだ連れ添いには話してないのですが、将棋盤と将棋の駒です。五目並べは私の得意のゲームで、何度か父を負かして喜んだ記憶が残っています。麻雀も1,2度私の友人を交えてやったことがあります。子供は負けるとわかっている勝負事は避けるものです。きっと将棋の勝負を避けてきたのでしょう、まったく記憶に残っていないのですから。届けられてきたら、実家に行って親父と将棋の勝負をしたいと思います。小学校卒業以来、将棋を指したことがないので、きっと負けそうですが、でも父と将棋を指すと考えただけでも楽しくなってきました。

そうそう、素敵なセリフを紹介するのを忘れるところでした。

(麒麟の翼の本当の意味を知って)、私、勇気をもらったんです」

「世の中、甘く見てますよね」

「世の中、甘く見ているようなら安心だ。何処にも光がないと絶望しているよりはね」

         



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