GOODLUCK'S WORLD

<共感>を大切に、一人の男のスタンスをニュース・映画・本・音楽を通して綴っていきたい

「カムイ外伝」

2009年09月28日 | Weblog
 白土三平の伝説的傑作漫画を崔洋一監督が松山ケンイチ主演で実写映画化したアクション時代劇。忍者達の決死の闘いを、VFXを織り交ぜつつも俳優陣の身体を張った激しいアクションが見物です。

 17世紀、江戸時代の日本。士農工商という階級のどの階級にも属さない、人であって人でない最下層に生まれたカムイ。子供時代から牛や馬以下の扱いを受け、激しい虐めの中で堪えた来たカムイは強くなることを求めて忍びの世界に身を投じるが、ここでも自分の意志を持つことさえ許されない非情の世界だった。忍びの社会もまた人として生きる社会ではなかったのだ。抜忍としての孤独な逃亡の旅。抜忍という鉄の掟を破ったカムイと、それを守る忍びの組織との秘術を尽くした壮絶な戦い。『カムイ外伝』とはこのような物語です。映画では原作の中の『スガルの島』編を基に、物語は展開します。

 白土三平氏が描いた江戸時代から4世紀近くも経った現代。士農工商といった階級社会はなくなりましたが、もっと違った格差が生じました。その後の資本主義経済の興隆は、金があるかないという格差を生じさせたのです。カムイが生きた封建時代には何度か倹約令が出され贅沢を止めるようお触れがありましたが、現代は休みを増加させ、労働時間も短くなり、高速道路を使ってもっと遊びなさい、金を使いなさい、生活をエンジョイしなさい、もっと車を買いなさいと税金まで安くして金を動かそうと国家が煽動しています。金がある人にとっては喜ばしい現状かもしれませんが、金のない人にとっては地獄のような状況かもしれません。

贅沢品や趣味の一品はネットやカタログ、高給デパートの店頭に鎮座し、
世界の有名食品も2日もあれば宅配してくれる豊かな日本。
手を伸ばせばすぐそこに宝物があるのを知りながら
金がないために地団駄を踏む人々が蠢く日本。
階級社会がなくなり職業の選択も自由になったかに見える日本。 
農民が武家の娘を娶ることなど決してできなかった封建時代と違って、
愛し合う二人なら誰とでも結婚できるようになったはずの日本。 
年収が結婚の条件といわれるようになってしまった日本。
少子化が止まらない日本。
アメリカの従属的国家から脱皮を計ろうとしている日本。

たとえこんな時代になろうと金で買えないものがあると多くの人が知っている。
それは家族の暖かさであり、人の温もりであり優しさである。

 9月26日、神戸港に世界初の洋上マンション客船「ザ・ワールド」が2度目の入港した。二度同じ港に寄港しないというルールを破ったのは船の行き先を決める住民たちの「自治会」でした。神戸牛に見せられた富豪たちが再入港を熱望したという。168室の分譲価格は8,000万から7億3,000万円。掃除や洗濯、料理はすべて客室アテンダントや調理人にお任せなのだろうか? 子供の学校や子育ては? 子供が乗船しているのだろうか? そんな庶民の思いをよそに瀬戸内海クルーズを堪能する「ザ・ワールド」。まさに贅沢の極みと云えよう。

「ザ・ワールド」で味わう究極のサービスに高額の金を支払う大富豪たち。
カムイが必死で戦って得ようとしたものは、決してこのような贅沢ではありません。
人それぞれに「生きる喜び」にも格差は存在するでしょう。
しかし、洋上マンション客船「ザ・ワールド」にはないような気がします。



崔洋一監督は「カムイ外伝」を製作するにあたってこんなことをインタビューで述べています。

『確かにカムイが生きている時代というのは、いわゆる日本の中での階級制度がとても強くあらわれている時代。ただ、別に歴史を描こうと思っている作品ではないので、そこには深くは触れていない。ただし、この映画は長い原作の中の1エピソードに過ぎない。製作前に言っていたことでもあるが、『スターウォーズ』や『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズは、あれだけの作品があってようやく世界が見えてくる。この作品も、もし観客の皆さんからの支持があれば、是非とももう少し世界観を伝えられるよう、第二作、第三作を作っていけるといいのだけれど…。』

『やはり“カムイ的”な生き方に惹かれる部分が強かったですね。確かに、歴史はくり返されるという社会の変化はあるかもしれません。ある種、社会性、時代性が「カムイ外伝」を要求したんだ、という言い方ができると思うんです。だけども僕はカムイだと思うんです。孤独な逃亡者。みずからの意志で逃げ、自らの意志で戦う。でも、当然ながら、そのむなしさの中に自分をまた発見してしまう、そういう心のうつろいに正直な男だと思うんです。それが今の僕のある現代性につながって来るんです。“今、これを作らなくてはならない”という非常に強い意志を持った理由はそこなのです。

 カムイは強いだけではない、弱い部分も描いています。だけど背中を向けない。とりあえず生き抜く。とりあえず生きると言ったら、もっと強い苦しみに出会うかもしれないわけです。でも、そこから逃げない。逃げるわけにはいかなくなってきたという、がんじがらめの中での自己保持性。それこそが、今、老いも若きもどこかでこの何十年間、避けてきた。「わかってるよ、そんなことは――。わかってるけど、それなりのやり方もあるしさ」という。なんちゃって、なんちゃっての積み重ねの今があるのではないか。でも、もうなんちゃってはもういいんだよ。ちょっと向き合ってみるか――という。そんな気分だったんです。僕の時代に対する気分というのは。それを名実共にカムイが体現してくれたことが、映画化の強い動機でした。』

 
 映画「カムイ伝」は、ワンシーンワンシーンがとても丁寧に描かれていました。VFHの編集に異議を申し立てたい人も多いかも知れませんが、監督や出演者、スタッフの熱意は確実に伝わってくる作品に仕上がっています。監督がインタビューで仰っていたように、物語は長い原作のほんの一つのエピソードでしかありません。よって映画は佐藤浩一演じる城主は今後どうなるのか? 忍びの頭は? 追っ手は? カムイは逃げ切れるのか? 気になる先行きですが、崔洋一監督や出演者、スタッフの熱意を感じるだけに、白土三平氏が描く「カムイ伝」が映画の中でどう表現されていくのか、見てみたい気持ちで一杯です。

「官僚たちの夏」

2009年09月23日 | Weblog
 今年放映されたTVドラマの中で、最も熱い物語で、しかも重厚かつ真摯な作りで、じっくりと観賞できました。放映が終了したことがとても残念でしかたがありません。

 ドラマは、日本を蹂躙する米国産業に対抗するために、国内産業を保護しようとして通産省主導による国内の会社の統廃合が進められていきます。枯渇していく石炭業界の哀しい行方や技術力のない会社は閉鎖に追いやられていく姿に胸が締め付けられる思いがしました。そんな時代の流れの中で通産官僚たちは必死に戦い、挫折し、苦悩していきます。国際化という流れの中での日本の政治家や官僚たちは、自らのポジションで、できるうる最善の道を選択し突き進みます。そんな彼らの姿は、崇高にさえ見えました。

 日本の安くて丈夫で着心地のいい繊維製品が米国経済を席巻しはじめると米国ではその対応策として日本製品の輸入制限施策が立てられます。日本は同じ対応をして国内産業を保護しながらも新製品をどんどん開発されていきました。いわいるイノベーションです。この力が今日の日本を作ったのです。繊維をはじめ、自動車や家電・オーディオ機器、そしてコンピューター、それらなくして戦後の日本の発展は存在しません。1ドルが360円だった時代から今や90円前半となり、日本製品が世界を席巻してきたといっても過言ではありません。こうして日本は豊かな先進国の仲間入りを果たしたのです。
 
 アメリカ企業において繊維や車、家電・オーディオ業界でのイノベーションはあったのでしょうか? 大ヒットした製品の部品が10年が経ってもまだ同じ部品が存在するというアメリカ。日本では3年前の部品が残っているか危ぶまれるくらい革新につぐ革新がなされています。この日米の差は日本人による今までの世界特許数の多さが象徴しています。アメリカは自国の産業を過剰に保護するために自国のイノベーション能力を摘み取ってきたのです。電気自動車を最初に開発したのは米国です。それを国家が摘み取ったがために、今や日本企業に先んじられました。ここにも中国と同じように一部の企業、議員、役人の国家的思想の欠如を感じずにはおられません。円高対策として日本企業は米国や中国にまで行って工場を作り、地元の人を雇って日本製品を果敢に作ってきました。

 今、巨大な人口と資源を背景に、中国は製品の質ではなく低下価格で世界に君臨しています。残念ながらイノベーションによる侵略ではなく、低い人件費比率による圧倒的低価格化こそが最大・唯一の強みと云っても過言ではありません。日本の10分の1以下であった人件費も上昇傾向にあり、製品自体の価格がいつまでも圧倒的低価格を維持できるはずがありません。ユニクロのような繊維製品から冷凍食品によるいたるまで日本の技術力・経営指導の基に世界に商品が流れてきたのです。中国は独自のイノベーションが行われない限り、真の国家的繁栄はありません。共産主義国家としてのジレンマはここにあります。戦後日本の熱い夏を乗り切った官僚たちのように、共産主義国家にも関わらず、国家的繁栄を望む官僚たちの姿が見えてこない中国。

 4000年の中国の歴史は、日本のような武家政治がなかった為に役人・官僚達の政治であり、日本で言い換えれば、奈良や平安時代が4000年も繰り返し行われてきたことを意味します。オーバーな言い方でしょうが、既得権を守るために贈収賄や排他的支配が繰り返されてきたのです。役人天国と言われる所以です。個人や一部の役人、地主による支配が見え隠れしています。日本のテレビ番組で、ある冷凍食品会社の工場長の給与は、年間日本円で3,000万円、一方12時間以上工場で勤務する一般労働者の給与は年間で40万円以下という内容の報道がありました。40万円を日本の年収200万円と同様とする比率で計算すると、3,000万円の価値は5倍の1億5,000万円となります。平等であるはずの共産主義国家で、このような給与格差が存在する矛盾を早期に解決して行かない限り、中国の真の発展はありません。

 隣国中国の発展は進出した日本企業にとっては諸刃の剣となります。安い人件費が高騰しては逆輸入する価値がなくなるからです。

 山が多く平野部分が少ない日本ではアメリカやフランス、ドイツ、ロシアのような大農法が進めにくく、効率的な農業が進展しませんでした。そして円高を背景に世界から日本商社が買いたたいて輸入し、スーパーの店頭に並び、世界で最も裕福な食卓を作り、大型冷蔵庫には冷凍食品から新鮮野菜まで鎮座しています。しかし、もし円高が反対に円安に転じ、繁栄を続ける中国やインドのような新興発展国が、膨れ上がる自国民の胃袋を満たすために世界中から食物を買い集めたら、自給率30%の日本はさらに世界で最も高い食物を食べるしかなくなるでしょう。少子化が進む日本では膨れ上がる人口や食料不足は今そこにある危機とは見えませんが、地球の温暖化と同様に世界は確実に人口過剰、石油をはじめとするエネルギーの資源不足が進行しているのです。

 かつて米国から石油を止められたことで太平洋戦争を起こした日本ですが、同じように食料やエネルギーを遮断されて世界各地で戦争が勃発しないとはいえません。もしそうなれば株や円は暴落し、同じ自給率ならたちまち庶民は高額で食料を確保せねばならなくなるでしょう。

8.29の朝日新聞に高村薫女史のこんな記事が掲載されていました。
『この政権(政権交代した民主党政権)に私たちは何を望むのだろうか。地方と都市。正規雇用者と非正規雇用者。公務員と一般。高齢者と現役世代。富裕層と貧困層。安定した暮らしを望むにしても、その安定の中身はそれぞれ異なり、利害も異なる。一方を立てれば他方が立たず、両方を立てようとすればバラマキになる。しかし、財源はつねに有限である。有限の予算で行われる、この相反する利害の調整と配分こそ政治の命題そのものであり、国民生活のあり方であり、国のあり方というものである。』

 「予算の配分こそ、政治の命題、国民生活のあり方、国のあり方である」と云った高村女史の言葉が今まで以上に胸に迫ってきます。21日18時、アメリカ、ニューヨークに飛び立った鳩山首相の胸にどんな想いが詰まっているのでしょうか? 到着後、最初に会談するのは中国国家主席古錦濤、23日に会うのがオバマ大統領、そしてロシア大統領メドベージェフ、韓国大統領李明博。この順位まで気になってきます。国連総会の1990年度比率でCO2、25%削減の演説が先ほどテレビニュースで報道されていました。来年初頭に期限が切れるインド洋給油活動の行方、在日米軍再編見直し問題、地球温暖化対策の行方、両国共に失業率悪化の傾向にあり、米国与党の民主党からもアフガン施策に対する不信感(撤退の日程明示を求める声)が彷彿してきた今、TVドラマ「官僚たちの夏」は終わりましたが、鳩山由起夫首相、オバマ大統領の熱い政治家たちの夏はこれから始まろうとしています。

「自分への暖かい心」

2009年09月20日 | Weblog
まだまだ欲しいものが一杯ある
風呂敷が幾つあってもたりない

しかし いつ風呂敷は何枚もないことに気づいていく
しかも 手に入れることができないものが
今まで以上に明らかになっていく


やがて今まで風呂敷に入れてきた多くのものでさえ
価値あるものとは思えなくなる

自分の心変わりを嘆くわけでもなく
不必要なものは捨てていくしかないことを知る

どうやらこれが 大人になっていくことらしい
感情に支配されず想いをコントロールしていくことが


そして 大人になれば
少なくなっていく命の時間にも気づく


沢山の宝物に囲まれている人も
何も手元にない人も
宝物とはなんであったかに気づく

本当の宝物とは<自分への暖かい心>


たとえそれが 過去のものだったとしても
たとえそれが 今自分の手の中になかったとしても

振り返れば自分の想いは
まるで流れる川に浮かぶ木の葉のよう
ただ 心変わりを成長と間違えないように…


歳を重ねるごとに変わらぬ想いが募ることもある
しかし それは報われぬ愛だと気づいているからに違いない

そんな時も<自分への暖かい心>の存在に気づくだろう
過去にその存在を感じたからこそ 変わらぬ想いが募るのだから


できたら自分が発光・発熱する自分の想いをOFFしてみよう
そうすれば もっと もっとわずかな光・熱を感じるに違いない

どうやらこれが 大人になっていくことらしい
感情に支配されず 自分の光や熱をコントロールしていくことが…


「鳩山由紀夫考」

2009年09月03日 | Weblog
■鳩山由紀夫氏の日本構想 http://www.hatoyama.gr.jp/masscomm/090810.html

『…「友愛」が導くもう一つの国家目標は「東アジア共同体」の創造であろう。もちろん、日米安保体制は、今後も日本外交の基軸でありつづけるし、それは紛れもなく重要な日本外交の柱である。同時にわれわれは、アジアに位置する国家としてのアイデンティティを忘れてはならないだろう。経済成長の活力に溢れ、ますます緊密に結びつきつつある東アジア地域を、わが国が生きていく基本的な生活空間と捉えて、この地域に安定した経済協力と安全保障の枠組みを創る努力を続けなくてはならない。
 今回のアメリカの金融危機は、多くの人に、アメリカ一極時代の終焉を予感させ、またドル基軸通貨体制の永続性への懸念を抱かせずにはおかなかった。私も、イラク戦争の失敗と金融危機によってアメリカ主導のグローバリズムの時代は終焉し、世界はアメリカ一極支配の時代から多極化の時代に向かうだろうと感じている。しかし、今のところアメリカに代わる覇権国家は見当たらないし、ドルに代わる基軸通貨も見当たらない。一極時代から多極時代に移るとしても、そのイメージは曖昧であり、新しい世界の政治と経済の姿がはっきり見えないことがわれわれを不安にしている。それがいま私たちが直面している危機の本質ではないか。
 アメリカは今後影響力を低下させていくが、今後二、三〇年は、その軍事的経済的な実力は世界の第一人者のままだろう。また圧倒的な人口規模を有する中国が、軍事力を拡大しつつ、経済超大国化していくことも不可避の趨勢だ。日本が経済規模で中国に凌駕される日はそう遠くはない。
覇権国家でありつづけようと奮闘するアメリカと、覇権国家たらんと企図する中国の狭間で、日本は、いかにして政治的経済的自立を維持し、国益を守っていくのか。これからの日本の置かれた国際環境は容易ではない。
 これは、日本のみならず、アジアの中小規模国家が同様に思い悩んでいるところでもある。この地域の安定のためにアメリカの軍事力を有効に機能させたいが、その政治的経済的放恣はなるべく抑制したい、身近な中国の軍事的脅威を減少させながら、その巨大化する経済活動の秩序化を図りたい。これは、この地域の諸国家のほとんど本能的要請であろう。それは地域的統合を加速させる大きな要因でもある。』

このような論文をCIAの分析官はどのように分析・洞察するだろうか?

 CIAの主な仕事は各国の動向を分析することにあります。シドニー・ポラック監督・ロバート・レッドフォード主演の映画「コンドル」やトム・クランシー原作『恐怖の総和』を映画化した映画「トータル・フィアーズ」を見ていただければよく分かります。
「トータル・フィアーズ」では一つの核が武器商人の手に渡ります。その核が米国に持ち込まれ、米国大統領が入場したスーパーボール会場で爆発します。CIA分析官の主人公ジャック・ライアンはその核が米国製であることを被爆地まで行って突き止めます。そしてロシア大統領が発射した核ではないことも突き止めます。米国政府はロシアへの報復を考えますが、J・ライアンはCIA分析官としてロシア大統領を以前から分析していたので「米国を攻撃するような人物ではない」と報告しますが、米国政府高官はそれを信じようとはしません。自国で発射した核でないこと知っているロシア側でも米国の報復攻撃を恐れ、先制攻撃をしなければロシアは滅ぶと主張する軍幹部と政府高官との衝突が沸騰していきます。超大国2国の「恐怖の総和」が物語の主題です。

 話を戻しますが、日本の首相となる鳩山氏の論文は、首相になるような人ではなく、大学教授が発表するような内容です。鳩山氏は、東京大学工学部を卒業しスタンフォード大学博士課程を修了。専攻は経営工学。東京工業大学助手を経て、専修大学経営学部助教授から政治家に転身しました。日本の政治家ではみたことのない経歴です。しかも祖父は自民党を創設した鳩山一郎氏という超サラブレットなのです。1960年の東大安保闘争の5年後に東大入学。1986年、自民党の公認を得て田中派(田中派の特色:田中が首相在任中に日中国交正常化を成し遂げたこともあり、台湾とは距離を置く親中派が多い)から政界進出。こうして自民党本流の保守左派に身を置くことになったと思われます。

 鳩山由紀夫氏は、鳩山家が牧場を所有し、鳩山神社のある祖父の代からの地盤、北海道から第38回衆議院議員総選挙に出馬、初当選しました。地方区分の選挙区自体は祖父と重複していないため、祖父の地盤を世襲していません。「言語明瞭・意味不明」的な言動が日本の大物政治家の典型ですが、工学部出身の彼はそのような曖昧な表現ができない性格なのでしょう。鳩山氏について調べていると、「私利私欲」を持たず、真摯に日本の将来を憂いている一学者のように思えます。また、明治維新のスタートを作った坂本龍馬を思い出します。龍馬もまた日本の将来を私利私欲なく真摯に考えた人でした。天真爛漫と思えるような純粋さ、堅固な信念と新たな発想は「薩長連合」「大政奉還」を編み出しました。龍馬は西郷を味方(?)につけパワーを手にしました。西郷に当たるのが豪腕小沢一郎氏に思えます。田中角栄派閥として政治家となったが、金にまつわる泥だらけの中では息ができなくなり、岸・福田の流れをくむ理念の錦を掲げるクリーンなスタンス(小泉・安倍流)を信条とする政治家と云えるかもしれません。同じくもっと深く田中派で学んだ小沢氏は、今後の政財界の防波堤とブルドーザー的役割を担うものと思われます。菅直人氏は両氏の中間に身を置き、鳩山氏よりの立場を取るのではないでしょうか。私がCIA分析官ならこのような分析をするでしょう。

 米国大統領のオバマ氏は、4,000万人を超える(人口比で6人に1人)の医療保険未加入者がいると言われている「医療保険制度」で大きな壁にぶち当たっています。「米国を社会主義化するのか!」という大きなデモが始まっています。「欲しいなら勝ち取れというフロンティア精神が今のアメリカを作ったのだ!」、「必死に働かない人を保護するような法案を作って血税である税金に投入するなどもっての外だ!」、という人たちが多数米国にはいるのです。(驚きです)弱者の救済は、政府の大きな課題であり、宗教の要でもありますが、一部の米国市民には受け入れられない問題なのです。

<予算の配分こそ政治の命題>と高村薫氏が述べましたが、鳩山由紀夫次期総理大臣も就任直後からこの命題で心を痛めることになります。民主党の試算では、4年間で16.8兆円の財源を節約できることになっています。仮に捻出できなかった場合、鳩山由紀夫氏は、政治的な責任を取るとも明言しています。「子ども手当(半額実施の場合)」で2.7兆円、「農業の個別所得補償」約1兆円、「高速道路の無償化」で1.3兆円。そして「暫定税率廃止」で2.5兆円。企業人の一員として気になる地球温暖化対策(90年を基準として20年には25%削減、50年よりもできるだけ早い時期の60%削減という目標値を掲げている。)も、大企業からの反発は避けられません。オバマ政権と同じく鳩山新内閣は発足直後から様々な人々、様々な企業、様々な団体からバッシングを受けるに違いありません。その中で最も恐ろしいのはアメリカからのバッシングであることは言うまでもありません。