GOODLUCK'S WORLD

<共感>を大切に、一人の男のスタンスをニュース・映画・本・音楽を通して綴っていきたい

<心底惚れた料理>(「西心斎橋 ゆうの」

2011年05月21日 | Weblog
 私は長い期間、食べ物を提供しその代金を頂くという仕事に従事してきました。ファミリーレストランに12年、その後現在のレジャー施設に至るまで、自ら設計したデザインしたカウンターしゃぶしゃぶ店、割烹の支配人、フレンチ&イタリアンの支配人等を経験しました。この30数年間で美味しい思える料理を何度も食べてきましたが、心から本当に美味しい、心底惚れた料理はそうそうざらにありません。今まで食べた最高の料理は、南紀白浜「コガノイベイホテル」http://www.coganoi.co.jp/bay/に二泊して食べた和食とフレンチのコース料理(2007 2月)でした。皿に乗っている全ての食材、全てのソースを舐めるように食べきった記憶が残っています。肝類や酢の物は弱冠苦手な私ですが、何も残さず、あんなにきれいに食べたことはかつて経験がありません。和食もフレンチも工夫を凝らした思いもよらないデザートにも仰天しました。

       

 あれから4年と3ヶ月、大阪「西心斎橋 ゆうの」で、生涯で2度目の心底惚れる料理に出会いました。待ち合わせ場所から、6人で心斎橋日航ホテル裏の道を歩いていたら、何と店主自らのお出迎えに遭遇。最初から感激してしまいました。店内に入ってカウンターにズラッと6名が並んで着席(カウンターが全部で8席)。
 ビーカーを感じさせる底の薄いグラスに、お好みのドリンクが注がれて、「乾杯!」。疲れた筋肉までほぐれそうな優しい笑顔で、店主自らカウンター越しに一品ずつ料理紹介が始まった。

 食べ終わると次の品が提供され、全品で8品。選び抜かれた特産の野菜から特選の魚介類、お肉、フルーツに至るまで、細やかな技が施されているにも関わらず、強い主張は見せず素材が活きていました。手を加えすぎて、技が全面に主張してしまう懐石料理がありますが、柚野(ゆうの)氏の料理は違っていました。それは、きっと氏の優しい性格が料理にも反映されているのだろうと感じました。酢の物にぶどうのデラウエアが二粒入っていたオリジナリティには驚きました。

       

「この素材を引き立てるには、どの技を用いればいいのか、
 しかもより多くの人に美味しいと言わせたい」

この追求こそ、柚野氏の命題のように感じました。

 もともと茶会に出す料理として千利休らによって考案された会席料理は、懐石料理、割烹として京都と大阪で発展してきました。それらの料理は見た目や皿が優先するかのような料理でした。だから皿が決まらなければ料理は決まらない、などと驕った気持ちが出てくるような気がしていました。今まで何度か、口に入れると「美味しくない」と感じるものもありました。

 料理は人だけが作るもの。当然作る人それぞれに味覚はオリジナルです。例えば辛い物が好きな料理長と塩っ辛いものが好きなシェフでは味付けが変わってきます。その料理をお金を出して若い人から年配者まで食べられるのです。個人の味覚も年齢や体調の変化で変遷していくものですから、味覚は十人十色以上となるでしょう。すべての人に「旨い!」と言わせるのは至難と云えます。特に一人当たりの金額が高ければ、高くなるほど、提供される料理を心底美味しいと感じる確率は低くなるのではないか。それは舌が肥え、自己主張してくるからに他なりません。つまり歳を重ねてくると好みが限定してくるのです。ここに調理人の難しさがあります。しかし、ここに調理人のアイデンティティが存在します。

       

 5月19日、大先輩あいらんど氏の食事会「西心斎橋 ゆうの」でいただいた和食料理は、私の無粋な邪念も吹き飛ばすほど、素晴らしい料理でした。100人が100人、すべての人が「美味しい!」と言うのではないか、そんなふうにも感じてしまいました。オープンして3年のお店が何と、2011年度「ミシュランガイド 1つ☆」を獲得したのも頷けます。あいらんど氏の食事会は、すでにこの数年で10数回、開催されていますが、今回が一番でした。ご招待を受けて一番などと言い放つ私の無粋さをお許し下さい。食事会そのものが私にとって宝物TIMEなのですが、今回はカウンター席で店主自らお料理説明というシチュエーションのため、料理そのものが主人公になったためだと思ってください。

       

 この食事会では口数が少ない私ですが、いつになく饒舌になってしまったのも、素晴らしいお料理に遭遇し、気持ちが高揚したからに他なりません。あいらんど氏はきっと今回、私を唸らせてみようと計画したのではないか。(これこそ、無粋な勘ぐりですが…)万が一、そんなお気持ちだったら大成功だったことはここに記しておきます。きっとこの日記も読まれるはずだから。近い内に連れ添いを誘ってもう一度来店したいと思っています。

「あいらんど様、本当にごちそうさまでした! 心底最高の料理でした!」


もし大阪に来られたとき、本当に美味しいものを食べたいとお思いなら、
決して後悔しないお店を改めてご紹介しておきます。


「西心斎橋 ゆうの」 店主 柚野 克幸氏
住所:〒542-0086 大阪市中央区西心斎橋1-10-35 アルシュ11ビル1A 
営業時間:17:00~23:00 (Lo22:00) 月曜定休
電話番号:06-6281-3690

                    


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