ゴルゴ13総合研究所『俺の背後に立つな!』

ゴルゴ13の全ストーリーを解説

ゴルゴ13第51巻-1毛沢東の遺言

2007-02-28 03:35:31 | 第051巻~第055巻

■毛沢東の遺言(第179話) 発表1981年1月

評価     ★★★★★

依頼人   イラク海外保安局

ターゲット  藤尾高夫(内藤高人)

報酬     $200,000

今回弾丸発射数      5/ 通算弾丸発射数 1,112

今回殺害人数        5/ 通算殺害人数   1,054

今回まぐわい回数    0/  通算まぐわい回数    76

<ストーリー>
「小東郷を捜せ・・・」という毛沢東の遺言。小東郷とはゴルゴのことなのか?ゴルゴの謎に迫るルーツもの第5弾・・・

<この一言>
用件を聞こうか・・・

<もう一言>
おいっ!!

<解説>
『日本人・東研作』(第14巻-1)『芹沢家殺人事件』(第27巻-1)『おろしや間諜伝説』(第36巻-1)『蒼狼漂う果て』(第41巻-1) に続く、ゴルゴ出生の謎に迫る「ルーツもの」第5弾。

毛沢東の遺言「小東郷を捜せ・・・」をうけ、中国革命長老指導者「葉剣英」は弁公室(中国人民解放軍弁公室第四処”国防情報局”)の3名に小東郷の調査を依頼する。
1944年、当時3歳の「小東郷」は、中国・北州河で関東軍の生き残りとして一人で中国に抵抗していたところを保護され、毛沢東より英才教育を受けた。銃・馬術・格闘技のサバイバル術、語学と科学知識、戦略・戦術の技術、不屈の精神をその道の第一人者から直接たたき込まれた小東郷は、戦闘機械となった。しかし、毛沢東の愛人「藍蘋」が小東郷の出生を調べ始めると、小東郷は忽然と姿を消した。
弁公室の3人は小東郷の出生を知る「藤尾高夫」を訪ね、小東郷の驚くべき出生の謎を知る。優秀な東洋人の交配を繰り返し超高度種族を誕生させる旧日本軍の”ルーベンスボルン作戦”により、小東郷は生まれたというのだ。小東郷のルーツは、父方は東郷平八郎にあり、母方はチンギス汗の末裔であるという事実を知った直後、藤尾がゴルゴの銃弾の前に倒れる。その後、弁公室の3人は、小東郷の父「東郷宗介」を訪ね、小東郷の本名が「東郷狂介」であることを知る。その後、宗介から衝撃の告白がなされ、宗介の母(つまり狂介の祖母)はテロリスト”ラスコルニコフ”に犯されて宗介を孕み、宗介はチンギス汗の末裔「ツベルマ」との間に「狂介」をもうけたという。つまり、狂介は、東郷平八郎に続く血(日本人)1/4、テロリスト”ラスコルニコフ”の血(ロシア人)1/4、チンギス汗の末裔”ツベルマ”の血(中国人)1/2を持ち合わせることになる。
宗介は息子・狂介がゴルゴであると確信し、ラスコルニコフの血を絶やすべくゴルゴを殺そうとするが、ゴルゴに返り討ちにあう。
次に弁公室の3名は、ゴルゴを知るジャーナリスト「マンディ・ワシントン」を訪ねる。ゴルゴに関するミステリーの女王「マッジ・ペンローズ」の遺稿情報を得て、イギリスとアイスランドの中間に位置する「ミルズ島」を訪れる。しかし、3名は小東郷=ゴルゴの確証を得られぬままゴルゴの銃弾に倒れる。
         
[東郷狂介プロフィール]
1941年  父「東郷宗介」、母「ツベルマ」の間に出生
       父・宗介は東郷平八郎を祖父に持ち、父親はロシア人テロリスト”ラスコルニコフ”
       母・ツベルマはチンギス汗の末裔
1944年  母ツベルマを銃にて殺害
      中国・北州河で関東軍の生き残りとして保護され、毛沢東より英才教育を施される。
1946年 消息不明

※東郷狂介=通算弾丸発射数2/通算殺害数1/通算まぐわい回数0

ゴルゴ=東郷狂介説は説得力がある。
血筋、出生にまつわるエピソード、殺人マシーンとしての英才教育を授かっていることを勘案すると、成人したゴルゴ像が浮かび上がる。なにより、ゴルゴが東郷宗介を殺害するコマに注目したい。年老いた宗介の日本刀に拳銃で挑むゴルゴが描かれているが、状況としてはゴルゴにとってはノーリスクに等しく、表情ひとつ変えずに”仕事”をする場面のはずだ。しかし、引き金をひいた直後のゴルゴは、わずかに口元を歪めている。実の父親を殺した後味の悪さを顔に出してしまったとも推測される場面だ。関係者を次々と殺害するのもいつものパターンだが、本作ではその殺害に必然性が認められる。また、マッジ・ペンローズの原稿の中身も意味深だ。ゴルゴの出生の謎が明かされているらしいのだが、狂介の記述なのだろうか?ゴルゴ=東郷狂介説、本命として濃厚である。

本作はルーツものとしても完成度が高いが、ゴルゴ像を集約している点でも注目すべき作品だ。主なエピソードがコンパクトにまとめられており、ゴルゴプロフィールを知る上でも最適な作品。ゴルゴ・ファンにとっても、過去のトピックスが散りばめられており、非常に楽しめる内容となっている。以下、過去作品との関連を列挙する。
・「あの男の狙撃成功率は、内閣調査室の資料では、いままでのところ、99.4パーセントです。失敗はただの一度、それも銃弾のミス・ファイアでした」
第15巻-3『アクシデンタル』参照。なお、99.4%の根拠は、本作がビックコミック連載168話目であり、過去167話中1話のみで失敗があったため、成功率=(167-1)÷167×100=99.4%としているのだろう。
・「前金で20万ドル」
→報酬は前金制。最低報酬は20万ドル。
・「日本人とも日独混血とも、日系米人とも、またはロシア人の血が入っているともいわれています」
→ 日独混血説( 第15巻-1『モスクワ人形』 )、日系米人説( 第44巻-1『モンゴルの鷹』 )、日露混血説( 第1巻-4『色あせた紋章』
・「デューク東郷の名前を使用」
・「ゴルゴ13の正体を多少でも知っているのはアメリカのジャーナリストのマンディ・ワシントンとイギリスのミステリーの女王といわれたマッジ・ペンローズくらいのものでしょう」
→マンディ・ワシントン( 第14巻-1『日本人・東研作』第21巻-1『統計解析射撃』第43-1『ミステリーの女王』
→マッジ・ペンローズ(第43-1『ミステリーの女王』

ズキューン

ゴルゴ13 (51) 巻掲載
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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
賛美歌13番さま、こんばんは。 (パトリック三平)
2011-02-26 21:10:02
賛美歌13番さま、こんばんは。
最近ルーツものの深さと壮大さに魅せられてしまい、ついついコメントしたくなってしまいました。本作を最初に読んだときはあまりにも荒唐無稽すぎやしないかと感じ、正直あまり好きではありませんでした。
しかし再読して唸りました。壮大な歴史の闇、過去を背負った登場人物達のドラマが絡み合い、強力な読みごたえです。
ペンローズの草稿が登場するタイミングだけは都合良すぎではないのか?とも感じましたが、さらなるスペクタクルを与えていることは否定できません。
ルーツものとしての魅力に加えて、娯楽作品としての面白さも際立って高いですね。OVAでいいから映像化してくれないものでしょうか…。
返信する
パトリック三平さん、こんばんは。 (賛美歌13番)
2011-02-27 22:43:00
パトリック三平さん、こんばんは。
>OVAでいいから映像化してくれないものでしょうか…。
賛成!大賛成!!
ルーツ物を全て映像化してほしいです。すぐ買います!さいとう先生、お願いします。
返信する
こんにちは賛美歌13番さん、ルーツ編研究家のマ... (マリヨ神父)
2011-08-25 14:07:51
こんにちは賛美歌13番さん、ルーツ編研究家のマリヨ神父です(笑)
真面目に脚本解説を!!(笑)
本エピソードは『橋は崩れた』以降「まぐあい」を連想させるような女性を登場させずに、「男だけの世界」のエピソードを脚本担当して来た外浦吾郎渾身のルーツ編です!!
このルーツ編の特徴は、小東郷の母とされる「ツベルマ」を含め、エピソードの中での女性の「影」が誠に希薄な点です!正に「男だけの世界」の中でストーリーは展開します!!
圧巻は東郷宗介との父子対決(?)!!!
こんな展開は他のルーツ編ではお目にかかれません(笑)
サイレンサーがリボルバーに装着出来るか?といったツッコミどころは相変わらずあるのですが、これだけ男対男の構図(しかも父子?)を如実に具現化したルーツ編として、本エピソードは外浦吾郎脚本物のNO2(1はマリヨ!)に挙げて構わないと思います!
中国の赤い星の面々も、彩りを添えるのに効力を発揮しており、隠し味にマンディ・ワシントンを終盤で登場させたのも、油が乗り切った時期の外浦吾郎脚本物と云えるでしょう!
残念なのは、何故このエピソードを船戸与一は最初にノベライズ化しなかったのかな?(笑)
返信する
マリヨ神父さん、こんにちは。 (賛美歌13番)
2011-09-03 06:12:14
マリヨ神父さん、こんにちは。
本作は我らが外浦吾郎の脚本なのですね。
>浦吾郎渾身のルーツ編
ストーリーが非常に練られている、ゴルゴの特徴を網羅している、過去作品のエピソード・登場人物を巧みに散りばめている・・・これらを考えると、相当時間をかけて作られた作品だと想定されます。この作品、私も大好きです。

>何故このエピソードを船戸与一は最初にノベライズ化しなかったのかな?
ゴルゴのノベライズ作品、どのような基準で選んだのか興味がありますね。早く『氷結海峡』がノベライズされないかな(笑)
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