goo blog サービス終了のお知らせ 

極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

ヘラクレスの火遊び

2014年07月08日 | 創作料理

 


 ルッコラとパルメザンとトルティーヤ

 【タパスの和食化】

 『和食化するフォッカチオ』でも掲載したが、デジタル革命の進展で料理領域でのボーダレス化が進ん
でいる。もっとも "日本列島は文化の袋小路"だから牛肉をすき焼きに、パンはカレーパンやアンパンに
アレンジしてきたから驚くことでもないが、今夜はスペインのオードブルの「タパス」。勿論、タパス
またはタパ(Tapa)は、スペイン料理の様々なアペタイザー。冷製料理(オリーブとチーズ混ぜ合わせ
等)または温製料理(小イカフライ等)があるというが、日本で言う「おつまみ」という言葉がぴった
りする小皿料理で、会話をしながら食事をするのに向いているから、仕事終わりの赤提灯向きの居酒屋
料理でもある。タパスの立食の国もあるとか、スペインではバルによって無料で出すところもあり、日
本でも事情は同じだ。

※代表的な料理は、(1)アセイトゥーナス(Aceitunas):オリーブ(2)アドボ(Adobo):肉や魚
介類のマリネ料理(3)アルボンディガス(Albóndigas):ミートボール(4)アイオリ(Allioli):
ニンニク、油、および塩のみ、現在はニンニク入りマヨネーズの形態で、ニンニクの効いたペーストで
パン、ジャガイモ、魚、肉、またはグリルした野菜に添える(5)アトゥン・エスカベチャード(Atún
escabechado):ツナのエスカベチェ(6)バカラオ(Bacalao):塩鱈を非常に薄く切り、パン、トマト
と共に供する(7)ボケロネス(Boquerones):白アンチョビの酢漬け(ボケロネス・エン・ビナグレ
boquerones en vinagre)またはフライ(7)カバージャ・エン・エスカベチェ(caballa en escabeche)
:タイセイヨウサバのエスカベチェ(8)カラマーレス・フリートス(Calamares fritos )または ラ
バス(rabas):イカのリング揚げ(9)カナペ(Canapé)カナッペ(10)カルネ・メチャーダ(Carne
mechada ):牛肉を柔らかくなるまでじっくりと煮込んだ料理など。



※伝説では、タパの習慣はカスティーリャ王国の賢王アルフォンソ10世の時代に、ワインと小量の料理
を食事の間に摂ることで病気から回復したことから始まったとか。健康を取り戻した王は、居酒屋がワ
インを客に出す際、必ず軽食または「タパス」を伴うことを命じ、この命令は酒を飲むための法の抜け
道となったというが、タパは「蓋をする」を意味する動詞「タパル」(tapar)に由来するという(タッ
パウェア)。



この料理ベースを"ガーリックとオリーブ油"として、和食化となれば"味噌と醤油"となる。ここで"酢と
" はとっておきの日本発のマヨネーズや独自文化の豊富な発酵食品のがあるので、残りは、チーズ・ミルクと
いった乳製品をどう加えるということになる。また、日本わさびをのぞいた香辛料は共通するものとして考えてア
レンジ・タパスを看てみよう。イカ・タコ・ツナ・イワシ・アユ・カニ・エビなど豊富な魚介類はすしネタやたこ焼き、ソ
ーセージ、明太子(これは朝鮮由来か)などのアレンジがあり、ハーブ類をのぞいた野菜・根菜・豆類も豊富だし
改めて、体系化の必要性?を感じてしまったほどだ。印象的だったのが「高菜のアヒージョ」(下写真)。





【オールソーラーシステム完結論 Ⅱ】

 昨夜のつづきになるが、製膜条件をいじらずに、半導体の粒径を独立して制御する接合構造に関するロ
ーム株式会社の光電変換装置と製造方法の、原子スケール・量子スケールデバイスの先端接合技術の、
新規考案例を補足紹介しておきたい。

Ib族元素とⅢb族元素とⅥb族元素でなる、カルコパイライト構造の半導体薄膜のCuInSe2(CI
S系薄膜)、または、これにGaを固溶したCu(In,Ga)Se2(CIGS系薄膜)を光吸収層に用
いた薄膜太陽電池は、高いエネルギー変換効率を示し、光照射等による効率の劣化が少ないという利点
がある。下図は、そのCIGS系の薄膜太陽電池のセル構造例である。ここでは、SLG(ソーダライ
ムガラス)基板1上にプラス側の下部電極となるMo電極層2が形成され、そのMo電極層2上にCI
GS系の光吸収層3が形成され、その光吸収層3上にZnSなどからなるバッファ層4を介してマイナ
ス側の上部電極となるZnO:Alなどからなる透明電極層6が形成されている。図中、7はプラス側
の外部引出し電極を、8はマイナス側の外部引出し電極をそれぞれ示す。CIGS系の薄膜太陽電池の
量産には、このようなセル構造が同一基板上にモノリシック(一体的)複数配設するモジュールである。

 

また下図(a)や(d)は、従来の、CIGS系薄膜太陽電池セル製造法のデバイスの概説断面図だ。
(a)のように、まず、SLG(ソーダライムガラス)基板100上にプラス側の下部電極となるMo
(モリブデン)電極層200が形成される。 次に、(b)のように、Mo電極層200上に、組成制御
したp-型を示す、CIGS系薄膜の光吸収層3を形成。次に、(c)のように、その光吸収層3上に
CdSのバッファ層400を形成、そのバッファ層400上に、不純物がドーピングしたn+型を示す、
マイナス側の上部電極ZnO(酸化亜鉛)の透光性電極層500を形成する。 次に、(d)のように、
メカニカルスクライブ装置でZnOの透光性電極層500からMo電極層200まで一括してスクライ
ブ加工し、薄膜太陽電池の各セルが電気的に分離(すなわち、各セルが個別化)する。このスクライビ
ング工程では、レーザスクライビングによるセル特性の劣化という不都合が生じ、太陽電池のセルは、
メカニカルスクライビング装置で電気的に分離されので機械的に加圧剪断加工する方法が用いられて
る。

 

ところで、ローム社の新規考案(特開2004-115356、特開2007-123720、特開2011-151271、特開2014-
120628)は、この化合物半導体薄膜材料の高い光吸収係数と、可視光から近赤外光までの広い波長域に
渡って高い感度特性に着目し、この材料を、セキュリティカメラ(昼間は可視光をセンシングし、夜間
は近赤外光をセンシングするカメラ)や、個人認証カメラ(外光の影響を受けない近赤外光で個人認証
するためのカメラ)、車載カメラ(夜間の視覚補助や遠方の視野確保等にために車に搭載されるカメラ)
用のイメージセンサ利用について検討。CIS系薄膜(CuInSe2)を例にとると、暗電流(逆バイア
ス時にPN接合に流れる電流)が大きい――例えば、-0.8Vの逆バイアス時に、1×10-3A/cm2
度の暗電流が流れ、シリコン系材料よりも6桁大きく、1千Lux(ルクス)以下の弱い光は不検出とな
る――メカニカルスクライビング時に化合物半導体材料の結晶にダメージや欠陥が生じ、PN接合の
界面に複数のエネルギー準位が発生し大きな暗電流原因であることを突き止める。すなわち上図(d
で、PN接合の界面(空乏層の境界:点線で示される)の端部(図中、丸で囲んで示されるA,B部分
)が、メカニカルスクライビングされて露出するCIGS薄膜300の側壁に到達。メカニカルスクラ
イビング面は、結晶のダメージが大きく、不要な界面順位が存在する。この部分で、PN接合のリーク
電流が増大する。

また、Gaを固溶したCIGS系薄膜の形成では、膜質の悪化、リーク電流の増大の観点から、550
℃による成膜
が一般的である。550℃よりも低温で形成した場合、粒径が小さくなり、暗電流特性が
悪化する(
半導体集積回路の耐熱限界は400℃程度)。このため、基板の温度や化合物半導体を構成
する原子の組成比を変更し粒径を大きくする必要がある。
さらに、CIS系薄膜とCIGS系薄膜は、
可視光
から近赤外光までの広い波長域にわたって高い感度特性をもつが、短波長側(紫外光)の感度が
悪いため、
より広範囲の波長域における画像形成には不十分である。これらの問題を解決するには、
膜条件をいじらずに、半導体の粒径を独立して制御する接合構造(下図:光電変換装置の要部を説明す
るための断面図 クリック!)を考案する必要があった。

 

【符号の説明】

1 光電変換装置 2 基板  4 透明電極層 5 微細な凹凸構造 10 下部電極層 12 回路部 
13 化合物半導
体層 14 バッファ層 16 ソース層 17 ドレイン層 18 ゲート電極 
19 層間膜 23 溝 42 i-ZnO膜 43 n-ZnO膜 
81 光電変換装置 91 光電変換装
置 101 (下部電極層の)表面 191(A) (層間膜の)露出面

この構成によれば、微細な凹凸構造の形状(ピッチ、深さ等)に合わせてカルコパイライト構造の化合
物半導体
の粒径を変更できる。このため、微細な凹凸構造が形成された部分での粒径を、化合物半導体
層の
製膜条件から独立し制御できるので、少なくとも下部電極層に微細な凹凸構造が形成されている
め、粒径をできる限り大きく制御することで、量子効率を向上させると共に、暗電流が低減できるよう
になる。
さらに、微細な凹凸構造は、光電変換装置に限らず、ベースとなる基材上にカルコパイライト
構造の化合物半導体層が積層された接合構造を含む各種アプリケーション――電気伝導、熱伝導、表面
積の制御が必要なアプリケーションに適用することができる。具体的には、カルコパイライト構造の化
合物半導体層が使用された触媒は、反応物との接触部分に適切な段差ピッチの微細な凹凸構造で、でき
る限り小径なカルコパイライト構造の化合物半導体を成長させ、触媒の表面積を広くすることができ、
反応効率を向上する。


図6 微細な凹凸構造によってCIGS粒径を制御できることを証明する図

【解説】上図は、微細な凹凸構造5によってCIGS粒径を制御できることを証明するための図である。
この例では、まず、深さD1=60nmの断面視四角形状の微細な凹凸構造5を、ピッチP1(段差ピッチ)
=0nm(つまり、微細な凹凸構造なし)、1000nm、500nm、250nmと100nmと変えて、タン
グステン(W)およびSiOそれぞれの上に形成したサンプルを作製。次に、各サンプルの上にCI
GS系半導体を成長させ、その粒径を測定。この図から、タングステン上のCIGS系半導体の粒径は
1000~500nmの範囲で段差ピッチが細かくなる(段差が多くなる)に伴い、微細な凹凸構造5が
ない場合(粒径=約200nm)よりも大きくなることがわかる。たとえば、最大で約3倍の600nm程
度まで大きく制御できる一方、500~250nmの範囲で微細な凹凸構造5がない場合よりも小さくな
り、250nm以下では、微細な凹凸構造5がない場合よりも小さな粒径で横ばいであることもわかる。
SiO上のCIGS系半導体の粒径は、1000nm未満で段差ピッチが細かくなる(段差が多くなる)
に伴い、微細な凹凸構造5がない場合(粒径=約800nm)よりも小さくなることもわかる。たとえば、
最小で約0.25倍の200nm程度まで小さく制御できる一方、1000nm以上では、微細な凹凸構造5が
ない場合よりも大きくなることがわかる。この結果から、この実施形態では、微細な凹凸構造5の段差
ピッチを500~1000nmに設計することで、下部電極層10上のCIGS系半導体の粒径をできる
限り大きく制御できる一方、微細な凹凸構造5の段差ピッチを1000nm未満(具体的には、100~
500nm)に設計することで、層間膜19の露出面191(A)上のCIGS系半導体の粒径をできる
限り小さく制御できる。したがって、下部電極層10上の粒径を大きく制御しつつ、層間膜19上の粒
径を小さく制御するには、たとえば、375nm~750nmであることが好ましい

 
図19(a)光電変換装置の製造方法をテスト構造に適用した結果の暗電流密度(A/cm2)とCu/ 
   Ⅲ族比との関係、(b)基板上にMoおよびCIGSを積層したテスト構造の一例のSEM写真。

【ヘラクレスの火遊び―宇宙安保戦略】

政府は7日、宇宙の安全保障分野に関する利用指針となる「国家安全保障宇宙戦略(日本版NSSS)
」を策定する方針を固めたと報じた。人工衛星からの海洋監視など宇宙分野での日米連携の強化を打ち
出し、宇宙の軍事利用を加速する中国をけん制する狙いがある。政府は、年内にNSSSを取りまとめ、
年末の日米防衛協力の指針(ガイドライン)改定に反映させたい考えだ。NSSSには、不審な衛星や
宇宙空間を浮遊する宇宙ゴミを探知する宇宙状況監視や、海面の状況や船舶などの動向を把握する海洋
状況監視体制の整備などが盛り込まれる見通しだ。このため、日本から豪州にかけて周回して測位を行
う日本の準天頂衛星と米国の測位衛星のデータや日米の情報収集衛星の画像の共有も、明記されるとみ
られる(2014.07.08 読売新聞「宇宙安保戦略、日米で連携強化へ…中国をけん制」)。

最近の中国の内政干渉や帝国主義的な軍事行動は目に余るが、それはそれとし、軍事行使による他国民
を制圧・抑制する行為がいかなる結果をもたらすか?イスラエルとパレスチナの
"千年戦争"をみるまで
もなく明白である。「武力行使の自己撞着」は「墨子」を読めばわかる。だから、泰の始
皇帝が焚書す
(『墨子 - 松岡正剛の千夜千冊』参照)。侵略戦争の戦犯を置き去りにした「なし崩し・ごり押し・
欠陥バケツ」の「"公準なき"集団自衛権・積極的平和主義」はわたし(たち)が考
えている「集団自衛
権・積極的平和主義」とは異なる。それはそれとして、それにしても「戦略」とい
う欧米流の"言葉"の
乱用には気をつけた方がよい。なぜなら、それを用いる側の<主体形成のク
オリティー>の有無と<説
明責任・結果責任>が問われるからだと考えている。単なるゲーム理論、ゼ
ロ・サム、総取り、強制的
支配を意味する
なら使わぬ方がよいからだ。ABCD包囲網の帰結が、ハーグ陸戦条約(1899年)の形
骸化とそして、2個の原爆投下を導出した。「ヘラクレスの火遊び」は「人命は地球より重し」をやが
てこれを覆す。それではどうすればよいか?まさに、そのことこそが我が国民の<主体形成のクオリテ
ィー>なのだ。


 

折りたたみブーツ

折りたためるブーツなんて、意表を突いたね。単なるファッションとしてでなく、これに折りたたみテ
ント(寝袋)、折りたたみ傘(太陽電池・通信アンテナ兼用)などとセットすれば
で、サバイバルやア
ウト・ドア用品になるだろう。これはマテリアル・イノベーションともセットだ。これは面白い。これ
を拡張すると小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」(下図クリック)
にも通じる。



 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

遺伝子組み換え作物論 Ⅱ

2014年07月06日 | 新弥生時代

 




 

 

【遺伝子組み換え作物論 Ⅱ】

遺伝子組み換え作物と本格的に腰を据え向かいはじめて、膨大な専門知識量と検索操作量に眼精疲労で
悲鳴を上げている?その典型的な症状は、遠視の進行もあるが、午前中の作業半ばに襲う猛烈な眠気だ。
ひどい場合はキーボードを打ち込み中、寝てしまっていることだ。こんなことは久しぶりだが、休憩を
とりリスタートさせている。そんなことで、『遺伝子組み換え食品の真実』を読み進めながら切りが良
いところで、10年以前の事象例を補完するように、現状がどのように変化してきているのか情報検索し
注釈記載する形で読み進めることにした。

尚、この著書の検索引用については、上図をクリックし、該当関係ページが閲覧できるようになってい
る。

 

                        第2章 遺伝子組み換え作物をめぐる全体状況


  (4)誰が遺伝子組み換え食品を求めているのか?

  誰も遺伝子組み換え食品など望んでいない。世論調査が行なわれれば、結果は必ず「誰も遺伝子
 組み換え食品を欲しがっていない」と発表される。
  ニュージランドの68%)。オーストラリアでは84%の人々が「遺伝子組み換え食品を食べる 
 ことに不安を感じる」と答え、カナダでは92%の人々が「長期的に摂取した場合のリスクに不安
 を感じる」と答えている。
  

  消費者

  世界中の消費者が、遺伝子組み換え食品の表示を望んでいる(EUの94%、英国の94%、米
 国の92%、中国の87%、カナダの90%以上)。しかも、ほとんどの人々が遺伝子組み換え食
 品を「食べたくない」と考えている(EUの80%、英国の86%、米国の55%、中国の56%、
 ニュージランドの68%)。オーストラリアでは84%の人々が「遺伝子組み換え食品を食べるこ
 とに不安を感じる」と答え、カナダでは92%の人々が「長期的に摂取した場合のリスクに不安を
 感じる」と答えている。

   小売業者

 ・英国では1999年以降、すべての大手スーパーマーケットが遺伝子組み換え食品の販売を拒否
  している。主要な店舗の90%が加盟する「英国小売組合」は、労働党のトニー・ブレア首相に
  対して、「た
とえ遺伝子組み換え作物の商業栽培が始まっても遺伝子組み換え食品を売 ることを
  拒否する」と伝えた。
 ・欧州では、ほとんどすべての食品製造業と小売業が現在も遺伝子組み換え食品を取り扱っていない。
   欧州の大部分(EUとノルウェー、スイス)の小売業者は、自社ブランドの食品に遺伝子組み換え原料を
  使用することを拒否している。英国国内で試験栽培が始まった時にも、スイスの 小売業者は、
  「遺伝子
組み換え食品を絶対に販売しない」ことで合意した。
 ・米国内でも消費者からの強い要求に答えて、スーパーマーケットの「トレーダー・ジョレス」「
  ワイルド・オーツ」「ホールフーズ」が、自社ブランドの食品には遺伝子組み換え原料を使わな
  いようにしている。

 ・オーストラリアでは、消費者からの圧力によって、国内で80%のシェアを占める鶏肉生産者「
  イ
ンガム」「バーター・ステグルズ」「バイアダ」の三社が、遺伝子組み換え飼料を使わないこと
  にした。
 ・二ュージランンドでも運動家と消費者の要求に答えて「ケンタッキー・フライド・チキン」が 「
  入手できる限り、非遺伝子組み換え大豆を使い続ける」と宣言した(2005年時点)。

  有名店のシェフ

 
  1990年代後半に英国では、100以上の有名店のシェフと料理記者たちが、遺伝子組み換え

 食品を使用しないことを宣言し、他のシェフやレストランに対しても賛同を呼びかけた。欧州の有
 名シェフの団体である「ユーロ・トークス」も同様のキャンペーンを実施した。

  農民

  農民でさえ、さほど遺伝子組み換え作物に熱心ではない。むしろ現実を知れば知るほど、農民も
 反対するようになっている。

 ・スイスの農民は、遺伝子組み換え作物を決して生産しないことに合意している。
 ・英国では、53%の農民が反対で、賛成は36%にとどまる。
 ・オーストラリアでは、74%の農民が遺伝子組み換え作物を栽培したくないと答え、49%が
  およそ反対。23%が支持すると答えた。

 ・日本では、農民が自分の農地を「非遺伝子組み換え作物地域」と宣言して市民の関心を高める
  とに努めており、国内における遺伝子組み換え作物の生産を阻止しようとしている。

 ・世界中で最も遺伝子組み換え作物を生産している国の一つであるカナダの農民も、「遺伝子組み
  換え小麦は生産したくない」と答えている。
 ・遺伝子組み換え作物の中心である米国では、多くの農民が遺伝子組み換え作物を高く評価して
  る。それでも、おもに家畜の餌になる大豆とトウモロコシ、繊維にする麻を除いて、遺伝子
組み
  換え作物の種類を拡大したいと考える農家は少ない。販売先である食品製造業者と加工業
者が、
  消費者に敬遠されることを恐れているからだ。かつて商品化された遺伝子組み換えトマ
トとジャ
  ガイモも定着せず、市場から消えてしまった。亜麻油とコメの商業生産もすでに承認
されている
  が、商品として販売するほどの量は生産されていない。
 ・
アルゼンチンも遺伝子組み換え作物の主要生産国である。ただし1996年から1998年に
  けて、政府は次々と遺伝子組み換え作物を承認したが、その後、新たな作物の承認はほとん
ど止
  まっている。種子企業から正式に遺伝子組み換え種子を購入する農家の教は近年、急激に
滅少し、
  大豆では50%から20%に減った。アルゼンチンの主要な農学者であるホルヘーエ
ドゥアルド・
  ルジは、次のように語っている。

  「世界的な巨大バイテク企業の提案に従って遺伝子組み換え作物を導入したが、その後、わずか
  数年で悲惨な結果となった。他のラテンアメリカ諸国が、私たちの経験を反面教師にすることを
  願うばかりだ」

  キリスト教会

  2002年には、ローマ法王庁と、イタリア人の大司教レナート・マルティーノが、米国のバイ
 テク・ロビー団体から働きかけられて、遺伝子組み換え作物を支持する見解を述べた。
  ただし、その他のキリスト教会では一般的に、とくに途上国におけるカトリックの聖職者たちは、
 遺伝子組み換え作物に強く反対している。たとえばブラジル、ザンビア、ボツワナ、南アフリカ、
 スワジランド、フィリピンなどの教会である。先進国でも、カナダ、米国、ドイツ、スコットラン
 ドの教会は遺伝子組み換え作物に反対しているし、英国国教会では教区内における遺伝子組み換え
 作物の栽培を拒否した。
  このように遺伝子組み換え作物は、社会全体で、まるで「台所で見つかった毒物」であるかのよ
 うに、決して歓迎されていないのである。

  (5)遺伝子組み換え作物はどこまで広がっているのか?

  遺伝子組み換え作物が世界で初めて商業栽培されたのは1996年のことだった。「カルジーン
 社」がつくった日持ちをよくする「フレーバー・セーバー・トマト」が、米国における最初の遺伝
 子組み換え作物である。それ以降、遺伝子組み換え作物の種類と、商業栽培を行なう国は徐々に増
 えている。バイテク産業のロビー団体は、「遺伝子組み換え食品が普及しており、嫌がらせのため
 の反対運動はごく少数」と主張している。彼らは、遺伝子組み換え作物はすでに世界中に広がって
 いると、人々に信じこませたいのである。しかし実際には、遺伝子組み換え作物はまだ少数であり、
 むしろ遺伝子組み換え作物反対運動が世界中に広がったため、バイテク企業は財務上でも四苦八苦
  している。統計調査もこの事実を明らかにしている。

  ・世界で遺伝子組み換え作物を栽培しているのは2004年段階で8100万ヘクタールであり、
   世界の農地面積の1・4%に過ぎない。

  ・米国、ブラジル、アルゼンチン、カナダ、中国、パラグアイの6カ国で、全生産量の98%を
   占めており、残り2%を10カ国で生産している。
  ・大豆、トウモロコシ、綿、ナタネの4種類が99%を占めている。
  ・商品化された作物の形質は、おもに「除草剤耐性」と「害虫抵抗性」の2つである。バイテク
   企業は、その他にも商品価値のある形質を研究開発しようとしているが、「遺伝子倫理ネット
   ワーク」のボブ・フェルプス事務局長は、「実際に商品化されるまでには少なくとも10年は
   かかるし、そのほとんどが失敗に終わるだろう」と語る。

  「遺伝子組み換え作物が世界中に広がっている」と広く信じられているが、バイテク産業とは基
 本的に米国が中心の産業なのである。

  ・遺伝子組み換え作物の59%は米国で栽培されている。
  ・モンサント社は、欧州におけるすべての遺伝子組み換え大豆の特許権と、欧州と米国における
   すべての遺伝子組み換え綿の特許権を握っている。 

  おそらくバイテク産業のロビー団体は、世界人口の半分近い30億人が住む35カ国のことを忘
 れているのだろう。これらの国では、食品表示の義務化(19カ国)や徹底した禁止など、何らか
 の形で遺伝子組み換え作物に制限を設けているのだ。少なくとも現時点では、EU、ラテンアメリ
 カ、アジアの多くの国とアフリカは、遺伝子組み換え食品が市場で流通するのを止めようとしてい
 る。こうした国々に対して、遺伝子組み換え作物や種子を購入するよう強く圧力をかけているのが
 米国政府なのである

The Transgenic Tomato, Timothy Rockey  
※ 「トマトの成熟変異遺伝子の利用による日持ち性の改善と低アレルゲン化について」/下図クリック



  (6)遺伝子組み換え食品の安全性試験は、確実に行なわれているのか?

  遺伝子組み換えビジネスを支えている、意図的な嘘がある。バイテク産業は、「遺伝子組み換え
 技術については、十分な安全性試験を実施している」と主張するが、驚くことにその嘘とは、「人
 間の健康に対する影響については、ほとんど安全性試験が行なわれていない」という事実なのであ
 る。
  バイテク産業は、「実質的同等」という意味不明な言葉をつくりだし、ロビー活動によって安全
 性試験を回避することに成功した。「実質的同等」とは、「遺伝子組み換え作物と従来の作物を、
 科
学的な視点で比較すればほとんど似ているので、同じものと考える」という論理である。しかし
 「もし遺伝子組み換え作物と一般種とが同じである」というのなら、なぜ特許権が発生するのだろ
 うか。科学誌『サイエンス』の記事は次のように指摘する。
 「実質的同等という概念は、"いつわりの科学的論理"であり、科学であるかのように見せかけた商
 業的、政治的な判断" にすぎない。生化学的検査や毒性試験をする必要はない、と言い逃れるため
 につくり出した言葉なのである」
 
  第5章で詳しく述べるが、2000年に家畜の飼料用として栽培されたトウモロコシが食品に混
 入して大規模な回収に発展した「スターリンク事件」が起きたことで、すでに遺伝子組み換え技術
 の詐数的な行為は明白になっている。
  英国政府でバイオテクノロジーの責任者だったジャック・カニンガム大臣も、うっかりバイテク
 業界の問題を指摘したことがある。1999年2月に漏洩した部外秘のメモによると彼は、「なぜ
 英国政府は、遺伝子組み換え食品の安全性について、医薬品と同様に確実な安全性試験を行なえと
 要請しないのか」と発言しているのである。
  その理由は、1979年から94年まで「米国食品医薬品局(FDA」でバイオテクノロジーの
 責任者だった、ヘンリー・ミラーの発言の中に見つかる。
  「米国政府の各担当局(食品医薬品局、農務省、環境保護庁)は、バイテク分野において、巨大
 な農業関連企業が要請してきたことと、彼らが指示してきたことだけを実行してきた」と彼は言う
 のである。
 
  アーパッド・プシュタイ博士も、英国における遺伝子組み換え食品の安全性試験についての方針
 を、次のように批判している。
  「英国で規制を担当する"新規の食品と製造加エに関する諮問委員会"は、独自に安全性試験を

 なわない。彼らが安全性を確認する際には、遺伝子組み換え企業が提出してきたデータだけに依拠
 しているのだ。しかし、遺伝子組み換え企業に限らずどんな企業でも、自社製品の安全性に不安が
 あるといったデータを公開することなどありえない。まったく非常識な判断であり、すべてが欺脈
 に満ちている」
  英国の元環境大臣マイケル・ミーチャーも次のように指摘する。
  「安全性試験が存在しないことは、遺伝子組み換え食品の規制における最大の欠陥であり、安全
 性を判断するという点で恥ずべき怠慢である」
  そもそも、バイテク産業が実施している試験内容とは、おおよそ以下の項目だけである。すなわ
 ち「給餌(家畜の餌として商品価値の試験)」「組成(実質的に同等であることの確認)」「栄養
 素」「毒性(既知の毒素が含まれていないことの確認であって、新たな毒素の可能性を試験するも
 のではない)」「アレルゲン(検査方法の信頼性が低い)」などであり、人間の健康に対する影響
 を確認するための試験としては不十分で、重大な欠陥がある。

 「英国土壌協会」のグゥンドラ・アジズは、『栄養と健康』(2003年17号)に掲載された「

 遺伝子組み換え食品の安全性試験に関する論評」について次のように解説している。

 「人間と動物の健康に対する遺伝子組み換え作物の影響について、これまで結果が公表された研
 は10件しかない。しかもその半数以上の研究は、部分的あるいはすべてがバイテク企業と共同

 実施されたものであり、これらの研究では人体に対する影響は確認されなかった。しかし、第三

 機関が独自に実施したその他の研究では、消化器官に対する影響について詳細に調査した。その

 果、これら4つの研究では、原因不明の問題が生じている可能性があると指摘されている」。そし
 て、「こうした問題がすべて、わずか10日から14日間、遺伝子組み換え作物を摂取しただけで
 生じたことは、注目すべき点である」と指摘している。

  公表された研究は数少ないが、その多くで問題が発見されているのだ。バイテク企業が主張する
 「遺伝子組み換え食品は安全である」という仮説は、実際には証明されていない。そもそも、遺伝
 子組み換え食品の安全性を完全に証明する科学的方法など存在しないのである。そして、公表され
 たわずかな報告でさえ、人体に悪影響があるかもしれないと証明(そのまま記載)している。

  このほかにも、遺伝子組み換え食品が悪影響をもたらす可能性があると示唆する研究が数件、公
 表されている。
  2004年になって公表された「ニューキヤッスル研究」は、人間が、遺伝子組み換え作物を一
 度摂取しただけで、体内の腸バクテリアに組み換えDNAが移転したと指摘する(『自然バイオテ
 ク
ノロジー』22号)。
  当初、公表されていなかった「フレーバー・セーバー・トマト」に関する試験でも、ラットに病
 変や胃炎が発見されている
  ノルウェーの「バイオセーフティセンター」のテルジュ・トラービク博士が行なった研究でも、
 遺伝子組み換え作物を一回給餌しただけで、ラットの細胞組織の中に組み換えDNAが発見されて
 おり、人間の細胞の中でも同様に機能していることが確認された。また、モンサント社が行なった
 実験でも、ラットに遺伝子組み換えトウモロコシ「MON863」を90日間、給餌したところ、
 腎臓が縮小し、白血球の数が増加している。
  
  1999年には、スコットランドのスタンリー・イーウェン博士とプシュタイ博士が、雄のラッ
 トに10日間、遺伝子組み換えジャガイモを与えたところ、消化器官の障害、免疫系の低下、脳・
 肝臓・睾丸の発達障害、腎臓や腸組織の肥犬など多くの異常が発見された。とくに、胃と腸内細胞
 の増殖は、がんを増加させる前兆である可能性があった。また数匹の肝臓では、部分的に萎縮が起
 きていた。こうした異常は、元気な勤物の体内で起きたことなのである。
  モンサント社などのバイテク企業は「危険性が存在する証拠はない」と主張するが、だからとい
 って、安全性を主張することはできない。「危険でない」ことだけでなく、「安全である」ことを
 証明することが必要なのである。そして「予防原則」に従えば、「安全性を証明する責任を負うの
 は、公衆ではなく、事業の主体にある」のだ。
 「米国環境保護庁(EPA)」に勤務していた毒物学者のスザンヌ・ワートヒール博士は、次のよ
 うに指摘する。

  「一流の科学者たちの指摘や、バイテク産業にとって不利なデータを無視することで、遺伝子組
 み換え技術は発展してきた。しかも本来ならば、人間の健康と環境を守る立場にあるはずの農務省
 (USDA、環境保護庁(EPA)、食品医薬品局(FDAなどの行政当局自体が、遺伝子組み換
 え技術を推進してきたのである。私たちは、現代社会が知り得た最強の技術と対決することを強い
 られているが、それがどのような結果をもたらすのか、ほとんど何も考えずに突き進んでいるのが
 遺伝子組み換え技術なのである」

                    リーズ、アンディ 著 『遺伝子組み換え食品の真実』

                                     この項つづく



【オールソーラーシステム完結論Ⅰ】

先日の『不気味な遠隔作用』や『量子スケールデバイス技術過渡論』、さらには『特集|量子スケール
太陽電池製造技術』をまとめてきたが、いよいよ『オールソーラオーシステム』の入口論の”供給エネ
ルギー”としての太陽光発電が技術的にも、実践的にもシステム担保を確定している手応えを感じてい

る。例えばその先駆的実践をおこなっている加藤静吾氏は『ソーラーシェアリングの将来性』で「20
09年
の日本の総発電量の9565億kWhを太陽光だけで発電するには、日本の農地面積400万ヘクタ
ールのうちの300万ヘクタールでこのシェアリングを適用すればいいことになりますが、そのために
は農地の大部分をしめる水田でのソーラーシェアリングの普及が必要です」とホームページで掲載して
いるが、この数字を頻用して変換率を現状を15%として、20%、25%、30%とすれば、所
要農
地は、現状300万ヘクタールに対し、それぞれ225万、180万、150万ヘクタールに逓減でき
ることになる。参考に「発電単価を10円/kWh以下に下げるには」では発電設備の総工事見積が掲載され
ている。

高変換効率な量子スケール太陽電池製造技術も着実に進展している。例えば、低コストで化合物半導体
製の太陽電池の製造方法が提案されている(下図クリック)。さらには、軽量で低コストな集光体およ
び集光体を用いた集光型太陽電池の提案がされている(上から2つめの下図クリック)。また、量子井
戸からの電子及び正孔の取り出しを改善できる窒化物半導体太陽電池の提案がされている(上から3つ
めの下図クリック)。さらには、有機系(色素増感型含)薄膜太陽電池で高い光電流値が得られ、かつ
膜剥がれが抑制される配位子のスケール最適化させた半導体膜の提案がされている(上から4つめの下
図クリック)。最後に、
高い光生成電流密度と高い電流出力とを有する半導体デバイス構造の提案もさ
れていおり(最下段図クリック)、モジュールレベルで変換効率25%超時代に向けて関係先端知財が
整いつつある情勢である。

 



 




大型で非常に強い台風8号が8日朝から昼すぎに猛烈な勢力に発達して沖縄地方に最接近する見通しのた
め、7日夜にも「特別警報」を発令する可能性があると発表があったばかりへ、彼女から写メールが届
く。何だこれは?ということで書棚の「標準原色図鑑 樹木」やネット検索し、ネムノキ科ネムノキ属
合歓の木(学名:Albizia julibrissin),花糸は淡紅~紅色、雄しべは白色,落葉高木、原産地:日本、
言葉:歓喜、創造力、撮影地:彦根市松原町たねや「ジュブリルタ」。虫眼鏡を手に確定。それにして
も「眠気、ネムケ、ネム・・・・、ネムノ・・・・、ネムノキ」とは、お後の方はよろしいようで、この辺で失

礼を!


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

量子スケールデバイス技術過渡論

2014年07月05日 | デジタル革命渦論

 

【量子スケールデバイス技術過渡論】



次世代半導体トランジスタ向け計測器の開発事例

20年前になるが、走査トンネル顕微鏡(STM;Scanning Tunneling Microscope)が売れていくのでは
ないかと考え社内勉強会を開催したりしていた。数がそれほど出るものではないが、半導体製造
には欠かせない計測器だと想定していた。ところで。産業技術総合研究所がこの装置使い微細ト
ランジスタの不純物濃度分布を高精度で測定する手法を開発したことを公表。この発明背景には、
近年の大規模集積回路(LSI)の発展に伴い、トランジスタの微細化の限界に漸近、このため不
純物ドーパントを高精度に制御する必要に迫られており、高い空間分解能で不純物濃度の分布測
定しなければならない。


ところで、STMは非破壊で高い空間分解能で測定できる。上下図に半導体試料のSTM測定の概念
図。半導体試料とSTM探針の間に電圧をかけると、探針直下の試料表面の静電ポテンシャルとキ
ャリア濃度に依存してトンネル電流が流れる。STMは探針でスキャン(走査)するので、各位置の
不純物濃度を反映しているトンネル電流からn型・p型の不純物濃度分布を測定できるという。

 

しかし、STMは測定に際し試料に電圧をかけるので、その電圧や試料内部を流れる電流が試料の
ポテンシャル分布を変化させてしまって正確なポテンシャル分布を測定できない。従って、正し
いポテンシャル分布を得るには、その影響を取り除く必要がある。STM探針と半導体試料の間に
電圧をかけた時の影響、特に探針と試料の間に流れるトンネル電流が試料内部に流れる影響を電
算機のシミュレーションで取り除けることに成功。この技術により、STMを用いてポテンシャル
や不純物濃度の分布の高精度測定ができるので、これまで難しかったナノメーターレベルの正確
な測定が実現できる。



上図には、不純物濃度が既知の半導体試料をSTMで測定した電流電圧特性(マーカー●で表示)と
シミュレーターによる予測値(実線で表示)を示したグラフ。半導体内部の電流の影響を考慮する
ことで、半導体試料の測定値を精度よく計算できることが初めて検証されたことになるというが、
下図に不純物分布を推定するテストを計算機上で行った結果を示しているが、半導体製造プロセ
スシミュレーションでn+p接合の不純物濃度分布(線で表示)を想定し、シミュレーターで予測し
たところ、推定した濃度分布が、はじめに想定した不純物濃度分布と、0.01 µm(10 nm)の精度で一
致していたという。

 

●次世代SiCパワー半導体(ダイオードとトランジスタ)

それでは、次世代半導体の威力とはどんなものかパワー半導体でみてみよう 上図はトヨタ自動
車とデンソー、豊田中央研究所の3社が5月20日に発表されたハイブリッド車のPCUのサイズ、
従来のSi(シリコン)パワー半導体よりも高効率のSiC(シリコンカーバイド)パワー半導体のも
のの比較(右が共同で開発したもの)。つまり、ハイブリッド車のモーター制御などに用いられ
ているパワーコントロールユニットPCU)に採用する予定。2015年までに公道での走行実験を
始める。これによりSiCパワー半導体を用いたものはハイブリッド車の燃費を10%向上させ、PCU
のサイズを5分の1と小型化させるとしている。

 

 

●全固体リチウム二次電池の高性能化

また、物質・材料研究機構は、全固体リチウム二次電池の高性能化に向けた界面抵抗制御の次世
代蓄電池の正極-固体電解質界面のリチウムイオン状態シミュレーションに成功したことを公表。
リチウムイオン電池は小型のものがすでにパソコン・スマートフォン・カメラなどに広く利用さ
れる一方で、エネルギー問題などの観点からハイブリッドおよび電気自動車、飛行機、蓄電シス
テムといった大型のリチウムイオン電池の開発も近年精力的に行われている。大型用途には、従
来の小型二次電池よりも高エネルギー・高出力といった高性能化と熱暴走阻止や長寿命化といっ
た高信頼性の両立に関連して幾つも技術的課題が残っているが、電解液の発火などの安全性の問
題はリチウムイオン電池開発の最重要課題となっている。

この発火や熱暴走の問題は、リチウムイオン電池の高エネルギー化のために、燃えやすい有機溶
媒を電解液の主成分として使わざるを得ないところに根本的な問題にあり、その解決策に燃えな
い固体硫化物や固体酸化物を電解質として用いた蓄電池開発が注目を集めているが、固体電解質
はリチウムイオンの伝導特性が有機溶媒系ほど良くなく充電速度が遅い問題がある。ここ数年、
新しい硫化物電解質などの固体電解質材料の提案により電解質内部の輸送抵抗は大きく改善した
ものの、電極と電解質の界面における抵抗は解決していない状況がある。対策の一つの方法とし
界面への緩衝層導入で抵抗を減少させる方法が提案があるが、充放電時の界面の電子・原子の動
きを実験的に観察できず、緩衝層導入時の界面抵抗の変化の微視的な機構は謎のままである。

※緩衝層全固体電池の酸化物正極と固体電解質の間に挿入することによって界面抵抗を低減させ
 る層。主に数ナノメートル(10億分の1メートル)の酸化物が用いられる。


そこで、電子・原子の動きを高精度で取り扱える密度汎関数理論(DFT)をベースにした第一原理計算手
法と、複雑な固体-固体界面の安定構造の包括的な探索を可能にする計算技術を融合することにより
、全固体リチウム二次電池の酸化物正極-硫化物電解質界面における界面原子構造やリチウムイオン
の挙動を世界で初めて理論的に明らかにしました。酸化物正極、硫化物電解質、緩衝層としてはそれぞ
れ代表的なコバルト酸リチウム(LiCoO)、リチウム硫化物(LiPS)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)を
選択し、各物質の組み合わせに対してあらゆる格子整合を考慮して最も安定な界面構造を第一原理計
算により求めました。LiCoOに対してはコバルト(Co)原子内の特殊な電子相互作用を考慮して、電子
相関項を取り込んだ計算を実行。

緩衝層のないLiCoO/LiPS界面では界面の反応性により界面構造が崩れてリチウムイオン分布に
ムラ、つまり一種の空間電荷層ができ、さらにリチウムイオン電位を計算したところ電解質側に電位の著
しく低いサイトが存在することを解明(上図(1))。従って、充電時に低電位においてこれらのサイトからリ
チウムイオンが抜けることで、リチウム空乏層(空間電荷層)が成長し、それが界面抵抗を増大させてい
ることが示された(下図(1))。この界面に緩衝層LiNbOを挿入するとLiCoO側、LiPS側とも界面が
ほぼ平坦になり分布ムラが軽減され、また界面付近のリチウムイオン電位の減少も抑制されることを確認
された(上図(2))。これにより緩衝層を含む界面ではほぼ理論的な電圧から充電されることが示唆され
(下図(2))。このように空間電荷層の描像は実験の充電曲線をうまく説明する微視的機構となっており、
反応層機構など正極-固体電解質界面の抵抗原因として提案されている様々な機構の中で、空間電荷
層成長機構が主要な要因であること、そしてそれを低減する緩衝層の役割を世界で初めて電子・原子
スケールで理論的に実証できたという。

 

この成果は、長年議論されていた全固体リチウム二次電池の正極-固体電解質界面の界面抵抗の
起源を明らかにするとともに、緩衝層導入による界面抵抗の低減機構を原子スケールから与える
ものとなっており、今後の全固体電池の高性能化に向けた緩衝層の材料選択、界面設計に貢献で
きるという。



●触媒の性能を維持して白金族使用量を50%低減

もうひとつ。NEDOプロジェクトが、ディーゼル排ガス酸化触媒に含まれる白金族の使用量低減
に有効な触媒調製法(表面ポリオール還元法)を開発したことを公表。
今回開発した表面ポリオー
ル還元法を用いることで、従来の調製法と比較して、白金族使用量を50%低減して同等の性能を
有する触媒を製造することができます。また、耐熱性が向上するとともに、量産性にも優れてい
ることから、量産試験や触媒の実車評価を行い排ガス浄化触媒の実用化につなげていくとのこと。
これは、産総研のスマートスタックもその一つといえる(『特集|化合物半導体太陽電池の製造
技術』
)。これまでのメカニカルスタックとの最大の違いは、貼り合わせる面にパラジウムの直
径50nmの粒子を1×1010個/cm2の密度で配置する点。これにより、従来のメカニカルスタックで
必要だった電子ビームやプラズマでの貼り合わせ面の表面処理が不要になり、必要な表面の平坦
性も1nm以下から、10nm程度に大きく緩和されるものだが、全面塗布ではなく最適条件でパラジ
ウムを配置することが過剰な使用量を抑えることができるというものだが、原子スケール・量子
スケールで設計することで見えないものが見えてくるという実例であろう。

 

今夜は原子スケール・量子スケールという数ナノメートルから数10ナノメートルの設計技術の現
状とその科学の波及効果を<過渡論>として考えてみた。いかなる<過渡>なのか?それは、読
者それぞれで考えていただければと考える。
 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

遺伝子組み換え作物論Ⅰ

2014年07月04日 | 新弥生時代

 

 

 

世界展開する"クール"』(2014.03.13)で「遺伝子組み換え食品の真実」をたたき台に遺伝子組み換
え作物の現状を把握、考察を開始したが、長い間放置したままであったことに気付く(約4ヶ月放置)。
そこで一旦リセットし、ここから熟っくり読み進めようと考察をリスタートさせる。



                      第2章  遺伝子組み換え作物をめぐる全体状況


         「遺伝子組み換え技術は、生物学上の核分裂と同じようなものである。かりに、

          核爆発ほど危険でなくても、人間にとってきわめて有害であることは確かだ」

                               ロバート・アンダーソン博士

             (ニュージランド「責任ある遺伝学のための医師と科学者の会」会員)


         「遺伝子組み換え作物によって、これから十年の間に環境と経済は、中規模から

          大規模の破局的な事態を迎えることになるだろう」
      

              ノーマン・エルストランド教授(カリフォルニア大学、環境遺伝学)


  (1)核心にある問題

  最初に率直に言おう。遺伝子組み換えをめぐる議論は、次のように表現できる。「遺伝子組み換

 え技術は、人間の健康を害し、環境と農業に災いをもたらす可能性がある。しかもその結果、一握
 りの企業が、私たちの食料となる種子の特許料で貪欲に利益を上げ、さらに世界中の食料の生産と
 流通を支配することになるのだ」。それ以外は、枝葉末節の問題である。
  次に指摘したいのは、「遺伝子組み換え技術」という用語は、「技術者」という高潔な専門職に
 と
って侮辱であることだ。「技術」という言葉は「正確さ」を意味する。ところがまさにその「正
 
さ」を欠いているのが「遺伝子組み換え技術」の特徴なのである。遺伝子組み換え技術の推進者
 だ
ちは、「遺伝子組み換えとは、必要な遺伝子を注意深く取り出して、受容体となるゲノム(生物
 体を
構成する細胞に含まれる染色体の一紙)の適切な位置に挿入する技術のことである」と人々に
 信じこま
せようとしている。

  P.57

  しかし、植物性タンパク質の研究に四十年以上も取り組んできた、世界的にも有数の専門家アー
 パッド・プシュタイ博士は、その主張に反対している。(ちなみに、遺伝子組み換え作物をめぐる
 論争の
中心に、植物性タンパク質の問題がある)。
  「ウィリアム・テルが、的を狙って矢を射る場面を想像してほしい。遺伝子組み換えの場合は、
 目隠ししたまま矢を射る。これが遺伝子組み換え技術を使って、遺伝子を挿入するということなの
 だ。導入された遺伝子が受容体のゲノムのどの場所に位置しているのか、技術者にはわからないの
 が現実なのだ」
  すなわち「遺伝子操作」や「遺伝子組み換え技術」という表現は不適切であり、むしろ「遺伝子
 細工(Genetic Tinkering)」とでも呼ぶべきなのである。

 
  時代遅れの科学


  バリー・コモナー博士など、多くの科学者は次のように指摘する。

  「バイテク産業は四十年遅れの科学を基盤にしており、科学の発達を都合よく無視している」
  「今では一つの遺伝子によって、複数のタンパク質が生じる可能性がわかっている。これこそ、
  バイテク産業が依拠している理論を崩壊させる事実なのである」

   マイケル・アントニウス博士も同様に指摘する。
  「遺伝子組み換え技術は、時代遅れだ。"遺伝子が独立した情報の単位であり、別の生物に導入し
 
ても同じ働きをする"という考え方は1980年代の認識である。今日では、遺伝子が複雑で相互
 関連したネットワークの一部として機能していることがわかっている。ある遺伝子が他の遺伝子

 ら独立して機能することはないのだ。新たな遺伝子を挿入すれば、その遺伝子と受容したゲノム

 双方が影響を受ける。遺伝子を配列から取り出した場合に、何か起こるのか予測することも、結

 を完全にコントロールすることもできない。この点が、遺伝子組み換え技術の思考にある、根本

 な欠陥である。遺伝子組み換え技術が正確に機能することはないし、遺伝子組み換え技術は、欠

 のある科学に依拠しているのだ」
 

  (2) 遺伝子組み換え作物の前史

  そもそもなぜ遺伝子組み換え作物が普及したのだろうか。これまでの経緯を簡単に説明しよう。 

  工業的農業の歴史

  工業的農業が先進国で誕生したのは1940年代のことである。今ではどこにでもある農業の姿
 であり、英国でも九六%の農地が工業型農業になっている。工業型農業とは、化学肥料・農薬を使
 い、画一的な農法で収穫量を上げる農業のことである。除草剤、殺菌剤、殺虫剤や化学肥料などの
 
農薬に依存した農業なのである。農薬の使用が始まったのは1950年代のことであり、1980
 年代後半には使用量が最大となって、今日でも厖大な量が使われ続けている。当初は、こうした農
 法が大成功したかのように思えた。先進国では195年代に、途上国でも1960年代初頭には、
 単位面積あたりの収穫量が最大に達したからである。
 
  途上国に工業的農業が導入されたのは1960年代であり、食料を増産するというのが表向きの

 目標だった。「緑の革命」として知られているように、高収量の種子を使い、化学肥料と農薬を多
 投し、直流によって収穫量を増やしたのである。高収量の種子を関発したのが「国際農業調査セン
 ターTARC)」であり、この機関は1960年代初期に途上国で設立された。そしてさらに、自
 給自足的な農業を営んでいた農民に対して、この高収量の種子の導入を促進したのが、「国際通貨
 基金(IMF)」と「世界銀行」だったのである。

  その後しばらくの間、収穫量は増えたが「緑の革命」は様々な問題を引き起こした。貧しい農民
 を助けるどころか、裕福な農民層に富が集中し、土地も彼らの手に渡ってしまった。余裕のある農
 民しか種子や化学肥料を買い続けられなかったために、何千人という貧農は借金の返済に困り、土
 地を手放すことになったのである。

  しかも農薬の使用量が増加するにつれて、急速に自然の多様性が失われた。農民白身も健康を害
 し、地下水、土地、環境が汚染された。潅漑によって水資源が枯渇し、塩害が起きて、農地が使用
 できなくなることもあった。土壌の養分は減少し、収穫された作物の栄養素が低下するという新た
 な問題も発生した。高収量の種子は害虫に対する抵抗性が弱く、しかも単一栽培が広がったため、
 
病害虫が発生した時の被害は以前より拡大するようになった。当初、増加した収穫量もやがて頭
 ちになり、連に滅少しはじめた。こうした過程の中で、農業は農民にとって「生活の手段」から、

 「利益を求める事業」へと変質し、農業関連企業が製造・販売する様々な商品が普及するようにな
 った。
 
  「緑の革命」によって解消されるはずだった飢餓は、構造的な問題になり、空腹と栄養不足に直 

 面する人々は世界中で8億人も存在する。



 
  自由貿易の推進

 
  世界には物があふれているのに、なぜ貧困が広がっているのだろう。一つの要因は国際政活にあ

 り、もう一つの要因は、歴史上初めて、多国籍企業が世界を支配したことにある。
  1970年代には、「石油輸出国機構(OPEC)」が原油価格を上げたために二度の石油ショ
 ッ
クが起こり、産油国のオイルマネーによって貧困国に対する過剰な融資が行なわれた。融資され
 た
資金は、それまで人々の生活手段であった農業を変化させることになった。農薬が使用され、熱
 帯
地域ならバナナやカカオなど、輸出向けの換金作物を生産するための投資がされた。その結果、
 地
元の農民たちは本来、自分たちの食べ物を生産するための土地を失うこととなった。




 
  しかも、途上国で一次産品が過剰に生産されたために国際価格が下がり、そのうえ、こうした一

 次産品を輸入していた先進国も不況になった。途上国に融資された借金の利息は上昇し、途上国で
 は長期の借入金が急増した。すると巨額の債務不履行が発生することを恐れた「世界銀行」と「
 際通貨基金(IMF)」は途上国に"構造調整プログラム"を強要した。この政策が目標としたのは、
  教育や医療に対する財
政支出を強制的に緊縮させるとともに、労働力を減少させ(大量の失業を発
  生させ)、環境規制を緩め
て、輸出(換金作物の生産量のさらなる拡大)によって外貨を獲得する
  ことだった。金融機関はこの状
況を利用して、海外企業が有利に参入できるよう途上国に指示し、
 その国の産業や天然資源が海外
資本に略奪される途を開いていった。
 
  こうして途上国に "
構造調整プログラム" を導入したのは、先進国の意図的な政策だった。バイ
 テク企業の権力が増加する一方で、多くの造上国は借金を完済できず、今も栄養不足と飢餓がまん
 延することになった。
  1999年にはドイツのケルンで開催された先進国首脳会議において、「途上国の債務を一部、
 帳消しにする」ことが合意された。ところが実際に帳消しにされたのは2005年5月の時点で、
 世界最前国の借入金のわずか10%に過ぎない。
  そもそも必要なのは、援助だけでなく公正な貿易なのである。ところが貧困国は貿易によって毎
 日、13億債ポンドもの損失を披っており、その額は貧困国に与えられた援助金の14倍にも相当
 す
るのである。


 
  結局1980年代以降に推進された。"構造調整プログラム"の基盤にあったのは「自由貿易の推

 進」というイデオロギーであり、それを促進してきたのが、先進国の支援を受けて形成された「世
 界貿易機関(WTO)」に関わる企業だった。「自由貿易の推進」という大儀名文のため、途上国
 2001年までにわずか4社がすべての遺伝子組み換え種子を販売するようになり、現在ではその
 90%をモンサント社が占めている。今後は、遺伝子組み換えでない種子を生産する種子企業でも
 合併、統合が進むと予測される。がっては利益が上がらなかった作物でも、遺伝子組み換え技術を
 導入すれば、農業関連バイテク企業にとって、新たな商品になる可能性があるからだ。

  遺伝子革命?

 こうしていわゆる「遺伝子革命」が始まった。「緑の革命」の時と同様に、「遺伝子組み換え技術
 を導入することは、貧しい農民たちにとって救世主になる」と謳われた。しかし実際には「緑の革
 命」と同じように、飢餓を解消すると称して導入されたのは、小手先の農法でしかなかった。作物
 の遺伝子を改良して高収量の品種を問発し、農薬も使用するのが「遺伝子革命」の農法なのである。
 すでに述べたように「緑の革命」は、多くの農民を苦しめ、環境を破壊して、飢餓をもたらした。
 その一方で、大規模農家だけが裕福になり、さらに重要な問題は、農業関連企業が巨額の利益を上
 げたことである



 
  結局、「緑の革命」が失敗に終わった最大の理由は、単純な方法で飢餓問題を解決しようとした
 ことにある。本来なら、農業にとって重要な、水の管理、混作、土壌の施肥など持続的な農法を工
 夫することによって、収穫量は容易に倍増させられる。それにも関わらず、「緑の革命」はこうし
 た農業の基本を無視したのである。過去の反省から学ぶこともなく、遺伝子組み換え技術の推進者
 たちは、再び同じ遺を進んでいる。その原因はどこにあるのだろうか。

  結局彼らの真の目的は、貧農の飢餓を解消することではなく、企業が食料の生産と流通を支配す
 ることにあるのだ。食料生産の分野でバイテク企業の仕事は山ほどある。彼らにとっては、巨大な
 マーケットが手つかずのまま広がっている。アフリカでは農民の90%は今も種子を自家採取して
 いるし、途上国における大部分の農業は、農薬を使用しない有機農法で行なわれているからである。

  (3) 遺伝子組み換えで誰が利益を得るのか?

  私が呼ぶところの「遺伝子細工(Genetic Tinkerig)」とは、目的とする形質を得るために、植物
 や動物のDNAに一つもしくは複数の遺伝子を挿入することである。たとえば「北極ヒラメ」の遺
 伝子をトマトに挿入して、凍りにくい性質をトマトにもたせるようにする。あるいは魚の成長を早
 めるために、人間の遺伝子を魚に挿入するのである。

  しかし私たちは、遺伝子組み換え生物を求めていないし、私たちが開発を依頼したわけでもない。
  結局、バイテク企業の他に利益を得るものはないのである。だからこそ、バイテク産業のロビー
 団体は、目的を達成するためには手段を選ばない広告企業に巨額の宣伝資金を投じる必要があるの
 だ。バイテク産業は、私たちが食べる食品をつくりかえることで特許料を得ることができる。彼ら
 は、私たちには想像もつかないほど、巨大で新しい市場をつくりだしたのである。

  疑り深い市民を納得させるためには、「遺伝子組み換え技術が、世界に大きなメリットを生みだ
 す」と、もっともらしい理由をいくつも主張する。毎年、何百万トンもの殺虫剤をひたすら製造し
 続けている企業が、「遺伝子組み換え作物によって、殺虫剤の使用量を減らせる」と語る。有毒な
 化学物質を何百万トンも製造して徹底的に世界を汚染してきた企業が、「遺伝子組み換えによって
 環境をよくすることができる」と語る。途上国では平然と子どもを労働力として使い、先進国で禁
 止している危険な農薬を輸出してきた企業が、「当社は真剣に人々のことを考えており、世界から
 飢餓をなくすためには、遺伝子組み換え技術が必要である」と語る。「遺伝子組み換え種子を無断
 で使用されて特許権を侵害された」と主張して農民を告訴する企業が、その舌の根も乾かぬうちに
 「遺伝子組み換えは、農民に利益をもたらす」と語るのだ。

 


 
  彼らの主張はまったく奇妙である。たとえば、もしもカナダで遺伝子組み換え小麦の生産が始ま
 ったら、農民は販売先を失い、7800万ドルの損失を彼るという試算がある。ところがその場合
 でも、モンサント社の懐には1億5700ドルが入るのだ。
  英国政府が2003年に実施した「公開討論」では、八六%の人々が「遺伝子組み換え食品を食
 べたくない」と答えている。「巨大企業のやることは、度が過ぎている」と人々は直感的に感じて
 いる。ヒキガエルの遺伝子をジャガイモに、魚の遺伝子をトマトに、サソリやクモの遺伝子を野
 菜に導入するといった企業のアイデアを、人々は不快に感じているのだ。だからこそ新聞「デイリ
 ー・メール」が、遺伝子組み換え食品に「フランケンシュタイン・フード」と命名しても誰も驚か
 なかった。1996年に、冷凍食品専門のスーパーマーケット「アイスランド食品」の会長マルコ
 ム・ウォーカーは、次のように語っている。
 
  「何百万人という一般の人々が、遺伝子組み換え食品に不安を抱いているが、私もその一人だ。
 遺伝子組み換え食品によって、私たちは崖っぷちに来てしまった。生命を構成する基本的な要素を
 もてあそぶとは、何と恐ろしいことだろう」
  遺伝子組み換えによる環境破壊は問題である。ただし本当は、それ以上に深刻な問題が存在する。
 私たちが食べる食品を企業が支配するということは、企業が全人類に対して戦争をしかけるような
 大事件なのである。


                    リーズ、アンディ 著 『遺伝子組み換え食品の真実』


●併せて読んでおきたい一冊
 

 

「緑の革命」の考察の参考書? ――本書では、ただたんに人びとから豊かな食生活を奪っただけでは
なく、「コメの品種改良の歴史にひそむ、「科学的征服」の野望」が語られている。裏表紙には、つぎ
のような本書の概略がある。「稲の品種改良を行ない、植民地での増産を推進した「帝国」日本。台湾・
朝鮮などでの農学者の軌跡から、コメの新品種による植民地支配の実態の解明。現代の多国籍バイオ企
業にも根づく生態学的帝国主義(エコロジカル・インペリアリズム)の歴史を、いま繙(もと)く。この概
略を読まないで、帯に大書された「稲も亦(また) 大和民族なり」だけ見て読みはじめると、日本の稲
作文化とそれを支えた農学者たちの礼賛の本ではないかと思ってしまう。著者、藤原辰史は、農学者た
ちの功績を認めつつ、それでも罪悪のほうがはるかに深刻で後世まで引きつづく問題を遺したことに鋭
く切りこんでいく。そして、その功績は市場原理と結びついていったものであり、とくに自家消費用の
在来米を栽培する人びとの生活を豊かにするものではなかったことを明らかにする。著者は、植民地産
米の増産について、つぎのように述べている。「移出する側の植民地の農民は、良質(と内地の市場で
評価される)品種を食べることはまれであり、在来の食味の悪い(と内地の市場で評価される)米や、
粟(あわ)や黍(きび)を食べる。内地米は基本的に自給米ではなく商品であった・・・・21世紀の帝国主義
が、国家の枠を超えて、遺伝子操作技術をはじめとするバイオ・テクノロジーによって人間と人間以外
の生物を同時に支配するという、新しい段階に突入することは間近に迫っているように思われる。医薬
品産業と種子産業はしばしば同一の企業に担われている。古い時代の偶然が新しい時代に必然になるこ
とで、歴史は進展してきたからである――と。早瀬晋三大阪市大教授が書評(2012.09.18)し、次のよ
うに結んでいる。


 日本のコメは戦前・戦中の帝国主義・植民地主義と深く結びつき、それが戦後のアメリカの食糧戦
 略にも結
びついていったことがわかる。そして、「稲も亦 大和民族なり」というように民族文化
 と絡み、世界に誇るこ
とができると思っているために、さらにやっかいである。すくなくとも、日
 本人の稲のもつ特殊性を理解したう
えで、その神聖性は国内にとどめ、外国に押しつけることだけ
 はやめた方がよさそうだ

 
そういえば、『自我の証明』(2014.06.29)の「技術的特異点 シンギュラリティ」のところで記載
紹介した「考えられうる超人間的知性の中には、人類の生存や繁栄と共存できない――知性の発達と
ともに人間にはない感覚、感情、感性が生まれる可能性がある。AI研究者フーゴ・デ・ガリスはA
Iが人類を排除しようとし、人類はそれを止めるだけの力を持たないかもしれない主張。他の危険性
は、分子ナノテクノロジー
や遺伝子工学にに関するもので、これらの脅威は特異点支持者と批判者
両方にとって重要な問題である。ビル・ジョはその問題をテーマとして Why the future does't need us
(何故未来は我々を必要としないのか)を公表。また、哲学者ニック・ボストロムは人類の生存に対
する特異点の脅威についての論文「Existential Risks
存在のリスク)」をまとめた。多くの特異点論
は、ナノテクノロジーが人間性に対する最も大きな危険なものだと考えているが、彼らは人工知能
をナノ
テクノロジーよりも先行させるべきだと主張する」と指摘していることもあり慎重に考えてい
くテーマに違いない。


                                      この項つづく

●美味しい牛肉は日本発?! 

ところで、米国内でWAGYU牛)」の文字を含む商標が3日時点で25件認定され、申請中のものが12
件あることが分かったという。和食への関心の高まりに商機を見た食肉業者らが申請の動きを強めてい
るためだが、日本のJA全農も登録申請しているが、同国では別種と交配して生産した牛肉も「和牛」と
して広く流通。商標が乱立する中、和牛肉の対米輸出拡大を目指す日本には、品質の違いを消費者に浸
透させる明確なブランド戦略が必要になりそうだと話題となっている。米国の商標は、「WAGYU」の
名称を独占利用することを認めていない。(文字やデザインの意匠が異なれば)日本から新たに同様の

商標を登録をすることは可能だ」と説明。日本の和牛産地などが米国で商標を得て、独自にブランド展
開する障害にはならないとみる。ただ「KOBE」など日本の産地名を冠した米国産牛肉が先行して流通す
れば、今後輸出増を目指す日本産が埋没したり、混乱を招いたりする恐れがあるという。日本では、和
牛は2007年に決まったガイドラインで(1)黒毛、褐毛などの品種とそれらの交雑種(2)日本国内で出
生し、国内で飼育されたもの――と厳密に定められている。しかし、米国の業界関係者によると、同国
では、日本由来の和牛の血を93.75%以上含めば「和牛純粋種」とされ、この純粋種とアンガスなどを
掛け合わせて生産した牛も「和牛」として広く流通しているのだという。もともと、米国の牛肉を日本
人好みに改良されだしたのは、70年から80年にかけて仲介する日本商社マンなどのの買い付け育成努力
によりなされてきた。それまでの牛肉は堅くて、血が滴るという日本人にはグロテスク?なもの。いま
では遜色ないものが出されるようになった。商社にすればあくまも国内向けのもの。前述した、稲作の
ような「生態学的帝国主義(エコロジカル・インペリアリズム)」でもさらさらない。しかし、欧米は強
かなもの。優良和牛精子を密かに?持ち出し育種し、豪州では「WAGYU牛)」として逆輸出して
いるわけだから、中国商法を悪くいう資格はなさそうだ?さて、遺伝子を切り刻み他の遺伝子を組み込
むようなバイオテクノロジーでなければ、商習慣のルールないで思いとどめることができる話だ。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

不気味な遠隔作用

2014年07月03日 | デジタル革命渦論

 






巻頭のプラモは燃料電池自動車。何を思ったのか知らない。と、いうのは嘘で――デスクワー
クばかりじゃバランスを崩してしまうので、手先の身体論的な訓練にということで通販購入、
4時間かけ作製した――エライもので部品をピンセットを掴み損ね見失ったり、ハラハラ、ド
キドキさせながら完成させる。やはり継続は力なりということと、短時間で達成できる快感の
この2つを再認識。これからも徐々にではあるが上のクマモンのサッカーロボの初級から高級
なロボットキットを作製して行くことにしたが、案の定、彼女から三行半の言葉を聞かされる
こととなり、ゲリラ的に作製することに。

  

●不気味な遠隔作用

今朝、マイピシーをいつものように立ち上げていたら、シマンテック社のインターネット・セ
キュリティーソフトが揮発していることに気付き、遠隔操作でソフトを再インストール依頼し
た。操作はチャットでやりとりしながら行うのだが、アインシュタインが、"Spooky action at a
distance
(不気味な遠隔作用)"という言葉を思い浮かべるほど、妙竹林な気分で一連の操作をを
見届けていた。「信用」あるいは「信頼」ひとつで、仮想ディスプレイを見ながら向こう側の
技術者に行わせているだけで、悪意ある個人や集団(確信犯的集団)に悪用される<不安>(
自我の証明』)を起想するだけで身震いするかのようだった。

 

そのテレメトリーやテレポーテーションだが、国立情報学研究所とロシア科学アカデミーの研
チームが、可視可能な大きさの物体をテレポートする新たな方法を開発できたことを公表(上
図参照)。
テレポーテーションは、ある物体、正確には「物体の量子状態」を、情報を送信せ
ず、1つの場所から別の場所に送る方法。
原子や光子等の微小な粒子のテレポーテーションは
実験で既に実現しているが、それよりも大きな物体のテレポーテーションは難しいとされてい
たが。
今回、巨視的物体においても存在する新たな「もつれ状態」を見つけ、これを克服する
方法を開発したというのだ。
このもつれ状態を使って、何千以上という原子のテレポーテーシ
ョンが可能であることが証明されという。テレポーテーションを証明する初の実験は1997年に、
光を構成する粒子である光子を使って行われ、さらに原子間のテレポーテーションが実施され
ている。原子は絶対零度を超える数十億分の1度に冷却し、単一量子状態を形成。巨視的物体
を用いたテレポーテーションに関する研究もいままでに存在するが、我々の発見においてテレ
ポートされている量子状態の種類は異なります。以前の実験で使用されている量子状態は総自
由度のほんのわずかな一部分を使用するだけである一方、今回の発見では、全体の状態がテレ
ポートされることが証明(コンパス針のテレポーテーションで例えると、これまでの手法では、
コンパス針の微弱な振動がテレポートされまたが、今回はコンパスの方向自体がテレポートさ
れたという。


  
Quantum entanglement

近い将来、SF小説のように人間の大きさの物体がテレポートできるだろうか?この研究は巨
視的物体のテレポーテーションに関する前進である一方、今後の課題があります。この方法で
テレポートできる状態は以前よりも大きくなっていますが、人間のような物体に対しては量子
状態が複雑過ぎて不可能に近いが、さらなる研究によりこの手法で、より複雑な状態がテレポ
ート可能になると期待でき、今回の結果は、通常扱われる単一原子または光子ではなく巨視的
物体を使った量子プロセッサの開発に使える可能性があるため、量子コンピューター実現に向
けて道を拓くものだという。なんだか難しくなりそうなのでこの辺で残件扱いに。

 

 

●気候変動がもたらす夏の8つの脅威

世界の平均気温は、今後数十年で少なくとも摂氏2度上昇すると予想されている。新たな報告
を発表した米国の環境保護団体は、今後の夏は悲惨なシーズンになると警告。カやダニなど
の害虫
や有毒なツタウルシがはびこり、大気汚染や水質の悪化、観光業への打撃が避けられな
いとい
う(National Geographic News July 2, 2014)。警戒すべき地球温暖化の影響を8つが紹介
されている。

(1)熱波:夏は年々暑くなっている。高温による犠牲者が最も多く。熱中症など直接的また
  は心臓疾患や呼吸器疾患の悪化といった間接的な死因が目立つ。
(2)大気汚染:気候変動の影響で気温が上昇すれば、オゾンなどから成るスモッグが頻繁に
  発生し、大気汚染の注意報が頻繁になる。
(3)虫の増加:病気を媒介する虫が蔓延する環境の土台になるかもしれない。気温上昇はラ
  イム病を媒介するダニや西ナイルウイルス、デングウイルスを媒介するカの増殖を促す可
  能性が高い。
(4)ツタウルシ:ツタウルシを触ればかぶれるとだれでも知っているはずだが、深刻な症例
  が毎年絶えない。 
(5)アレルギー:米国内には、季節性アレルギーによるぜんそくやくしゃみに苦しむ患者が
  3千万~4千万人もいる。気温とCO2濃度が上昇すれば、雑草の成長が促され、季節性アレ
  ルギーの症例も増加する可能性が高いという。たとえば、アレルゲンとして悪名高いブタ
  クサ
の花粉が、北アメリカの一部で1995年より最大1カ月長く飛散している。
(6)食中毒 :アレルギーも心配だが、夏の食中毒も無視できない。食品が媒介するサルモネ
  ラ菌やカンピロバクターの繁殖が、高温下では加速度的に上昇する。また、東西の沿岸地
  方で有害な藻類ブルームが増加しており、魚介類の摂取による中毒も発生しやすくなって
  いる。
(7)海水浴も危険:藻類ブルームを含む海水は、接触しても口に含んでも悪影響がある。発
  生場所での海水浴は避けた方が賢明だ。さらに、大雨の直後も泳がない方がいいだろう。
  地上の汚染物質や細菌が海中に流れ込む傾向があるためだ。
(8)ダメージを受ける国立公園:国を象徴する国立公園や歴史的建造物、遺跡の多くも気候
  変動によって危険にさらされている。海面上昇や海岸浸食、洪水や豪雨、山火事の増加に
  よる各地の名所旧跡のダメージは明らかだと。

「本気で立ち向かわなければ、事態はさらに深刻になる」と NRDCの報告書は述べているがわ
し(たち)予想ではもっと複雑なリスク事象が頻発すると考えている。この考察については
別途掲載したい。


 

【高変換効率太陽電池は、地球温暖化対策のバーゲンパワー】 

過日、産業技術総合研究所(AIST)が「太陽光発電研究成果報告会 2014」で、異種の半導体か
ら成る太陽電池のpn層を貼り合わせる技術「スマートスタック」を開発したと発表した。ケイ
素やCIGS系太陽電池にⅢ-Ⅴ族系のpn接合を積層できるので、高効率太陽電池を低コストで作
製可能になる。
実際に、CIGS系太陽電池の上にGaAsGaInPの2接合太陽電池を積層した素子
を作製し変換効率 24.2%が得られることを確認。4
接合以上の多接合太陽電池は、格子定数の
違いなどから従来の結晶成長技術では高性能の素子を作製することが難しいが、別々に作製し
たセルを物理的に貼り合わせる「メカニカルスタック」技術の応用で実現させたという。



●変換効率はどこまで高まるか

同研究所の太陽電池の開発目標は、(1)太陽光を電力に変換する効率を高めることと(2)
部材コスト/製造コストの引き下げの2つある。また、新エネルギー・産業技術総合開発機構
N
EDO)の太陽光発電に関するロードマップ「PV2030+」では、変換効率と発電コストの目
標を上
表で示している。今後、効率16%の太陽電池モジュールを用いて発電コストを23円/kWh
(家庭用
電力相当)まで下げたのち、2017年にはモジュール変換効率20%で14円/kWh(業務用
電力相当)
を実現する技術を開発し、2025年には25%で7円/kWh(汎用電源相当)を狙う。電
気自動車の充
電用途に太陽電池を使った場合、発電コストが見合うのは2025年時点だとの予測
をしている。しかし、そんなスローペースで温暖化によるリスクを回避できるのだろうか?温
暖化対策は、最優先すべき総合安全保障政策なのだから。


●変換効率40%以上を実現する技術

40%以上を実現する技術候補には5種類ある。(1)モノリシック構造多接合、(2)メカニ
カルスタック、(3)量子ナノ構造膜多接合、(4)量子ドット増感型タンデム、(5)中間
バンド構造。いずれも1センチメートル角程度の小規模なセルを用いた研究段階にあり、最も
量産が早いと考えられているモノリシック構造多接合でも2020年ごろまで待たなくてはならな
いとされている。この他に補完技術として、波長変換材料で効率向上させる技法もある。そし
て、前述した接合する技法、ここで、メカニカルスタック型太陽電池製造法には以下の4つが
提案されている。

(1)ロウ付け、拡散接合法、共晶接合法、表面活性化接合法、接着剤を使用する方法
(2)金属を中間層として用いる接合方法
(3)異方導電性接合法
(4)機械的接合法


 

この実例として、米University of Illinois の印刷由来の技術を一部に用いて約千倍集光時の変換
効率が43.9%の4接合太陽電池セルを高い歩留まり率で作製する技術が開発されている。この
太陽電池の各層の構成は、InGaP/GaAs/InGaAsNSb/Geで、300nm~1700nm という非常に幅広い
波長の光を発電に利用できる。具体的な作製手順は以下の通り。

(1)まずGaAs基板の上にInGaP/GaAs/InGaAsNSbの3接合素子を作製。次に、GaAs基板と
   太陽電池との間のAlInP層をエッチングで溶かし、GaAs 基板を容易に剥離できるようにし
  ておく。
(2)その一方で、pn接合を形成したGe基板上にGaAs層を形成かつパターニングする。そして
   その表面に、"糊"の役割を果たすAs2Se3 溶液をスピンコート法で塗布する。厚さは10nmと
  薄い。
(3)最後に、表面を凹凸加工したシリコーン樹脂「PDMS(ジメチルポリシロキサン)」を、
   GaAs基板に押し付けて表面の3接合素子をPDMSに転写し、それを今度はGaAs/Ge基板に圧
   着させることなどで、4接合の太陽電池を形成する。

これに対し産総研のスマートスタックの最大の特徴は、貼り合わせる面にパラジウムの直径50
nmの粒子を1×1010個/cm2の密度で配置する点。これにより、従来のメカニカルスタックで必要
だった電子ビームやプラズマでの貼り合わせ面の表面処理が不要になり、必要な表面の平坦性
も1nm以下から、10nm程度に大きく緩和されるという。 具体的には、パラジウムのナノ粒子を
ポリスチレンなど高分子材料の自己組織化現象を用いてボトムセル上に距離100nmのほぼ等間隔
に配置する。その後、高分子材料はプラズマ処理で除去する。 次にその上に貼り合わせるトップセ
ルの基板を剥離し、加重接着法、すなわち加圧で接着する手法でボトムセルと貼り合わせてい
る。




●変換効率25%、30%、35%太陽電池の事例研究を急げ!
 
以上、高変換効率化合物半導体系太陽電の開発現状を俯瞰してみた。今回の報告会では「PVシ
ステムのコストの試算から見えてくる研究開発の方向性」のテーマ講演がなされたが、変換効
率の向上や長期安定性など4つの方向性が示され 「太陽光発電システムの発電単価は、家庭
用電力の市場単価(約20円~/kWh)と伍するまでになった」との認識に立ち、国の掲げた次
の発電単価の目標である第2段階のグリッドパリティ「14円/kWh」、第3段階のグリッドパ
リティ「7円/kWh」を見据えた研究開発の方向性を分析。電力の市場価格より安くなる発電単
価を示した。現状の太陽光の発電単価は、家庭用電力のグリッドパリティを達成しつつあり、
業務用電力(14円/kWh)、産業用電力(7円/kWh)を下回ることが次の目標になっていると
のことであった。



分析では、
IRR(内部収益率)0%の前提で運転維持費を現状の8千円/kWh・年から同6千円
に下げ、初期投資可能限度額を10数万円/kWに抑えると発電単価14円/kWhが実現できる(図
中1)。ただ、稼働年数を20年から30年に延長すると初期投資可能限度額が20万円/kWを超え
ても発電単価14円/kWhを達成できる(図中2)。さらに、発電単価7円/kWhを達成するには、
運転維持費、系統接続費用、土地造成費用を大幅に圧縮する必要がある(図中3)とする。運
転維持費の低減は、初期投資可能限度額を大きく改善し(図中4)、現行の初期投資(30万円
/kW)近くでも、運転維持費を4千円/kW・年に低減し、かつ稼働期間30年を達成すれば、発
電単価14円/kWhは可能という(図中5)。また、太陽光パネルの劣化率が年率1%を超えると
初期投資可能限度額に大きく影響する(図中6)ことや、メンテナンスの不備も初期投資可能
限度額に多く影響する(図中7)ことが示されている。

こうした分析を基に、太陽光パネルから見た研究開発の方向性として(1)
変換効率をさらに
高めて設置工事費を低減すること(2)長期安定性の向上(3)低コスト化、(4)施工を容
易にできる構造・形状の4点を挙げている。しかしながら、この分析では、(1)変換効率に
対する分析(設置工事費を低減)の評価だけでなく、(2)設置面積のコンパクト化によるソ
ーラーシェアリングの応用拡大などのメリット(住宅や商業用店舗、農林水産鉱工業の施設あ
るいは道路・建造物へのさらなる搭載拡大→製造コストの逓減効果による好循環期待)や(3)
変換効率の目標値(例えば、20/25/30/35%)の水準別にその影響を分析するなどの事例研究が
欲しいところだ。こういった合意形成に成功すれば、地球温暖化が阻止できる上に、エネルギ
ーの完全地産地消社会が実現できると、深く、深く、ふかぁ~~~く確信している次第。^^;




ルームランナーを組み立てた。雑であるが合理的な設計になっている。日本人ならもっと緻密
な設計で製作し、廉価につくるだろうと考えた(少なくともわたしならそうするだろう)。実
際に使ってみてメンテナンスとか信頼・耐久性の確認が残るが今夜のところは、それでも満足
している。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする