極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

きょうの化学最前線

2011年10月17日 | WE商品開発

 

 

【タイ洪水禍から学ぶ】

タイでは記録的な大雨による洪水被害で、これまでに297人が死亡し、中
部のアユタヤでは5つあるすべての工業団地が浸水して、被害を受けた日
系企業はおよそ330社。首都・バンコクでは、断続的に強い雨が降り続い
ているほか、大潮による潮位の高い状態が続き、中心部では大きな被害は
出ていないものの、川沿いでは商店街など一部で浸水も起きている。児童・
生徒、およそ2600人が学ぶバンコクの日本人学校は、先週から続いていた
臨時休校を少なくとも17日まで延長し、状況を見守ることを決めた。タイ
気象当局では、大雨の降りやすい状態は今月末まで続く見込みで、タイ政
府はバンコクでの被害を食い止めることを最優先に、運河の土砂をさらい、
水の流れをよくする工事を急ピッチで進めるなど、洪水への警戒を強化す
るという(10月17日 4時13分 NHKニュース)。



地球温暖化による大規模気象変動による影響とその対策を考える上で参考
になった。つまりどのような組織でも全球的にこのリスクから逃れないと
覚悟し行動する以外にないということで、これは市場原理も逃れようがな
いということ。つまりは、当該組織の思慮深いアドホックな行動に期待す
るということになる。話題となっているTPPもそうで、農産物生産優位
地域→農産物生産不利地域への輸出→農産物生産優位地域の被災→農産物
市場高騰→農産物生産不利地域の社会不安→全球的農産物供給不安への対
策を考えておく必要がある。

【レアメタル使わない電池】

パソコンや携帯電話などに使われるリチウムイオン電池を、価格の変動が
大きいレアメタルのコバルトを使わず作り出すことに成功した。大阪大学
の森田靖准教授と大阪市立大学の工位武治特任教授らの研究グループは「
臭化トリオキソトリアンギュレン」という有機物質に着目し、コバルトの
代わりに使ったところ、従来の2倍近い電気を蓄えられるリチウムイオン
電池ができたという。今のところ百回ほど使うと、蓄えられる電気が3割
程度減るという欠点があるが、この有機物質は価格も安く軽いことから、
コストダウンや軽量化を図れる可能性がある。

 

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遷移金属錯体や有機開殻種は電気伝導体や磁性体の構成成分となり得ると
同時に、それらの性質を温度制御できれば新しい分子スイッチやセンサー
として応用可能だ。例えば、室温下空気中で不安定な高い反応活性種であ
ると一般的に知られている有機ラジカルは、効果的な化学修飾により安定
化されることにより新規な機能を有する分子性磁性体の電子スピン源とし
ての可能性を秘めている。また、有機開殻種の中には、固体状態において
光学的特性の温度依存性がみられる物質が存在する→トリチアトリアザペ
ンタレニルおよびスピロ型ビフェナレニルが、結晶状態である特定の温度
で構造相転移により磁性および光学的特性が変化する。

特開2009-126954

2,5,8-トリ-t-ブチル-1,3-ジアザフェナレニルおよび2,5,8-トリ-t
-ブチルフェナレニルの分子構造(a)、および2,5,8-トリ-t-ブチル-1,3-
ジアザフェナレニルの二量体の結晶構造(b)を示す図


この温度に依存して光学的特性が変化する現象は、コバルトや鉄などのい
くつかの遷移金属錯体では混合原子価状態やスピンクロスオーバーに付随
して温度により光学的特性が変化することが知られているが(特開2009-
126954)、森田靖らのグループは、このフェナレニルラジカルをピラミッ
ド型に拡張したトリアンギュレン化合物が一連の高スピン非ケクレ型炭化
水素の最小モデル系のの化学種に対する化学修飾による安定化をはかり、
3回対称性を持つ基底3重項状態の存在を実験的手法により初めて明らか
にし、反応溶液のスペクトルの経時変化を追跡、トリアンギュレンの生成
とその減衰に関与する複数のラジカル種の構造を推定し、トリアンギュレ
ン基底三重項種の安定性を評価。フェナレニルの高い対称性と特異な電子
構造を強く反映したスピン非局在型電子スピン構造を有し、その性質を活
用することによって、レドックス状態や置換基のトポロジーの制御による
スピン密度分布のトポロジースイッチを示す開殻分子システムの開発に成
功する。

ただ、有機ラジカル反応を利用する技術、有機エレクトロニクスの欠点は
ターンオーバーなどの耐久性、持久性にあり、より堅牢で安定な分子構造
の解明とそのシステム構築が待たれるところであるが、有機合成の最大の
メリットは、例えばアロマ成分の分子構造の解明と合成に一旦成功すれば
大量生産が可能となるように一気にローコスト機能が実現するところにあ
る。目が離せない。

※「スピン非局在型安定中性ラジカルの創製:ヘテロ原子導入型フェナレ
  ニル 類の設計・合成および物性

※「機能性高分子の量子化学的設計方法と計算方法の開発

兵庫県立大学大学院生命理学研究科の樋口教授、庄村助教らと茨城大学農
学部の西原准教授らの研究グループ及び独立行政法人理化学研究所は共同
で、大型放射光施設SPring-8を利用して、酵素タンパク質のひとつである
酸素耐性膜結合型[NiFe]ヒドロゲナーゼのX線結晶構造解析を行い、酸素
耐性[NiFe]ヒドロゲナーゼ→酸素にさらされた時に分子の一部が特徴的な
構造変化を起こすことを見出して、この構造変化こそが、酸素にさらされ
ても酵素分子が機能を失わないための「しくみ」であることを解明したと
いう。ヒドロゲナーゼの酸素による機能の損失克服に重要であり、水素を
エネルギーとして利用することで、酸素に安定な新たな化学合成触媒や新
規の燃料電池の開発研究への応用に期待がかかる。

このように化学の有機合成は物理の最前線と同様に常識を覆し未来を拓く
課題に溢れているというわけだ。あたし(たち)は、陳腐な「資源がない
国」という呪縛を解き放ち、資源をつくりだす革命期にあることを再認識
しているわけだ。^^;



 

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