【グリーンの錬金術】
『当世錬金術事情』で紹介したことがある、化合物系半導体の研究開発をすすめている東京工
業大学は細野・神谷・平松研究室のグループが、地球温暖化の原因と考えられる温室効果ガス
の二酸化炭素(CO2)を効率よく吸着・分解する物質を室温でCO2を吸着・分解することは、
これまでは難しかったが、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに29日、論文に同大
の戸田喜丈特任助教と細野秀雄教授らが、石灰と酸化アルミニウムでできたセメント材料を使
い分子の構造を一部変えた物質「C12A7エレクトライド」(ここでエレクトライドとは、ア
ニオン(マイナス)の電子を含んだイオン性化合物をさし、C12A7とはアルミナセメントに含
まれるマイエナイトをさす。化学式で書くと12CaO・7Al2と、構造は巻頭の上図のようになる)
を作製。室温で周囲のCO2をよく吸着し、化学反応によって一酸化炭素と酸素に分解できたと
いう。理論的には1平方メートル当たり0.004ミリリットルのCO2が吸着・分解可能という。
また、生成した一酸化炭素はC1化学の分野における重要な原料化合物。さらに、有機化学に
おいてはカルボニル基の原料として、無機化学においては配位子として、一酸化炭素の応用範
囲は広く、C1化学(C1-Chemistry)とは合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)やメタ
ン、メタノールといった炭素数が1の化合物を原料に用いて、炭素数が1の化合物の相互変換
をしたり、炭素数が2以上の化合物を合成する技術法のことをさし、有機工業化学の一分野で
あるとともに、ネオコンバーテックで紹介しているナノカーボンの原料としの用途としても広
がっている。下図は、一酸化炭素からシングル・ウォール・ナノカーボンチューブを製造プラ
ント(実験段階)である。
もともと、この研究室は無機化合物で、薄膜ディスプレイ、透明導電性フィルム、化合物半導
体などの研究からはじまっているが、電子化物を用いると、比較的低温で二酸化炭素を吸着で
きると共に、吸着した二酸化炭素をこの化合物を加熱するだけで高効率で一酸化炭素に還元処
理できることを見出す。すなわち、導電性マイエナイト型化合物は室温でも二酸化炭素を選択
的に吸着することができ、この化合物を加熱すると、吸着した二酸化炭素の還元が二百℃以下
でも開始されることを見出した。この導電性マイエナイト型化合物は、ゼオライトのような物
理吸着ではなく、化学吸着により二酸化炭素と強く結合し、一つの化合物で吸着と還元の両機
能をもつ。1×1019/cm3以上の伝導電子を有す導電性マイエナイト型化合物の構成を特徴と
する二酸化炭素の吸着還元剤。導電性マイエナイト型化合物は、構造中に内包する酸化物イオ
ン(O2-,O22-)を置換した電子が伝導電子となり、C12A7の場合、組成式([Ca24Al28
O64]4+(O2-)2-x(e-)2x)(0<x≦2)で示される。電子で置換することで、伝導電子
を1×1015cm-3以上含ませることができる。伝導電子の理論的最大濃度はC12A7の場合、
2.3×1021cm-3である。伝導電子濃度が大きいほど還元能が大きいが、1×1018/cm3程度が
二酸化炭素の還元作用を検出できる限界であり、伝導電子濃度は1×1019/cm3以上であること
が好ましい。伝導電子濃度の最大値としては、単結晶では2.3×1021/cm3程度可能。この吸着
還元剤の形状は、粉末、固体焼結体、薄膜、また固体単結晶などのいずれでもよい。二酸化炭
素は、吸着還元剤の表面に吸着される。
この吸着還元剤を室温に保持するか、二百℃以下に加熱し、乾燥空気中、乾燥酸素中、または
不活性ガス雰囲気中で、二酸化炭素含有ガス、または二酸化炭素を接触させて二酸化炭素を吸
着させる。次いで、二酸化炭素を吸着した状態のこの化合物を二百℃以上、この化合物の融点
未満に加熱することで、二酸化炭素を一酸化炭素に還元してこの化合物から脱離させる。この
吸着処理は、導電性マイエナイト型化合物を加熱しないで室温で行うことが好ましく、加温下
で行う場合は二百℃以下が好ましい。二百℃を超えても吸着は可能であるが、エネルギー効率
上好ましくない。また、この吸着還元剤を二百℃以上、この化合物の融点未満に加熱し、乾燥
空気中、乾燥酸素中、または不活性ガス雰囲気中で、二酸化炭素含有ガス、または二酸化炭素
をこの化合物に接触させ、吸着と同時に二酸化炭素を一酸化炭素に還元しこの化合物から脱離
させる方法でもよい。吸着及び還元は加圧下、減圧下のいずれでも実施できるが、大気圧下で
行うことがエネルギー消費が少なくて済む。
吸着プロセスと還元プロセスを分離して行う方法の場合は、混合ガス中の二酸化炭素を分離、
還元して生成物である一酸化炭素を回収するのに特に有効だ。吸着プロセスと還元プロセスが
分かれているので、吸着プロセスで二酸化炭素のみを吸着させ、残りのガスを排気した後に一
酸化炭素を脱離させ効率よく一酸化炭素を回収する。同時に二酸化炭素も脱離するが、脱離し
たガスを昇圧または冷却することで二酸化炭素はドライアイスになるので一酸化炭素と二酸化
炭素の分離は容易である。ただし、吸着還元剤の昇温、冷却を繰り返す必要があるので、吸着
還元剤を高温に保持して、吸着プロセスと還元プロセスを同時に行う場合より余分なエネルギ
ーを消費する。
吸着プロセスと還元プロセスを同時に行う場合は、高純度の二酸化炭素を還元し、生成物の一
酸化炭素の回収に特に有効。この方法は、反応系に二酸化炭素を循環させていればいずれ全て
一酸化炭素になる。また、この方法は、高純度の二酸化炭素や二酸化炭素混合ガスを処理して
生成した一酸化炭素を回収する必要がない場合にも有効である。このような加熱により一酸化
炭素が主生成物として生成し、この化合物から脱離する。加熱により一酸化炭素が生成するの
は、二酸化炭素が導電性マイエナイト型化合物に化学吸着し、この化合物に包接された伝導電
子により二酸化炭素が性化されるためと考えられる。ゼオライトを用いた物理吸着はゼオライ
トの細孔に二酸化炭素を取り込む吸着であるが、導電性マイエナイト型化合物は細孔の構造を
持つものの、細孔の大きさは、ゼオライトの細孔と比べて1/10以下の大きさなので、ゼオライ
トのように内部に二酸化炭素は取り込めないため、この化合物への二酸化炭素の吸着は、この
化合物の最表面での解離吸着で起きると考える。二酸化炭素は、熱した炭素、亜鉛、鉄などの
上を通すと一酸化炭素に還元されることが知られているが、二酸化炭素は非常に安定な化合物
で、二千℃で2%ぐらい一酸化炭素と酸素に解離するにすぎない。この方法では加熱温度にも
よるが、ほぼ20%~80%程度還元される。二酸化炭素の還元に繰り返し使用しても導電性マイ
エナイト型化合物の劣化(伝導電子の減少)はほとんどないが、繰り返し使用してこの化合物
の導電性が低下した場合は、再度アニール等の方法で導電性を回復させることにより再使用で
きる。
[導電性マイエナイト型化合物の定義]
この発明で、「マイエナイト型化合物」とは、鉱物のマイエナイトそれ自体、マイエナイト型
岩石、及び鉱物のマイエナイト結晶と同型の結晶構造を有する複合酸化物をいう。導電性マイ
エナイト型化合物の代表組成は、式[Ca24Al28O64]4+(O2-)2-x(e-)2x(0<x≦2)
で示される。導電性マイエナイト型化合物は、例えば、焼結法で製造したC12A7を、例えば、
Ca又はTiの金属蒸気中で、1100℃付近でアニールすることで得ることができる。導電
性マイエナイト型化合物の製造方法自体は種々の方法が公知であり、これらの方法で得られた
この化合物を適宜使用できる。マイエナイト型化合物の結晶は内径0.4nm程の籠状の構造(ケ
ージ)がその壁面を共有し、三次元的に繋がることで構成されている。通常、マイエナイト型
化合物のケージの内部にはO2-などの負イオンが含まれているが、こののアニールによってそ
れらを伝導電子に置換することが可能である。アニール時間を長くすることにより、導電性マ
イエナイト型化合物中の伝導電子濃度は多くなる。
Ti金属蒸気中でアニールする場合は、24時間程度アニールすれば、3mm厚の単結晶マイエナ
イト型化合物でも、理論的最大の伝導電子濃度(C12A7の場合2.3×1021cm-3)を有する導電
性マイエナイト型化合物を得ることができ、化学量論組成のマイエナイト型化合物の融液を還
元雰囲気中で固化しても良い。還元雰囲気中の固化で得られた導電性マイエナイト型化合物の
伝導電子濃度は、1021cm-3未満である。また、Ar+イオンを高濃度にイオン打ち込みするこ
とによっても作製できる。得られた導電性マイエナイト型化合物中の伝導電子濃度は、光吸収
帯の強度から求めることができる(12CaO・7Al2O3の場合2.8eV)。伝導電子濃度が小
さいときは、電子スピン共鳴吸収帯の強度からも伝導電子濃度を求めることができる。導電性
マイエナイト型化合物は、上記の代表組成の式を構成するCaの一部又は全てがLi、Na、
K、Mg、Sr、Ba、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ir、Ru、
Rh、Ptからなる群から選ばれる少なくとも一種類以上の典型金属元素、又は遷移金属元素
で置換されていてもよい。また、この式を構成するAlの一部又は全てがB、Ga、C、Si、
Fe、Geからなる群から選ばれる少なくとも一種類以上の典型金属元素、又は遷移金属元素
で置換されていてもよい。さらに、この式を構成するOの一部または、全てがH、F、Cl、
Br、Auからなる群から選ばれる少なくとも一種類以上の典型元素又は金属元素で置換され
ていてもよいとされる。
※シャープが世界で初めて量産化に成功した高精細・省電力の「IGZO」液晶に関する記事(朝
日新聞、2013年5月23日付)
日本発の基礎研究の成果として世界から注目されている「IGZO」。グローバル化した世界の中
で基礎研究の成果をどういかしていくべきなのか、同技術の開発者である細野秀雄教授および、
同技術の基本特許を持つ科学技術振興機構(JST)の前理事長である北澤宏一氏のコメントと共
にまとめた。2004年に細野秀雄教授が英科学雑誌「Nature」に発表した「IGZO」は、半導体の
材料に従来のシリコンではなく、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、酸化物(O)を
使い、電気の通りやすさがシリコンより数十倍高い。シャープは電気が漏れにくい性質に着目
し、消費電力を従来の1~2割まで減らし、スマートフォンやタブレット端末向けに液晶事業
立て直しの中核技術して位置づけた。同技術の基本特許を保有するJSTはライセンス契約を結べ
ば世界のどの企業にも提供する方針を取っており、すでにサムスン電子他、複数の企業が契約
を締結している。
きょうも、アプリの不具合で忙殺された。ここは忍々。ところで次の登破ターゲットを、雨飾
山に決めたことを彼女に告げる。これで手一杯だ。ところで、細野・神谷・平松研究室グルー
プとのコンタクトは東京セミナ会場。この発明が温暖化対策になり、メタノールの合成やカー
ボンナノチューブの製造が実現すれば、オールソーラーシステム、ネオコンバーテック事業と
ジョイントし大グリーンイノベーションプラットフォームが形成される。これも運命かもしれ
ない。腐れOSビジネスにかまけている場合ではない。
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