極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

量子ドット半導体製造論

2013年10月03日 | 環境工学システム論

 

 

 

 【量子ドット半導体製造論Ⅰ】


従来から、光半導体素子が通信の分野等で用いられ、例えば、半導体光増幅素子や半導体レーザ素子等の利得媒質
も持つ光半導体素子は、小型で消費電力が小さく光通信で使用されてきた。光半導体素子は、キャリアつまり電荷
担体のエネルギー密度分布が離散的な量子井戸構造を持つ光半導体素子は、幅の狭い発光スペクトルで、高い発
効率を持つ。量子井戸構造の中でも、キャリアを3次元的に閉じ込める量子ドットは、キャリアのエネルギースペ
クトルが、各
量子準位に対応し、完全に離散であり、量子ドットでは、低温だけでなく室温でもキャリアのエネル
ギー準位間の遷
移が不連続に生じ、室温でも非常に鋭い発光スペクトルが得られるのだ。このような量子ドットは、
例えば、S-K(Stranski-Krastanow)モード(姿態)成長、つまり二次元膜構造から三次元の島状構造に変化す

し成長する。このS-Kモード成長では、量子ドットの格子定数が基板の格子定数よりも大きい格子不整合材料を
用い、ヘテロエピタキシャル成長の初期に出現する結晶成長の利用で、基板上に相互に離間した浮島状の量子ドッ
トを形成するのだ。このように、この様に、量子ドットを用いてもつれ光子対の発生には、ドットの形状が(自然界の
原子と同じく)等方でないといけ
ないが、現実の量子ドットを自己形成手法で作るため楕円的な形になる。これま
では量子
ドットに強い電場や磁場を加え、等方的な性質を回復してきたが、素子が大がかりになり、さらに個々の(
形の異なる)量子ドットに応じて外場を変える必要があり汎用性に欠けて
いた。 等方的な量ドットを制御性よく
実現させ、外部制御を不要とし、世界最高値のもつれあい度の観測に成功している。



しかし、S-Kモード成長により形成される量子ドットは、非等方な歪みをもつという欠点がある。つまり、量子ド
ットは、基板に対して平行な方向に圧縮歪みを有し、基板に対し垂直な方向に引張り歪みが生じる。このように非
等方な歪みをもつ量子ドットは、価電子帯を形成するホール準位の縮退がとけて、重いホール(ドーピング)準位
と軽いホール準位とが分離する。電子-重いホール準位間のエネルギーギャップは、電子-軽いホール準位間のエ
ネルギーギャップよりも小さいので、光の吸収は、主に電子-重いホール準位間のキャリア遷移で生じるため、こ
の電子-重いホール準位間のキャリアの遷移
は、入力光の電場成分が基板に対して平行なTEモード(横磁界波)
に対応し、非等方な歪みを有する量子ドットは、TE偏波に対する利得が大きく、入力光の偏波によって、利得が
変化する偏波依存する特性を有し、その結果光の増幅は入力光の偏波により利得変化する偏波依存性問題が生じる
そこでここでは、富士通から「特開2013-197301|光半導体素子及び光半導体素子の製造方法」で、偏波依存性が
低い光半導
体素子を得るための光半導体素子の製造方法が提案されているので、それを参考に量子ドット取り扱い
技術を考察する

 

この基板と、下図基板の上方に配置され、基板よりも小さなヤング率をもつサイドバリア層と、サイドバリア層内
に同じ厚さを
もつこの基板よりも大きな格子定数をもつ量子ドットと、この上側と下側の少なくとも一方に配置し、
基板よりも小さなヤング
率をもつ歪み緩和層とを備える。また、光半導体素子の製造方法は、基板の上方に歪み緩和層
を形成する、歪み緩和層のヤング率が、基板のヤング率よりも小さい第1工程と、歪み緩和層上に量子ドットを形成する量
子ドットの格子定数が、基板の格子定数よりも大きい第2工程と、歪み緩和層上に、量子ドットを埋め込む量子ドットと同じ
高さをもつサイドバリア層を形成するサイドバリア層のヤング率が、基板のヤング率よりも小さい第3工程の3つ
の工程で構成する。さらに、
別の製造方法として、基板の上方に量子ドットを形成する量子ドットの格子定数が、
基板の格子定数よりも大きい第1工程と、基板の上方に量子ドットを埋め込むように、量子ドットと同じ高さをも
つサイドバリア層を形成する第1工程と、サイドバリア層のヤング率が、基板のヤング率よりも小さい第2工程と
量子ドットの上方に、歪み緩和層を形成し、歪み緩和層のヤング率が、基板のヤング率よりも小さい第3工程とで
構成する製造方法も提案されている。

【符号の説明】

10 光半導体素子  11 基板  12 バッファ層  13 下クラッド層  14 下バリア層  15 第1歪み緩和層  16 第2歪み緩和
層  17 上バリア層  18 上クラッド層  19 コンタクト層  20 量子ドット層  21 量子ドット 22 サイドバリア層 

ところで、上図2は、量子ドットの偏波依存性を低減するための考え方を説明するもので、基板に対する格子不整
合により量子ドットに生じる歪みには、基板に対し垂直な歪み成分εvと、基板に対して平行な歪み成分εpとが
ある。量子ドットの偏波依存性を低減するには、量子ドットの歪みを等方にすることが望まれる。即ち、式(1)
に示すように、εvとεpとを等しくすることが好ましいのだ。
次に、式(2)に示すように、量子ドットの歪み
の非等方性の指標εb=εv-εpを考える。量子ドットに生じる歪みを歪みテンソルで表すと、基板に対して平
行な2
つの対称な歪み成分は、εxx及びεyyで表される。また、基板に対して垂直で対称な歪み成分はεzz
で表される。エネルギーバンド(電子バンド、軽正孔バンド、重正孔バンドとその他バンド)間の相互作用を無視す
る近似を用いると、歪みテンソルの非対称成分をゼロにすることができる。その結果、式(2)に示すように、ε
bが、εxxとεyyとεzzとを用いて表すことができる。そして、量子ドットの偏波依存性を低減するには、
εbをゼロに近づければ良いことが分かる。εbがゼロの場合には、入力光の電場成分が基板に対して平行なTE
モード及び入力光の電場成分が基板に対して垂直なTMモードの両モードで、同等の利得が生じる。ここで、歪み
テンソルの対称成分によって表されたεbは、2軸歪みとも呼ばれ、
量子ドットの偏波依存性を低減するための考え方
をしめす。


また、上図3で、量子ドットの動作波長を長くするための考え方を説明する。量子ドットの動作波長は、式(3)
に示すように、価電子帯と伝導帯との間のエネルギーギャップEgの逆数に比例する。ここで、歪みを有する量子
ドットのEgは、式(4)に示すように、Eg0とΔEgとの和で表される。ここで、Eg0は、歪みを有さない
量子ドットのエネルギーギャップであり、バルクのエネルギーギャップに対応する。また、ΔEgは、歪みの存在
によるエネルギーギャップのズレである。このΔEgは、式(5)に示すように、量子ドットの歪みの絶対値|ε|
に比例する。
ここで、式(2)の説明で用いた近似を使用して、歪みの絶対値|ε|を歪みテンソルで表すと、式
(6)に示すように、εxxとεyyとεzzとの和の絶対値で表される。従って、量子ドットの動作波長を長く
するには、|ε|を低減して、ΔEgをゼロに近づければ良いことになる。ここで、歪みテンソルの対称成分によ
って表された歪みの絶対値|εh|は、静水歪みとも呼ばれ
量子ドットの動作波長を長くするための考え方を示
す。


次に、光半導体素子の構成の具体的な説明を行う。まず、量子ドットが埋め込まれるサイドバリア層のヤング率を
基板のヤング率よりも小さく、量子ドットの上側と下側内の少なくとも一方に配置した歪み緩和層のヤング率を基
板のヤング率よりも小さくすることで
、基板と量子ドットとの間の格子不整合が、サイドバリア層及び歪み緩和層
が変形することで緩和するので、量子ドットの歪みが低減できがるが、
サイドバリア層又は歪み緩和層のヤング率
が、基板のヤング率よりも小さいとは、サイドバリア層あるいは、歪み緩和層のヤング率が、基板のヤング率より
2%以上小さいことを意味し、量子ドットの歪みと、偏波依存性を低減し、動作波長を長くすることができる。こ
光半導体素子は、量子ドットの下側に配置された第1歪み緩和層と共に、上側に配置された第2歪み緩和層をも
ち、量子ドットの歪みが一層低減されるのだ。
第1歪み緩和層は、量子ドットの下側の位置から量子ドットの外方
に向かい延び、サイドバリア層に対し積層する。これにより、第1歪み緩和層の変形量が大きくなり、量子ドット
の歪みをより低減できる同様に、第2歪み緩和層も、量子ドットの上側の位置から外方に向かって延び、サイドバ
リア層に対して積層するが、
量子ドットの歪みをさらに低減するには、第1歪み緩和層または第2歪み緩和層のヤ
ング率は、基板のヤング率に対して、特に20%以上、さらには40%以上小さいことが好ましく、
同様に、サイドバ
リア層のヤング率は、基板のヤング率に対して、特に10%以上、さらには20%以上小さいことが好ましいという

 

上図4は、量子ドット層内の歪みと位置との関係を説明するものである。この図は、サイドバリア層の格子定数を、
基板の格子定数に対し、1.005倍にした場合について、量子ドット層内の歪みと位置との関係を計算した結果であり
この計算では、基板としてGaAsを用い、量子ドットとしてInAsを用い、サイドバリア層としてZnSe

値を用いる。ここで、サイドバリア層の格子定数は、基板であるGaAsの1.005
倍とした。量子ドットは一辺の長
さが20nmの立方体とする
。このような量子ドットは偏波無依存になり易い典型的なサイズで、代表的な意味があ
る。計算では、光半導体素子として、基板と、量子ドットと、第1歪み緩和層と、第2歪み緩和層のみをもつモデ
ルを用いた。つまり、光半導体素子が、基板上に第2歪み緩和層と量子ドットと第1歪み緩和層が順番に積層形成
する。
図4に示す計算結果は、式(2)の説明で用いた近似を使用し、固体弾性熱力学方程式の境界値問題を、有
限要素法を用いて解き得る。この際、εxx=εyyとする。
計算方法には、公知の数値計算法を用いられる。図の
縦軸は、量子ドット内及びその周辺の歪みを、基板の格子定数を基準とした割合で示しす。図の横軸は、光半導体素子の基
板に対し垂直な方向の位置を示す。カーブA1は、基板に対して平行な歪み成分(εxx+εyy)/2と位置との
関係を示し、カーブA2は、基板に対して垂直な歪み成分εzzと、位置との関係を示している。以下、(εxx
+εyy)/2を横歪みとも呼び、εzzを縦歪みとも呼ぶ。図のよう
に、サイドバリア層の格子定数を基板の格
子定数に対し1.005倍にした時には、量子ドット内ではカーブA1とカーブA2とが丁度接し、量子ドット内では、
横歪みと縦歪みとが一致し、式(2)に示すεbがゼロとなる位置が得られ、入力光の電場成分が基板に対して平
行なTEモード及び入力光の電場成分が基板に対し垂直なTMモードの両モードで、光の吸収が同等に生じる。

そして、サイドバリア層の格子定数が基板の格子定数に対し1.0055倍以下であれば、量子ドット内でカーブA1と
カーブA2とが重なることが可能となり、横歪みが縦歪みよりも大きい量子ドット内の場所では、TM偏波の利得
がTE偏波よりも大きくなる。
また、この計算結果から、サイドバリア層の格子定数を基板の格子定数に対し1.005
倍よりも大きくした時には、量子ドット内では、カーブA1とカーブA2とが重ならないことが分かった。つまり
量子ドット内では、縦歪みが横歪みよりも大きい状態となる。縦歪みが横歪みよりも大きい量子ドット内の場所で
は、TE偏波の利得がTM偏波よりも大きくなる。
ここで、量子ドット内で横歪みが縦歪みよりも大きい場合には、
即ちカーブA1とカーブA2とが重なる場合には、その構造を基準として、サイドバリア層又は歪み緩和層の組成
比、若しくは歪み緩和層の厚さ等を調整することで、量子ドット内のカーブA1とカーブA2とを接することがで
き、サイドバリア層の格子定数が基板の格子定数に対し1.005倍以下であれば、その構造を基準とし、量子ドット内
のTE偏波の利得とTM偏波の利得とを一致させることができる。

一方、量子ドット内で縦歪みが横歪みよりも大きすぎる場合には、即ちカーブA1とカーブA2とが大きく離れる
場合には、サイドバリア層又は歪み緩和層を調整し、量子ドット内のカーブA1とカーブA2とを接するできるこ
とは困難だ。以上が、サイドバリア層の格子定数は、基板の格子定数に対して1.005倍以下とする説明をしめす。
板の格子定数に対するサイドバリア層の下限値は特に無いが、この下限値が、実際にサイドバリア層として使用
きる化合物半導体の格子定数で定まる。サイドバリア層として使用できる化合物半導体の中で最も低い格子定数
もつものはGaNである。サイドバリア層としてGaNを用いた場合には、サイドバリア層の格子定数は、基板
格子定数に対して約0.79倍となる。また、サイドバリア層としてBeZnSeを用いた場合には、サイドバリア
の格子定数は、基板の格子定数に対して約0.90倍、サイドバリア層としてZnSを用いた場合には、サイドバリ
層の格子定数は、基板の格子定数に対して約0.95倍となる。第1歪み緩和層の格子定数は、量子ドットの格子定
よりも小さいことが、S-Kモード成長を用い、量子ドットを形成する観点から好ましい。第1歪み緩和層の格
定数が、量子ドットの格子定数よりも小さいとは、第1歪み緩和層の格子定数が、量子ドットの格子定数に対し
て0.5%以上小さいことを意味する。この際、第1歪み緩和層が基板と格子不整合の関係にある場合、第1歪み緩
和層の厚さは、臨界厚さ以内の厚さにすることが、第1歪み緩和層に生じる歪みを低減する観点から好ましい。


次に、光半導体素子のサイドバリア層と第1歪み緩和層と第2歪み緩和層形成材料は、上図のようになる。図5は、
化合物半導体のヤング率と格子定数との関係を示す図であり、縦軸にヤング率を示し、横軸に格子定数を示す
。基
板をGaAsを用いて形成する場合を想定しており、格子定数がGaAsの格子定数の1.005倍以下であり、ヤング
率がGaAsのヤング率よりも小さい領域が斜線で示す。基板としてGaAsを用いる場合、この斜線の領域に含
まれる化合物半導体をサイドバリア層の形成材料として用いることができる。また、GaAsよりも小さいヤング
率をもつ化合物半導体を、第1歪み緩和層と第2歪み緩和層の形成材料として用いることができる。特に、量子ド
ットをS-Kモード成長を用いて形成する場合には、斜線の領域に含まれる化合物半導体を第1歪み緩和層の形成
材料として用いることができる。

上図6は、基板をGaAsを用いて形成する場合に、サイドバリア層とは第1歪み緩和層とは第2歪み緩和層とし
て用いることができる化合物半導体の格子定数及びヤング率の数値を示す。図6に示す化合物半導体は、閃亜鉛鉱
構造をもつ。また、化合物半導体には、II-VI化合物半導体、III-V化合物半導体、又はカルコパイライ
ト等が含まれる。サイドバリア層は、第1歪み緩和層と第2歪み緩和層と同じ材料を用いて形成しても良いし、異
なる材料を用いて形成しても良い。第1歪み緩和層は、第2歪み緩和層と同じ材料を用いて形成しても良いし、異
なる材料を用いて形成しても良い。また、第1歪み緩和層は、第2歪み緩和層と同じ厚さを有していても良いし、
異なる厚さをもっても良い。光半導体素子では、バッファ層と、下クラッド層と、下バリア層と、上バリア層と、
上クラッド層と、コンタクト層は、基板と格子整合していても良い。また、光半導体素子では、バッファ層と、下
クラッド層と、下バリア層と、上バリア層と、上クラッド層と、コンタクト層は、基板と同じヤング率をもって
も良い。

次に、光半導体素子が、偏波依存性を低減し、長い動作波長を有することを計算結果を用いて、上図7にで説明す
る。
量子ドット内の歪みと、サイドバリア層を形成する化合物半導体の組成比との関係を示す図であるり、図の横
軸は、サイドバリア層の形成材料として、ZnSe1-ySyを用いた場合の組成比yを示している。縦軸は、量
子ドット内の歪みを基板の格子定数を基準とした割合で示しす。
基板としてGaAsを用い、量子ドットとしてIn
Asを用い、サイドバリア層として上述したZnSe1-ySyを用い、第1歪み緩和層及び第2歪み緩和層とし
てZnSeを用いる。また、上バリア層と、上クラッド層と、コンタクト層として、GaAsを用いた。量子ドッ
トは直方体の形状とし、基板に対して平行な方向の形状が一辺の長さが30nmの正方形であり、基板に対して垂直
な方向の高さが20nmとした。第1歪み緩和層及び第2歪み緩和層それぞれの厚さは20nmとした。計算では、光
半導体素子として、基板と、第1歪み緩和層と、量子ドット及びサイドバリア層(量子ドット層)と、第2歪み緩
和層と、上バリア層と、上クラッド層と、コンタクト層とを有するモデルを用いる。
図に示す計算結果は、式(2)
の説明で用いた近似を使用し、固体弾性熱力学方程式の境界値問題を、有限要素法を用いて解いて得られる。この
際、εxx=εyyとした。計算方法としては、公知の数値計算法を用いることができる。
いることができる。

上図では、カーブB1及びカーブC1が、本実施形態の光半導体素子の計算結果を示している。カーブB1は、式
(2)に示す2軸歪みεb=εzz-(εxx+εyy)/2と組成比yとの関係を示しており、カーブC1は、
静水歪みεh=(εxx+εyy+εzz)と組成比yとの関係を示している。
また、図では、カーブB2及びカ
ーブC2は、第1歪み緩和層及び第2歪み緩和層を有さず且つサイドバリア層(GaAs1-yPy)のヤング率
が基板のヤング率よりも大きい光半導体素子の計算結果を示している。そして、カーブB2は、式(2)に示す2
軸歪みεb=εzz-(εxx+εyy)/2とサイドバリア層の組成比yとの関係を示しており、カーブC2は、
静水歪みεh=(εxx+εyy+εzz)とサイドバリア層の組成比yとの関係を示している。ここで、2軸歪
みεbがゼロの場合には、量子ドットの歪みが等方となり、入力光の電場成分が基板に対して平行なTEモード及
び入力光の電場成分が基板に対して垂直なTMモードの両モードで、同等の利得が生じる無偏波の状態が得られる。
2軸歪みεbが負の場合には、基板に対して平行な歪み成分(εxx+εyy)/2が、基板に対して垂直な歪み
成分εzzよりも大きいので、TM偏波でTEより大きな利得を示す。また、2軸歪みεbが正の場合には、基板
に対して垂直な歪み成分εzzが、基板に対して平行な歪み成分(εxx+εyy)/2よりも大きいので、TE
偏波で大きな利得を示す。

カーブB1は、2軸歪みεbが、組成比yの増加と共に、正から負へと減少することを示している。カーブB1で
は、2軸歪みεbがゼロになる組成比yが約0.65であり、組成比yをこのような値に選ぶことにより、無偏波の状
態が得られることが分かる。一方、カーブB2では、2軸歪みεbがゼロになる組成比yが約0.75である。サイド
バリア層の結晶性は、組成比yの値が小さい方が高くなる。従って、本実施形態の光半導体素子によれば、偏波依
存性を低減し且つ結晶性を向上できることが分かる。この
光半導体素子静水歪みεhは、カーブC1に示すように、
組成比yの変化に対して約-0.06の一定の値を示している。一方、カーブC2では、静水歪みεhが組成比yの変化
に対して一定であるものの、約-0.09となっている。従って、カーブC1が示す静水歪みεhの絶対値は、カーブC
2よりも約30%小さい。式(3)~(6)に示すように、静水歪みεhの絶対値が小さい方が、量子ドットのエネ
ルギーギャップを低減して、動作波長を長くできる。このように、本実施形態の光半導体素子によれば、量子ドッ
トのエネルギーギャップを低減して、動作波長を長くできることが分かる。

上図8は、動作波長と、サイドバリア層を形成する化合物半導体の組成比との関係を示す図である。図8の計算結
果は、図7と同じ光半導体素子のモデルを用いて得られたものである。図8の横軸は、サイドバリア層の形成材料
として、ZnSe1-ySyを用いた場合の組成比yを示している。縦軸は、量子ドットの動作波長を示している。
図8では、量子ドットにおける2つの基底準位に関して、電子-重いホール準位間のキャリアの遷移による光の波
長と組成比yとの関係、及び、電子-軽いホール準位間のキャリアの遷移による光の波長と組成比yとの関係が計
算する。式(1)~(4)に使用されるポテンシャルエネルギーの導出には、図7で説明した歪みの計算値を用い
る。動作波長は、エネルギー準位間の差の逆数として求める。カーブD1及びカーブD2は、本実施形態の光半導
体素子の計算結果を示している。カーブD1は、電子-重いホール準位間の遷移による光の波長と組成比yとの関
係を示している。カーブD2は、電子-軽いホール準位間の遷移による光の波長と組成比yとの関係を示している。
カーブD1とカーブD2との交点P1では、電子-重いホール準位間の遷移による光の波長と、電子-軽いホール
準位間の遷移による光の波長とが同じとなり、無偏波の状態が得られる。交点P1を示す量子ドットの動作波長は、
1.57μmである。交点P1の動作波長1.57μmは、光ファイバで使用される伝送帯域W(1.3~1.55μm)をやや上
回る波長である。

また、カーブE1及びカーブE2は、第1歪み緩和層及び第2歪み緩和層を有さず且つサイドバリア層(GaAs
1-yPy)のヤング率が基板のヤング率よりも大きい光半導体素子の計算結果を示す。そして、カーブE1は、
電子-重いホール準位間の遷移による光の波長と組成比yとの関係を示している。カーブE2は、電子-軽いホー
ル準位間の遷移による光の波長と組成比yとの関係を示す。カーブE1とカーブE2との交点P2では、無偏波の
状態が得られる。交点P2を示す量子ドットの動作波長は、1.29μmである。交点P2の動作波長1.29μmは、光
ファイバで使用される伝送帯域Wをやや下回る波長である。交点P1と交点P2とを比較すると、交点P1の動作
波長は、光ファイバで使用される伝送帯域Wを上回っており、本実施形態の光半導体素子は、動作波長を長波長化
することに成功している。ここで、動作波長1.57μmは、光ファイバで使用される伝送帯域Wをやや上回っている
が、この動作波長は、サイドバリア層又は歪み緩和層の組成比、または歪み緩和層の厚さ等を変更することにより、
伝送帯域W内の値に調節できる。一方、動作波長が、光ファイバで使用される伝送帯域Wを下回っている場合には、
サイドバリア層の組成比、若しくは量子ドットの寸法等を変更することにより、伝送帯域W内の値に調節すること
は一般に困難である。また、交点P1の組成比yは、交点P2よりも小さいので、本実施形態の光半導体素子によ
れば、偏波依存性を低減し且つ結晶性を向上できることが分かる。

【計算方法】

 Appl. Phys. Lett. 93, 121908 (2008);Optical properties of columnar InAs quantum dots on InP for semi-conductor optical
  amplifiers.
 Japanese Journal of Applied PhysicsVol. 44-Part1 (2005) No. 8 P 6312-6316 、Internal Strain of Self-Assembled InxGa1−xAs
  Quantum Dots Calculated to Realize Transverse-Magnetic-Mode-Sensitive Interband Optical Transition at Wavelengths of 1.5
  μm bands.

 

次に、図8の交点P1に示す動作波長を、第1歪み緩和層及び第2歪み緩和層の厚さを変更することで、伝送帯域
W内の値に調節できることを、上図9を参照し説明する。
第1歪み緩和層及び第2歪み緩和層それぞれの厚さは5
nmとしたこと以外は、図8と同様に行った計算結果である。
カーブF1及びカーブF2は、本実施形態の光半導
体素子の計算結果を示している。カーブF1は、電子-重いホール準位間の遷移による光の波長と組成比yとの関
係を示している。カーブF2は、電子-軽いホール準位間の遷移による光の波長と組成比yとの関係を示している
。カーブF1とカーブF2との交点Q1では、無偏波の状態が得られる。交点Q1を示す量子ドットの動作波長は
1.52μmである。
交点Q1の動作波長1.52μmは、光ファイバで使用される伝送帯域W(1.3~1.55μm)内の波
長である。

次に、光半導体素子の動作波長と、第1歪み緩和層及び第2歪み緩和層の厚さとの関係を計算した結果を説明する。
上図10は、動作波長と歪み緩和層の厚さとの関係を示す図である。第1歪み緩和層及び第2歪み緩和層の厚さ

0~50nmの範囲で変化させた場合の動作波長の変化を示している。この図は、第1歪み緩和層及び第2歪み緩

層それぞれの厚さ変化させたこと以外は、図8と同様である。歪み緩和層の厚さがゼロでは、動作波長は約1.40

μmの値を示している。動作波長は、歪み緩和層の厚さの増加と共に急激に増加し、歪み緩和層の厚さが10nm位
になると約1.55μmの値となる。その後、動作波長の増加割合は減少し、歪み緩和層の厚さが20nm以上になると
動作波長はほぼ一定の値となる。このように、光半導体素子の動作波長は、例えば、第1歪み緩和層及び第2歪み
緩和層それぞれの厚さを変更することにより、適宜設定することが可能である。また、歪み緩和層としてZnSe
を用いた場合、ZnSeは基板の形成材料であるGaAsとほぼ格子整合するので、図に示す歪み緩和層の範囲の
厚さでは、欠陥が少ない結晶性の高い歪み緩和層を形成することができる。上述した光半導体素子では、偏波依存
性が低減され、動作波長を光ファイバで使用される伝送帯域(1.3~1.55μ
m)内に調整することが可能だ。また、
本実施形態の光半導体素子は、基板の形成材料としてGaAsを用いるこ
とができ、GaAs基板は、製造コスト
を低減すると共に、光半導体素子製造工程能力を高めることができる材料
なので、光半導体素子の商業生産には好
適であると説明する。




【中性粒子ビームエッチング装置の量産を準備しよう】

半導体デバイス製造においては微細加工、表面改質、薄膜堆積などのキープロセスで反応性プラズマが多く用いら
れており、今や原子層レベルの加工精度や堆積精度が要求されている。しかしながら、今後の主流となるナノオー
ダの極微細デバイスにおいては、表1に示すようにプラズマから放射される電子やイオンによる電荷蓄積や真空紫
外光などの放射光による欠陥生成などのデバイス特性を劣化させるダメージがより深刻な問題になってくる。ナノ
デバイスではわずかな揺らぎでも大きくデバイス特性を左右するためである。これらの問題を解決する手段として
図1に示すような、
中性粒子ビーム技術が注目を集めている。中性粒子ビームは荷電粒子や放射光の基板への入射
を抑制し、運動エネルギーを持った中性粒子のみを照射できるので、ダメージフリーの高精度表面反応プロセスが
可能であるとして期待されている。現在まで、プラズマを利用したもの、熱エネルギーを利用したものなど数種類
の中性粒子ビーム生成方式によるエッチング加工結果が報告されている。中性粒子ビームは、プラズマからの電荷
蓄積、放射光を抑制でき、50nm以下のダメージフリーの超高精度トップダウン加工を実現できる。また、この技術
は超LSIデバイス、量子効果デバイス、カーボンナノチューブ素子、有機分子素子、バイオデバイス、MEMSなどの
革新的ナノデバイス製造において威力を大いに発揮し、量子ドット太陽電池、量子ドットレーザーなど生産装置と
して期待されている。



というわけで、量子ドット太陽電池の製造方法とその装置の詳細調査段階に昨夜から入った。適当なものが世の中
になければ、自分たちで作ろうと。“盲蛇に怖じず”と揶揄されそうだが、いままででもそうであったように、新
しいことにチャレンジするとは、常に素人からはじめることであり、先人がいる限りはそこまでは辿り着けるはず
で、その後のことは情熱(=努力)に他ならない。と、高齢と言うことも弁えずそんな自分を信じているわたしが
いる。


※ 以上、掲載文参考例は
ポストメガソーラー群要素技術』『量子ドットとネオコン』『ナノリボンとスターア
ニス
』『パワーアップ水餃子』『特集|中性粒子ビームエッチング装置』である。
 

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