極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

ナノリボンとスターアニス

2013年09月25日 | 新弥生時代

 

 

 

シリコンに代わる次世代トランジスタ材料として注目されているグラフェンを、シートのままでデジタル用途として
応用できないので、細線(リボン=1次元)化し、切り口であるグラフェンのエッジ部分が6員環の方向でアームチ
ェアエッジでバンドギャップが現れることが理論的に予測されているが(下図)、アームチェア呼ばれる形に切り出
す必要がある。このグラフェンナノリボンの加工は、従来のプラズマ等を用いた場合、荷電粒子や紫外線によりグラ
フェンシートから切り出したエッジ部分に欠陥が発生し、理論通りのバンドギャップの制御が難しく、電気的・光学
的特性を大幅に劣化する。このため、寒川東北大学教授グループは電子線描画露光装置と中性粒子ビームエッチング
加工法でグラフェンナノリボンの作製を試み、従来にない一万倍以上というオン/オフ比を持つグラフェンナノリボ
ンの作製に世界で初めて成功。この成果によりグラフェンナノリボントランジスタの実用的な製造プロセスが見通せ
るようになり、超高速デバイスの開発に大きく道を拓いたことになる。

 

現在の2次元平面的広がりを必要とする半導体素子技術は、微細化した回路素子からのリーク電流で大きく発熱し、
技術世代22ナノメートル以降の超高集積回路の実現は難しいが、この問題解決として、シリコンに代わる材料に2
元構造のグラフェンを用いたトランジスタ開発に期待されているが、グラフェン材料の特徴は下図に示すように、

導帯と価電子帯が接する付近でバンド構造が直線に表わされるため有効質量がゼロとなり非常に大きな電子移動
度を
示す。理論的にはシリコンの一万倍もの移動度が予想されるものの、実験的にはシリコンの10倍程度
の移動度が得ら
れているが、最大の課題が、バンドギャップの大きさが0ということで、わずかな熱エネルギーで電子を伝導帯に励
起でき、高い電気抵抗状態にできない。このため、デジタル用途応用には大きな信号のオン/オフ比を得ることが重
要であり、信号強度を大きくするために、できるだけ高い電気抵抗にできることが望ましく、グラフェンのバンドギ
ャップ拡大の試みがされてきた。

 

その一つの方法としてグラフェンシートの幅を狭くするグラフェンナノリボンがあり、グラフェンナノリボンのバン
ド構造の理論計算から、リボンの方向によって金属的になったり、0以上のバンドギャップを持つ半導体に変化する
ことがわかっている。特にグラフェンナノリボンのエッジ構造がアームチェア型の場合にバンドギャップを持つ半導
体的特性になり、ジグザグ型の場合には金属型となることが予測されているが、実際には広いバンドギャップや大き
なオン/オフ比は得られず理論と一致していない。これはプラズマ加工時における荷電粒子や紫外線によりグラフェ
ンナノリボンのエッジに欠陥生成しているためと考えられている。

  

グラフェンはナノメートルサイズの炭素材料で、その構造は sp2結合により結ばれた六角網目状の蜂の巣格子の一原
子層のこと。電子構造はK(K’) 点と呼ばれる波数空間内の点で価電子バンドと伝導バンドが交わる。K(K’)点のま
わりではエネルギーバンドが線形分散を示し、ディラックコーンとよばれる電子構造をもつ。このような特異な電子
構造もつことから、2004年にグラフェンがはじめて作成されて以来多くの研究者によってさまざまなグラフェンの作
成方法が模索されてきた。また室温で200,000cm2/Vs と非常に高い電気移動度をもつ。IBMのグループはチャネル幅
150nm、遮断周波数26GHz の性能をもつグラフェントランジスタの開発に成功している。グラフェントランジスタの
微細化を考える際、グラフェンの端の効果は重要であり、グラフェンの端ではフォノンが散乱される非弾性乱が強く
トランジスタ
の電気特性に重大な影響を及ぼすと考えられるが、グラフェンナノリボン作成の難しさ等の理由で実験
ではグラフェンの端の構造を詳しく調べることができていなかった。グラフェンは二次元的な構造をとるのに対しグ
ラフェンナノリボンは「グラフェンの有限の幅を持った帯」のことで、一次元的な構造をとる。実験的には、ステッ
プ状のTiC 基盤上でグラフェンをエピタキャタル成長をさせステップの角度を変えることによって終端形状を制御す
ることに成功している(下図)。グラフェンナノリボンの理論的な研究は、面外振動を第一近接の力定数のみを考慮し
た簡単なモデルで計算されアームチェアナノリボンにエッジフォノンと呼ばれるフォノンの振幅が終端原子に局在す
るようなモードがあることが予言したが、エッジフォノンの有無は力定数のとりかたにより決まることがわかる。

 

下図、計算した面外振動のフォノン分散関係を再現した図を示す。また、グラフェンのラマン散乱の測定によってグ
ラフェンナノリボンのフォノンのエッジモードに起因されると予想されるピークが観測された
。1450cm−1,1530cm−1
のピークがグラフェンの端に起因すると考えられている。

今回の研究で、下図に示すように電子ビーム露光技術と寒川教授が独自に開発した中性粒子ビーム加工技術を組み合
わせて30nm~100nm幅のグラフェンナノリボン構造を作製し、その上にCr/Au電極を形成することでトランジスタ構
造試作を行い、電気特性を測定しました。その結果、図に示すように電流電圧特性のオン/オフ比が従来のプラズマ
エッチングにおいて形成されたグラフェンナノリボンでは得られなかった10の4乗以上を実現。また、このオン/オ
フ比より算出されたバンドギャップは、0.45eVと高い値を示した。これは、図に示すように、酸素中性粒子ビームに
よる加工では基板表面に対し、荷電粒子や紫外線の照射が抑制され、表面欠陥の生成が完全に抑制できるため。カー
ボン系材料であるグラフェンは紫外線に極めて弱く、加工エッジより10nm程度の深さまで侵入して欠陥を生成し、グ
ラフェンナノリボンのエッジを制御が極めて難しく、グラフェンを用いた高移動度トランジスタの実現に大きな障害
となるが、中性粒子ビーム加工を用いて欠陥のないグラフェンナノリボンエッジが実現でき、大きく前進した。実際
にプラズマおよび中性粒子ビームで加工した30nm~100nmのグラフェンナノリボン構造のラマン分光の欠陥比率(ID/
IG)を示しす。中性粒子ビームで加工した場合にはプラズマで加工した場合に比べて圧倒的に欠陥密度が低いことが
判明し、その欠陥密度はカーボンナノチューブを熱処理による応力で割って形成したグラフェンナノリボン構造のエ
ッジ欠陥密度とほぼ同等であり、理想的に近いエッジ構造になっている。

 


特開2013-179182|電子デバイス及びグラフェンの製造方法

 【符号の説明】

1 シリコン基板 2 絶縁膜 2a 窪み 3 触媒金属 3a 薄部 4 空隙 5 グラフェン 5a 宙吊り部分 10,20 架橋構造11 ゲ
ート絶縁膜 12 ゲート電極 13 ソース電極 14 ドレイン電極 15a,15b 開口

  

このように、ポスト新石器時代と平行してナノカーボン(新弥生時代)の応用技術とその実用化が展開する<現在>
のある意
味、その凄さを感じて暮らしている。これは面白いのだが、昨日は、マイピーシーの不調でリカバーリー作
業で一日を潰してしまい、取り急ぎ、その遅れを取り戻しこのブログを書いているが、正直、しんど~~~い!
 とこ
ろで、物理学分野で、鉄系超伝導体を発見した東京工業大学の教授で元素戦略研究センター長でもある細野秀雄氏がノーベ
ル賞候補者リストに加えられたという。こちらはIGZO イグゾ~~~!だね。そういえば、半導体製造装置大手
の東京エレクト
ロンは24日、業界最大手の米アプライドマテリアルズと2014年後半にも経営統合することで合意した
と発表。共同持ち株会社をつくり、両社が傘下に入る。統合後の売上高は2位を大きく引き離し、断トツの1位とな
る。大手同士の統合で技術力を高め、競争に勝ち残りを図るとのことだ。思えば中国プラントを終えた時、半導体製
造の基本であるフォトファブリケーションで世界一だったが、あれよあれよといううち、追い抜かれ、引き離されて
しまったライバル企業だが、悔しいけれど実に面白いね。正直、脱帽だ。



昨夜の夕食に鶏のササミのフリットだったがことのほか美味しかったが、スターアニス(トイウシキミ)の五香粉を
入れるのを忘れてしまった(余裕がなかった所為もあり)。そういえば、セブンイレブンのチーズバーガー(牛肉)
にも五香粉が隠し味に入っていることを見逃さなかったが、鶏の胸肉やササミのような淡泊な食品には不可欠だ。も
っと、もタミフル成分でもあるから感冒には多少なりとも効果が期待できるっか?ジュースやサラダやチーズ料理に
も相性が良いみたいだから、和食にチャレンジしようと思いつき、五香粉の小瓶は離さないことに決める。


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