「この門より入る者は一切の望みも怯儒(おそれ)も捨てよ」 (ダンテ『神曲』)
【葱たまごとじ饂飩】
朝から彼女が具合が悪いということで市民病院へ直行し、シティースキャンを撮り、検診してもらった
が結果は単なる使い痛みということで帰ってきたのはいいのだが、心配から解放されてテンションが高
い。そのまま作業をとめ、メガネ屋に注文済みの二つのメガネをとりに行き、近くの先輩の家に所要で
出かけたのは良いが、留守の空振りで、お昼用ということで農協の野菜館でとても大きな葱を買いに立
ち寄り帰ってさっそく、彼女が葱を感冒対策というたっぷり刻んだ玉子とじ饂飩を仕立てたので、わが
家で試用中の五香粉を振りかけランチを済ませる。カルシウム、ビタミンA、カロチンは勿論、B1吸
収促進剤のアリシンが含まれて健康に良いことは請け合いなしのだが、少量の五香粉は饂飩の風味に深
みを与えてくれるし(これは大発見!)、身体も温めてくれるから最高だよと彼女に報告する。ところ
で、市川團十郎が急折、肺炎と診断されていたが、白血病の大病の影響もあってか抵抗力が低下してい
たんだろうと話すと、そうねという。この間の新年会では、病を患えば何が起きても可笑しくないくら
い急変する話をしていたし、〆は「全員無事再会しよう!」と励まし合っていた矢先だからこれも年格
好の宿命だよねと感想を洩らした。
※五香粉に麻(山椒)、辛(唐辛子)、生姜、ターメリック、ガーリックを配合し「十香粉」とし「十
王村の水」とセットで郷杜の特産品に開発できればと思いつく。
【アベノミクス効果をめぐって】
そういえば、彼女は、帰りの車の中で、アベノミクスって効果があるのとたずねたので、リーマンショ
ックから五年経過し回復段階に世界経済が入っているし、ゼロ金利下で財政出動が有効に機能する条件
が整っているから、よっぽど不慮の事態(景気に冷水を被せるような出来事)や政策執行のへまをしな
ければ巧く行くよ。もっとも、批判する方は簡単だ。通常国会の代表質問では日本共産党首が「合成の
誤謬」という、理屈的には野党の中では的確な批判を言葉上で使っていたが、いざ政権を担当すると真
逆になりそうなだがね。そうしゃべり終えると、そういえば五年前の壮行会の挨拶で景気見通しを話し
ていたことを思い出していた。『アメリカは日本経済の復活を知っている』(浜田宏一著)のリフレ政
策推進の必要性も、不思議なことに寸分違わないことを知ったのだ(偶然では済まされない、いった僕
って何者なんだろう?!)。
そう考えると、やはりこれは教育だけの話ではなく、日本社会全体の問題ということになってくる。
大きな問題は、アカデミズムと政策の分離だ。本書の大きなテーマにもなっているように、日本で
は最新の経済理論、日進月歩のアカデミズムを活用した政策がなされない。その結果、「世界の常
識は日本の非常識」ということになる。「日銀流理論」はその典型だ。日本経済復活の道は、マク
ロ経済の運営に、「世界の常識」を当たり前のように取り入れることである。野党になった自民党
も、アカデミックな素地が充分でないゆえに、民主党をしっかりと批判することができなかった。
日銀総裁の責任が問われないまま、任期中の五年間、国民の意見がフィードバックされない日銀の
システムが、そもそも問題なのかもしれない。
浜田宏一「アカデミックな素地のない政治で」
(『アメリカは日本経済の復活を知っている』より)
そういえば、色素増感太陽電池や化合物半導体製造プロセスのネオコン(群新表面加工技術)の開発も
神社仏閣の発光ダイオードの電飾化などの省エネ化も、東日本大震災や福島第一原発事故を背景間とし
てあるものの、大筋違っていなかった。足らなかったのはわたしの「未来の仕事」に関わるあるいは事
業開発速度と言い換えても良いが、その認識と詰めの甘さだけだろう。そうであればこそ、新規事業(
ASS計画)実現ももはや夢でないという確信を信頼して良いはずだ。
【もう1つのネオコンを巡って】
ここで、浜田宏一の言うところの金融債策(リフレ政策)がその状況認識で偶然にして一致していたこ
とことで、新らしい日本史的有効需要喚起の財政政策について積極的に議論されなければならないのだ
が、そのための露払いとして細川政権→小泉政権→その後と続く日本的新自由主義(=日本的ネオコン
主義)との払拭の試みが必要となが、そのたたき台として上の『新自由主義』『新自由主義と権力』の
二冊を教材として選んでみた。そこで、読書感想前に予め予習として前者のデヴィッド・ハ-ヴェイの
『新自由主義』の評論である下記の松岡正剛を感想をみてみよう。
いまや資本はさまざまに形を変えて、ありとあらゆる生活のネットワークの中に入りこんでいる。
商品として、金融として、医療として、土地として。ほんとうはそこにはアンリ・ルフェーブルが
言うような「余剰」があるはずなのだが、その余剰もさまざまに分割され組み合わされて「財貨の
領土」とされていった。このような既存の資本領土に対抗するには、あるいはその一部を奪還する
には、ハーヴェイは資本市場とはべつのもうひとつの「場」を用意して、そこから新たな価値の射
出をなしとげ、それによって既存資本市場の一角を切り崩す必要を感じた創出をなしとげていく作
業にとりくむ必要があったのである。
松岡正剛の千夜千冊「デヴィッド・ハ-ヴェイ著『新自由主義』」
そして、松岡はネオコンの八つの基本的特徴を次のように要約している。(1)新自由主義(ネオリベ
ラリズム・新保守主義)をアメリカの「不正」と断じ、グローバリゼーションの推進先進資本主義諸国
政治体制と関わりなく、途上国・旧社会主義諸国に対抗する世界システムと捉え、途上国の開発主義体
制の矛盾突破の新たな資本蓄積策であり、それゆえ経済地理学的な「地域的不均等」を有する。(2)
地域的不均等を“利用”して、階級権力の復興や創設(→「格差社会」「マッドマネー型・カジノ資本
主義型」)に拍車を掛けた。(3)ハーヴェイは国民の“同意”を生んだ背景に、1968年前後の反体制
運動の「自由」と「社会的公正」の分断に政治体制として成功があり、白人労働者の文化ナショナリズ
ムの助長(米国)、コーポラティズムの失敗が促され、中産階級の動員が容易になる(英国)。(4)
新自由主義≠市場原理主義ではなく、「大きな政府か、小さな政府か」にあるのでもなく、「市場か、
国家か」にあるのでもなくて、新たなエリート層の確立が実力行使された、あるいは、新エリート層の
確立に歪曲し実行されていく。(5)新自由主義国家がこれからもどこかに誕生する可能性と危険性を
秘めている。(6)中南米などがその候補として挙げている。(7)新自由主義が新保守主義と混血し
ていくことを示唆する(元々同源でなかったのじゃ?)。(8)新自由主義は資本主義の有益な発展の
阻害を明確に指摘。
以上、松岡正剛を通して予習したがこの二冊に関しては日を改め「たまには熟っくりと本でも読もう
シリーズ」として掲載する。
やれやれ、今日は終日雨。つかの間の暖冬か。中国の大気汚染の影響か空がいつもよりさらに
曇天。「環境破壊段階に突入した中国」とはかつてこのブログで掲載した。わたしの予想は、この
ところかなりの確度をもつて現実のもとなっている。