大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 6月18日 キャスター付きベッド

2014-06-18 18:16:51 | B,日々の恐怖


 日々の恐怖 6月18日 キャスター付きベッド


 友人の介護士が、同僚の女性介護士Mさんから聞いた話しだそうだ。
この話の舞台となるMさんが以前勤めていたという施設だが、群馬県に実在する営業中の老人ホームであるため名前を伏せさせていただく事をご容赦願いたい。
 Mさんがその施設に勤め始めて2年程の事だった。
その頃入居していた、夜間徘徊のある重度の認知症の女性Sさんが亡くなったという。
夜間徘徊と一口に言っても、個人個人で違いはあるが、Sさんの場合、必ず深夜には廊下へ出て、どこへ行くでもなく彷徨っていたようだ。
 Sさんが亡くなった晩、ちょうどMさんは夜勤として老人ホームで勤務を行っていたのだが、その晩に限ってなぜかSさんの姿は廊下にはなかった。
ほとんど習慣化したSさんの深夜散歩が見えず、Mさんは妙な不安を感じ、Sさんの居室へと様子を見に行く事にした。
 MさんがSさんの居室へ近づいた時だった。
するりと、音もなく居室の引き戸が開いたのだ。

“ あ、もしかしてSさんかな・・・?”

そう思い、Mさんが声を掛けようとした時だった。
居室から顔を覗かせたものに、Mさんは腰を抜かしそうになった。
 それはキャスター付きのベッドだった。
Mさんをさらに驚かせたのは、そろりそろりとその姿を廊下へと出て来るベッドの上には、Sさんが就寝時のままの姿で横たわっていたからだった。
 まず、ベッドのキャスターは常日頃ストッパーがかけてある為、動き出すような事は絶対にない。
それ以前に、居室自体が傾いてでもいなければ、スットパーが外れていたにしてもベッドが勝手に動くはずなどなかった。
それなのに、Mさんが唖然と見つめるその目の前で、まるで誰かがベッドを押しているかのように廊下へ出て、どんどんと廊下を進んで行ってしまうのだ。
 さすがのMさんも、たまらずにもう一名の夜勤職員に泣きついたそうだ。
二人でSさんのベッドの行方を探すと、居室前の廊下から一つ曲がった何も無い廊下にSさんのベッドはぽつねんと止められていた。
 気味が悪いのは当然二人共だが、大切な利用者を寒い廊下に放り出しておくわけにもいかず、えっちらおっちらSさんのベッドを居室へと戻したのだが、居室でSさんの状態を確認した夜勤職員は、Sさんが既に冷たくなっている事に気付いたのだそうだ。
 その後わかった事だが、Sさんはどうやら就寝直後には亡くなっていたらしい。
何故ベッドが勝手に動き出したのか、それはさすがに謎のままだ。












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日々の恐怖 6月17日 フォーク

2014-06-17 20:35:17 | B,日々の恐怖


    日々の恐怖 6月17日 フォーク


 数年前の夏、家族で行った旅行先でのことだ。
早朝、カタンという音で目が覚めた。
何か窓に当たったような気がして、窓を開けてベランダに出ると、フォークがひとつ落ちていた。
 フォークはパンダの絵が描いてある小さな子供用のもので、柄の部分にひらがなで名前が書いてあり、その上にセロテープが貼ってあった。
俺と同じ名前だった。
 母に見せると、俺が保育園時代にお弁当用に使っていたものに似ており、字は母の字のように見えるという。
俺は全く覚えていない。
母も、当時から今までこのフォークをどうしたのか全く覚えていない。
父は知らないと言った。
 なんでこれが家から遠く離れたここにあるのかさっぱり説明がつかない。
それに、十数年前のものにしてはいやに綺麗だった。
なんとなく気味が悪いので、スプーンはそのホテルに置いてきた。
 帰るとき、フロントで封筒を手渡された。
昨日の深夜にフロントを訪ねてきた男が、俺の名前と部屋番号を告げ、

「 これは彼のものなので渡してください。」

と頼み、すぐに去っていったという。
 普段着だが小綺麗な印象の初老の男性だったという。
聞く前に立ち去ってしまい、男の身元はわからないとのことだった。
 封筒の中身はスプーンだった。
朝のフォークと同じデザインの、対になるようなものだった。
やはりおれの名前がセロテープの下に記してあった。
 ゾッとしてそれ以上はなにも聞く気になれず、捨てておいてくれと頼み、フロントに置いてきた。
もう、それは母には伝えなかった。
 全く脈絡もなくよくわからない話だった。
フォークとスプーンに関しては、一生懸命考えたが思い出せない。
ただ、母がひっくり返したアルバムのなかの一枚に保育園時代、遠足の昼食時に撮った一枚に、それらしいフォークをもっている俺の姿が写っていた。
 祖父母が持って来たとも思えない。
片方の祖父母は同居していたがもう亡くなっている。
もう片方の祖父母は遠方で今も健在だが、家とは非常に仲が悪くて、少なくとも俺が産まれてからはそちらに行ったことはない。
 まさか、今頃それを持って来るとも思えないし、俺自身あのフォークとスプーンになんの思いれもない。
両親の話では、昔の写真のフォークは引越しのときにでも無くなったんだろうとのことだった。












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しづめばこ 6月17日 P312

2014-06-17 20:34:46 | C,しづめばこ
しづめばこ 6月17日 P312  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 6月16日 徘徊

2014-06-16 19:50:25 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 6月16日 徘徊




 近所で有名な徘徊老人の話です。
家の近所には十一時くらいになると紐でなんかを引きずってるおばあちゃんが出没します。
僕自身も何度も見てるんだけど暗いから何を引きずってるかはいつもわかんなかった。
 まあ、

「 あ・・・、ちゃん、疲れたか?」

とか言いながら何かをズルズル引きずってるもんで、気持ち悪くてあんまり見ないようにしてた。
それで、自分の中では、

「 多分死んだペットの遺物でも引きずって思い出に浸ってんだろ。」

とか自己解決していた。

「 思い出引きずってもペットの遺品は引きずんなよ!?」

みたいな。
 その後、親父になんとなしに、

「 あのばあちゃん、昔ペットでも飼ってたの?」

とか聞いてみた。
すると親父に、

「 ○○さんち・・・?
いやあ、そんな話聞いたこと無いぞ。」

的なことを言われる。
そうなるとさすがに気になってきて、何を引きずってるのか知りたくなってきた。
 十一時くらいになって、

「 コンビニ行ってくる。」

とかいって外に出てあのばあちゃんを探した。
 やはり、いた。
何かを引きずって。

「 あ・・・、ちゃん、ご飯は??」

とか言ってる。
 いつものようにそそくさと横を通り過ぎる振りをし、距離が縮まったところでフッとそれを見た。
それは、ズタズタになった子供の靴だった。












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日々の恐怖 6月15日 大学の寮

2014-06-15 20:29:26 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 6月15日 大学の寮



 学生の頃、実家を離れて大学の寮に住んでいた。
田舎の学校で、その敷地から歩いて20分程度の場所にある寮でした。
周りは住宅地で、古くからのお宅と、ベッドタウン化による新興宅地が混ざった感じ。
寮は4階建てで屋上に物干があり、夜間は屋上への出入り禁止だったけど、みんな時々屋上へ出て、煙草を吸ったり小声でおしゃべりしたり。
 たしか私が2年生の終わり頃、なんとなく眠れない日が続いてた。
良く夜中に屋上へ出て、1時間くらいボーっとしたりはしていたので、その日も防寒対策して行ってみた。
 フェンスのそばのベンチで夜空を見上げたり、夜の住宅街を上から眺めたりしていたら、寮の門の前にある左右に伸びる比較的広めの道路に、何か動くものを見つけた。
自分から見て左手側、門から100m以上離れたあたりに人影があった。
周りとの比較から、子供と思えるくらいの背格好。
脇道からその道路へひょいっと出たり入ったり、ちょこちょこっと走り出したと思ったら、また向きを変えて脇道へ入ったり。
 時間は、確か午前1時は過ぎていた

“ 何だろう、こんな夜中に・・・・?”

と思いながら、なぜか目が離せなくなってじっと観察してしまった。
 なかなか近づいてこないのでイライラした気持ちでいたんだけど、田舎道のまばらな街灯の光で、徐々にそいつの姿が判別できるようになってきた。
 道端の自販機と較べた感じでは、背丈はたしかに10歳くらいの子供サイズ。
でも体は痩せていて、頭が異常に大きく見える。
頭を支えるのが大変なのか、歩くたびに首が不自然にゆらゆら動いている。
大きな顔の中で目も異常に大きく感じられ、しかも極端な黒目っぽいのがさらに無気味だった。
 子供がそのまま老人になったような薄い感じでフラフラ歩いて近づいてくる。
門から50m程になった時、そいつがいきなりこっちへ視線を向けた。
私は黒いダウンコートを着て、声も出さずにしゃがみ込んで4階の屋上にいたのに、そいつは迷わず私の方に視線を向けてきた。

“ あっ、ヤバッ!”

私が固まったようになっていると、突然そいつはこっちに向かって走り出した。
 訳のわからない恐怖感に私は多分パニックになりかけで、声を必死で押さえたままで屋上から寮の中へ逃げ込んだ。
 寮の建物自体はオートロックで施錠されている。
自室のドアも鍵がかかる。
2階にある自分の部屋に駆け込んで鍵をかけ、異常なくらいの心臓のバクバクを感じていた。
 何をどうしたらいいかわからない。
頭がグルグル回るような感じがして、気がついたら涙まで出ていた。
すぐに窓の外から砂利を踏む音が聞こえた。
 私はもうたまらずに、寮長さんの携帯に電話した。
眠そうな寮長さんの声が聞こえたとたん、変なプライドや気取りが蘇った私は、できるだけダルそうな声を作り、

「 誰かが寮の周り歩いてるみたいで迷惑なんですよね~。」

と言ってみた。

「 わかりました、念のために見回ってきますから。」

と言ってくれて一安心。
 しばらくして、明らかにさっきとは違う普通の足音がして、去って行った。
今度は寮長さんから電話をくれて、

「 不審なものはなかったですよ、施錠も大丈夫でした。」

という言葉で自分を安心させ、何とか眠ることができた。

 次の日、朝からの授業だったので、普通に起きて寮の玄関を出た。
玄関の左側へ10mくらい行ったあたりが、私の部屋の窓の真下になる。

“ 昨日は怖かったなぁ・・・。”

と思いながらそのあたりに目を向けると、何かいつもと違う印象を受けた。
恐る恐るそちらへ近づくと、昨日感じた鳥肌と汗が一気に蘇ってきた。
 私の部屋の窓の真下の地面に線が引かれていた。
それは、きれいな二重丸だった。
直径1mもないくらいの二重丸が描かれていた。
頭が真っ白になった私は、夢中で自分の足で砂利を蹴って二重丸を消した。
あれから砂利を踏む足音が聞こえると、このことを思い出してしまう。











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日々の恐怖 6月14日 火

2014-06-14 22:02:51 | B,日々の恐怖


    日々の恐怖 6月14日 火


 友人の話です。
仲間何人かでキャンプに出かけた時のことだ。
夜も更けて他の者は寝入ってしまい、火の側に居るのは彼一人だった。
 欠伸を噛み殺しながら、そろそろ火の始末をして俺も寝ようかな、などと考えていると、覚えのない声が話しかけてきた。

「 何しているんだい?」

顔を上げると、火を挟んだ向こう側に誰かが座っていた。
ぼんやりとしか見えない、大きな黒い影。
視界に霞でも掛かったかのよう。
 何故かその時は不思議とも怖いとも思わず、普通に返事をした。

「 んー、火の番をしてる。」

相手の正体は何者なのか、何でこんな時間にこんな場所に居るのか。
そういった類いの疑問がまったく頭に浮かばなかった。
先程まではシャンと起きていた筈なのに、寝惚けた時のように思考が上手く働かなかったという。
 ぼんやりと、俺寝惚けているのかな、と考えているうち、また話しかけられた。

「 その火が消えたらお前さんどうする?」
「 んー、消えないよ。」
「 こんな山ン中じゃ、一寸先も見えない真っ暗闇だろうな。」
「 んー、この火が消えちゃったら、そうなるだろうね。」
「 闇は深いぞ。中に何が潜んでいるかわかったもんじゃないね。」
「 んー、暗いのは怖いよ。だから火の番をしなくちゃね。」

声の主は、頻りと火を消すように勧めてきた。

「 火の番なんか止めちゃえよ。もう眠いんだろ。寝ちゃえよぐっすりと。」
「 んー、そうしたいけど、そういう訳にも行かないんだよね。」
「 俺が消してやろうか?」
「 んー、遠慮しとくよ。」
「 消すぞ。」
「 んー、でも直ぐまた点けるよ、暗いの嫌だから。」
「 一度消えた火は直ぐ点かないぞ。無駄だからもう寝ちゃえよ。」
「 んー、ライターもあるし、火種があれば直ぐ点くよ。」
「 ライターか。それがあれば直ぐに火が点くのか。」
「 んー、点くと思うよ。簡単に山火事になるぐらい。」

すると声は、ライターを無心し始めた。

「 火が消えないならライターなんてもう要らないだろ。俺にくれよ。」
「 んー、これは大切な物だから駄目だよ。」
「 俺が代わりに火を見ててやるよ。だからライターくれよ。」
「 んー、僕のじゃないから、やっぱり駄目だよ。」

 こんな押し問答を何度くり返しただろうか。
やがて影がゆらりと立ち上がる気配がした。

「 火が消えないんじゃしょうがないな。帰るとするか。また遊ぼう。」

その言葉を最後に、何かが山の闇の中へ去って行った。

「 ばいばい。」

小さくなる気配にそう挨拶していると、いきなり強く揺さ振られた。
 ハッとして身構えると、揺すっていたのは先に寝ていた筈の仲間だ。
目が合うや否や、凄い勢いで問い質される。

「 お前!今一体何と話してた!?」
「 何とって・・・、あれ?」

そこでようやっと思考がはっきりし、明瞭にものが考えられるようになる。

「 えっ今、僕、何かと会話してたの!? 夢見てたんじゃなくて!?」

 気が付くと残りの皆もテントから顔を出し、こちらを恐ろし気に見つめている。
彼を揺すり起こした者が、次のように教えてくれた。

 曰く、テントの外で話し声がしたので目が覚めた。
夜中に迷惑なヤツだと思い、テント中の寝顔を確認してから青くなった。
人数から判断する限り、今外には一人しか出ていない筈だ。
 恐る恐る外を覗くと、焚き火を挟んで座る影が二つ。
片方は間違いなく友人だったが、もう一方が何かわからない。
人の形をした、黒い塊に見えたらしい。
 友人と影は、何度もしつこいくらいに言葉を交わしていた。
どうやら、火を消す、消さないで揉めている様子。
絶対に消すんじゃないぞ!
声に出せない願いを胸中で叫んでいると、じきに影は立ち上がり山奥へ消えた。
 いつの間にか他の皆も起き出しており、背後で息を殺していた。
影がいなくなった時、テントの中では安堵の溜め息が重なったそうだ。
その直後慌てて外に飛び出し、憑かれたように火を見つめる友人を引っ掴んで、ひどく揺すって目を覚まさせたのだと、そう言われた。

 思わず、影が消え去った方角の闇をじっと見つめてしまった。
何も動く気配はない。
足元で薪の爆ぜる音が聞こえるだけだった。
 その後彼らは、その山を下りるまで絶対に火を絶やさないよう心掛けた。
不寝番を二人立てて、火の番を交代でしたのだという。
その甲斐あってかその後、あの黒い影はもう現れなかったそうだ。

「 僕はあの時、何と会話していたのかな?」

思い出すと、今でも鳥肌が立つのだそうだ。












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しづめばこ 6月14日 P311

2014-06-14 22:02:27 | C,しづめばこ
しづめばこ 6月14日 P311  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


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日々の恐怖 6月13日 近所の子

2014-06-13 19:05:22 | B,日々の恐怖



     日々の恐怖 6月13日 近所の子



 俺がまだ小さい頃、近所によく遊ぶ女の子がいた。
その子はちょっと不良っぽくて、実際口も悪いし、すぐ「あぁん?」みたいに言う様な子だったんだ。
それでも、何だかんだで面倒見が良いし、他の子ともまぁまぁ仲良くやっていた。
 それで、いつだったかあやふやだけど、その子だけが俺の家に遊びに来たことがあったんだ。
今から考えてみると、ちょっと無口で不機嫌そうだったけれど、俺としては家に友達、しかも女の子ということもあって、さして気に留めずに家に招き入れた。
 ゲームは兄の持ち物だから出来ないってことで、漫画読んだりテレビ見ながらゴロゴロしてたら、NHKで“俺はあいつであいつは俺で”ってのやり始めた。
二人の男女が頭を打ち付けたら、心が入れ替わってどうのこうのってヤツ。
 しばらくそのドラマ見てたんだけれど、その子が急にこっち向いて頭をゴンッて俺にぶつけたんだ。
それで、その子は、

「 入れ替わらんかァ・・・。」

みたいに言って笑った。
 俺は普段あまり見ないその子の笑い顔が何かおかしくて、ゲタゲタ笑ってたんだ。
何年かして、その子も家族ごと引っ越していなくなった。

 俺が成人してから、俺の子供の頃の話を親としてたらその子の話題になって、親が言うんだ。

「 あの子の家は、ちょっとねぇ・・・。」

 話を聞くと、その子の父親は傷害で刑務所行き、母親は子供を育児放棄気味だったらしい。
そして、その子には妹がいて、幼稚園の送り迎えとかもその子がやっていたと言うことだった。
あの子、どんな気持ちで俺に頭突きしたんだろうか。











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日々の恐怖 6月12日 配達依頼

2014-06-12 18:28:36 | B,日々の恐怖


    日々の恐怖 6月12日 配達依頼


 知り合いの米屋から聞いた話です。
常連さんから午後二時ごろ電話で米の配達依頼があり、夕方に行く事になった。
しかし、その日は朝は暇だったのだが、夕方は立て込み始め結構忙しくなってしまった。
 何件か回ってその常連の家に行ったが、インターフォンを押してもドアを叩いても誰も出ない。
再度行けば良いかと思い、他の客の配達へ向かった。
 そして最後の配達を終えて、そこの家に向かいドアをノックしても、やはり誰も出ない。
おかしいなぁ、と思っていたがドアが開いていたので、偶に留守宅でやるように玄関に置いて帰ろうとした。
すると、そこで待っていたのは、刺された状態で玄関にしゃがみ込んで死んでいた常連さんだった。
 急いで警察に連絡して色々調書を取られたが、第一発見者だからかかなり疑われた。
 それから数日間は警察に任意の聴取を付き合わされ、米屋の方は奥さん一人でまわす始末。
なぜ疑われたのかと言うと、 常連さんの死亡時間より電話があった時間の方が遅いことと、
回覧板を回しに来た隣人が、「夕方に向かったら鍵が閉まっていた」との証言をしたからだった。
 それから数日後、犯人である隣人が捕まった。
もちろん、証言は嘘だった。
ただ不可解なのは、配達依頼の電話だった。
これだけはどうしても理解できないと言っていた。
冤罪に巻き込まれるのも怖いけど、こういう電話も意味不明なだけに怖かった。












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日々の恐怖 6月11日 盆栽

2014-06-11 20:16:09 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 6月11日 盆栽



 母が仕事場の同僚であるAさんに聞いてきた話です。
Aさんは、おじいさんと同居しているそうです。
おじいさんの趣味は盆栽で、なかなか良い作品らしく、展覧会などでいくつか賞をもらったこともあるそうです。
 ある日のこと、いつも通り盆栽いじりをしていたおじいさんが酷く動揺しています。

「 どうしたの?」

と慌てて聞くと、おじいさんは

「 喋った・・・・。」

と答えました。
 意味が分からず、

「 誰と?」

と聞きなおすと、

「 盆栽が、喋ったんだ!」

と声を荒げます。
Aさんは半信半疑でしたし、少し可笑しくなり、

「 なんて言ってたの?」

と聞くと、

「 いつもありがとう、って・・・・。」

それは良い事だねって言うと、おじいさんは静かになりました。
Aさんも本当の事なら、おじいさんの愛が伝わったのだなぁと嬉しくなったそうです。
 しかし、ここで終われば良い話なんですが、このおじいさん余程怖かったのか、すぐに手元にあった全ての盆栽を売り道具も手放し、その一件以来盆栽には一切手を出していないそうです。
賞をもらう位なんですから良い出来なのでしょうに、ちょっと勿体ない。
お礼を言って売っぱらわれるとは、盆栽も思ってなかっただろうにね。



 楳図かずおの話で似たようなのがありました。
最初美しい女の人目線で物語が進んでいくんだけど、実はその女の人は男の人が部屋に飾っていた鉢植えの花だった。
 ある日思い余って男性に、

「 愛しています。」

と言ったら、男性は、

「 バラがしゃべった!!」

と言って鉢植えを壊してしまった。
はかない花の恋心は一瞬で終わったんだけれど、よく似た話があるとは思いませんでした。











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しづめばこ 6月11日 P310

2014-06-11 20:15:38 | C,しづめばこ
しづめばこ 6月11日 P310  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


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日々の恐怖 6月10日 原付バイク

2014-06-10 20:19:59 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 6月10日 原付バイク


 15年くらい前の事なんだけど、自分の原付バイクがマンション地下駐輪場から盗まれたんだ。
毎日通勤や買い物で乗っていた大事な愛車。

「 ちぃっくしょーーーー!犯人ただじゃおかねえ!」

と、私は怒りに震えた。
 うちのボロマンションの地下駐車場は、暗くて入り組んでいて死角が多い。
そこの隅で以前、頭髪が黄色い若者達、いわゆるヤンキー風の兄ちゃん達が集って、400ccバイクを2台並べては、蝋燭の明かりの元で弄くっていたりしていたのを目撃した事がある。
そして今も、集まっているらしい形跡がある。

“ もしや、あいつらが犯人か?十分ありえるな・・。”

とふんだ私はバクチに出た。
で、駐輪場に、奴らが絶対目にするであろう場所に張り紙をしてみました。

『 2日前、ここの駐輪場から私の原付バイクが無くなりました。
 持っていった人、お願いです返して下さい。
 去年亡くなった友人の形見の原付バイクなんです。
 今月の○○日が命日です。それまでに返して下さい。
 友人にすまない気持ちでいっぱいです。悲しんでいます。
 愛車を返して下さい。』

たしかこんな文面だった。
これをB5の紙に黒マジックで書いて貼ってみた。
 亡くなった友人の形見というのは、はい嘘です。
命日は2週間後あたりを書いた。
今思うと、若かった私は怒り心頭&少しワクワクといった感じでいた訳だが、これ見た住人は気味悪かっただろうな。
自分、ちと危ない人認定だったわ。

 さて、犯人は絶対に現場に戻って来ていて、貼り紙を見ているはずだ、と妙な確信を持っていた私は、徒歩40分かけて職場を往復する毎日。
一応交番に行って盗難届も書いたけど、期待は出来ない。
人の物を盗むような奴の手に渡ったら、たぶん戻ってはこないだろうな。

“ 憎い犯人め、すっ転んで骨でも折ってろ!”

と、怒りが沸々だった。

 実はあの原付、後輪がおかしい。走行中に右スベリする感じ。
自分は慣れるまでに2回コケている。
みてもらったら、「後輪のタイヤと金属部分の間が不具合の欠陥商品」だって。
 スピードあげて走ると空気が抜けやすくなり、段々とタイヤがヘナヘナになって、それでオシリが振れてコケやすくなるらしい。
そんな欠陥が分かったとたんに、暴れん坊に盗まれたということか。

 何だか今回の原付は(この原付は2台目)ツイていないな、なんて思っていたら、来ました来ました。
 ある日の夕方、帰って来ていました!
盗まれた場所に停めてありました。無残な姿でしたが・・・。
 右側全体に大きな擦過傷と、後輪タイヤがダランダランにパンクしていました。
ハンドルまでゴリゴリに擦りやがって、どー見ても走行不能です。
犯人はどんな転び方したんだ?こりゃ絶対に怪我しているわな。

「 うわあぁー祟り?ゴメンナサイ返します。許して下さい。」

とビビリながら、ここまでこの原付を押して来たのかな?
 あ、今日は嘘の命日の前日だ。
ククク・・・大・成・功!!
原付バイクは無残で悲しかったが、犯人の気持ちを想像すると最高に楽しかった。
怖かっただろうなーー普通この状態なら、どっかに放置で終わりだったと思う。

“ 予想通りの犯人め。ガキがぁ甘く見るからだ~ウヒヒヒ思い知ったか!”

犯人君は絶対また見にくるはずだから、駄目押しにもう一芝居してやった。
あの貼り紙を剥がし、今度は線香を焚いたような演出を原付のステップ部分に施して、そのまま停めておいた。

 そんな意地の悪い事して、3日後だったと思う。
休日だったので昼頃に様子を見に行ったら、小さい花束がシートの上に置いてあった。

“ あーー・・・何か・・・その・・・。”

罪悪感で心が痛んだ。
犯人君は、若気の至りを本気で反省したんだね。脅かして悪かったよ。
途中から楽しくなっていた私。
マジで怖かったんだね御免なさい。

『返してくれてありがとう』

とまた張り紙して、原付は修理して乗り続けました。
 結局犯人は判らず終いだったけど、もしかしてもしかして、あのオカルトチックな出来事が犯人君の心に残っていたら、この話を見ていたりして、なんて思っています。













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日々の恐怖 6月9日 デイケア

2014-06-09 20:48:10 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 6月9日 デイケア



 「 すずめに餌あげちゃだめですよ。」

そう年下の先輩に言われたのは、以前の職場で働き始めて2ヶ月経った頃でした。
当時デイケアで働き始めたばかりの私に、指導係として付けられたチカちゃん。
 チカちゃんは年上の後輩と言う扱いにくいだろう私に、親切に仕事を教えてくれる優しい女の子でした。
彼女と私は動物好きと言う共通点から仲良くなり、傍から見てもいい関係を築けていたと思う。
いつもニコニコしている彼女が、厳しい顔で言ったのが冒頭の一言です。

 今頃の時期になると、すずめが巣立ったばかりの子供を連れて、餌を探しているんです。
田んぼの真ん中にあるような田舎の職場なので、すずめの親子たちを頻繁に見かけました。
可愛いな~と、忙しい仕事の合間にちょっと外を覗いては、癒しを貰ってたんです。
チカちゃんも同じだった様で、「可愛いですよね~」と緩んだ笑顔で癒されてました。

「でもね、餌はあげちゃダメですよ?」

今まで笑ってたチカちゃんのいつにない真剣な表情に、ちょっとビックリした私。
 でもすぐに、ああ、糞とかで汚されたりとかあったのかな?と思いました。
しかし、次の一言で思いっきり首を傾げてしまったんです。

チ「取られちゃうから。」
え…?取られるって何?
私「…や、焼き鳥とか?」
チ「いやいやwそうじゃなくて。」

最初、餌あげたりしたら集まってきたすずめを、誰かが『焼き鳥』用に捕まえるかと思った私は思いっきり笑われました。

 その理由は、以前働いていたチカちゃんの先輩が切っ掛けだったそうです。
チカちゃんの先輩は、私やチカちゃん同様、かなりの動物好きだったらしいのです。
その先輩がダイエットをはじめ、少しお弁当のご飯を残し始めた。
勿体無いから、水で解してすずめに与え始めたのが切っ掛けだと言う。
 最初は余り近寄ってこなかったすずめ達も、徐々に餌が置いてある状況に慣れてきたようで、徐々に餌を求めてやってくるすずめも増えていったそうです。
だんだん利用者達もそのすずめが可愛くなってきたようで、時間があれば眺めるお年よりも。
責任者も、犬や猫とは違って特別手がかかる訳でもないので、咎める事はなかった。

 だが、餌をやり始めて一年ほど経った頃、先輩はあるものを見つけた。
苑外行事で利用者や職員が出払った折、残った職員で普段手がまわらない場所を掃除する事になった。
先輩は施設の裏にある、一面砂利が敷いてある職員用の駐車場の清掃に。
 砂利の間から伸びた草を抜き、捨てられた吸殻を見つけて、ブツブツ文句を言っていた時にそれを見つけた。
一見枯れ草のように見えたそれは、手に取ってみると、干からびた鳥の死骸だった。
それが、成鳥だったのか雛だったのかは分からない。
恐らくすずめの死骸だっただろうと思い、先輩は駐車場のすぐ横にある花壇の側に埋めてあげたそうです。

私「その辺の気持ち、凄い良くわかるーw」
チ「動物好きはそうしますよねw」
私「でも何で死んでたんだろうね?すずめが集まってるから猫が来たとか?」
チ「私達も最初はそう考えたんですよ。でもね、おかしいんですよ」

その清掃の数日後。今度は別職員がその死骸を見つけたと言う。
同じように干からびた状態で、二羽分の死骸を。

チ「それでね、よくよく考えたら二,三日前に掃除したばかりだから、猫に取られたとしても、死んでからそんなに経ってない訳じゃないですか?
そんなに早く死骸って干からびないでしょ?」
私「そうだねー、しかも今と同じ梅雨時期だったんでしょ?」
チ「そうなんですよ!真夏ってんならまだ分かりますけどね、ジメジメした時期に。」

 それでも一番可能性があるのは、別の動物から襲われた以外に考えられず、すずめへの餌やりは止める事になった。
すずめを罠にかけてたも同然だと、先輩は一時相当落ち込んだらしい。
そんな理由があるなら仕方ないと思ったのですが、それだけではなかった。
 すずめへの餌やりを止めてひと月が過ぎたぐらいから、先輩にはある不思議な現象が起こり始めた。
仕事をしている最中に、ふと視界の端に、何か黒いものが映ると言う現象が。
何かが過ぎったのか?とその黒い影を追ってみても何もない。
 この時チカちゃんも、仕事中によく振り返ったり首を傾げたりしてる先輩を見ていたそうです。
でもそれ以外には特別何も起こっておらず、他の職員も利用者も施設自体にも何もなかった。
先輩も特には気にする事もなく、そのうち慣れてしまった様子だったとか。

 職場では営業を終えた後、シャッターを閉めるんです。
先輩以外が初めて異常を感じたのは、このシャッターを閉めている時に起った。
ガラス窓には全てシャッターがついていて、数名でシャッターを下ろす作業をしていた時。
先輩がシャッターを下ろした途端。

バンバンバンバンバン!!
バンバンバンバンバン!!

明らかに人が外から叩いている音が、施設内に響いたそうです。
すぐにその場にいた男性職員が悪戯だと思い、窓から叩かれているシャッターをのぞき見た。
瞬間音が止み、窓から身を乗り出していた職員が目を見開いて中にいる全員を見た。

「 誰もいない。」

今の今まで音が鳴っていたシャッター。
誰かが悪戯していたのなら、逃げていく姿ぐらい見れるはず。
みんなその事を分かっていたし、ありえないと思っていたが、誰も言葉に出来なかった。
しんっと静まり返って、なんとも言えない空気が漂った。
 この日休みだったチカちゃんは、翌日話を聞いて震え上がったそうです。

チ「凄い怖かったですよ!今まで普通に働いてた場所で、そんな異常なことが起こるなんて思わないじゃないですか。」

そりゃそうだ、そして今、私がその気持ちです。
その日シャッター閉めるのが、めっちゃ怖かったの今でも覚えてます。

 ウチのデイケアって、病院が運営してるんですよ。
なので、デイ施設は病院の隣にあるんです。
まあそんな関係から、病院じゃ色々あるのは想像つくし、利用者の中で亡くなった方だっている訳で。
みんなビビリまくったけれど、取り立てて何かをする事もなかった様です。
 その後も事務所にある神棚の榊が倒れてきたり、誰もいないデイルーム内で物音がしたり、片付けてあったリハビリ用の道具が勝手に落ちたりと色々。
チカちゃんもその当時、ちょっとした体験をしてるそうです。

 しかし事態が大きく急変したのは、やっぱりその先輩の前でした。
変な事が起こり始めて2ヶ月弱経っていたので、もう夏の暑さが酷くなっていた頃。
 営業終了後、デイルーム内の清掃や翌日の準備をしていた職員達。
その間はやはり暑いので、全てを終えて帰る寸前までクーラーは入れていた。
なので全部の窓は閉められており、室内は過ごしやすい温度が保たれている。
そのはずなのに、何故か湿った空気を感じた先輩。
 原因はなんなのか?どこか窓が開いてるのか?と粗方終えた清掃の手を止め、あたりを見回す。
また黒い影が視界を横切った。
ぱっと目をやった窓に、初めて黒い影を捉えることができた。
 事務所側の窓、その先は、あのすずめの死骸を見つけた職員用の駐車場がある。
黒い影は、窓の下のほうから少しだけ見えていた。
目を凝らし、徐々に近づいた先輩はそれがなんであるかに気づいた。
それは、こちらを覗く人の顔だった。
 鼻を窓枠に押し付けるようにして覗く顔は、目から上しか見えない。
雨も降っていない真夏日なのに、長い髪は濡れたように顔に張り付いている。
表情のない目は異様でおぞましく、先輩は全身が総毛立つと同時にある確信を持った。

“ あのすずめの死骸、きっとこいつが食ったんだ!”

何故かその時、先輩はそう思ったそうです。
絶対にこいつだ、こいつがすずめを食っていたんだ、と。
 その顔はぬるぬるとした肌で、緑がかった黄土色をしていた。
恐怖で大声を上げて泣き出した先輩に驚き、他の職員も慌てて駆けつけた。
その日は全員がパニック状態で、収拾が付かなかったそうです。
チカちゃんもその場にいたそうですが、顔なんて見てないなかった。
 先輩はその後、今まで自分の身に起こっていた事を責任者に話した。
黙って聞いていた責任者には心当たりがあった様で、すぐどこかに電話を入れた。
ややあって、呼び出された数名が一室に籠もりなにやら相談していたそうですが、内容は今でも不明との事。
 最終的に分かった事は、今デイが建っている場所は以前は民家で、その土地を購入しデイを建てたのだが、その家には井戸があったそうなんです。
私自身この話を聞くまで知らなかったんですが、井戸を潰す時ってお払いとかお清めが必要らしいです。
その神事をどうやらやらなかった様です。
 デイ完成直後も実は色々あり、慌てて地元の神主に助けを求めた。
一応応急手当のような事はしてくれたらしく、その後きちんとお祀りしていたので何事もなかった。
 ここからはその神主さんの見解ですが、恐らくすずめをお供え物と勘違いしたあの顔が、
急にお供え物を止めてしまった先輩に、抗議しにきたんじゃないか?と。
しかも、先輩が見たその風貌からして、もうあれは水神や龍神ではなく、魔物となってしまったのだろう。
抑えることが出来ても、完全にその存在を消してしまう事は難しい。
上手く共存するしかないと、責任者に言われたそうです。
 二年くらいで寿退社してしまったのですが、私は二年間何も経験しませんでした。
今は大人しくしているのだと思います。
あと、すずめの死骸があった場所が、井戸があった側だったようです。











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しづめばこ 6月9日 P309

2014-06-09 20:47:47 | C,しづめばこ
しづめばこ 6月9日 P309  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。(FC2小説)

小説“しづめばこ”



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日々の恐怖 6月8日 櫛

2014-06-08 18:51:30 | B,日々の恐怖



      日々の恐怖 6月8日 櫛



 ある営業所で取引先とトラぶって、その対処の応援として出張した際での出来事です。
 営業所の人と協力して、何とかトラブルの対処も終わり、その晩は営業所の人と慰労会兼お別れ会で酒を飲んで、大体9時半ごろ、宿泊先にしていたホテルに戻った。
営業所の人から、おおよその報告は行っているので、明日は、朝一で本社に戻って経緯の報告をすれば、この仕事も終わる。
明日は早くに出なければならないし、今までの疲れもあるので、部屋に戻ったら速攻でシャワーを浴びて寝ることにした。
 で、シャワーを浴び終わった後、髪形を整え歯を磨くため洗面台へ。
大抵、洗面台の鏡は、三面鏡です。
で、自分、子供の頃から両側の鏡を平行にして、無限に同じ光景が映っているのを見るのが妙に好きだったんです。
 その時も鏡を平行にして、無限に同じ光景が映っているのを見ていました。
今から考えれば、何故そんな事をしたのかは解らないのですが、髪形を整えるために使っていた串を握って、鏡の前で上下に振ってみたんです。
右にも左にも、無限に櫛が上下に振られている。
 で、それを何とはなしに見ていたのですが、あれっと思って左側の鏡を見てみた。
枚数はよく数えていなかったのですが、何枚か先に映っているのが、どう見て目ても櫛ではないんです。
 そこに映っていたのは、赤い血糊の着いたナイフ。
それが、私の動かす櫛と同じリズムで上下に動いている。
見間違えかと思ったが、そうではなかった、その何枚目かのもの以外は、すべて櫛なんです。
 心臓はバクバク言っていたが変に落ち着いていたのも事実で、右側を見てみると右側はすべて櫛だった。
再び左側をみると、やっぱり何枚目かだけの一つだけが、血糊の着いたナイフになっていて、そのナイフがこちらの櫛と同じ動きをしている。
 枚数は数えていなかったが、そのナイフが先程よりもこちらに近づいているような気もする。
その時点になって、急に恐怖が襲ってきた。
 あわてて鏡を元に戻し、ベッドへ。
洗面所から何かが出てきそうな恐怖にも襲われ、結局一睡もできず朝になった。
 当然、朝は洗面所にも行かずに、速攻でチェックアウト。
一睡もしていないせいで、かなりやつれた顔をしちたと思うが、上司は仕事の疲れと思ったのか、「御苦労さん」と労ってくれて、その日はもう帰っていいってことになった。
 家に戻っても、あの光景が頭から離れず、しばらくは洗面台で、まともに鏡も見れなかった。
でも、まあ、酔っていたし疲れと酔いで妙な幻覚か何かを見ただけかもしれない。
と、自分に言い聞かせて、なんとか自分を納得させようとした。
その甲斐あってか、一カ月もたつと生活も日常に戻って鏡も見れるようになった。
 で、大体3カ月も過ぎたころ、“とあるホテルで殺人事件”というニュースが流れた。
そのホテルは、お察しの通り私の泊まっていたあのホテルでした。
部屋は同じかどうかは不明ですけど・・・。














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