大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆分野を選択して、カテゴリーに入って下さい。

A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 6月1日 クズ

2014-06-01 20:17:50 | B,日々の恐怖


    日々の恐怖 6月1日 クズ


 今から10年位前の話。
オレは学生だった。
アルバイト先の居酒屋で知り合った二つ上の女。
Yとしとこうか。
 今はクズだけど、当時は普通の学生だった。
Yとは何となく気があって付き合い始めた。
オレは地方から出てきてアパートに独り暮らしだったから、バイトが終わったら、週に1~2回くらいウチに遊びに来ていた。
ウチでは一緒に酒を飲んだりしながら、取り留めのない話をよくしていたな。
Yも地方から出てきて、妹と一緒に住んでいると言っていた。
 当時は普通の学生と言ったが、やっぱり当時もクズだったよ。
Yが妊娠した。
もちろん生めるわけないさ。
2人で相談して堕ろしたよ。
それから何となくぎくしゃくしちゃって、Yとは別れてしまった。
 結局付き合った期間は、9ヶ月くらいだったかな。
Yはこのバイトが生活の基盤になっていたから、辞めるわけにはいかない。
結局オレが辞めた。
クズなりに罪悪感もあって、部屋も引っ越したし携帯も変えた。
Yに関するものは全て消して、やり直すことにしたわけ。
やっぱりYのことは好きだったしな。

 それから5~6年経ってから突然、新しいアパートに女がやってきた。
どこからどうやって調べたのか分からないが、その女はYの妹と名乗った。
オレにしてみれば、これ以上気味が悪いことはない。
アルバイト先の同僚達とは完全に縁を切っていたから、オレの新しい住所が分かる筈がないんだ。
 Yの妹は、Yが死んだと言った。
病気か事故か自殺か分からない。
オレは聞こうともしなかったし、Yの妹も言わなかった。
もちろん、死んだのはオレのせいなんて言わなかった。
 当たり前だ。
一応お互い納得して別れてるんだし、それに別れて何年経ってると言うんだ。
Yの妹は、

「 お願いだから一度墓参りに行って欲しい。」

と言い、オレに墓園の住所のメモを渡した。
その場は分かったと言ったが、行くわけないよな。
 Yの妹には、

「 墓参りには必ず行く。ただYのことは正直思い出となっていた。勘弁して欲しい」

と、暗にもうオレのところには来ないで欲しいとお願いした。
 もうオレにとっては過去のことだったし、それに仕事だってある。
Yの妹には悪いが、正直気持ち悪かったからメモもすぐに捨てた。
確かにYを好きだった時もあったが、その時はもう別の彼女もいたしな。
 念のためオレはまた引っ越したよ。
万が一また来られたらイヤだからな。
 その時付き合っていた彼女をAとさせてもらうが、Aは会社の同僚だった。
Aは事務職でオレは営業。
オレは帰りが午後10時過ぎになるのは当たり前だった。
会社が休みの前には、Aは時々メシを作りにウチに来て、泊まっていっていた。

 Yの妹が現れてから1年経ったか経たないかといった辺りの夏。
フラフラになって帰ったら、Aがメシを用意して待っていた。
風呂から上がって、テーブルでビールを飲みながらAを見たら、何かAがおかしいんだ。
Aがダブって見えるんだよ。
オレは近視で眼鏡を掛けており、風呂上がりで眼鏡を外していたのと、疲れ目でダブって見えたのだと思った。
 でも何か違うんだ。
Aとほとんど同じサイズの人間が、20~30㎝くらい近づいたり離れたりしてるんだ。
ピンぼけ写真を見ている感じなんだよ。
 あれれ?と思って眼鏡を掛けても見えるんだ。
Aはその手の話がまるでダメなので、オマエに被さって女が見える、なんてとても言えない。
どうしてじっと見てるの、何か顔に付いてる?って顔をしてる。
 しかも、ダブっているのはAじゃない。
全く知らない女の顔なんだ。
その時は電気が点いて明かりが煌々としてるから、怖くも何ともなかった。
とにかく不思議だっただけ。
 午後10時まで仕事なんてブラック会社に比べれば大したことないだろう、と言われりゃそれまでだが、オレにしてみたら、仕事のしすぎで幻覚が現れたと思ったよ。
多分、それが見えたのは30秒間くらいだったと思う。
じっとAを見ていた筈なのに、そのダブった女はいつの間にか消えていた。

 本格的にそれが出てきたのは、更に半年くらい経ってからだった。
泊まりに来ていたAとベッドで寝ていた時、深夜2時頃だったと思うが、正確な時間は分からない。
酔ってもいたしな。
 Aが突然オレを起こした。
何だと思ってAを見たら、Aの頭が変なんだ。
右側(オレから見たら左側)が大きいんだよ。
 不思議に思ってよくよく見たら、ゆっくりAの頭の右から又あの女が出てきたんだ。
オレの目の前30㎝くらいにだ。
そして、その女はにやにやしながらオレを見た後、どうしたと思う?
ゆっくりAの頭を喰いだしたんだ。
 喰ってたとしかオレには見えなかった。
もちろん実際に喰ってた訳じゃないから、Aの頭が食いちぎられてはいないんだけど、目だけオレを見据えてAの頭を喰いながら、Aの頭に重なって沈んでいくんだ。
 うまく説明できないが想像してくれ。
女の頭だけ、Aの頭に潜ったり出たりしているんだ。
女がAを喰う度に、Aが苦しそうに目を瞑るんだ。

「 なんかすごく頭が痛い。」

とAが言うのだが、オレは金縛り状態になっていた。
 女は最後にもの凄い笑顔をして、舌を出しながらAの中に入って消えた。
この時に、この女がYの妹だと分かった、と言うか頭の中で理解した。
1回しか会っていないし、まともに顔を見ていないから、(と言うか、オレを訪ねてきた時には、まともにはYの妹の顔を正視できなかったから)、初めて出てきたときには分からなかったんだ。
 あれはきっとYの妹の生き霊だったんだろうな。
そうとしか思えない。
それからAはひどい頭痛持ちになった。
Aには全く関係無い話だし、正直言わせてもらえればオレにだって関係無い。
こういうのを逆恨みと言うのだと思う。
 それからAに会う度、ほんとに突然Yの妹が出てくる。
Aが風呂から上がった際、トイレから出てきた際、ウチの中だけじゃなく外で会っている時もだ。
1回はキスしようとしたら、いきなりAの顔がYの妹になったので、思わず、

「 ひっ!」

と言ってしまった。
今までのことで分かる通り、そんなに強いハートじゃないオレは、Aと別れざるを得なかった。
 でも、その後も3~4日に1回はYの妹が出てきた。
毎日出てくる訳じゃないし、どのタイミングで出てくるか分からないので、逆に毎日の生活がもの凄く怖かった。
 鏡を見るのも怖い、仕事が終わってアパートに帰ってカーテンを閉めるのも怖い。
時々窓に映った。
電気を消して眠ることが出来なくなった。
電気代は毎月1万円近くなってしまったよ。
 とりあえず何をしたかと言うと、Yの妹を捜したよ。
会ってどうなるものでもないかもしれないが、Yの妹がオレを恨んでるなら、ひたすら許しを請うつもりだった。
だけど名前も連絡先も知らないし、思い切って昔のバイト先に行ってもみたが、当時のバイト仲間は誰もおらず、社員も異動してしまい、誰もYのことは分からないと言う。
 次に頼ったのは霊能者だった。
あいつらはオレ以上のクズだな。
最初は1~3万円くらいで対応してくれるが、すぐに10~30万円くらいの本格的な除霊を勧めてくる。
しかも効果は無いに等しかった。
 最後は病院。
初めからここにしておくべきだったよ。
薬は最初はエビリファイ、次にジプレキサになった。
おかげでこの頃は大分楽になってきた。
Yの妹も最近はほとんど見なくなった。
 仕事も辞めて、親元に帰ったのも良かったと思う。
親には仕事のストレスで鬱になったと説明している。
今はコンビニでバイトをしているよ。
30超えてるし病気持ちだから、多分まともな就職は無理だろうと思ってる。











童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

しづめばこ 6月1日 P305

2014-06-01 20:17:24 | C,しづめばこ
しづめばこ 6月1日 P305  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。(FC2小説)

小説“しづめばこ”



童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

-------大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ-------