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日々の恐怖 6月10日 原付バイク

2014-06-10 20:19:59 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 6月10日 原付バイク


 15年くらい前の事なんだけど、自分の原付バイクがマンション地下駐輪場から盗まれたんだ。
毎日通勤や買い物で乗っていた大事な愛車。

「 ちぃっくしょーーーー!犯人ただじゃおかねえ!」

と、私は怒りに震えた。
 うちのボロマンションの地下駐車場は、暗くて入り組んでいて死角が多い。
そこの隅で以前、頭髪が黄色い若者達、いわゆるヤンキー風の兄ちゃん達が集って、400ccバイクを2台並べては、蝋燭の明かりの元で弄くっていたりしていたのを目撃した事がある。
そして今も、集まっているらしい形跡がある。

“ もしや、あいつらが犯人か?十分ありえるな・・。”

とふんだ私はバクチに出た。
で、駐輪場に、奴らが絶対目にするであろう場所に張り紙をしてみました。

『 2日前、ここの駐輪場から私の原付バイクが無くなりました。
 持っていった人、お願いです返して下さい。
 去年亡くなった友人の形見の原付バイクなんです。
 今月の○○日が命日です。それまでに返して下さい。
 友人にすまない気持ちでいっぱいです。悲しんでいます。
 愛車を返して下さい。』

たしかこんな文面だった。
これをB5の紙に黒マジックで書いて貼ってみた。
 亡くなった友人の形見というのは、はい嘘です。
命日は2週間後あたりを書いた。
今思うと、若かった私は怒り心頭&少しワクワクといった感じでいた訳だが、これ見た住人は気味悪かっただろうな。
自分、ちと危ない人認定だったわ。

 さて、犯人は絶対に現場に戻って来ていて、貼り紙を見ているはずだ、と妙な確信を持っていた私は、徒歩40分かけて職場を往復する毎日。
一応交番に行って盗難届も書いたけど、期待は出来ない。
人の物を盗むような奴の手に渡ったら、たぶん戻ってはこないだろうな。

“ 憎い犯人め、すっ転んで骨でも折ってろ!”

と、怒りが沸々だった。

 実はあの原付、後輪がおかしい。走行中に右スベリする感じ。
自分は慣れるまでに2回コケている。
みてもらったら、「後輪のタイヤと金属部分の間が不具合の欠陥商品」だって。
 スピードあげて走ると空気が抜けやすくなり、段々とタイヤがヘナヘナになって、それでオシリが振れてコケやすくなるらしい。
そんな欠陥が分かったとたんに、暴れん坊に盗まれたということか。

 何だか今回の原付は(この原付は2台目)ツイていないな、なんて思っていたら、来ました来ました。
 ある日の夕方、帰って来ていました!
盗まれた場所に停めてありました。無残な姿でしたが・・・。
 右側全体に大きな擦過傷と、後輪タイヤがダランダランにパンクしていました。
ハンドルまでゴリゴリに擦りやがって、どー見ても走行不能です。
犯人はどんな転び方したんだ?こりゃ絶対に怪我しているわな。

「 うわあぁー祟り?ゴメンナサイ返します。許して下さい。」

とビビリながら、ここまでこの原付を押して来たのかな?
 あ、今日は嘘の命日の前日だ。
ククク・・・大・成・功!!
原付バイクは無残で悲しかったが、犯人の気持ちを想像すると最高に楽しかった。
怖かっただろうなーー普通この状態なら、どっかに放置で終わりだったと思う。

“ 予想通りの犯人め。ガキがぁ甘く見るからだ~ウヒヒヒ思い知ったか!”

犯人君は絶対また見にくるはずだから、駄目押しにもう一芝居してやった。
あの貼り紙を剥がし、今度は線香を焚いたような演出を原付のステップ部分に施して、そのまま停めておいた。

 そんな意地の悪い事して、3日後だったと思う。
休日だったので昼頃に様子を見に行ったら、小さい花束がシートの上に置いてあった。

“ あーー・・・何か・・・その・・・。”

罪悪感で心が痛んだ。
犯人君は、若気の至りを本気で反省したんだね。脅かして悪かったよ。
途中から楽しくなっていた私。
マジで怖かったんだね御免なさい。

『返してくれてありがとう』

とまた張り紙して、原付は修理して乗り続けました。
 結局犯人は判らず終いだったけど、もしかしてもしかして、あのオカルトチックな出来事が犯人君の心に残っていたら、この話を見ていたりして、なんて思っています。













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