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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 7月26日 黒いソファー

2015-07-26 18:59:18 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 7月26日 黒いソファー



 高校生のとき、親元を離れ家賃2万の風呂無しアパートを借りて住んでいた。
その部屋には何故か黒いソファーが備え付けてあった。
 6畳の部屋には似合わない本皮のどっしりとした大きなソファーで、大家の爺さんが言うには前の前の前くらいの住人が、

「 いらないので。」

と置いていったとのことだった。
 住人が引っ越す度に、

「 持って行けよ。」

と言うのだが、

「 いや、いらないです。」

と断られるらしい。
 それを聞いた自分は、

“ うわあ、オカルト話でよくあるヤツかも・・・。”

なんて思ったけど、貧乏でテーブルしか持っていなかったので、ありがたくベッド代わりに使わせてもらうことにした。
 ソファーは左側の壁にピタリと寄せて置いてあり、動かそうにも一人ではビクともしなかった。
住み始めて数日経った夜、ソファーで寝ていると突然背中に痛みを感じた。
チクチクと爪楊枝で刺されてるような嫌な痛み。

“ 何か虫?”

と思いながら体を起こし、電気をつけてソファーやTシャツを確認してみたが何も見当たらず、そのうち痛みもなくなった。
 その日から不思議なことが起こるようになった。
背中のチクチクに加え、金縛り、うめき声、モヤモヤとした黒い影が部屋に入ってくる、誰かが背中に顔をベタリと付けてくる、包丁で刺される等の夢を見る。
 すべてソファーで寝ている時に起こる。

“ やっぱりこのソファー・・・。”

と思い、引越しを考えたがそんな金があるわけもなく、仕方なくソファーにシーツを掛け、なるべくソファーに近づかないように生活をしていた。


 ある朝、便所に行こうと廊下へ出ると大家さんと大家さんの孫と出くわした。

「 あ、おはようございます。
あれっ、どうしたんですか?」
「 いやあ、隣のAさんから急に電話来て、もうアパートに戻らないから片付けてくれだってよ。」

 自分はそれを聞いて思わずガッツポーズをしそうになった。
何故ならこの隣のAさん、かなりアレな人だったからだ。
 40歳~50歳くらいの太った眼鏡のおばさんで、もう10年以上住んでいるらしいんだけど、挨拶も無し、少し物音をたてただけで壁をドン!、ドアに「うるさい!」とか「掃除しろ!」と書かれた張り紙をしてくるなど酷かった。
 一番鮮明に覚えているのが、廊下でAさんが突然こけた。
偶然近くにいた自分が、

「 大丈夫ですか?!」

と駆け寄り、手を差し伸べるとバチーンとすごい勢いで弾かれた。
そのときは、

“ なんだコイツ・・・。”

と思った。
そんな人だったので、引っ越してくれてありがとう、と心から感謝していた。
 鼻歌交りに部屋に戻りダラダラしていると、隣が何やら騒がしい。

“ 何かあったのかな?”

なんて思っていると、

「 B君(俺)!ちょっと来て!」

と大家さんの孫が呼ぶ声が聞こえた。

「 どうしたんですか?」

と隣の部屋に行くと、大家さんの孫が血相を変えてどこかを指差している。
 パッと指差した方を見てめちゃくちゃビックリした。
壁に釘が何十本もぶっ刺してあった。
 呆然と見ていると大家さんが、

「 色々書いてあるな。」

と言うので近寄って見てみると、釘のぶっ刺してあるところを中心に壁にバーっと細かい字が沢山書いてあった。
 字は、

“ ○○死ね。”

というが沢山あって、俺の名前もあったのに驚いた。
そして、大家さんは字を確かめながら、

「 B君の前の住人たちの名前もあるな。」

と言っていた。
 それを見て何となく気付いた。
この壁の向こうって丁度ソファーがあるあたりだ。
あの現象ってソファーが原因だったんじゃなくて、これが原因だったんじゃないかな。
恐らく前の住人たちはこの事実を知らずに、ソファーに原因があると思って置いて行ったんだろうと思うと複雑な気持ちになった。
 Aさんがアパート出て行ってから、しばらくぶりにソファーで寝てみたが何も起こらなかった。
やっぱりあれが原因だったのかと思った。
 ちなみに大学を出るまで住んで、出るときに大家さんに、

「 ソファー持ってくか?」

と聞かれたけど、

「 いや、いらないです。」

って断った。
だって、でかいんだもん。









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