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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 7月20日 旅館(3)

2015-07-20 18:18:21 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 7月20日 旅館(3)



 彼らは湯を出て体を洗いはじめましたが、村田は長湯をしている男のことが気になっていたので、時折気づかれないようにチラチラと見ていたそうです。
良くは見えなかったものの、俯いていた男が突然顔を上げて、なんとなく目があったような気がしたそうです。
さりげなく目をそらし前を向いた時、自然と目に入った鏡に、じっと自分を見つめている男の顔が映っていたというのです。
 横には田中がいます。
村田は、

「 うわっ!」

と悲鳴を上げてイスから転げ落ちました。
 振り向いても誰もいません。
湯船には、まだ男がいます。
気の毒そうに笑う田中に、小声で今の事を話しましたが、

“ まさか・・・・。”

みたいな感じで最初は信じられなかったそうです。
 気を落ち着かせ、村田がまだ頭を洗っていた時、田中の方は洗い終えて、再び湯船へ向かいました。
その時、

「 おいっ、さっきの人いないぞ!」

田中の声が浴場に響き渡りました。
音も立てずに、二人に気づかれないように風呂から出られるわけがない。
 二人の話というのはそこまででした。
特に村田が相当怖がっていましたが、私はごり押ししてせっかく泊めてもらったのに今更キャンセルもないだろうと思いました。
一応、私が代表みたいな立場でしたので。
 ですから、

「 まぁ、古い旅館だとそんな事もあるかもねぇ・・。」

みたいな感じで彼らに同調を見せながらも、

「 今更・・・。」

と話をしていたとき、夕食が部屋に運ばれてきました。
 賄いさんはまだ20台後半と思われる女性でした。
7時にお願いしていましたので、その時間だったと思います。
そんな流れから、私達は食事の誘惑にはかなわず、風呂の一件は棚上げとなりました。
 食事をしながら、村田は懸命に恐怖を力説していましたが、話しているうちに落ち着いてきたのか、終いには楽しい夕食になっていました。
私は内心、

“ さっきの自分の方がよほど怖かったぞ!”

と思いましたが、それを話すと、また帰るとか言い出しそうだったので止めました。









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