日々の恐怖 10月28日 ホタル
大学生の頃、I県の半島の中央を友人4名と旅行した。
友人は、イニシャルでIとOとKとTにしておく。
自動車1台、バイク3台で、俺ともう1人が自動車組。
後は、それぞれバイクだ。
旅館は予約せず、強行軍で走ったため泊まる場所が中々見つからなかった。
辛うじて見つかった旅館で、料金を聞くと素泊まりでも非常に高かったので、寝袋持ってきたヤツ二名が外、残りは自動車の中で寝る事になった。
幸い、小高い丘にある神社の前の駐車場兼空き地っぽい場所を見つけ、そこに泊まる事にした。
当然寝苦しく、みんな睡眠が浅かったのだろう。
深夜3時ぐらいに、何か人の足音みたいなのがして、全員が目を覚ました。
お互い、仲間が起きてトイレでもしているのかと思ったのだが、誰も欠けていない。
田舎だから、朝から虫取りとか、お参りしてから仕事とか、色々有るんじゃないかなんて感じの話をしてたのだが、Oが足音が消えた方(神社の方)を調べに行った。
そして走って戻ってきた。
息が荒い。
「 小さな赤い光が空中を滑っているよ。」
これは面白いかもと思い、全員で行くことになった。
低い山なので、神社まではすぐだった。
せいぜい50mぐらいだろうか。
本殿が工事中らしく、仮殿が横にあった。
その前付近でみんな立ち止まり、「なんだ、あれ?」とか、「動いているよな?」だの話し出した。
だが、俺には何も見えない。
みんなで俺を担いでいるんじゃないかと思って、前に出てみんなの言う場所を懐中電灯で照らしつつ、みんなの視線を見たら、同じような場所に集中して、少しずつ動いている。
だが、目をこらしてもやっぱり何も見えない。
なんか怖くなって、戻ろうかと言う前に、全員の視線がすっと俺に注がれた。
「 大丈夫か?」
Iが心配そうに言うが、なんの事か分からない。
IやOが言うには、俺の肩付近まで光が近づいてきて、 その後すっと消えたらしい。
TやKには、赤い光には見えてなくて、白い煙みたいな感じだったらしいが、同じく俺の方に向かって行ってその後消えたとか。
「 背筋が寒くなる話はやめてくれ。」
そう言って、自動車に戻った。
実は5人とも今までその手の経験はなく、ホタルか何かじゃないかって結論になった。
翌日特に何もなく、全員無事に帰宅した。
帰宅してから知ったのだが、俺の財布に安産祈願のお守りが入っていた。
勿論、安全祈願と間違って親が買って来たやつなんだが、何か効果があったのかもと思っている。
意味もなく、親に感謝した。
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