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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 10月9日 名前

2013-10-09 17:54:11 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 10月9日 名前




 うちの家系の男子は、決められた法則で名前を付けなければならない。
法則を詳しく書いた本が本家にあって、一般の姓名判断と同じように、画数等について書かれているそうなんだけれども。
その他にも、生まれた日にち・時刻、父母の名前、母の郷里とか、色々なことから割り出す必要がある。
 で、そんなに苦労して付けた名前の、命名の儀式とかがあるかと言うと、そういうのは全く無い。
決まったら、ごく普通に役所に提出して終了。

 男子の名前についてのみこんな面倒臭いことをしていて、他にオカルトっぽい逸話は無い。
家に亡霊が出るとかいう類の話は聞いていない。
だが、法則に従わないで名前を付けた場合、その男子は間違いなく、5歳を迎えたらひと月以内に死ぬ。

 それなのに、うちの兄が迷信とかを嫌う性質で、自分の長男が生まれたときに、祖父祖母の猛反対を押し切って、法則に従わずに子供の名前を届け出してしまった。
裁判沙汰にまでしようかと本気で祖父祖母は思っていたそうだが、周囲に止められて、別に変な名前じゃないんだからと事は納められた。
 が、兄の長男が5歳になった二週間後に亡くなった。
それまで健康だったのに、原因不明の高熱におかされてそのまま。
「だから駄目だと言ったでしょうが!」と祖母は半狂乱。
人一倍温厚な人なのに、葬式でヒステリー起こして兄を罵る始末。(そんなの本当に初めてだった)


 あまりにも祖母の様子が凄まじかったので、自分が親父に聞いてみたところ、以下の話をしてくれた。
 祖母が祖父に嫁いできたとき、大叔父(祖父弟)は家出していたそう。
けれども数年経って、大叔父は子供三人を連れて帰郷。
大叔父は嫁に逃げられて、子供の世話に困って帰郷したと言う。
 子供三人は、4歳・3歳・2歳の年子の男子。
祖父祖母は、家出して嫁に逃げられるような奴に子供は任せられないと、子供三人は自分の子供と同じように育てることに決意。本当に大切にしていたらしい。

 その翌年から悪夢が起きた。
家出した大叔父の男子三人の名前は、法則に従っていない。
三人は、年毎に亡くなって行った。
三人目の五歳の誕生日が近づいた時、祈祷とかお百度参りみたいなのとかやったらしいんだけど、やっぱり駄目だった。
 実の子同様に育てていた幼子三人を失った祖母のショックは、計り知れないものだったそうで、一時は精神を壊しかけて、里に帰って療養していたらしい。
落ち着いて普段の生活に戻ったところで、生まれたのがうちの親父。
それはそれは念入りに名前を決めたらしい。

 本当に、名前に関して以外はトンとオカルト話は聞かないんだけれども。
もともとの原因は全く分からない。
祖父にも聞いたんだけど不明。
とにかく、「法則に従わなければならない」っていうのが伝わってるだけ。
本家にある法則の本は、元の本がボロボロだったんで、曽祖父の代に写されたものらしい。
もしかしたら、元の本も写しかもしれないし。
あーもう何が何だか。



 その法則ができた理由やきっかけはわからないんですか?



 その法則ができた理由やきっかけはさっぱりわからない。
祖父は、厳重な法則に従って決めた名前を付けることによって、何かに対する魔除けにしているんじゃないか?って推測してたけど。
それもあくまで推測だから何とも。名前以外の逸話はゼロなんで。



 お兄さんの奥さんに対して、名前をつける時に説明しなかったの?
亡くなった子供が可哀想すぎる。



 兄に子供ができたとき、自分は学生で一人暮らしで離れたところに居たもんだから、当時の実家での詳しい状況は解からない。
 自分も兄も、小さい頃から名前のことは聞いていたけれども、昔のおまじないみたいなもんだと思っていたから、こんなに近くで、実際に子供が三人も亡くなっているとは思いもよらなかった。
だから、兄も兄嫁も軽く見ていたんじゃなかろうかと。
 兄と揉めたときに、そのことを伝えれば良かったんじゃないかって祖父に訊いた。
祖父曰く、祖母の前では三人のことは禁句だそうで。何せ、精神を壊しかけたくらいだから。
祖母が療養から里帰りする前に、祖父は三人の遺品を全て処分したらしい。
まぁ口には出さないものの、祖母はお墓参りはきちんとしていたそうだけれども。
だから勿論、この話を聞いたことは絶対に祖母に言うなって祖父に念押しされた。














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