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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 10月3日 カラオケ店

2013-10-03 18:35:08 | B,日々の恐怖





     日々の恐怖 10月3日 カラオケ店





 もう7、8年前になるか、当時俺はカラオケ店でバイトしてた。
働きはじめて1年くらい経っていたので、フロント、キッチン、ドリンク全部出来たんだけど、その日はたまたまキッチンだった。

 土曜の夜はどこのカラオケも忙しいと思うんだけど、うちの店も例外じゃなかった。
ライバル店がなかったのも、忙しさに拍車かけてたと思う。
終わりの見えないオーダーラッシュと戦ってると、パントリィ(正式な意味は知らんけど、料理やドリンクの受け渡しをする場所をそう呼んでた)が、ざわついてるのに気付いた。
 その雰囲気が、雑談が盛り上がってるって感じとも少し違った。
気になったんだが、キッチンは俺一人で手をとめるわけにもいかなかったし、雑談する暇あんなら手伝えよ!っていらいらしていた。
ちょっとしたらバイト仲間がキッチンに来て、テンション上がり気味に「自殺!自殺!」って。

 そいつの話では、その客は障害者だったのか怪我してたのか、ともかく車椅子だったと。
一人で入店し、フリータイムで入室したが、ファーストオーダーのドリンク以外なにも注文せず、歌ってもいなかったので、変だな…程度には感じていたらしい。
 フリータイム終了のコールをしても出なかった為、そいつがルームに行くと、客はソファーに横たわっていた。
叩いても揺さぶっても起きず、睡眠薬だかなんだかの瓶が転がっていたので、慌てて支配人に報告。
支配人が呼んだ救急車で運ばれてったと。
救急隊員は車椅子を置いてった。
 後日、客の家族が来て、フリータイムの料金を払い車椅子を受け取ると、何度も謝りながら帰っていった。
正直、その客が死んじゃったのか助かったのかは、結局今もわかってないんだ。
でも、それ以降うちの店で、心霊現象や幽霊の目撃者が相次いだ。


 自殺騒動から1ヶ月経ったぐらいかな?俺はその日フロント担当だった。
平日だったし暇だったので、一緒にフロント担当した新人の女の子と雑談してると、自殺があったルームからコールがあった。
 受話器を取ったのは女の子で、「はぁ…はぁ…」と困惑気味に対応していた。
新人だったその子は対応しきれないって感じで、「少々お待ちいただけますか?」と受話器を俺に渡した。
俺が「内容は?」と聞くと、女の子は「よくわかんないんです><;」って。
 新人では対応できないってことはクレームか?めんどいな…と思いながら受話器を、取り客の話を聞くと、ソファーと壁の間から手が出てくる…という内容だった。
これには俺も、「はぁ…はぁ…」としか対応出来なかった。

 電話じゃ対応しきれなかったのでルームに向かった。
手なんて出てるわけねぇだろとか、シャブ中だったら違う意味で怖いな…とか考えながら、ノックしてドアを開けると、確かに手が生えてた。
 客から聞いていた、手が出てくるってのとは感じが違って、壁とソファーの間から手が生えてた。にょきっと。
客は、スナックのママと常連のオッサンって感じの二人で、ママには手が見えてない模様。
ママはしきりに「ごめんねぇ。この人飲み過ぎちゃったみたい」と笑いながら謝っていた。
オッサンはママが謝る度に、「そんなに飲んでねぇよ!」「酔っ払ってねぇよ!」と怒鳴っていた。

「 兄ちゃんにも見えるよな!」

と聞かれたが、そこは客商売。
 確かに手ですねぇ、なんてのんきな対応ができるわけもなく、自分には見えないが、気持ち悪いようなら即座にルームをかえると伝え、ルーム移動+それまでのルーム使用料のサービスで解決した。
ルーム移動の後、片付けに行ったら手は消えていた。
 その後も、従業員の半数以上が、閉店後の清掃作業中にスピーカーから男の声がしたとか、未使用のはずのルームに人がいた等、何らかの心霊体験を経験した。

 うちの店は5階建てで、件のルームがあるのは5階。キッチンは3階。フロントは1階。
営業終了後の清掃作業中は1フロアに一人だから、件のルームも一人ぼっちで清掃するんだ。
女の子は怖がるから、男連中の仕事になってた。
 それでも心霊現象が止まなかったんで、普段は事務仕事しかしない支配人をバックルームから引っ張り出して、モップと掃除機を渡して、「一度でいいから5階の締め作業をしてみてくれ」と、バイト仲間がお願いしたことがあった。
少し不機嫌そうに、「何も起こらなかったら、以降心霊現象で騒ぐのは中止な!」って。
まぁ、色んな意味で営業に支障が出てたんだろう。
 1時間もすると支配人が3階に降りてきて、キッチンを締めていた俺に「ありゃ、洒落になんねぇな。」って。
モニターやアンプの電源を落としながら、一部屋ずつ清掃していくんだが、5、6部屋清掃し終わったときに、消したはずのモニターの電源が入ってるのに気付いたらしい。
 落とし忘れたかな?程度にしか思わず全部屋清掃して、最後のトイレ清掃に向かった。
大便器の清掃を終えて個室から出ると、トイレから出ていく男の後ろ姿が見えたらしい。
バイトの誰かの悪戯だとはちっとも思わなかったって。
その男は全体的にぼやけていて、生きてる人間とは明らかに違ったから。
 それでも、バイトの手前騒ぐわけにいかないと平静を保ってたんだが、清掃用具を片付けてトイレから出ると、全室のモニターとアンプの電源が入っていて、さすがに怖くなり駆け降りてきたんだと。
 それ以降は、他のフロアを先に締めて、全員で5階を締めるってルールが導入された。
他にも多々あったんだが、どれもたいしたことないからやめとく。

 こっからは関係ない話なんだが・・。
7年以上前の話だし、当時バイトしていた奴で、今も働いている奴はもう一人もいない。
ただ、当時働いていた奴で、今もカラオケ店の近所に住んでいる奴がいて、そいつに最近聞いた話。
 客として歌いに行ったときに、ドリンク運んできた兄ちゃんに、

「 昔ここでバイトしていたんだけど、(略)、まだ幽霊でるの?」

って聞いたらしい。
そしたら、

「 バリバリ出ますよ~!」

って。
 ご丁寧にいわくまで教えてくれたらしいんだが、そのいわくってのが、「この店のある場所、昔は墓地だったらしい…」って。
もちろん出鱈目で、カラオケが出来る前は、確か中古車屋だった。
よくある心霊スポットなんかのいわくってのは、こうやって誰かのホラによって創られてくんだなって思った。














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