日々の恐怖 9月27日 写真
Kさんが子供の頃のお話です。
運動会の写真に写った5人を、最初は気付かなかったそうです。
ある日の休み時間に、家族が撮ってくれた写真を友達同士で持ち寄って、見せ合いっこをしました。
Kさん達小学校6年生が、運動会で組体操をした時の写真です。
背景に写る校舎の屋上に、5人の男達が立ち、手すりに寄りかかって運動会を見物しています。
よく見ると、5人の男は作業着の様な服を着て、2~3人は工事現場のヘルメットを被っています。
屋上は、当然立ち入り禁止です。
工事でもしていたのかな?でも、運動会の日に工事なんてしてなかったし、する訳ないよ、と皆で不思議がり、他の写真も見ましたが、何故か屋上に人影が写っているのはその1枚だけでした。
そこに担任の先生が来たので、
「 せんせ~、運動会の日に、学校で工事か何かしてた?」
と聞いてみると、先生は、
「 ン?してないぞ。
わざわざ運動会の日に工事なんてする訳ないだろ?」
と、予想通りに答えました。
「 でも、これ…。」
と、その写真を見せると、先生は、
「 う~ん、これは…。」
と写真を見て言いました。
先生は、不審者が入って来た可能性を心配したのか、
「 ちょっと、この写真を貸してくれ。
他の先生にも聞いてみるから。」
と、その写真を胸ポケットにしまいました。
後日、その写真はKさんの元へ返却されました。
先生は、
「 たぶん、塗装業者の人が、下見に来たんだろう。
もうすぐ、校舎の壁を塗り替えるから…。」
と、何となく曖昧な事を言っておりました。
確かに、校舎は古く、そう言う事かと納得。
子供の事ゆえ、既にその写真には興味を失っていたので、それ以上の詮索もしませんでした。
Kさんが大学生の頃、その先生が定年退職するので、久々に同窓会が開かれました。
席上、先生が思い出話のついでに、Kさん達にあの写真の事を語り始めました。
「 あの時は言わなかったけど、あの写真は俗に言う『心霊写真』かもしれんぞ。
実は、あの日は工事も下見も入っていなくて、職員室でもちょっとした騒ぎになったんだ。
念の為に屋上を調べても、鍵はしっかりかかったままで、人の入った形跡が全く無くてな。」
Kさん達は忘れかけた話を鮮明に思い出しました。
「 あの校舎、あの棟だけ3階建だろ、他の棟は4階建てなのに。
お前らは知らんだろうが、昔、学校を建設する時には、あそこも当然4階建てにする予定だったが、4階の工事をしている時に、立て続けに事故が起こったそうだ。
それも、常識では考えられない様な事故がね。
それで、5人の死者が出て、4階部分の工事は中止されて、結局あそこだけ3階建てになったそうだよ。」
不審に思ったKさんは、家に帰ってから昔のアルバムをもう一度確かめて見ようと思いました。
しかし、いつ紛失したのか分かりませんが、何故かあの写真だけがアルバムには見当たらなかったそうです。
そして、その校舎も今では綺麗に立て替えられて、既にこの世から消えてなくなっていると言う話でした。
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