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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 9月18日 弟

2013-09-18 18:02:00 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 9月18日 弟



 これは、私の母が他界した時の話です。
母が乳癌の再再発で、お医者さまから、末期で治療といっても延命治療しかできないと言われ、苦しい思いをするなら延命治療はせずに家で最後を看取りたいと姉達と話し合い、母を家に連れて帰りました。
 痛みを和らげる為の強いモルヒネで、あの世とこの世の境目が解らない様な状態でしたので、私は仕事を辞め看病に専念する事にしました。
 家に帰ってきてから一週間位した頃から、廊下を歩く足音が1日に何度も聞こえました。

「 あぁ、弟が来てるんだなぁ・・・。」

と何の疑いもなく思いました。
 私は末っ子なんですが、私の後に3人子供が出来たんです。
全員死産だったんで、両親が名前を付けて水子供養してたんです。
その弟が来てると思いました。
全然怖くなかったし、いつも母が寝てるとこで足音が止まるんです。


 その2週間後、母は亡くなりました。
葬儀も終わり家に帰って姉達と(姉3人います。他県へ嫁いでいて今回看病の交代もかねて2週間程いました。)母の思い出話や愚痴?笑い話などを酒の肴に飲んでいました。
 長女がトイレに行って戻ってきたら、すぐに三女がトイレへ・・・、と血相変えて戻ってきました。

「 誰かいた!誰かいたのよぉぉ~!!」

と騒ぎ出した。
 長女が三女に、

「 アロハシャツ着てなかった?
短パンはいてなかった?」

と聞いていた。
 三女は声もなく、首がもげるんじゃないかと思うくらいブンブン縦に振ってた。

“ 長女も見てたのかよ!”

三女「 携帯もってて話してた!」

で、次女が私を見て、

「 あんた、なんか隠してない?」

って聞くから、足音の事を話したら、

全員「 弟だ!!年齢からいったら弟に間違いない!!!」

と勝手に納得した。

「 でも、幽霊が携帯使いますかね?
つか、誰に電話してたんだよ?」

と私が反論すると、全員で、

「 お母さんに決まってるでしょ!
私達が話しした事をチクってたのよ!
油断も隙もありゃしないわ!!」

え~~っと、なんでそうなるんでしょうか?
実際、家捜ししたけど、ホントに私達以外誰もいなかったし・・・。


 次の日、何事もなく夕方になり、晩御飯を姉達と作っていた。
その途中、突然、三女が玄関に行った。

「 どちら様でしょうか?」

と、三女が玄関で言っているのが聞こえた。
 その後、三女が台所に戻ってきて、

「 お参りに来た人みたいだけど、返事もしないのよ。
とりあえず、お茶の準備してね。」

そして小声で、

「 アロハ着てるのよ、失礼よね。
こんな時に、なんかムカつくわ。」
「 それって・・・・。」

全員脱兎のごとく玄関に行きました。
案の定、誰もいません。

三女「 ま、まさか、だって、昨日のアロハシャツと違う色だったのよ!」

また、全員で家捜しです。
 もちろん、誰もいませんでした。
幽霊がアロハって、それも着替えてるって、なんか、怖いとか切ないとか、ふっとんで笑ってしまいました。
 ただ、次女だけ、

「 姿見てないし、足音も聞いてないしで、末っ子は霊感あるから解るけど、長女・三女は霊感ないよね!
なんで私だけ見れないのっ!」

って拗ねて八つ当たりされました。
そっちの方が怖かったです。
 なんかね、看病とか、目の前で母が痩せて弱って行くの見てて辛かったんだけど、そんな辛い思いが全部、この事で笑って話せるようになっていた。
弟は、母を連れに来たんじゃなくて、後々、私が笑っていられるように来てくれたのかな?
私は、この世にいない弟だけど感謝してる。













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