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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 9月7日 コーヒー

2013-09-07 17:57:00 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 9月7日 コーヒー




 数年前の正月あけて間もない頃のことです。
その日は昼過ぎまでに上げなければならない資料があって、前日から徹夜で仕事をしていました。
やっと資料が完成したのが昼の12時30分頃、そのあといったん食事にでて会社に戻ろうとしたのが13時30分前でした。
 徹夜あけで食後、しょぼしょぼする目をこすりながらフラフラと会社の前の通りを歩いていたのですが、いつもは多少の人通りがあるのにその日は何故か誰も歩いておらず、妙に静かだったのを覚えています。
会社のオフィスはさほど広くもない7階建て雑居ビルの6階にあって、入り口正面にエレベーター、右手が階段です。
 私はいつものように、ビルの入り口にある自動販売機で缶コーヒーを買おうとしました。
ここのコーヒーは、あまり見ないマイナーなメーカーのためか100円なのです。
 しかし、何度お金を入れても戻ってきてしまいます。
その頃偽造硬貨が流行っていたのでチェックを厳しくしたのかなと思いましたが、こちらも意地になっていました。
 7、8回目にやっとお金が入りました。
コーヒーを取りだし、上にあがろうとして何気なく6階のオフィスを見上げると、窓を開けて皆が下を覗き込んでいるのに気付きました。
 道路を隔てた向かい側がスポーツクラブで、その4階がプールになっています。
一階あたりの高さが違うのでちょうど斜め上か覗ける位置にあります。
スタイルのいい娘がいると、時々若い社員が覗いていることがあるので、この時も単に相変わらず好きだな~、と思っていました。
 ところが、エレベーターで6階に昇り、踊り場の右手にあるオフィスのドアを開けると、窓際に社員の殆んどが集まって下を見ていました。

「 あれ? わざわざ下まで行ってみてきたの?」
「 え? いや、飯食って帰ってきたところだよ。」

と、私は答えました。

「 えー? 度胸あるなぁ。」
「 なにが?」

私は訳がわからず聞くと、同僚は窓の下を指差しました。
 つられて私が覗くと、今しがた、私がコーヒーを買った自動販売機の前に女性が横たわっていました。
上半身には青いビニールシートがかけてあります。
シートの下から出ている足で女性と分かりました。
すでに周りを警察官が行ったり来たりしていました。
 思わず私は同僚に聞きました。

「 この上の階から?」
「 何言ってんだよ、この階、入り口に靴があっただろう?」

 私がオフィスのドアを開けると、目の前の踊り場には確かに赤い靴がきちんと揃えてありました。

「 え? なんで?」

 今、帰ってきた時は確かに誰もいなかったし、勿論、自動販売機の前にも何もありませんでした。
私がエレベーターの中で居眠りでもしていて、その間に飛降りがあったのだろうか、とも考えました。
しかし、時計は1時半過ぎを指していました。
 昼休みが終わって、20分程の間に、飛降り自殺があったそうです。
1階の店の人が気付いてすぐ通報したそうですが、今しがた見た様子ではもうダメのようでした。
 私が聞いてみると、下を覗いていた社員は、誰も私が下を歩いていたことに気付かなかったそうです。
同僚は、単に私が横を通ってきただけだと思っていたようでした。
でも、確かにあの時は誰もおらず、何もなかったはずなのに。
 同僚が言いました。

「 徹夜で、アタマ、ボケてるんじゃないの?」
「 だってほら。」

私は今しがた買ってきた熱い缶コーヒーを同僚にさしだしました。













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