日々の恐怖 9月13日 えいやこらさ
子どものころ祖母から聞いた話です。
ある日バスに乗っていたら、運転手が「えいやこらさ、えいやこらさ」と、かけ声みたいに歌い出した。
小声だったので乗客は誰も気にとめず、祖母も“景気付けに鼻歌でも歌ってるんだな”ぐらいに思ったそうです。
ところが、運転手の「えいやこらさ」がだんだん大きくなっていく。
乗客もみんな気付いて、祖母も何か変だなと思い始めたらしい。
そしたら次の瞬間、運転手は降りる人がいるのに無視して、「えいやこらさ、えいやこらさ」と大声で歌いながら、バス停の前を素通りしそのまま走り続けた。
流石にみんなびっくりして、一瞬シーンとなったあと、車内は騒然となったんだけど、バスはすごい速さで走ったまま。
運転手はその間もずっと、「えいやこらさ、えいやこらさ」。
最後は、男の乗客が運転手の脚を無理やり押さえてブレーキを踏ませ、なんとかバスは停車した。
幸い事故にはならなかったらしい。
祖母が言うには、「運転手さんは危ない人だったんだろう」って。
この話を聞いて以来、バス運転手の目つきがおかしかったり、運転手が急に歌い始めたりすると、ちょっと不安になります。
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