気分はガルパン、ゆるキャン△

「パンツァー・リート」の次は「SHINY DAYS」や「ふゆびより」を聴いて元気を貰います

ガルパン戦車模型を発売するメーカー (下)

2013年09月18日 | ガルパン模型制作記
 前回の続きです。プラッツより発売されている公式キットのうち、初期段階でリリースされた3種のうちの残り2種を紹介しましょう。これらはTV放映時にCMが流され、DVDにも収録されているものです。


 これはⅢ号突撃砲F型です。これもドラゴン系キットで、箱替えで公式キット化されています。箱絵は親善試合時の派手な外見の姿になっていますが、このように塗装して仕上げるというのは、ベテランのモデラーでも難しいということです。ガンプラのように色とりどりのパーツを開発して組み合わせる、という形式のキットを新たに開発するという手もあったのではないかと思いますが、プラッツはAFVに関してはドラゴン系のキットに依存しきっているという話ですので、新規開発というのは有り得なかったのかもしれませんね。
 このキットは、全国大会出場時のジャーマングレー一色塗装にも仕上げられるので、必ずしもこの派手な外見に仕上げなければならない、ということではないと思います。お好みで気にいった時期の仕様を目指せばよいでしょう。

 問題は、「細部まで劇中イメージを完全再現」とうたっている点です。このキットは、私も色々悩んだ末に購入を決めて、今はもう手元に届いています。もちろん中身も細かく見て、公式設定資料と制作ガイドとを見比べてチェックもやっています。結論から言いますと、上記の謳い文句は正しくないのです。「劇中を完全再現」どころか、細部に数多くの相違点があり、また模型情報誌などで紹介されているプロモデラーの制作報告文を読むと、色々と追加工作すべき点が指摘されています。
 要するに、このキットをそのまま組み上げると、ガルパン仕様にはならない、ということです。

 このⅢ号突撃砲に関しては、ガルパン仕様はF型だということになっていますが、厳密にはF型とF8型のごちゃまぜです。なぜそうなるのかといえば、アニメの公式設定図を作る際のCG化の過程で、色々な変更や「アニメならばでの見せ方」に基づく省略などが施されるからです。そのことはアニメや模型の情報誌などに載せられる、制作スタッフへのインタービュー記事などでよく述べられています。
 ガルパンに限らず、アニメに戦車や戦闘機などを登場させる場合は、作画や表現の都合で細部を改変したり省略したりすることが一般的です。だから実際の戦車の姿とは微妙に異なっていて当然なのです。前からガルパン仕様、ガルパン仕様、と書いてますけれども、これは、戦車がアニメに登場するからこそのアニメ仕様の一種、なのだと私は解釈しています。

 だから、前回のⅣ号戦車D型や、このⅢ号突撃砲F型の姿が、実際の戦車と違うではないか、というのは批判としてはむしろ的外れであって、むしろアニメ作品としてのガルバンでは許容範囲として受け止められるべき性質のものだと思います。
 でも、アニメ作品の仕様とも違っているものを「細部まで劇中イメージを完全再現」とうたうのはどうかと思うのですね。明らかにやり過ぎです。

 厳密にはF型とF8型のごちゃまぜ、と書きましたが、ドラゴンのキットではF型もF8型もリリースされていますので、F8型のキットを買えばガルパン仕様になるのか、というと、残念ながらそうでもないようです。アンテナ収容トレイなどのパーツが足りなかったり、細部があちこち異なっていたりするのです。
 タミヤからもG型が出ているので、これの初期型キットを買えば良いかもしれませんが、F型とは違うので細部では色々異なります。私もこういうことで色々と悩んだ結果、やっぱりプラッツの公式キットを買って、大部分がF型になってくるのを色々自分で改造して、F8型の形状になっている主砲や後部エンジンルームハッチ部分などを可能な限り再現するしかないな、と決めたのです。それが一番の早道だろうし、費用も最も安くおさえられると考えました。

 まあ、ガルパン仕様を目指すというのを、一つの楽しみ方として捉えて、改造とか作り変えとかに割り切って取り組んで、それで面白い制作過程を楽しめたらいいじゃないか、ってことですよね。あと、公式キットですから、ガルパンのオリジナルデカールがついてくるのがメリットですね。何でもかんでも批判せずに、前向きに捉えていくのがいいんじゃないですか。


 これは38 (t) 戦車です。特に定まったフレーズが挙げられていませんので何も問題はないようにみえますが、大ありです。むしろ前述のⅢ号突撃砲F型のケースよりも問題だと思います。

 まず、劇中の設定からしておかしいんですね。劇中ではB/C型ということになっていますが、実際にはそんな形式分類は存在しないのです。これもアニメの都合による独自の謎設定なんでしょう。第二次大戦中の実物の記録資料を見ますと、A、B、C、D、E、F、G、S型がありまして、外見的には前期型のA/B型、後期型のC/D型、E/F型という分類がなされているようです。ですので、ガルパン仕様は実際の前期型のA/B型にほぼあてはまるようです。
 ところが、この前期型のA/B型のキットがドラゴン系のラインナップには無いものですから、プラッツも仕方なく後期型のE/F型のキットで代用して箱替えをしたのでしょうか。しかし、同じ38 (t) 戦車と言っても、A/B型とE/F型とは全然形状が違いますから、話にならないわけです。
 A/B型のキットは、中国の香港のメーカーであるトライスターが出しています。このキットがあれば簡単にガルパン仕様を再現出来るのですが、いまでは生産も販売もしていないようで、入手がとても困難です。

 こういう事情が背景にあるので、プラッツの公式キットをけなしたり批判していたりするのも、どっちかというと的外れであって、全ての責任をプラッツに押し付けるのは酷だと思うのです。でもまあ、プラッツも、公式キット化の際に、案内書などに事情をきちんと記したうえで、改造パーツなどをドラゴンと協力して開発追加するぐらいのことはやるべきだったと思うんですね。
 実際、この半年間、公式キットの杜撰さをさんざんに批判されて、売り上げも落ちたのがこたえたらしく、最近にリリースしたⅣ号戦車H型仕様やポルシェティーガーやティーガーⅠなどの公式キットに関しては、ちゃんと追加改造バーツも開発して出してくるのです。最初からきちんとこういう対応をしていれば、Ⅳ号戦車D型もⅢ号突撃砲F型も、今以上に売れて売れて、プラッツの株も大いに上がったかもしれないのですね。本当に残念です。

 そんな訳で、38 (t) 戦車については入手可能なキットがドラゴン系のプラッツ公式キットしかありません。それで私も覚悟を決めて購入し、今は手元にあります。E/F型なので、相違点は全て自分で改造または修正することになります。いやー、大変な手間がかかりそうで、ちょっと怖いです。



 ここで、私なりにもう一点、疑問に思っていることがあるのです。それは、ガルパン戦車の大部分をカバーするタミヤが、どうしていまだにガルパン企画に参加しないでいるのか、ということです。タミヤは名実共にAFVの1/35スケールモデルのパイオニアであり、1/35スケールを世界的標準に育てたメーカーです。世界中の模型メーカーが、次第にタミヤにならってAFVの1/35スケールモデルを開発している、というのは凄いことです。
 そんなタミヤがガルパン企画に参加すれば、ガルパン模型市場は空前の盛り上がりをみせるに相違ありません。ラインナップのうえでは既に圧倒的なシェアを誇っていますから、模型業界の王者の貫録とノウハウとで、ガルパン戦車キットの楽しさに色んな広がりを付加してくれるはずなんですよ。

 実際、プラッツの公式キットの不手際と不評のおかげで、モデラーの多くがタミヤのキットでガルパン戦車を作るという方向へ走っており、現時点でガルパン戦車模型で一番売り上げて儲かったのは、本当はタミヤなんですね。コミケのガルパンコーナーでも、公式参加企業でもないのにブースに入ってちゃっかり売り上げているということで周囲から批判を浴びていたようですが、売れる以上、何もしないという選択肢はタミヤには無かったでしょうね。
 むしろ、そこまで頑張ってくれるのであれば、どうして今からでもガルパン企画に参入しないんだ、と私なんかは不思議に思っていたのです。

 それで、資料などを調べてみましたら、ガルパンアニメ企画とのタイアップの話は、実はタミヤにも持ちかけられていたことが分かりました。ところがタミヤは、これを断ったらしいです。今考えると、なんて惜しいことしたんだ、ということになるかもしれませんが、そう考えるのは間違いなんですよ。
 私は最初の段階からガルバンを知ってたからよく実感出来るのですが、ガルパンというアニメは、企画段階や放送開始の段階では、あんなにヒットするとは予想されていなかったんです。制作スタッフがインタービューでそう述懐しておられますし、タイアップした企業にとってもブーム自体が予想外だったらしいんです。放送自体、主要民放じゃなくて地方のローカル局とネット配信が主でしたからね。私は大阪テレビで見ましたが、とにかく深夜に放送していたので、はじめは単なるローカルアニメなんだろうと軽い気持ちで観てたんですよ。けいおん、イカ娘と大して変わらないかも、って。

 大体、プラッツにドラゴン系キットの提供をお願いしてこれを公式キット化するという適当策で手を打っているあたり、最初はちゃんとアニメ作品との連携に基づく本格的な商品開発の計画を持ってなかったんじゃないかと思うんですよ。商品化の流れだって、ブームになって慌てて取り掛かって、後手に回っている感じでしたから。きちんと商品化と販売流通の計画さえ作っていれば、今みたいに関連キットがみんな売り切れて、在庫無しなんていう状態にはならなかったのと違いますかね。

 だから、こんなローカルアニメの、いいかげんな姿勢の企画に付き合ってられるか、って言う感じで、王者のタミヤが話を一蹴したのかもしれませんが、原因は他にもあるようですね。それは、ガルパン企画の主体がバンダイビジュアルである点でしょう。
 バンダイは、周知のようにタミヤにとってはライバルで、しかも過去に色々と確執があったみたいですね。アカデミーがタミヤのキットの改悪コピーを流通させてタミヤの会長を激怒させたあげく、アカデミーの輸入代理のGSIクレオスが静岡ホビーショーからも追放されることになった経緯は、私も噂に聞いていましたが、そのアカデミーとバンダイは仲が良くて提携しているんですね。タミヤからみたら、こんなのは許せない、ということになるでしょうね。
 なので、ガルパン企画がバンダイの主導である以上、タミヤとしては絶対に頭を下げないぞ、と言う意地があったとしても不自然ではないでしょう。タミヤがタイアップの話を断ったのは、ある意味正しいんですね。

 でも、これだけガルパンブームが続いて戦車模型市場も盛り上がって潤って、予想以上にタミヤのキットも売れていると言う状態になってきますと、タミヤも正直なところ当惑しているんじゃないかと思うんですよ。しまった、タイアップの話を断ったのは誤算だった、と考えているかもしれません。
 だって、今の状況だと、もし、タミヤが参画して公式キット化を図っていれば、シェアは完全にタミヤの独走状態になっちゃってプラッツなんか吹っ飛んでるはずです。ドラゴン系のキットがいくらあったとしても、Ⅳ号戦車D型もⅢ号突撃砲も、もともとタミヤのキットにもあるんだから、それの拡充と新規開発でバッチリ売り上げを上げていけるはずなんですよ。そうするとガルパン企画における発言力というか、存在感というのもけた違いに上がるでしょう。
 それとは別に、タミヤブランドというものの輝かしいイメージが世界に浸透してますからね、ガルバンが「世界のアニメ」にのしあがる可能性は大きかったでしょう。現状でもガルパンは海外にも好評で世界中にファンがいますから。要するにもっと飛躍できる基盤と言うか、チャンスというものがあったのに、ということです。そういうチャンスは、タミヤにとっても有意義だったはずです。

 今考えますとね、ガルバン戦車のキット化を図れるメーカーには、全て話を持ちかけていて当たり前なんですよ。バンダイビジュアルも、そこのところは基本であって、戦車模型に関してはタミヤが最高峰だと認めているからこそ、ライバルであったとしてもきちんと話だけはもちかけている。そこは企業の姿勢としてはまっとうじゃないかと思うんです。
 ファインモールドを公式キット化の話に引き入れたのも、もともと八九式中戦車甲型や三式中戦車チヌのキットをリリースしていたからだろうと想像されます。ピットロードも、AFVキツトだけでなくミリタリー系フィギュアにも実績があるから、ガルパンキャラの製品化を期待したんでしょうね。実際にそんな方向で、ピットロードはエンディングバージョンを開拓して積極的に仕掛けてきていますし。
 でもね、タミヤが参入していれば、今頃は、もっと何かこう、色んなメーカーが協力し合ってのスケールの大きなガルパン模型ブームというものが構築出来たんじゃないかって、本当に真剣に考えるのですよ。

 だから、タミヤがタイアップを断ったのは、模型業界全体にとっても、ガルパンブームにとっても明らかなマイナスになったのではないかと思われるんです。その時点で、色々な可能性というものがしぼんだり、消えてしまったはずですから。
 ほんとに残念です。でもね、まだブームは続いてるんですよ。アンツィオ戦OVAも劇場版もまだこれからですし、今からでも遅くはないので、なんとかタミヤが企画に参加して、公式キットをガンガン出してくれないかなあ、と切に希望致します。 (了)

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2 コメント

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Unknown (元社員)
2014-06-06 12:22:43
田宮の社長はキャラクターモノが大嫌いです。
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田宮も参入しますよ (ちいさいおおかみ)
2015-10-08 11:31:58
傍から見たら遅きに逸した感があるかも知れませんが、田宮様も遂にGuPキットに正式参入致します。
後、GSIクレオス様は静岡ホビーショーに復帰されました。そして、今年度で正式に罵カデミーを提携解消しました(今年4月に正式に提携解消報告を公式サイトで行っています)。この提携解消こそがクレオス様が五社共同で再参入出来た理由なのです。
田宮様がキャラクターモデルに消極的だった理由は嘗ての『JOE90』キット時代のトラウマがあった為です。故に社長様がキャラ物に対して嫌悪感を抱いていたと云う次第ですね。今回漸く田宮様が正式参入される事を知って喜んでいるファンは枚挙に暇がないと思われます。
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