あんこうチームの通信手を務める武部沙織は、周知のようにテレビシリーズの起承転結の要にて重要な役割を果たしました。武部沙織が転校生の西住みほに声を掛けたのがそもそもの始まりでしたし、生徒会の策謀に引きずり込まれそうになって動揺する西住みほを五十鈴華とともにかばい、結果的には背中を押すことになったのも彼女でした。
試合のそれぞれにおいて、時には迷い悩む西住みほを励まし、決断へと奮い立たせているのも彼女でした。そして、感動的な第12話の優勝パレードのラストシーンを「戦車乗ろっかー」の印象的な台詞で締めくくったのも彼女でありました。
学園での日常でもチームのムードメーカーであり、戦車道試合においてもその立ち位置は不変でした。主役の西住みほを何かと支え励まし、共に歩いている準主役級のキャラクターの一人です。
そのポジションは、劇場版でも健在でした。戦車の試合を前面に押し出した物語構成のなかで、少な目になった日常シーンとともに、やや存在感が薄れた感も否めませんが、要所要所で何らかの発言をなし、西住みほに対すれば真っ先に手を挙げ声を上げてくる辺りは、相変わらずでした。
同時に、テレビシリーズにおいて指摘されていた彼女の謎の部分も、そのまま踏襲されました。劇場版にて、謎の何割かが明らかになるのかも、という淡い期待は、見事に外れました。
謎、というのは、あんこうチームの五人のなかで、武部沙織だけが唯一、家族や実家などの描写が一切出てこない点を指します。家族が居ることは公式設定資料でも述べられており、両親と妹がいます。文庫版ストーリーでは、妹の名前が詩織とされていますが、アニメ本編には登場しません。
また、実家も大洗町に所在しているという設定です。同じ大洗町に属する秋山理髪店のように日常シーンにて登場してきてもおかしくないのですが、そういった場面は全くありませんでした。秋山理髪店は学園艦の街中にあることが劇場版の退去シーンでも示されましたが、武部沙織に関してはそういった描写が無かったため、陸地の大洗町の方に家があるのかもしれません。
それでは、武部沙織の私生活を伺わせるものは何も無いのか、というとそうでもありません。学園艦上の寮の部屋が、アンツィオ戦OVAにて登場しており、努力家でもある彼女の一面をのぞかせています。
なので、劇場版では実家または家族のシーンがワンカットだけでも出てくるかと予想していたのですが、ついにそれはありませんでした。謎がなおも謎のままに保たれている、という事への驚きさえ感じてしまいます。
一体、ここまでして武部沙織のプライベート面が描写されないのは、何故なのでしょうか。ひょっとすると、次期作のためのストーリー案の構成要素として、温存されているのでしょうか・・・。
それを描くことで、ガルパン世界における平凡な人々の戦車道観というものが定まってくるでしょうし、それと対比させることで、他のキャラのインパクトが明確になると思うのですが・・・。
それ以前に、武部沙織の家族は他のキャラと違って大変平凡、という設定になぜ決めたのかを知りたいところです。
確か、監督さん曰くは「武部沙織の家族は他のキャラと違って大変平凡で描いてもしようがないところがある」と何かの記事で答えていたと覚えています。
うろ覚えですので、正しい情報かどうか明言できないので水を差す形になり申し訳ないのですが、参考になれば幸いです。
自分もガルパンのファンですから、外伝作品などで沙織さんの家族について掘り下げてくれればなぁと思っています。
ですが、ストーリー自体は面白いので、是非小説版も読んでみて下さい。
本の紹介では、沙織視点で書かれているとの事でしたので、てっきり何がしかのシーンで家族が登場しているものとばかり思っていました。
何か思惑があるのか、単にありふれた普通の家族設定なので取り上げる必要(時間の余裕)が無かったのか、その答えは今後の展開に期待しましょう。(*^。^*)